オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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守りたい

ロキ・ファミリアの遠征が遂に始まる。進行するに当たって部隊を2つに別けるようだ。

一班はフィン、リヴェリアが率いる部隊、ロキ・ファミリアの幹部メンバーや通常のメンバー、総司も入っている。

二班はガレスが率いている。この部隊はロキ・ファミリアの二軍メンバーや助っ人に来たヘファイストス・ファミリアの上級鍛冶師(ハイ・スミス)達がいる。

先に一班が先陣を切り二班は少し遅れて出発し、18階層で合流した後一気に50階層へ移動する手筈となっている。一班が突入し現在ダンジョン7階層、まだ上層なので緊張感は無い。特に幹部達は呑気にお喋りをしている。

 

「総司、何かあったら直ぐ言ってね!”お姉ちゃん”が何とかしてあげるから!」

 

「誰が”お姉ちゃん”ですって?」

 

総司を弟扱いしているのはティオナ、そしてそれを呆れながら問うティオナの実の姉ティオネ。

 

「何さ〜?」

 

「いや別に、あんたみたいなガサツな姉が居たら、弟が可哀想だなぁって」

 

「ムッ、バカにしてるな〜?」

 

「バカになんてしてないわよ。バカティオナ」

 

「あ、カッチーンと来た!」

 

今にも姉妹喧嘩が始まりそうな雰囲気だ。総司はニコニコで2人のやり取りを傍観しアイズはオロオロ、ベートは無視といった状況だ。

 

「2人ともそこまでにしておけ」

 

「はいはい、悪かったわ」

 

「ちぇ〜」

 

見兼ねたリヴェリアは2人に注意する。上層とは言えここはダンジョン、油断は禁物だ。その事をリヴェリアは示唆しているとその様子を見ていたフィンは苦笑いしていた。

 

「ははは、ティオナは弟が欲しかったのかい?」

 

「うん!あたしにはティオネしか居なかったし、テルスキュラに居た頃も妹って呼べる人居なかったんだよね!」

 

テルスキュラはオラリオから離れた東南にある半島の国。海と断崖絶壁に囲まれアマゾネスの聖地とも呼ばれている。男子禁制で日々闘技場で捕獲したモンスターやアマゾネス同士で闘争を行なっており、ダンジョンが無い地でも高レベルの戦士が複数存在している。

仲間と殺し合いが日常だった事はティオナとティオネも例外では無い。今こうして笑えているのは奇跡と言っていいだろう。

 

「さぁ総司。あたしをお姉ちゃんと言ってごらん?」

 

「え・・・ティ、ティオナお姉ちゃん・・・?」

 

恥ずかしがりながらのお姉ちゃん呼びにティオナ、ティオネ、アイズは庇護欲を掻き立てられた。先頭で呆れた様子を見せていたリヴェリアもちょっと気になっていたのをフィンは見逃さなかった。

 

「総司ィィィ!!!絶対守ってあげるからね!!」

 

「ぐるじいです・・・」

 

「ティオナ、弟死ぬわよ」

 

興奮したティオナが我慢出来ず思い切り抱き着く。Lv.5の第一級冒険者に力一杯ハグされた総司はピクピクと痙攣し始めたところティオネに引き剥がされた。

 

「で、でもティオナさん。僕の警護なんて要りませんよ・・・」

 

「良く言った!それでこそあたしの弟だ!」

 

ヨロヨロと千鳥足になりながら受けたダメージが抜けるのを待つ。

 

「けっ、雑魚がヘラヘラと粋がってんじゃねぇよ」

 

これまで無関心だったベートが喋り出したと思ったらいきなり悪態をついてきた。その言い草に気に食わなかったティオナがベートを睨む。

 

「ベートって何でそんな言い方しか出来ないの?自分だって弱っちい時があったくせに!」

 

「オレは何も出来ねぇチビに身の程を知れって言ってんだよ。ったく弱ぇくせに・・・吐き気がするぜ」

 

「ホントに嫌なヤツ! 総司、あんなの気にしなくて良いからね!」

 

総司に対して悪びれもなく嘲笑うベートにティオナは益々苛つく。

 

「ティオナさん、大丈夫です。それにベートさんの言ってる事は正しい。皆さんに比べたら僕は弱い・・・」

 

もちろんベートの言っている事は総司自身も認めている。しかし黙って言われるがままにされる程総司は腑抜けていなかった。

 

「ーーーですがベートさん、そうやって上から見下していると直ぐに追い越しちゃいますよ」

 

「へっ、オレを越えなきゃジジイを越えるなんて無理な話しだ。せいぜい地べた這いずり回るんだな、チビが」

 

相変わらず弱者を見下す姿勢だが、その割にはまるで奮い立たせる様な言い草だ。遠回しの応援だと言うことはフィンとリヴェリアにだけ伝わっていた。

 

「・・・4人かな?」

 

「やけに慌ててるね」

 

アイズとティオナが呟くと前方から慌てて走って来る4人の冒険者が見えた。基本ダンジョン内では他所のパーティには不干渉と言うのが暗黙の了解。しかしこの慌てよう・・・只事ではないとフィンは判断する。

 

「君たち、何かあったのかい?」

 

勇者(ブレイバー)!?ていうかロキ・ファミリア!?」

 

「おい何かあったのかって聞いてんだぞ!」

 

痺れを切らしたベートが1人の胸ぐらを掴んで問いただす。

 

「ミ、ミノタウロスが、上層にいたんだ!!」

 

「・・・あぁ?」

 

有り得ないとベートは思う。それは総司以外の全員が同じ心境、ミノタウロスは中層で産まれるモンスターの筈だ。

以前、総司がオラリオに転生する前の出来事、中層にて突如出現した大量のミノタウロスをロキ・ファミリアが逃がしてしまい上層まで到達した。当時のミノタウロスは全て討伐したので今回のミノタウロスは無関係だとは思うが・・・

 

「”白髪のガキが襲われてるのを見て”、俺達はとにかく逃げるのに必死で・・・!!」

 

その言葉で総司とアイズは嫌な予感がした。

 

 

白髪の少年、まさか・・・

 

 

総司はミノタウロスと言うのがどのようなモンスターか分からなかったが、この冒険者の慌てようを見れば今がどれほど異常事態なのか想像し難くなかった。

 

「その冒険者が襲われてる階層は!?」

 

「9階層だ・・・!」

 

それを聞いた瞬間、アイズと総司は9階層に向かって走る。2人とも全速力だがやはりアイズの方が速く距離はどんどん離れて行く。

 

(ベルさん・・・!)

 

その冒険者がベルじゃない事を祈るが最悪の事態が頭から離れない。仲間が死ぬ、それは総司や新撰組にとってはよくある事だ。しかし何度経験しても、仲間が無惨な死を遂げる光景、生き残った仲間の涙、残された家族の慟哭、総司はこれらの全てを慣れる事は出来なかった。

 

(ベルさん・・・!!)

 

もう仲間が死ぬ姿は見たくない、守りたいとそう思いながら既に見えなくなったアイズの後を必死で追いかけ9階層へ向かう。

 




アンケートって便利ですね。以前ので味を占めました!
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