オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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リヴィラの街

「総司さん、ここがリヴィラの街です」

 

「へぇ〜、地上と違って歪な造りの店が多いですね」

 

水晶と岩に囲まれた宿場街『リヴィラ』は冒険者の手で独自に造られた建造物が多い。理由は簡単でこの街を経営しているのは冒険者だからだ。

領主や規制など存在しないので自分の定めたルールで商売をしている。売っている物はアイテムや武器、宿などもあり“物“に関しては地上とあまり変わらない。

 

「注意してください。ここの商品はーーー」

 

「え!? ポーション一つでこの値段・・・!?」

 

総司が目にしたポーションの価格は地上の約5倍もするものだった。もちろん効果は地上で購入できるものと変わらない。

 

「ここはダンジョンですから物資の確保が難しい。なのでこんなぼったくり商品でも結構売れてしまうのです」

 

「そう言うこった、気に入らなきゃ買う必要はねぇ。買い手は幾らでも湧いて出てくるからな」

 

ポーション一つでこの値段なら武器はもっと高い値打ちを付けられているだろう。昨日脇差しを貫いたので新しい物を買おうとしたのだが、今の所持金ではおそらく買えない。

 

「かっこつけ過ぎたぁ! 止める方法なんて幾らでもあるのにかっこつけ過ぎたぁ!」

 

「綺麗に貫いていましたよね。大丈夫なのかと心配していましたが案の定ダメでしたね」

 

「あの店先で騒がないでもらっていい?」

 

落ち込む総司をなんとか慰めたアミッドは気を取り直して街を散策する。売っている物は地上と変わらないが街の風景は珍しいので見ていて飽きない。

 

因みに今ロキ・ファミリアでは複数の第二級冒険者が下層のとあるモンスターに厄介な毒を貰ってしまう。解毒方法は2つあり、1つ目が専用の特効薬を投与する事、2つ目はアミッドの高位治療魔法だ。

アミッドならその毒を治療できるのだがフィンはその件をアミッドに伝えなかった。今回の遠征で出費が激しい上にベートが地上で薬を買い占めに行っているしアミッドの治療費も掛かるだろうからこれ以上散財はできない。幸いな事にここは安全地帯なので団員達には申し訳ないと思いつつも我慢してもらう事を選んだようだ。

尤もアミッドなら無料でも引き受けるかもしれないが流石に気が引けると考えたらしい。

 

「売ってる物は高いけど中々面白い街ですね! 次は何処に連れてってくれるんですか?」

 

「すみません総司さん、私はこの後予定があるので失礼しますね」

 

昼過ぎまで散策していた2人は別れる。暇になった総司は街を出て徐ろに森の方へ足を運んだ。自然豊かな木々から光が差し込みダンジョン内とは思えないほど神秘的な場所で妖精との相性は抜群である。

 

「おや、リューさんじゃないですか。リューさんもお散歩ですか?」

 

「いえ、私は少々野暮用がありまして」

 

緑色のマントを被り木刀の様な武器を身につけたリューと遭遇した。

 

「あ、改めて助けに来てくれた事を感謝します!」

 

「気にしないで下さい。遠からずここに足を運ぶつもりでしたから」

 

救出以外の目的があったようだ。そして総司はその目的に何となく気がついてしまった。

 

「その手に持っている花・・・もしかしてお墓参りですか?」

 

「!・・・何故わかったのですか?」

 

あくまで直感的な予想だったが的中したようだ。手に持っている花や雰囲気、何よりリューの姿が生前死んだ同志の墓の前に立っている仲間の姿と重なったからだ。

 

「僕もよく仲間のお墓参りはしましたからね・・・戦友ですか?」

 

「はい、同じファミリアの仲間です。私が所属していたファミリアは迷宮探索以外にも都市の平和を乱す者を取り締まっていたんです・・・あ、すみません。急にこんな話しされても困りますよね」

 

「構いませんよ。立派な仕事じゃないですか。それによって守られた人は沢山いる筈です。実は僕も以前いた所では街の治安維持のお仕事をしていましてね」

 

同じ“正義“の名のもとに街の平和を守る組織。『新撰組』と『アストレア・ファミリア』世界は違えど通じる物が総司とリューにはあった。

仲間達は死んでしまったがそれ以上に楽しい時を過ごした事は変わらない。

 

「そうだったのですか。そんな小さな体で街や民を守り、悪を滅するために尽力していたのですね・・・敬服致します」

 

「とはいえ街の人達からはかなり嫌われていましたけどね。人斬り集団とか政府の狗だとか」

 

「酷い言われようですね」

 

『新撰組』の嫌われように同情しているようだ。『アストレア・ファミリア』はオラリオに住む市民からは慕われていたので『新撰組』とは対象的だ。

 

「でも尊敬に値するって話しならリューさんだって負けてませんよ。リューさんが街の悪者を情け容赦なく薙ぎ倒す姿、想像しただけで武者震いが止まりませんよ!」

 

「正義でも悪でも沖田さんの戦闘狂は変わらなさそうですね。それに私は沖田さんが思う様な立派なエルフでもなければ正義の味方でもない・・・」

 

「と言うと?」

 

「ある日対立していたファミリアに罠に嵌められ私以外の団員は命を落としました。そこからは早かった。激情のままに闇討ち、奇襲、罠と手段を選ばず襲撃を繰り返した」

 

つまりリューが行っていたのは復讐だ。

仲間を殺された怒りや憎しみの感情で対立していたファミリアやそれに与する者、関係を持った者を殺して殺して殺しまくった。

 

「あれはもう・・・正義ですらなかった。だから私は穢れているのです」

 

「・・・・・」

 

以前リューが穢れていると言ったのはこれが原因だ。リューの行った殺しは誰の為でもない唯の私怨だ。

それを知った総司は少し考え込む。

 

「では、私は先を急ぎますので失礼します」

 

心情を察したのか沈黙に耐えられなかったのか、リューは無理矢理会話を切り上げて立ち去ろうとする。

 

「リューさん!」

 

「!」

 

離れる背中に思わず総司は叫ぶ。リューの行いが正義か悪かなんて分かりはしない。仲間の仇を目の前にしたら自分も迷わず斬り殺すだろう。だから彼女を咎める事も諭す様な事も出来ないしするつもりもない。

 

「またお店に行きます。その時は是非『アストレア・ファミリア』の事を教えてくださいよ」

 

「ーーーえぇ、必ず」

 

微笑みを浮かべ再びリューは歩き出す。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あれ、もしかして・・・」

 

リューと別れた後、街に戻ろうと小一時間ほど森を彷徨っている。辺りは木や草しか無いので流石に飽きた。

 

 

「ーーー僕、迷子になってる?」

 

 

今更気づいたようだがリューと遭遇した時から総司は既に迷子になっていた。適当に歩き過ぎたと反省しているが時すでに遅し。

耳を澄まして辺りの音を聴いても風で葉が揺れる音ぐらいしか聞こえなかった。

 

「こうなったら出すしかないですね・・・・」

 

徐ろに打刀を取り出し地面にそっと突き立てる。

そこから手を離すと当然打刀は倒れる。

 

「よし、あっちだぁ!」

 

倒れた方向を指差し勢い良く駆け出す。その際もちろん打刀を回収する事は忘れていない。一見この何も考えていない様に見えるが実際何も考えていない。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

リヴィラの街からかなり離れた森の奥、岩肌に囲まれた湖に美少女達が一糸纏わぬ姿で水遊びをしている。

まるで妖精の国、いやここは天国だ。断言しよう天国だ。

 

「ヘルメス様、やめましょうよ覗きなんて!」

 

湖の周辺には岩肌だけでなく木も生えている。その木の上にヘルメスに連れられたベルが抗議している姿があった。

 

「ここまで来て何を言ってるんだ。見たまえ下にある楽園を!」

 

「ーー!? いやいやいや、バレたら殺されますって!」

 

ヘルメスに言われるがまま下を見たベルは直ぐに顔を逸らす。女性に耐性が無いベルにとっては刺激が強過ぎるようだ。

因みに下にいる少女達とはロキ・ファミリアの女性陣の他にもヘスティア達がいた。

 

「いいかいベル君。“覗きは男浪漫“だぜ?」

 

「男の・・・浪漫? って騙されませんよ!」

 

「まぁまぁ、そう言わずに。こんな絵は中々拝めるもんじゃないぜ?」

 

まるで美術館にでも来たような立ち振る舞いのヘルメスに対してベルは興味と罪悪感でいっぱいだった。

そんな2人を見上げる者が1人いた。

 

「ベルさんとヘルメス様、何してるんだろう?」

 

迷子だった総司が偶然ここに辿り着いた。打刀が導くままに進んだ結果知り合いに出会えた。これで無事に帰れると安心して木々の奥を見てみると湖で遊んでいる女性陣が見えた。

 

「あ、そうか! ベルさん達も遊びたいのか! そうと決まればーーー」

 

総司の悪意の無い思考が的外れの真実に至った。

装備や着物を全て脱ぎ捨てすっぽんぽんの姿で猿のように素早く木を登りベルとヘルメスの間に割って入る。

 

「2人も皆と遊びましょうよ!」

 

「へ?」

 

「総司!?」

 

総司は満面の笑みで2人の襟を掴み湖へ飛び込もうとジャンプする。

 

「僕らも混ぜて下さいよぉーーー!!!」

 

その声に反応する間もなく3つの影が水面に激突し視界を覆う程の水しぶきが上がる。

 

「あ、総司だ! あれアルゴノゥト君も! なになに2人も水浴びに来たの?」

 

「総司は兎も角、あんた大人しそうな顔してやるわねぇ」

 

「ーーーーっ!!!???」

 

恥じらいもなく体を隠そうともしないアマゾネス姉妹にベルは戸惑う。

 

「べ、ベル君!? 君ってやつは!」

 

「ベル様!? 総司様まで何をなさっているんですかぁ!?」

 

「千草殿の裸体は自分が!」

 

「み、命も隠さないと・・・!」

 

恥じらいがある少女達は頭の中がぐちゃぐちゃで混乱していた。

 

「そ、そそ総司さん!?」

 

「あ、アミッドさん。用事って水遊びだったんですね! 僕も誘ってくれたら良かったのに」

 

突然の乱入にいつもの冷静な態度が崩れてしまった。咄嗟に両腕で体を隠し更に水面に身を潜めた。

 

「何故ここにいるのですか!?」

 

「道に迷ってたら偶然ーーー」

 

「そ、総司さん“下“を隠してください!!」

 

先程服を脱いでいたので男衆の中で唯一全裸だ。そんなもろだし総司を見たアミッドはつい両手で顔を覆い隠す。

隠せと言うがアミッド達も全裸なので隠させる理由がわかっていない総司には何故みんなが恥ずかしがっているのか理解出来ていなかった。

 

「アミッドさんといいアリシアさんといい、何で裸を隠す必要があるんだろう。不思議ですねぇ」

 

「総司さん以上に不思議な人はいませんよ!!」

 

そんな中ベルはと言うとまだ腰を抜かしていた。そして錆びた扉の様な音を出しながら真横を見ると、両腕で体を隠したアイズが此方を見ていた。

 

「あーーーーー!!!!!」

 

羞恥心が臨界点を突破したベルは奇声を上げて全速力でその場から離脱した。

岸では護衛していたレフィーヤ達が異常に気づいて駆けつけてみればご覧の有り様だ。誰もが目を背けたくなるような面倒ごとのオンパレードだった。

 

「あ、あ・・・あなたと言う人はーーーーー!!!!!」

 

アイズの裸体を見たベルに対して殺意丸出しの絶叫と共に高速で魔法の詠唱を始める。この時のレフィーヤの平行詠唱がかつてない程の速度を発揮しその魔力はLv.5以上にまで達していたと最も近くで見ていたエルフィは語った。

 

「ダメッ! レフィーヤ!!」

 

「流石にそれは死んじゃう!!」

 

「ベル・ クラネルぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

レフィーヤの怒声とベルの絶叫が森の奥深くまで木霊したのは言うまでもない。

 

視点は総司に戻りベルが逃げ出す数秒前の頃、どさくさに紛れて水中ではヘルメスが息を潜めていた。アスフィにバレたら殺さるので現在必死に潜水中だ。

 

(やれやれ、覗きは見つからないから覗きなんだよ、まだまだだね総司君。それにしてもまさか総司君があれほど純粋だったとは・・・)

 

この騒ぎのおかげで何とかバレずに済んだがあまり長く潜ってはいられない。一刻も早く岸に上がりたいのだがチャンスが無い。

 

溺死か撲殺か二択の死因が迫って来る中チャンスは訪れた。ベルが奇声を上げて逃げ出した。

 

(チャンス! ありがとうベル君、君のおかけで助かっーーー)

 

「あ、ヘルメス様そんな所にいたんですね!」

 

(総司君ーーーーー!!!?!!???)

 

総司が潜水していたヘルメスを見つけて大声で指を指す。それに反応した女性陣達は指差す方向を見ると驚いて飛び出てきたヘルメスがいた。

 

「なるほど・・・ヘルメス様の仕業でしたか・・・」

 

「ア、アスフィ? 落ち着いて、本当は覗くだけのつもりでーーー」

 

「へールーメースー?」

 

「ヘスティア!? 待って、話しをーーー」

 

腰を抜かして驚くがそんなヘルメスを無視してヘスティアは拳を固める。その横に無言の圧力をかけるアスフィ、もはや送還する5秒前であった。

 

「神に祈る間をやろう」

 

「神オレなんだけど!? アスフィ助けておくれ! 今回はマジで死ぬ!」

 

「ヘスティア様、どうぞ何なりと」

 

「アスフィさん!?」

 

「正義執行ッ!!!」

 

ヘスティアから繰り出された無慈悲の慈愛パンチがヘルメスの正中線を正確に捉え衝撃で遥か彼方ヘ飛んで行った。

 

 

 

『ヘルメス・ファミリア』主神 ヘルメスーーー死去。

 

 

 

「死んでないよ!?」

 

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