「治療は終わった。立てるか?」
「は、はい。ありがとうございます!」
回復したリリは90度の礼をする。
「そう畏まるな。冒険者とサポーター、立ち位置は違えど同じダンジョンで苦楽を共にする中だ」
冒険者とサポーターが”平等”など有り得ないと、そう思い続けて来たリリにとってリヴェリアの言葉には驚かされ耳を疑った。嘗て受けてきた待遇を考えれば当然だ。しかし目の前の冒険者は、それもオラリオ有数の第一級冒険者が我々は平等だと言ったのだ。
「本当にありがとうございました!
「だから畏まるなと・・・」
言ったそばから再び90度の礼をするリリを見て若干呆れ気味のリヴェリア。
「次は総司をーーーッ!!」
「リヴェリア」
総司の治療に行こうとしたリヴェリアにオッタルが静止を促す。オッタルの存在に完全に恐怖したリリは腰を抜かしてしまう。そんなリリを庇う様にリヴェリアは前に立つ。
「沖田総司を貸してはくれんか?」
「何ッ!?」
リヴェリアが驚いているとオッタルの背後からフィンがゆっくり歩いて来るのが見えた。
「オッタル、うちの団員に何か用なのかい?」
「少し話しがしたいだけだ」
フィンの剣圧も涼しい顔で受け流す。何度も言うが文字通りレベルが違う。
「・・・僕なら大丈夫です。だいぶ身体は楽になりましたし、戦うなんて真似もしません・・・それに、僕もその人に興味がある・・・」
「いや、しかし・・・「分かった」・・・フィン!」
簡単に了承したのには理由があった。先ずオッタルに敵意が無い事、そして彼は約束を守る男だと知っているからだ。
「リヴェリア、それとサポーターの君もアイズ達の下へ急ごう」
総司とオッタルを置いて3人は移動する。フィンは敵対しているとは言え人物としてオッタルの事を信じているのだが、一応念の為釘を刺す事にした。
「オッタル、もし総司に何か良からぬ事をしたら・・・分かっているな?」
とてつもない剣圧の嵐、まるでダンジョンが怯える様に震えている。約束・・・否、脅迫に背けば必殺の一撃がオッタルに向けて繰り出されるだろう。
「案ずるな。俺は・・・”俺達”は沖田総司に危害を加えるつもりは無い」
ロキ・ファミリアでは無く総司”個人”に対した言葉だったのが少し引っ掛かるが嘘を言っているようには見えなかった。
「・・・信じよう」
剣圧を収め警戒を解く。
「総司、先に行っている。後から追いついて来い」
そう言ってフィン達はアイズ達の下へ向かった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
壁を背に座り込む総司を見下ろすオッタル。互いに視線を交し、2人は何を見るだろう。山の如く立ち尽くす猪か将又緊張に冷や汗をかく小さな鬼か。
双方数秒の沈黙の後、先に口を開いたのはオッタルだった。
「ーーーお前は何故強さを求める?」
突然何を言い出すかと思えば・・・総司の答えは既に決まっている。
「己の信念を貫き通し、最期は笑って精一杯剣振り回して散る、そして仲間を絶対に守り通す。だから僕は強さを磨き剣を振るう・・・!」
そう語る総司の目は鋭くまるで抜き身の刃の様だった。生前助けられなかった仲間、戦場で華々しく散れなかった苦渋、それを思い出す度に病魔に屈した自分を呪った。しかし今度こそあんな思いはしない、そう胸に誓い総司は剣を振るう。
「信念か・・・だがーー「とまぁ、それっぽく言いましたが・・・」ーー?」
オッタルの言葉を遮って総司は薄く微笑みゆっくり立ち上がる。
「本当はもっと単純に強者との闘争、そして・・・天下一の剣客を目指す。僕が強さを求める理由なんてそんなもんですよ」
「・・・・・・」
先程の真面目な回答は何だったのかと言いたげに目を丸くして驚くオッタル。そんな彼を無視して更に総司は続ける。
「あ、さっき言ったのは嘘じゃないですよ? 寧ろ主軸としては前者の方が勝ってます」
思い出した様に弁明する姿を見て少しずつ正気を取り戻す。
「でも、男の子なら誰しも最強を目指すものでしょう?」
その笑顔はまるで試衛館時代、唯真っ直ぐ純粋に情熱を持って最強を目指していた漢、新撰組 鬼の副長 土方歳三にそっくりだった事は誰も知らない。
それを聞いた瞬間、【
「なるほど・・・何故あの御方がお前に興味を示すのか、多少理解した・・・」
「あの御方?」
疑問に思う総司を無視してオッタルは続ける。
「お前はあの御方の期待に応えなければならない」
「だからあの御方って・・・」
「忠告はした」
最後まで総司の疑問を無視して立ち去ろうとするオッタルを見詰める。
「・・・いずれお前とは立ち合う時が来るだろう。その抜き身の刃、折られんようにする事だ」
背を向けたまま言い放つ言葉には重みがあり、同時に自分が目指している山巓は途方もなく高く険しい断崖絶壁である事を確信した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ・・・はぁ・・・」
9階層、ベルのいる場所へ近づいた総司。しかしまだダメージが抜け切っていない為走るスピードは格段に落ちていた。幸運にも道中モンスターと遭遇しなかったから良かったものの出くわしていたら苦戦を強いられていただろう。
未だ鳴り止まぬ戦闘音を頼りに走っていると広間への入口を見つけた。そこで戦闘が行われていると確信する。
「ッーーー!!!」
広間に到着し真っ先に目に飛び込んできた光景は、
体格差を物ともせず正面からの立ち合い、勇ましくぶつかり合いそれでいて美しく奏でられる金属音。力、技、心、その全てを使い己の殻を破ろうと奮闘する姿。
ーーーまさに【
聞いたことも無いそんな言葉が何処からか聞こえて来る。英雄・・・剣客以外にも斯様な気高い存在がいたのかと世界の広さを知る。
英雄と魔物が向き合う。これで決着がつくと悟った瞬間、身体が燃える様な感覚に見舞われた。この時総司は無意識に【
雄叫びと共に両者は駆け出す。己を超え限界を超えて前に駆け出し英雄の聖火が猛牛を襲う。何度も、何度も放たれた
「勝ち、やがった・・・」
「・・・
「た、立ったまま気絶しゃってる・・・」
誰もが驚きを隠せずにいる中ベート、ティオネ、ティオナが口を開く。
「リヴェリア! あいつのステイタスを見ろ!!」
「私に盗み見ろと言うのか?」
ベートはベルの強さの秘訣はステイタスにあると考えリヴェリアに背中の
「あんな堂々と晒してんだ! 盗み見も何もねぇよ!!」
確かにベートの言う事も一理ある。
「ただ視界に入っただけだ! 違反なんかじゃねぇ!」
「まったく・・・・・・・・ッ! はっ、ははははっ!」
ベルのステイタスを見たリヴェリアは思わず笑ってしまう。そんな様子を見たベートは苛立ちを隠さない。
「お、おい! 何なんだ!!」
「全アビリティ、オールS。こうなるとスキルが見えないのが惜しいな」
全員が驚愕する。ステイタスについてはフィン達やエイナから習ったので俗世に疎い総司でも理解出来た。自分のステイタスと比べてもその数値は異常そのもの。
「ね、ねぇ・・・あの子何者なの?」
ティオナの問いにアイズと総司は同時に答える。
「「冒険者・・・ベル・クラネル」」
投票ありがとうございます。
僕の予想ではアイズ一強かなと思っていたのですが、アミッドも負けてませんね・・・
しかしヒロインを誰にするか迷う、早く決めないと今後に支障が・・・
引き続きアンケートを行うのでよろしくお願いします!