夕刻、
「近藤局長、賊の動きは?」
「うむ、静かなものだ。今は、な・・・」
オラリオの西区画を担当していた勇と敬助はこの静かさに胸騒ぎがしていた。杞憂に終わればそれまでだが・・・・
「他の皆が心配ですか?」
「心配なんてしてないさ。我々は・・・・強いッ!」
迷いの無い声でそう答えると敬助は静かに勇の一歩後ろへ下がって巡回を続ける。
歳三と新八、平助と魁、源三郎と左之助、ハジメと鋭三郎の二人一組でそれぞれの担当区画を警備している。総司は単独、丞は伝達係としてあちこち駆け回っている。因みにハジメと鋭三郎は昨日の件で大怪我していたがアミッドとエリクサーが頑張って治しました。
作戦が決行され各拠点に配置された精鋭部隊が突入する。
時間にして数十分、もう突入部隊は闇派閥との戦闘を開始しているだろうが、相変わらず地上には静寂が支配していた。
それぞれが
「本日は妹共々お世話になります、ロキ様」
「気にせんでえぇよ。あの連中はできるだけ
今日は万が一に備えて新撰組屯所を空けてブリュンヒルデとゲルがロキとファミリアの拠点に厄介になっている。普段なら最低2人は屯所に残り留守番をするのだが今日に限っては総力を持って作戦に当たる為、このような形になったのだ。
「ヒルデお姉様、ロキ様、お茶持ってきましたっス!」
扉を開けてゲルが紅茶と菓子をトレイに乗せて入室して来た。
「お、ありがとうな、ゲルちゃん。お礼にハグしてやるでぇ!」
「ぐぇ! ロ、ロキ様、苦しいっス!」
緊張感の無い二柱には目もくれずブリュンヒルデは顎に指を当てて考え込む。
(こちらの作戦は完全に
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「今頃地下では派手にやり合ってる筈だが・・・・此方には賊が一人もいねぇな」
「やっぱり奴らにとってこの襲撃は予想外だったんじゃないっスか?」
作戦開始から一時間が経とうとしているというのに街には
「だとしても巣穴から一匹も出て来ねぇのは変だろ? 俺らでさえ取り逃がす時があんだからな」
「た、確かにそうっスね」
ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアなら兎も角ガネーシャ・ファミリアの一部が加わったとは言えアストレア・ファミリアに一人も逃さず殲滅することは不可能だろう。だから拠点周辺にはより多くの冒険者が配置されている。
「ま、何にせよ、やる事は変わらねぇ。魁、見廻りを続けるぞ」
「ハイ、藤堂先輩ッ!」
考えても仕方ないと二人は巡回を再開する。
更に別の場所では歳三と新八が巡回を行っているのだが、歳三は心ここに在らずといった様子だ。新八もそれに気づき歳三の肩に手を掛ける。
「歳さん、任務中だぞ。らしくない」
「あぁ、わりぃ。ちょっとな」
「そんなに心配か? アリーゼ達が」
「べ、別にあんなじゃじゃ馬どもの心配なんざしてねぇよ!」
わかりやすく動揺する歳三に新八は溜め息をつく。
「まぁ、心配するのも良いがーー「してねぇって!」ーー俺達は新撰組で、お前は副長なんだからな。忘れんなよ?」
諭された歳三は深呼吸し意識を集中させる。新撰組として与えられた任務を再認識して新八に背を向ける。
「悪かったな、新八。もう大丈夫だ」
「そいつは良かったーーーー」
安心した新八は再び歩き出すと同時に地面を激しく揺らす程の轟音がオラリオ中に響き渡る。突然の出来事に2人は困惑する意識とは裏腹に即座に刀に手を掛ける。
「な、何だ、今のは!?」
「爆発か・・・っ、新八ッ!」
落ち着いた矢先に今度は2人の近くで爆発が起きる。歳三の咄嗟の掛け声で新八も間一髪回避できたが、音を聞く限り今だに爆音は鳴り止まない。
「お、おい、いつまで続くんだ!?」
「こりゃ・・・・まさか!」
既に数十発の轟音に歳三は何かを思い付く。次の瞬間、爆煙から複数の影が2人に襲い掛かってくる。
「死ねぇ!!!」
「っ、
(一杯食わされたな・・・・まさか山崎を出し抜くとは)
各派閥が集めた拠点の情報、丞が集めた情報を逆手に取り瞬く間にオラリオを混乱に陥れる手腕。
綿密に練られた
「新八ぃ! さっさと片付けるぞ!」
「分かってる!」
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一方その頃。
「きゃあああ!!!」
「
蹂躙され火の海に包まれた町に木霊する悲鳴はこの男を喜ばせる演奏会でしかない。
「さぁ、皆さん。舞台の幕開けです。あるいは平和という名の終幕。我が主神なら祝福の式典とでも言うやもしれない。ふふふ、今宵は歌い踊りましょう! 凄惨な歌劇を! 私も存分に愉しませてもらいますとも!」
男の名はヴィトー。
「おや、あなた方もどうです? お巡りさん」
ヴィトーの前に立ちはだかる2人の漢。
「折角のお誘いですが遠慮しておきましょう」
「うむ、悪趣味な催しは好かんのでな」
勇と敬助である。他の冒険者も駆け付け
「それは残念です・・・・ねぇ!」
こうして勇と敬助の戦闘が始まる。
暴れ回っているのはもちろんヴィトーだけでは無い。
別の場所ではヴァレッタ率いる軍勢が住民を襲っている。
「宴の始まりだ! いい声で哭け! そして死ね! ハハハハハっ!」
「我が命を持って灰燼に帰せぇ!」
そう言って
「最高だぁ! ずっとこれがやりたかったんだ! もっと聞かせてくれよぉ! てめぇらの鳴き声をよぉ!」
「そんなに聞きてぇなら聞かせてやるぜ?」
「ッ! てめぇは・・・」
「ただし、薄汚ねぇ雌豚の鳴き声だがなぁ」
ヴァレッタの前に現れたのはハジメと鋭三郎だ。2人しかいないことを確認するとヴァレッタは下品に嗤う。
「てめぇのことは前から斬り刻んでやりてぇって思ってたんだ。その面が苦痛に歪むのが見てぇなァ」
「奇遇だな。俺も同じこと思ってたんだわ」
サディスト同士の戦闘の火蓋も切って落とされた。
「オラリオに真の絶望を齎すのだ!」
オリヴァスの号令で
「一人たりとも逃がすなぁ! 全員皆殺しだ!」
逃げ惑う住民を背後から襲おうとする
「やはり現れたか、
「はっ! アンタら極悪人よかマシだ!」
「これ以上好きにはさせないっス!」
「Lv.2とLv1だけで勝てると思っているのか?」
確かに平助と魁の2人でLv.5のオリヴァスに勝つのは不可能だろう。
「バーカ、誰が2人つった?」
「ッ!」
瓦礫の影から源三郎と左之助が奇襲する。間一髪回避するオリヴァス。だがLv.3が2人追加、これで勝てないとは言わせない。
「面白い、受けて立ってやる! 貴様ら全員生きて帰れると思うな! 『大抗争』のーーーー始まりだ!!!」
各地で新撰組の戦いが始まりつつあったが、大抗争の夜はまだ序章に過ぎない。