「うわーー!! 砂が真っ白だぁーー!!」
「なかなか綺麗な海じゃない」
メレン港、オラリオから南西の位置にあるオラリオと海を繋ぐ玄関として毎日大量の船と商品、人が行き交う港町。
その眼前にはロログ湖と呼ばれる汽水湖が広がっていた。そこにロキ・ファミリアの半数が来ている。
「いやー、残念やわー。女性団員しか連れてこれんなんてなー! 残念やなー!」
「それにしても意外ね。ロキなら総司を連れて来るかと思ったのに」
「んー、本当は連れて行きたかったやが・・・まぁ総司きゅんはフィンと鍛錬するみたいやったからなぁ」
ギルドに外出許可を取りに行った際、半数は残らないと行けない。最大派閥のロキ・ファミリアが全員オラリオを空ける訳には行かなかったからだ。留守中、ガネーシャ・ファミリア等の手に負えない様な問題が起きた場合がある可能性を考えれば妥当だが、ロキから言わせれば「ケチくさい」だそうだ。
「えッ!? 連れて来ちゃダメだったの!?」
ティオナの声で全員の注目し少し大きめのリュックから総司をニュッと取り出した。その様子を見たロキ達は全員目が飛び出でるほど驚いた。
「な、何で総司きゅんが此処に!?」
「てか何でそこに入ってるのよ!?」
「え? 朝、出発する時総司も連れて行こうと思ってさ。部屋で寝てたから持って来た!」
ティオナの発言に呆れを通り越して関心すら覚える者も現れ始めた。
「そ、そんな軽い感じで・・・」
「連れて来たって言うか、それもう誘拐だわ」
リーネやアキが口々にティオナのぶっ飛んだ行為に対して口を開く。
「それよりも総司君さっきから動きませんけど大丈夫なんですか?」
「大丈夫! 寝てるだけだから!」
「よくあんな所で寝られるわね・・・」
「凄い・・・これを
朝から昼頃までリュックに詰め込まれて尚睡眠を続けている様子は全員を尊敬させるには十分だった。
「総司ー! 起きてー!」
寝ている総司の頬をペチペチ叩く。
「ーーん。あれ、ティオナしゃん・・・ここは?」
寝起きで呂律が回っていない総司を見たロキは抱きつこうとしたがアイズに取り押さえられている。そんな光景を無視してティオナは目の前に広がる湖を総司に見せる。
「ふふふ、周りを見てご覧!」
「? これは・・・海!?」
眠い目を擦りながら辺りを見渡すとこの現状に驚く。それはそうだろうとアキやティオネ達は内心そう思った。
「ごめんね総司。このアホティオナが勝手に攫って来ちゃったのよ」
「え? あぁ、そう言うことでしたか。流刑かと思いましたよぉ!」
「総司君って意外と難しい言葉知ってますよね」
ーーーーーーーーーーーーー
「そう言えば皆さんの着物珍しいですね」
寝巻き姿のまま朝ごはんとしておにぎりを頬張りながら全員の服装がいつもと違うことに気づいた。
「んふふ。総司きゅん、目の付け所がええな・・・これは神々が発明した三種の神器の一つ『水着』っちゅーもんや!」
神が人類に齎した水着とは、自然の水域での運動、水泳、遊泳もしくは潜水用に着用する衣服のことである。水中戦や潜水に適したタイプなど、デザイン、構造、素材など様々ある。
「凄い! これで水中戦闘能力が上がりますね!」
「あ、そこなん?」
総司は水着の性能を知って目を輝かせるが他の面々は違うようだ。
「これ、ある意味裸より恥ずかしいんですが・・・」
「ろ、露出度が高過ぎじゃない?」
「ティオナさん達は恥ずかしく・・・なさそうですね」
「いつもとあんまり変わらないからねー」
アリシアやリーネ達が三角ビキニやフレア・ビキニ、つなぎビキニ等で恥ずかしがる中ティオナ、ティオネは何とも思っていない。元々アマゾネス組は露出度が高い装備を着用しているのか耐性が出来ているみたいだ。
「そう言えばさっきからリヴェリアが居ないけど、どこ行ったんだろ?」
「あっちで水着持ったまま石になってたわよ」
「リヴェリア様・・・おいたわしや」
リヴェリアの事はさて置きロキは眼福と言わんばかりに団員達の水着姿を目に焼き付ける。皆が湖で泳いで遊んでいる中アイズは砂浜で総司と砂遊びをしていた。
「えっと、砂でお城作ろ・・・?」
「良いですね、作りましょう!」
周りの砂をかき集めて下半身位の高さまで砂山を作る。そして2人は丁度良さげな木のヘラのを見つけ砂山の間に立つ。
「じゃあ、行くよ・・・」
「えぇ、それぞれ半分作るんですね・・・」
2人はまるで剣を構えている様に集中し、次の瞬間には目にも止まらぬ斬撃が砂山を襲う。2人は真剣そのもの、最早遊びではなくなっていた。
「なになに? 砂のお城?」
「とても砂遊びしてる様には見えないけどね」
ティオナ達が騒ぎを聞きつけ2人の様子を伺う。
時間にして3分間その斬撃は続き2人同時に手を止めた頃には立派な城が建設されていた。
アイズ側は西洋風、総司側は東洋風の城は見た者を唖然とさせた。
「よぉし、そろそろ僕も泳ごー!」
「わー! 待って待って総司!」
砂遊びに飽きた総司は湖に入ろうと着物を脱ごうとするとエルフィが慌てて止めに入った。
「流石にここで脱いじゃダメだよ! ロキ、総司の水着ある!?」
「いやー、女用の水着しか持って来てへんなぁ。来るって分かってれば用意したんやけど」
ニョルズと言う男神に教えてもらった穴場で誰も居ないとは言えこの場で全裸は頂けないと判断するがロキは内心で総司の裸に興味津々だった。これを口にしたら流石にドン引きされそうなので心の中だけに留めるロキであった。
「えぇー、でもリヴィラの時は皆裸でしたよ?」
「そ、それはーーー」
「なんやとッーーー!?」
言われてみれば18階層で水浴びした時は確かに全裸だった。しかしそれは見張りがいたから可能だった事で今回は全員水着なので見張りは要らないようだ。
「てか総司の裸だったら多分誰に見られても良いんじゃない?」
「何を言っているんですか!?」
「確かに、傍から見たら唯の“子どもの裸“だもんね。それでどうこう言うのはエルフくらいでしょう」
アキとティオネは全然気にしていないようだ。他にも賛成派の方が多いので芋ずる式にエルフィも賛成派になっていた。
「な、何でそんな・・・アリシアさんも何か言って下さい!」
「え!? まぁ・・・多少は譲歩してもよろしいかと・・・」
「アリシアさん!?」
あの潔癖なアリシアがまさかの賛成派だった事が判明した。総司と風呂場で相対した日以降ティオナ達と一緒に入る時に遭遇する事がある。それでもう総司の裸には大分慣れてしまったようだ。
「あ、あのアリシアさんが!?」
「アリシアさん・・・まさか何かに目覚めた!?」
「ち、違っ!」
「総司きゅん、いつの間にアリシアまで籠絡したんか!?」
「ロキ! 誤解を招く言い方はやめて下さい! ブチ殺して差し上げますわよ!!」
「ウチの扱いだけおかしい!」
動揺がヒートアップし過ぎた事で通常のアリシアからは考えられない暴言が飛び出し全員の顔を引き攣らせた。
そして総司の湖遊泳は結局アリシアの暴走でお流れとなり少しいじけていた。口を尖らせて砂を弄っている様は可愛らしく本当に子どもの様だ。
「総司、私と・・・一緒に遊ぼ・・・?」
「アイズさん・・・」
湖に入れない総司を気遣ったのかアイズが遊び相手をするみたいだ。先輩として幹部として後輩の面倒を見る様子は周りをほっこりさせていた。
「そう言えばアイズさんは泳がないんですか?」
「ーーーギクッ!」
総司はふと疑問に思った事を口にする。
「言われてみれば今日1回も水に入ってないよね」
「何や、アイズたんまだカナヅチ直っとらんのか?」
「え? ま、まさかアイズさんに限って泳げないなんて・・・」
ロキの発言にアイズはその場にあったビーチパラソルやテーブルに体をぶつけ終いにはビニールシートで足を滑らせて転ける始末。汗をダラダラとかきオタオタと動揺を見せる。
「確かにダンジョンじゃ水辺にあまり近づいてないような・・・」
「水に落ちそうになった時でも風で離脱してるわよね・・・」
「ーーーダラダラダラダラ・・・」
皆の視線にアイズは目を逸らす事しか出来なかった。オラリオの中でも最強クラスの剣士がカナヅチ、これではロキ・ファミリアの幹部として格好がつかない。
「アイズ・・・克服、しよっか!」
「う、うん・・・」
それからアイズの泳ぎの練習が始まった。現状でどれくらい泳げるかと言ったら、仰向けなら水に浮けるがうつ伏せにして泳ごうとする瞬間水に沈む。
「赤子が水に沈む時、音がしないって昔聞いた時ありますけど・・・本当だったんですね」
その後暫く練習していたがその日は結局克服出来なかったそうだ。
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一方その頃リヴェリアはと言うと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
やはり水着を持ったまま石になっていた。
リーネについて説明してない気がしますが万が一知らない方は原作か漫画、Wikipedia、pixiv等で調べて下さい。