オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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決着の十分前

ルバートに釘を刺した総司はギルド支部の扉を開けて外へ出る。正面に背を向けるリヴェリアが目に入ったので駆け寄ろうとした瞬間、総司は辺りを見渡す。

 

「リヴェリアさん・・・」

 

「わかっている。囲まれているな・・・」

 

総司が言わずともリヴェリアは謎の視線に気づいていた。それも1つや2つではない、最低でも15人はいる。しかし視線を感じるだけで何も仕掛ける様子が無い事に疑問を抱いていた。

 

「そこにいるのは分かっている! 姿を現したらどうだ?」

 

声を上げて相手を燻り出す。その声に反応したのか建物の屋根の上から次々と武装したアマゾネス達が姿を現す。

 

(アマゾネス・・・カーリー・ファミリアか、それとも?)

 

リヴェリアがアマゾネスの正体を考察していると、屋根から次々とアマゾネスが飛び出す。2人に向けるのは敵意と武器、どうやら戦いは避けられないらしい。

 

「殺意・・・なら、容赦は・・・ーーーゴフッ!」

 

「総司ッ!?」

 

打刀に手を掛け迎撃体勢を整えていると突然、総司が吐血する。

 

(やはり完治していない。当然だ! あれ程の怪我、おいそれと治る訳がない!)

 

襲いかかってくるアマゾネス達を杖や素手で対処する。相手の戦力は殆どがLv.2やそこら、はっきり言ってリヴェリアの相手ではないのだが・・・

 

(数が多い、それに街中で魔法も下手に使えん・・・これでは、総司を守りきれん!)

 

アマゾネス達は弱っている総司に狙いを定め始めた。弱っている者から先に片付ける、考えて見れば当然だ。

 

「しまった、総司ッ!」

 

あまりの数にリヴェリアの防御を突破し、4人のアマゾネスが総司に剣を振り下ろす。総司にもそれは分かっている、しかし身体はドクターストップを出していて言う事を聞かない。

 

「ぐっ・・・おおぉぉ!!」

 

激痛を無理矢理ねじ伏せ、同時に振り下ろされた四本の剣は空を斬り、地面に突き刺さる。

すぐさま体を反転させ、アマゾネスに飛び掛る。打刀の柄の先端『頭』の部分で1人を打つ。腹部にミシミシとめり込む音が聞こえる。

 

1人ダウン。

 

それに反応した3人の内1人が再び総司に斬り掛かる。首下を狙った横一閃は抜刀した総司の打刀によって止められる。

 

「くっ!」

 

Lv.2とダメージも相俟って総司は後方へ吹っ飛ばされてしまった。戦闘技術はLv.2並みだがステイタスの面ではLv.1、対して相手はLv.2、その差は大きい。

 

(かくなる上は・・・)

 

息を切らし、誰が見ても満身創痍は一目瞭然。そんな中、鬼子を発動させればものの数秒で意識を支配され暴走してしまうだろう。

その間に残りの3人は殺せる。しかし敵はあの3人だけではない、その後何人殺せるかが問題になって来るだろう。

 

(・・・殺ーーー)

 

意識を集中させ鬼の力を行使しようとした瞬間、3人のアマゾネス達は突然倒れ込む。よく見るとリヴェリアの方に群がっていたアマゾネス達も片付き始めた。

 

「全く、今回もまた随分無茶したようだね?」

 

敵が倒れた理由が分かった。

真打登場と言った所だろうか、とにかくこれで我々の勝利は確実だ。

 

「ーーーフィンさん!」

 

「遅くなってすまない。おっと、大丈夫か?」

 

安心した様に崩れ落ちる総司をフィンは咄嗟に支える。フィンのファンなら誰もが羨む行為だ。

 

「フィン、今の状況だがーーー」

 

「あぁ、それなら先程アキやアリシアに聞いたよ。ガレスはレフィーヤ、ベートはアイズの所だ。そのアイズにはティオナの所へ向かわせるようベートに指示を出した。今頃は粗方片付いている筈だ。他はメレンに残存する敵対アマゾネスの撃退を行っている」

 

つまり後はティオネの所だけだ。

 

「リヴェリア、僕は今からティオネの乗った船を追跡する。来てくれるか?」

 

「もちろんだ。しかし、総司はどうする?」

 

フィンは支えていた総司を一瞥し背中に担ぐ。

 

「今日の監督は君だ。任せるよ」

 

そう言って港の方へ駆け出す。その背中を見てリヴェリアはそっと笑みを零し、フィンを追い掛ける。

 

「何が任せるだ、連れていく気満々ではないか」

 

どの道、怪我人である総司を置いては行けないので連れて行く事には変わりは無い。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

フィンとリヴェリアが合流する15分前。

 

ここはカーリー・ファミリアが乗って来たガレオン船が停泊していた岩陰。そこから少し離れた非常に見つけにくい洞窟は人気が無く、夜なら何をしてもバレないであろう場所だ。誘拐して来た者を放り込むには打って付けだ。

 

(アイズさん・・・)

 

拘束され、身動きが取れないでいるレフィーヤ。見張りのアマゾネス達が母国語で騒いでいる事から何らかのトラブルがあったのだろう。

 

(喉、容赦なく潰してくるだろうな・・・)

 

目が覚めた時、カーリーが言っていた言葉を思い出す。詠唱しようとすれば喉を潰すと脅されている。魔道士にとって喉を潰されるという事は死と同義、失う訳には行かない商売道具だ。

 

 

『解き放つ一条の光、聖木の弓幹ーーー』

 

 

レフィーヤを包む光の魔力、足下の魔法陣、それらは魔法の詠唱により発動する物だ。当然アマゾネスもそれに気づいてナイフを構える。

 

(この洞窟にはあちこち穴が空いている。月明かりがその証拠!)

 

目的は魔法を放つ事ではなく、魔力に満ちたこの光だ。それを狼煙として外に伝える事で自分の場所を教える。

必ず見つけて助けてくれると信じている。

 

「ル・ムーナ!」

 

アマゾネスの一人がレフィーヤの襟を掴みナイフを喉に突き刺さんとする。しかしレフィーヤも足だけで抵抗する、レベル差があるので中々アマゾネスも苦戦しているが時間の問題だ。

 

(アイズさんならきっと助けてくれる・・・それまでは・・・)

 

だが、敵は一人だけじゃない。他のアマゾネスも異変に気づき駆けつける。それそれがナイフを構えて、レフィーヤの喉を目掛けて一直線に走り出す。

 

(アイズさんっ、アイズさんっ・・・!!)

 

 

「グアッ!!」

 

突如天井が崩れ、アマゾネス達を蹴散らす。誰かが降りてきた、きっとアイズが助けに来てくれたんだと確信する。

 

「アイズさん!?」

 

「無事か、レフィーヤ?」

 

土埃からのっそり現れたのはガレスだった。

 

「ガ、ガレスさん・・・あり、ありがとう・・・ございます・・・」

 

アイズではなかった事により狼狽を見せるレフィーヤにガレスは苦笑いを浮かべる。そうこうしている内に残りのアマゾネス達が2人を取り囲んでいた。

 

「ティオナ達と最初にあった事を思う出すのう。お主ら、よっぽど自分の強さに自信があるようじゃなーーー来い、軽く相手してやろう」

 

クイクイと挑発する姿を見たアマゾネス達は激高し、全員で攻撃を仕掛ける。言葉は分からずとも挑発は全人類共通の様で、特に男を下に見てきた者にとっては最大限の侮辱であろう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ガレス、レフィーヤの合流から更に5分前。

 

「ゲゲェッ!?」

 

港の近くでアイズ達を襲撃したアマゾネス、これはカーリーの手の者ではなくイシュタル・ファミリアのメンバーだった。

団長のフリュネを筆頭に現れたアマゾネス達は、アイズとその他の団員を分ける事に成功した。これでアイズとフリュネの一騎打ちが成立した。

 

その上でアイズに『呪詛(カース)』を掛け『風』を封じる。加えて今のアイズが持っている剣は《デスぺレート》ではなく、ゴブニュ・ファミリアから借りた剣だ。

 

対するフリュネは完全装備の上に、春姫という術師の魔法により自身を強化している。

 

 

傍から見たらアイズが圧倒的に不利だろう。

 

 

「な、何で・・・何で勝てないのさァ!」

 

現状押されているのはフリュネだった。強化した事によりレベルは同じ、魔法も封じ、愛剣も無い彼女は敵ではないと確信していたヒキガエルにとって想定外の事だ。

 

「確かにあなたは強くなった・・・でも、あなたには技が無い」

 

剣の技量だけでこの戦況を覆すアイズは、真の強者と言っても過言では無いだろう。

 

「大きいだけで、何も怖くない・・・」

 

その一言がフリュネのプライドを大きく傷つけた。

 

「こ、ここ、このガキャァァァ!!!!」

 

怒りのままに両手に構えた片手斧を振り回す。

 

「ブサイクの分際でェェェ!!! 生意気なんだよォォォォ!!!!」

 

景気よく振り回しているがアイズには掠りもしない。

 

しかしアイズは内心焦っていた。能力値の差は剣の技量で覆せるが、決め手に欠ける。つまり火力不足だ。

このままでは長期戦になる、それはアイズ達にとってどうしても避けたい事だった。

 

「邪魔だ」

 

「ほげェ!?」

 

突如フリュネの顔面に蹴りを放つ者が現れた。そうベートである。

 

「相手はカーリーとか言う連中じゃねぇのか? ありゃ、イシュタルのヒキガエルだろ」

 

「えと・・・私にも、よくわからなくて・・・」

 

自分が戦うべき相手を見つけたベートはアイズにデスぺレートを投げ渡す。

 

「行けよ。話しは聞いた、オレが行くよりお前が行った方がいいだろーーーあのバカゾネスの相手は・・・お前にしか出来ねぇ」

 

静かに頷くアイズはティオナの下に向かって駆け出す。

 

「待ちなァ、剣姫ィ!」

 

「待つのはてめぇだ、ヒキガエル」

 

アイズを行かせまいとフリュネは立ち上がるが、それをさせないのがベートの役目だ。

標的を目の前にして取り逃した事で苛立ちを隠せないフリュネを見下ろし、月明かりで浮かび上がったベートの影がフリュネを覆い尽くす。

 

「空気読みなよ、凶狼(ヴェナルガンド)ォ! アタイの美しさに尻尾振りたくなる気持ちも分かるけどねェ〜、今はお呼びじゃーーー」

 

瞬間、フリュネが見たものは夢か幻かーーー

 

余りにも一瞬の出来事だった、視認するのも難しい時間で蛙が見たものは、“月下に照らされた狼“だった。

 

 

「潰れて死ね、蛙らしくな」

 

 

気づけば鎧が砕かれ身体が半分、地面に埋まっていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そこかしこで起こっている戦闘に決着がつき始める中、港に到着するフィン一行。辺りは夜のせいか誰もおらず人気は全く無い。

 

「報告によると・・・あの船だな。ティオネは・・・」

 

この時間帯に働いている漁師はいない事は確認済み。なので今海に出ているあの船にティオネがいるのは間違いない。それと十中八九バーチェも一緒だろう。

 

「流石に総司は連れて行けないな。リヴェリア、総司を頼む」

 

「わかった。今、魔法で足場を作る。暫し待て」

 

そう言うとリヴェリアは魔力を込め『終末の前触れよ、白き雪よーーー』と詠唱を始める。

 

「総司、もう歩いて大丈夫なのかい?」

 

「えぇ、さっきリヴェリアさんに回復魔法を掛けて貰ったので、もう大丈夫です」

 

「とは言え、ダメージは残っているだろう?」

 

「うっ」

 

常に激痛が走っていた先程の状態よりはマシになったが、完全に痛みが抜けた訳では無い。悟られないように振る舞うもフィンにはバレていた。もちろんリヴェリアにも筒抜けだ。

 

『ウィン・フィンブルヴェトル!』

 

リヴェリアの氷魔法で水面を凍らせる事で船の近くまでの足場が出来た。

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

そう言って氷の足場に飛び移り一直線に船へと向かって行った。

 

「リヴェリアさん、僕が第一級冒険者に勝つにはどれくらい掛かると思いますか?」

 

「どうした急に」

 

突拍子の無い事を言い出す総司にリヴェリアは内心困惑していた。

 

「昼間、バーチェさんと戦いました。結果は惨敗で手も足も出なかった・・・」

 

自分が持てる力全てをぶつけた、それに不本意とは言え鬼子の暴走状態まで晒して尚敗北した。これ程まで圧倒されたのは食人花とオッタル以来だ。しかもそのオッタルはバーチェよりも遥かに強いと聞く。

 

「僕は・・・大切な人と約束したんです。もう誰にも負けないと・・・でも、僕はこのオラリオに来てから何度も敗北しました」

 

自分よりも強い化物がゴロゴロいるこの世界で、生まれて初めて総司は自分の背を追いかけて来た土方歳三の心情を理解した気がした。

 

(土方さんも、こんな気持ちだったのかな・・・)

 

歳三が初めて試衛館に道場破りに来た時は、タチの悪い薬屋で唯のゴロツキ程度の男だった。今の総司の様にこの世には自分より強い者の存在を知り、決して諦めず食らいつく。

 

「総司、お前はーーーッ!!」

 

 

 

『オオオオオォォォォ・・・・!』

 

 

 

水が弾ける音がした。その音に反応した2人は突如現れた“何か“に目を向ける。

 

瞬間、総司の全神経がざわつく。

 

「なっ、食人花だと!? 倒し漏れがあったと言うのか!?」

 

数十分前、街に現れた食人花はアイズや他のロキ・ファミリアの女性陣が討伐したので、この個体は元々さまよっていた食人花である可能性が高い。

 

「私の魔法に反応したか。総司、幸いな事に相手は1体だ。お前は他のモンスターが水から上がって来ない様に警戒しつつ、私の援護をしろ」

 

本来ならリヴェリア一人でも倒せるが、総司が食人花に拘っている以上目の届かない場所で対峙した場合、また突っ走る可能性を考えた。そうなる前に此処で戦闘経験を積ませた方が総司の為になる。

それにこの騒ぎを聞きつけて他のメンバーも急いでこの場所へ向かって来る筈だ。

 

万が一の事への対処も出来た。

 

「行くぞ総司、特別講習だ!」

 

 

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