ダンジョンにて満身創痍の4人、サラマンダー・ウールのおかげで全滅は免れ運良く縦穴に吹き飛ばされて現在は14〜15階層。
持っていた装備は落としヴェルフは足に怪我をしてしまいまともに動けない。それをベルが支えて何とか移動している。その間戦闘は全て総司が請け負っている。リリはボウガンを落としてしまったので戦闘面では殆ど役に立てない。
「・・・まただ」
「行き止まり・・・」
数時間ダンジョンを彷徨い続け気力も体力も限界が近い。
「一度落ち着きましょう」
リリの提案で暫し休憩する。膝を崩した4人に凄まじい疲労感が襲う。そんな中改めて装備の確認が行われた。
「リリは回復ポーションが4つ、解毒薬が2つです」
「俺は大刀以外無くしちまった。サラマンダー・ウールが生きている事が何よりの救いだな」
「僕はまだ回復ポーションがいくつか残ってるけど、バックラーと短剣は落としちゃった。でもヘスティア・ナイフと牛若丸は持ってるよ」
「僕は回復ポーションが1つに打刀と脇差し・・・あ、
「総司様の
アミッドにおまけして貰った物だ。これで誰かが致命傷を負っても治す事が出来る。
「この
「確かに・・・ヴェルフ様の怪我が治ればベル様も参戦出来て総司様の負担も減らせます」
この装備で中層に長く滞在するのは危険だ。戦闘は総司が行っているが何せ戦闘中は即座に片付ける為に絶えず【鬼子・半】を発動させている。それは総司にとって負担が大き過ぎる。故に
「待ってくれ。そんな大事な物、俺に使って良いのか? 今の所足を怪我しただけで体はピンピンしてる。致命傷になる確率が高いのは前線で戦える総吉やベルだ。その時までとっておいた方が良いんじゃないか?」
「強がりを言っちゃダメですよ。体だってもうボロボロでしょう? それにヴェルフさんの足を治す事は”皆で生き残る”為に必要な事です。今ここで使いましょう」
「・・・すまねぇ」
何も言い返せなかったヴェルフは黙って治療を受ける事にした。
「総吉、さっきは怒鳴って悪かったな・・・お前の気持ち、よく分かった・・・不覚にも、俺は死んでも良いって思っちまった・・・」
足手まといになっている自分は死んでも良いと思ってしまった事に嫌悪する。先程言った言葉がそのまま自分に返って来た事で総司の気持ちを理解出来た。
「次そんなふざけた事言ったらぶっ飛ばしますからね?」
「や、やめろ。恥ずかしい!」
本当にそのまま返って来たので恥ずかしさでつい大声を出し、それを見たベルとリリは思わず笑ってしまう。
「・・・やっぱ、仲間ってのはいいな・・・」
ヴェルフは微笑みながら仲間の偉大さを噛み締める。ベルと出会う前はろくにパーティを組んだ事がなかった。
「談笑もその位にして、状況的には闇雲に動き回るのは危険です。そこで提案何ですがーーー」
いつモンスターが出現するのか分からないダンジョンにおいて闇雲に動き回る行為は愚かだ。通常なら未開の地はマッピングしながら進むものだがダンジョン故にそう上手くは行かない。
「結論から言うと、上に登るのではなく更に下の階層・・・”18階層”に避難する事を提案します」
「「「・・・!!」」」
総司は以前ティオナとティオネから聞いた事があった。18階層は別名《
「下層進出を目指す冒険者達が拠点にとして利用している筈なのでそこまで行けば安全は確保出来ます」
「待ってリリ! これ以上下に向かったら・・・」
ダンジョンは基本下に行けば行く程モンスターが強くなる仕様だ。今でもかなり厳しい戦いが続いていると言うのにこれ以上となると総司も【鬼子】フル発動せざるを得ない。
「縦穴を利用します」
中層に点在する落とし穴から飛び降りれば下の階層へ移動出来る。一つしかない上層への階段を闇雲に探すより彼方此方にある縦穴を探した方が遥かに現実的だ。
「”階層主”はどうする? 確か17階層だろ、例のデカブツ・・・《ゴライアス》だったか?」
階層主、正式名称は《
単独は勿論、少数のパーティならまず勝ち目はないと言われている。基本的に階層主はロキ・ファミリアの様な大規模なファミリアなら総出で、少数のファミリアなら他のファミリアと共闘して撃破するのが定番だ。一度撃破すれば
(そう言えば階層主には単独で挑むなってリヴェリアさんが言っていたな・・・)
第一級冒険者クラスの実力者ならば、同格か自身より推定レベルの低い階層主を単独で打ち破る事も可能だが、それほどの力を持つ人間は限られている上に危険な行為なのは変わりない、その為行おうとするものは少ない。
「・・・約二週間前、ロキ・ファミリアが遠征へ出発しています。一方ゴライアスは18階層の直前に陣取ると聞きます。ロキ・ファミリアほどの実力なら放置するより撃破した方が危険性は低い、確実に撃破している筈です・・・そして、ゴライアスの
「急いで行ってギリギリ間に合うか間に合わないか・・・賭けですね」
「リリスケ・・・正気か?」
「あくまで選択肢の一つです。このパーティのリーダーはベル様、判断はお任せします」
運良く上に繋がる階段を見つける、もしくは他のパーティと出会える事に賭けるか、比較的見つけやすい縦穴で18階層を目指すか、進むか戻るかの二択を迫られたベルは迷っていた。
当然だ、何せこの決断に3人の命が掛かっているのだから。リーダーの判断一つで生かす事も殺す事も出来る。
「そうだな。決めてくれ、どっち取ったって俺達はお前を恨みはしない」
「ベルさん、気楽に行きましょう。どんな敵だって僕が斬り殺してあげますから!」
「みんな・・・」
総司、ヴェルフ、リリの3人ともベルに信頼を寄せている。パーティの命運はベルが握っている。この自責から逃げ出す訳には行かない。
「ーーー進もう」
それを聞いた3人は静かに頷く。
ーーーーーーーーーーーーーーー
地上ではミアハと共にヘスティアが《青の薬舗》に到着するとそこにはナァーザやヘファイストス、そして申し訳なさそうにしているタケミカヅチとその眷族達がいた。
「すまん、ヘスティア、それにヘファイストスも・・・お前達の子が帰って来てないのは俺達に原因があるかもしれん」
「実は中層でクラネル殿とそのパーティに
「本当にごめんなさい・・・!」
「彼等には申し訳ない事をしました・・・」
命、千草、桜花が謝罪するのを見て残りの団員も頭を下げる。黙ってその様子を見ていたヘスティアが口を開く。
「もしベル君達が帰って来なかったら、君達の事を死ぬほど恨む」
至って冷静な目でタケミカヅチの眷族達を見渡す。その謝罪に嘘はない事はここに居る神々は分かっていた。
「けれど憎みはしない、約束しよう。今はどうかボクに力を貸してくれないかい?」
その言葉を聞いた桜花達は薄暗い店の中にもかかわらずヘスティアが輝いている様に錯覚した。これは神の力でも罪悪感から来る圧力でもない”言葉の力”、ヘスティアの神柄から来る慈愛の心。
その光に当てられた桜花達は跪く。
『ーーー仰せのままに』
謝罪と協力を得たヘスティアはそれ以上何も言わなかった。
「さて、では話しを進めよう。探索隊にヘファイストスの子は協力出来ないか?」
「ロキの所の遠征にめぼしい子は全員出していてね。今動かせる子じゃ中層へは行かせられない。それはロキも同じだろうけどね」
「やっぱりタケの所に頼っちゃう事になるな」
「それは勿論構わない。だが、中層のモンスターと渡り合えるのは命と桜花だけなんだ」
Lv.2の2人は捜索隊に決定としてもやはり人数が足りない。仮にタケミカヅチ・ファミリアで中層ヘ向かったとしても結果は前回と同じになるだろう。
「あの、私も行きます・・・!」
「千草殿!」
「クラネルさん達、そして桜花や命の手助けがしたいんです!」
怪我はおそらくポーションもしくは回復魔法で治したのだろうが病み上がりな事に変わりはない。しかし千草の覚悟は前髪で目が隠れていてもその場の全員に伝わった。
「よし千草、サポーターとして2人の手助けをしてくれ」
「はい!」
これで桜花、命そしてサポーターとして千草の3人が捜索隊に加わった。タケミカヅチが残りの眷族を厳選しようとしているとナァーザが初めて口を開く。
「捜索隊に必要なのはまず速さだと思います・・・」
「ナァーザの言う事ももっともだ。力が半端な者を増やしてもいざという時動きが鈍ってしまう」
「かと言ってこの子達だけに任せるのも・・・」
圧倒的に人数不足、こうなれば依頼を聞いてくれる冒険者を待つしかないが、いつになる事やら。事態は刻一刻と変化しているこうしている間にもベル達の命は危険に晒されている。
「一応ロキの所にも行って協力要請してみるけどーーー「それには及ばないよ!」ーー!?」
店の扉が勢い良く開くので何事かと全員が振り向く。
「オレも協力するよ、ヘスティア!」
爽やかな雰囲気を漂わせるこの男神はヘルメスだ。横にはヘルメス・ファミリアの団長アスフィ・アル・アンドロメダ、Lv.4の第二級冒険者だ。
「ヘルメス!? どうしてここに・・・?」
「困っているんだろう?
ロキとヘスティアの依頼書を見せてくる事からギルドの掲示板から受けてきてくれたのだろうが・・・
「貴方、下界に来てから殆どヘスティアと関わりないじゃない」
「随分いい加減な友ではあるな」
神々の中でもトップクラスにきな臭いヘルメスだ。ヘファイストスやミアハ、タケミカヅチだけでなくヘスティアすらも怪しいと言った感情を隠さない。
「ははっ! こいつは手厳しいな。でも、ヘスティアに協力したいというのは本当さ」
「・・・・」
「オレもベル君と総司君を助けたいんだよ。どうかな?」
正直ヘルメスは信用出来るか出来ないかで言ったら後者によるのだが、状況が状況なのでそうも言ってられない。
「・・・わかった。お願いするよヘルメス」
「あぁ、任されたよ!」
本当に大丈夫かと疑いたくなるが人手不足を解消出来るなら吝かではない。
「これでヘルメスの団員が加われば・・・行けるかしら?」
「確かヘルメス・ファミリアはLv.2の構成員が殆どだった筈・・・」
「あ〜それなんだけど、生憎団員は出払っているんだ。でも今回はこのアスフィを連れて行く。それに実はあと2人心辺りがあるんだ」
ヘルメス・ファミリアの団員は出せないと言った瞬間その場にいた神々は失望を露わにするが後のヘルメスの言葉に全員が注目する。
「入って来ていいよ」
ヘルメスの合図と共に店に入って来たのはディアンケヒト・ファミリアの団長、アミッド・テアサナーレだった。
「ッ!! 何でコイツが・・・!」
アミッドの姿を見た瞬間嫌悪感を隠そうともしないナァーザ。その表情から思っていたより溝は深そうだ。
「このアミッドちゃんが捜索隊に加わるよ。後もう一人はこれから交渉するんだけどね」
「また強引に・・・アミッド、店の方は大丈夫なのか?」
「はい、仕事も一段落しましたのでお休みを貰って来ました」
ヘルメスの用意周到ぶりに頭を抱えるミアハはアミッドを気遣うがそれがナァーザの反感を買う。
「コイツは戦闘に向かない。連れて行くだけ足手まといになるのがオチ」
「戦闘に向かないとはいえ自衛は心得ています。それに治癒師がパーティにいるメリットはあれどデメリットはありません」
単体の戦闘力はほぼないがLv.2である為中層でも最低限の自衛は出来る。
「回復ポーションがあれば治癒師なんて必要ない」
「回復ポーションがいつでも飲めると思ったら大間違いですよ」
「それを言うならいつでも詠唱出来るとも限らない」
2人の口論、いや口喧嘩がヒートアップして行く。これはどっちもどっちだ。仲間がカバーしてくれれば回復ポーションも飲めるし魔法の詠唱も出来る。ただ一つ言える事はアミッドが捜索隊に加わっても問題は無いという事だ。
「まぁまぁ落ち着いて2人とも。今は言い争っている場合じゃ・・・」
『ヘルメス様は引っ込んでて下さい』
「ひっ、すみません・・・」
仲裁しようとしたヘルメスは2人に睨まれ意気消沈し縮こまってしまった。それを見かねたミアハは溜め息をつく。
「2人ともそこまでにして、今はヘスティアを助ける事に集中しないか」
「くっ・・・はい・・・」
「お見苦しいところをお見せしました・・・」
ミアハの一言で2人は頭を下げると作戦会議が再開された。
「なぁタケミカヅチ、オレって嫌われているのかな?」
「・・・」
「答えて?」