「皆聞いてくれ。今夜は客人を迎えている。彼らは仲間の為に身命を投げうち、この18階層まで辿り着いた勇気ある冒険者達だ。仲良くしろとまでは言わない、けれど同じ冒険者として敬意を持って接してくれーーーそれじゃあ、仕切り直しだ!」
フィンの演説を聞いたロキ・ファミリアの団員達は雄叫びを上げジョッキを持ち上げる。
「料理は沢山あるのでいっぱい食べて下さいね」
ロキ・ファミリアの団員がベル達の前に夕食を運んで来てくれた。パンやスープに肉と言った料理、そして焚き火の上の鍋がグツグツと煮立っていた。まるでキャンプの様な非日常的な雰囲気にわくわくしている。
そんなベル達を余所に総司はフィン達が集まる席に来ていた。
「挨拶が遅くなってすみません。後僕の仲間を助けてくれてありがとうございます!」
「気にする必要は無い。総司の仲間なら助けて当然だ」
「万が一見捨てたら、総司だけでなくアイズにも恨まれるからのう!」
高笑いするガレスに総司は違和感を覚えた。手に持っているジョッキ、あの中身は何故か水である。
「あれガレスさん、お酒飲まないんですか?」
他の団員は飲んでいる者もいる中、ロキ・ファミリアの中でも酒豪のガレスが今日は酒を飲んでいない事への違和感を感じていた。
「あ、あぁ・・・まぁ、ワシにも立場というものが・・・リ、リヴェリア、分かっておる! 酒は一滴も飲まん!」
リヴェリアの無言の圧力で酒を抑制させられていたようだ。
「おう、お主が沖田総司か! 噂通りのちんちくりんだな!」
黒髪と褐色の肌、左目の眼帯が特徴的な女性が総司にじゃれつく。かなり酔っているようでテンションが異常に高い。足下に転がっているラウルは酔い潰れているのか、顔を真っ赤にして唸っている。明日は二日酔い確定だろう。
「え、えぇと・・・」
「あぁ、彼女はヘファイストス・ファミリアの団長 椿・コルブランドだ。これでもオラリオ最高の鍛冶師だよ」
しかもLv.5の第一級冒険者だ。本人曰く「作品の試し斬りでダンジョンに潜っていたら、いつの間にかこうなっていた」らしい。
「これでもとは何だ! これでもとは! ほれ総司、お前も飲め飲めー!」
「もがががが!」
「椿、病み上がりにあまり無茶をさせないでくれ」
酔った椿が大笑いで総司の口に酒瓶を突っ込む。それを羨ましそうに見るガレスだかチラッとリヴェリア見ると目が据わっていた。どうやら今夜は一滴も飲めないだろうと察するガレスであった。
「椿、あそこにいるのはヘファイストス・ファミリアの団員じゃないか?」
「おおー、ヴェル吉だ。そろそろからかいに行ってやるか!」
フラっとヴェルフの所に行ったがヴェルフからは慕われるどころか煙たがられているようだ。そして隣にいるベルはアイズ、リリ、ティオナ、ティオネに囲まれて困っていた。
「ぐぬぬぬ〜! ベル・クラネルめぇ〜!」
少し離れた所でレフィーヤが恨めしそうに睨み、今にでも魔法を放つのではないかと思わせる雰囲気に周りにいた団員はビビっている。しかし男性団員は美少女達に囲まれるベルに殺気を向けるのでレフィーヤと似通った心情だ。
「おい総司、何なんだアイツは!? あのアイズさんとあんなに親しく・・・!」
「落ち着いて下さいロイドさん。以前から顔見知りのようですね。あ、この前2人で街を歩いているの見ましたよ」
「な、なんだって!?」
ベルに嫉妬の目を向ける男性団員の一人Lv.3のロイドが総司に二人の関係を問いただすが、総司も詳しくは知らないので以前レフィーヤと見た光景を適当に言った。
「俺達でも話しかける事すら殆ど出来ないのに・・・総司、どうやったらあんなに仲良くなれるんだ!?」
「落ち着いて下さいロイドさん。ジャガ丸くん美味しいですよ、食べます?」
「ちくしょう、話し聞いてくれねぇ!」
その手の愚痴はレフィーヤから週4のペース聞かされまくっているので最早聞く耳を持っていなかった。何処吹く風でジュースを飲む総司の肩をガクガクと揺さぶるロイドだった。
「総司、こちらへいらっしゃい」
アリシアに手招きされて来てみるとレフィーヤのルームメイトであるエルフィ・コレット、その他の女性団員がデザートの様な食べ物を頬張っていた。
「わぁ、美味しそうなお菓子ですね!」
「ふふふっ、そうでしょう? 総司もお食べなさい」
差し出された綿菓子の様に甘い菓子を食べて総司は満足そうに微笑む。
「ねぇねぇ、総司これレフィーヤの分なんで持って行って欲しいんだけど」
ハムスターの様にデザートを頬張るエルフィが尋ねると総司は口の中の食べ物を飲み込み答える。
「今レフィーヤさんに近づくのは怖いので遠慮します」
「そう言わずに頼むよ! 私も怖いんだよー!」
「貴方達、レフィーヤをなんだと思ってるんですか・・・ほら私もついて行ってあげますから行きましょう」
アリシアの説得で総司が綿菓子を渡しに行くとレフィーヤはまだベルを恨めしそうに睨んでいる。歯ぎしりでどれだけ憤りを感じているか伝わってくる。
「アイズさんだけでなくティオネさん達とまであんなに親しく・・・許せない・・・許せない・・・!」
ブツブツと呪詛の様に呟き黒いオーラを撒き散らしている。
「レ、レフィーヤさ〜ん。綿菓子ですよ〜」
「あ゙ァ?」
「ヒッ!」
「そ、総司君!?」
ベルへの黒い気持ちが溢れ出てブレーキが効かず突然話しかけてきた総司にその感情を放ってしまった。
「レフィーヤ、何やっているのですか! 総司が怖がっているでしょう!」
「ご、ごめんなさい! ちょっと考え事をしていたもので!」
迫害された動物の様に怯える総司をエルフィが抱きしめている。
「レフィーヤサンコワイ」
「すっかり震えちゃって・・・可哀想な総司・・・」
「ち、違うんですってばぁぁぁ!!!(おのれベル・クラネル・・・!)」
内心でベルに逆恨みしつつ否定していると・・・
「ぐぬあぁっーーー!!!」
遠くの方で叫び声が聞こえた。ロキ・ファミリアやヘファイストス・ファミリアの団員達がざわつく。声質からして女の子だろうが、ベルが必要以上に反応し直ぐに走り出す。
「ちょっと僕も行ってきます」
「復活早っ!」
「さてはそこまで怯えていませんでしたね?」
「えぇ!? そうなんですか!?」
エルフィの腕を解きベルを追い掛ける。割と平気そうだった様子を見て騙されたと感じたレフィーヤは義憤に駆られていた。
「もぉ〜! 総司君ったらぁ〜!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「な、ななな何なんだいあのデカブツわ!! あんなのがいる何て聞いてないぞ!?」
「あはは・・・し、死ぬかと思ったよ」
ここに来て漸く救出隊のヘスティア達が18階層に到着した。17階層のゴライアスに襲われヘスティアとヘルメスは全力で逃げて来たようだ。
「やっぱり、神様なんでこんなところに!?」
「べ、べ・・・ベル君ーーーっ!!!」
「か、神様!? ぐはぁ!」
「・・・良かった。本当に良かった・・・!」
物凄い勢いでベルに抱きつくとベルは恥ずかしさから顔を赤く染める。騒ぎを聞きつけたリリや急いでヘスティアを引き剥がす。
「いい加減にして下さいヘスティア様!」
「コ、コラ! 感動の再会に水を差すんじゃない!」
リリとヘスティアが言い争いをしていると総司も現場に到着した。ヘスティアとヘルメスの後ろの入口からリューとアスフィ、アミッド、更に遅れて命、千草、桜花の3人が入って来たのが見えた。
「あ、アミッドさんも此処に来たんですか?」
「私達は総司さん達を助けに来たんですよ。それにしても思ったより元気そうで何よりです」
「そうだったんですね。アミッドさん達に借りが出来ちゃいましたね」
「ふふっ、出来てしまいましたね」
微笑み合う2人の周りにふわふわとしたムードが流れ始めそれを見ていたロキ・ファミリアの男性団員達は羨ましそうに眺めていた。流石にあの中に割って入るのは躊躇ったようだ。
((((総司の野郎・・・後でボコす!!!))))
そんな男達の嫉妬を他所にヴェルフとリリが桜花達の存在に気づいて険悪な雰囲気を漂わせていた。
「・・・お前らは、あの時のッ!」
「・・・・・・ベル様」
「う、うん・・・」
ヴェルフとリリの声に怒りの感情が出ているのは言うまでもない。何故なら彼らがベル達に《