オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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迷宮の楽園(アンダーリゾート)

18階層《迷宮の楽園(アンダーリゾート)

ここはダンジョンでモンスターが産まれない、いわば冒険者の休息ポイントだ。『リヴィラの街』から少し離れた平原にロキ・ファミリアが野宿しているテントが複数建設してあった。

 

「こっ、この度は助けて頂いてっ、ほ、本当にありがとうございましたっ!」

 

嘆きの大壁から逃れた後、偶然その場にいたアイズに事情を説明して助けて貰ったのだ。現在ベルはロキ・ファミリアの治療を受けアイズと共にフィンやガレス、リヴェリアのテントにて挨拶をしている。

オラリオ最強派閥の一角であるロキ・ファミリアの団長、幹部を目の前にしてカチコチに緊張している。

 

「はははっ、そう畏まらないでどうか楽にしてくれ。冒険者とはいえ、こんな時くらいは助け合おうじゃないか」

 

気さくな雰囲気でベルに語りかけるフィン、流石は年長者だけあって気配りが出来ている。とはいえそれで緊張が解けるほどベルは単純ではない。ちょろくはあるが。

 

「それにいつも総司が世話になっているからね。いつかお礼をしたいと思っていたんだ・・・彼は、君達の助けになっているかい?」

 

「はい、とても! 情けない話し総司には助けられてばかりです・・・」

 

「ふふっ、総司も君達には助けられてばかりだといつも言っているよ。良ければ総司の話しをもう少し聞かせてくれないかい?」

 

「はい! じゃあ、最初の出会いからーーー」

 

ベルの口から語られる言葉一つ一つがフィンの知らない総司だ。大凡予想通りのではあるが改めて聞くと本当に裏表の無い人物なのだと確信する。

 

「あの時なんて総司がーーー皆さん?」

 

話し始めて数十分が経過した頃、この場にいる全員が微笑を浮かべている事に気がつく。不思議そうな顔をしているベルに対してリヴェリアが答える。

 

「すまないな、総司がお前達の話しをする時とあまりにも酷似していたもので・・・くくっ、笑ってしまった」

 

「えぇ!? そ、そうなんですか!?」

 

普段から総司の活動報告を食事中に聞いている団員なら誰もが吹き出してしまうだろう。それ程までに仲間の事を語る2人の姿が似ていたのだ。

それを知ったベルは気恥しさから頬を染め俯く。

そんな様子を見ていたアイズは微笑みながらベルの顔を覗き込み目を合わせる。

 

「2人はよく似ているね」

 

「ーーーー!!!」

 

羞恥心の限界を超えたベルは出口に向かって全力疾走するがアイズに腕を掴まれ逃走は失敗に終わった。

 

「今度は逃がさないよ」

 

「あ・・・あ・・・!」

 

「あー! アルゴノゥト君だぁ!」

 

アイズに捕まり逃げられなくなって困っていた時、ティオナとティオネが入室して来た。

 

「ここにいるって事はLv.2になったの? やるじゃない」

 

「担ぎ込まれたって聞いたからびっくりしたよ!」

 

「え、えっと・・・!」

 

小麦色の素肌に露出度の高い衣服を身に纏うアマゾネスはベルにとっては刺激が強すぎる為急いで目を背ける。

 

「あ、赤くなってるー。可愛いー!」

 

「こらこら、2人とも彼は病み上がりなんだ、からかってやるな」

 

「はーい。あ、そうだ! アルゴノゥト君達のテントって何処? 総司のお見舞いに行きたいんだ!」

 

「それなら一緒に行きますか? 他の仲間も気になりますし挨拶が済んだら戻ろうと思っていたので」

 

「うん!行く行く! じゃあ今すぐ行こうー!」

 

「え、ちょっと・・・自分で歩きますから引っ張らないで下さいよぉー!」

 

フィン達の了承を聞かずにベルを引きずって強制退出させられたがティオナは大抵いつもこんな感じなので団員はもう慣れっこだ。フィンはもう少しベルと話したかったようだがまたの機会にする事にした。

 

「はぁ・・・全くバカティオナは・・・」

 

「ティオネ、私達も行こう」

 

溜め息をつくティオネを連れてアイズはベル達を追う。ティオネは呆れているようだかアイズは「賑やかで良いね」程度の認識だ。

 

「今後とも総司の事をよろしく頼むよ、ベル・クラネル」

 

ベルがフィン達を尊敬するようにフィンもベルを尊敬している。それほどミノタウロスとの戦いは冒険者として胸を熱くさせられた。そんな思いを胸に引き擦られる少年を見送る。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

一方その頃総司達の待つテントでは未だ目覚めない総司とそれを見守るヴェルフとリリがいた。

 

「総司様、目覚めませんね・・・」

 

「あぁ、九魔姫(ナイン・ヘル)が治療したとは言え疲労は残るだろうからな。俺達もしばらく安静にしといた方が良いな」

 

3人はリヴェリアの治療で殆ど傷は癒えた。少々体に包帯を巻いてはいるが命に別状はない。ダンジョンによる様々な事故や危機を掻い潜って全員が五体満足だったのは奇跡に等しい。

 

「お邪魔するっす」

 

「あ、あんたは・・・超凡夫(ハイ・ノービス)!」

 

彼はロキ・ファミリアの二軍メンバー、ラウル・ノールドだ。Lv.4の第二級冒険者、団員からは『器用貧乏』や『器用有能』などと呼ばれており一目を置かれている。

 

「どうもっす。水を持って来たっす」

 

「わざわざありがとうございます。超凡夫(ハイ・ノービス)様」

 

「いえいえ、総司の仲間を見捨てる訳には行かないっすから!」

 

第二級冒険者の実力者でありながら誰に対しても腰が低い。

ファミリア内では主力メンバーだけでなく下位団員達の指示や意見などを聞き入れるなど苦労の絶えない苦労人だ。

 

「それにしてもレベルアップして間もないのに18階層まで来るなんて凄いっすね」

 

「いえ、本当はここまで来るつもりはありませんでした。予想外の災難に見舞われて仕方なくです」

 

「ダンジョンじゃ良くある出来事なんだろうが、これは・・・」

 

ヴェルフの言う通り怪物進呈(パス・パレード)怪物の宴(モンスター・パーティ)もダンジョンでは日常茶飯事だ。

 

「今日生き残った、それだけでも大したものっすよ」

 

所持していた装備、パーティも見合っていない、これを見ればある程度経験した上級冒険者ならば総司達がダンジョンで道に迷い一つの上り階段を探すより所々にある縦穴を利用して18階層まで来たと推理出来る。ラウルももちろん分かっていた。

 

「Lv.2が1人、Lv.1が2人とサポーターで18階層まで来るって、今考えたら恐ろしくて震えるっすね・・・」

 

「そんなに褒めないで下さいよぉ。ラウルさん」

 

「そ、総司!? 目が覚めたんすか!」

 

「総吉、心配したぞお前!」

 

「わわ! ヴェルフさん、落ち着いて下さい!」

 

「全く、起きて早々騒がしいですね」

 

嬉しさのあまり総司の頭をわしゃわしゃと撫でる。それを見たリリは呆れながらも口元が緩んでいた。思いのほか元気そうな総司を見て安心したようだ。

 

「心配かけたようで、すみません。何故ここにラウルさんがいるのは知りませんが、無事に18階層に辿り着いた見たいですね。ところでベルさんは?」

 

ラウルやヴェルフ、リリの存在、怪我の治療を施されている事、自分が布団で寝ていた事を考慮すると自分達は助かったのだと推測した。

 

「ベルはロキ・ファミリアの団長に挨拶しに行ったきりだな。もうすぐ帰って来るとは思うが」

 

「って事はここにフィンさんがいるんですね。顔見せに行かなくちゃ!」

 

「あ、おい!」

 

ヴェルフの制止も聞かずにテントを飛び出すがすぐに総司が戻って来た。いや戻されたと言った方が正確か、何者かに首根っこを掴まれている。

 

「こーら、あんたはまだ休んでなきゃ駄目でしょ」

 

「ア、アキ姉!」

 

「アキ、どうしてここに!?」

 

総司を輸送して来たのはラウルと同じくロキ・ファミリアの二軍メンバー、アナキティ・オータムでLv.4の第二級冒険者だ。

 

「総司が担ぎ込まれたって聞いたから看病してあげようと思ってね。どうせ仕事終わって暇だったし」

 

「でも僕はもう元気ですよ!」

 

「ふ〜ん・・・」

 

笑顔でそう答える総司に対してアキはしばらくの沈黙の後、総司を床に立たせて少し強めに身体を押す。

 

「ッッ!」

 

ガクンと尻もちをつく総司にヴェルフとリリは慌てて駆け寄る。

 

「ほら、やっぱり回復してない。巧妙に隠してはいるけど私の目は誤魔化されない」

 

「そうなのか、総吉!」

 

「総司様!」

 

「そうだったんすか!?」

 

「何であんた(ラウル)まで騙されてるのよ・・・」

 

アキの発言で驚く3人は一斉に総司を見ると冷や汗をかきながら「えへへ」と笑う。しかし笑って誤魔化されるわけもなく速攻で布団で寝かされた。

 

「夜ご飯まで時間があるからそれまで寝てなさい」

 

「は〜い」

 

若干いじけ気味に返事をする総司は黙って布団を被る。まるで姉弟のようなやりとりを見た3人は苦笑いだ。

 

「総吉ってファミリアではこんな感じなのか?」

 

「えぇ、あの見た目であの性格っすからね。女性からの人気は高いっす、男性からは・・・まぁ、ハイ・・・」

 

「あー、何となく察せる自分(リリ)が嫌です」

 

愛され弟属性の総司は女性からの人気は高い、その上一部の女性団員とは何度か一緒に風呂に入っている。

総司があんな感じなのでロキ・ファミリア内(フィン、リヴェリア、ガレスには内緒)では総司は合法的(?)に女湯に入れる事に男性団員から羨望の眼差しを受けている。

 

ヴェルフは意味が分からないと言った顔をしているがリリは大凡察してしまった事で頭痛が走る。

 

「総司ー! お見舞いにきたよー! あ、アキとラウルだ。2人もお見舞い?」

 

「怪我人がいるんだから静かにしなさい、バカティオナ!」

 

突如現れたティオナの後頭部をしばくティオネ。そしてその後にテントに入って来るベルとアイズは総司が目を覚ました事に気づく。

 

「あ、総司! 目を覚ましたんだね! 良かった・・・」

 

「お陰様で無事ですよ。ベルさんが”アイズ”さんを呼んでなかったら今度こそあの世行きでした!」

 

ゴライアスと戦っている時に助けてくれたのがアイズだと総司は分かっていた。意識が途切れる刹那に感じた”風”は身に覚えがあったのだ。

 

「よ〜し! 総司、看病してあげるね!」

 

「冷たっ!」

 

タオルを水に濡らしそのまま総司の顔にぶっかける。当然の如く総司は水浸しになった。

 

「バカティオナ、タオルはちゃんと絞らないとダメでしょ!」

 

水浸しになり今にも凍えそうな総司を見たアイズが閃く。

 

「温めるには先ず体を乾かさないと・・・乾かす・・・風・・・ならエアリエルで・・・!」

 

「アイズさん看病って意味知ってます!?」

 

ティオナの大雑把過ぎる看病とアイズの天然凶器による看病で逝きかけた総司、こんな調子で看病は苦戦し結局アキとラウルで看病した事で収集がついた。

 

「け、怪我人に鞭打つなんて・・・」

 

「流石オラリオ最強派閥《ロキ・ファミリア》・・・看病一つでもやり方が違うんですね・・・!」

 

ティオナとアイズの看病(拷問)を離れて見ていたヴェルフとリリはドン引きし、別の意味でロキ・ファミリアを畏怖する事になった。

 

(まさか安全地帯で死にかけるとは・・・)

 

迷宮の楽園(アンダーリゾート)で死の恐怖を味わう事になるとは思わなかった総司だか、これはこれで賑やかなので悪い気分にはならなかった。

 

 

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