オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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殺戮本能

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキル」

 

『オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!』

 

 

凶刃と鋼蔓の攻防はまるで二つの竜巻のぶつかり合いだ。残存する地面や植物、生きとし生ける生命体を平等に、無惨に、残酷に、無情に、凄惨に、無慈悲に阿鼻叫喚を齎す天変地異。

 

目、口、動作、全てが殺戮衝動を剥き出しと言っているようだ。総司は完全に【鬼子】に飲まれてしまった。

 

(あの力・・・危険だ!)

 

表情には見せないが、リヴェリアは内心で総司に対する戦慄を隠せないでいた。ベートの本領である獣化とはまた異質、もっと禍々しく凶悪な意思に身を投じなければあの様な状態にならない。

 

(時間はまだあるが、止めるべきか)

 

そんな考えが脳裏に過ぎる。

 

(いや、信じると決めた以上、最後まで見届けるしかないか・・・)

 

総司もまた、己の殻を破ろうと足掻いている。それを邪魔してはいつまでも弱いまま。それは本人が一番望まない事はリヴェリアも承知だ。

 

「コロスコロスコロス・・・・キル、キルキルキルキルキル!!!」

 

戦況は全くの互角。

総司は邪魔な蔓を刈り、食人花は再生させつつ総司へ攻撃を仕掛ける。徐々にではあるが蔓の再生が滞り始めた頃、食人花の攻撃も総司に当たりつつあった。

 

「ガァッ!!?」

 

遂に蔓のムチが総司の脇腹にクリーンヒットする。メキメキと骨が軋む音と共に弾かれ倉庫の壁へーーーー反転して壁を足場に着地し跳躍する。

 

戦闘のエキスパートである総司は蔓が脇腹に入る瞬間、後方へ飛びダメージを軽減させる事に成功した。暴走していてもこれまで戦場を生き抜いて来た天然の経験値が自然と最適解を導き出していた。

 

「コロスコロスコロスコロッ・・・・・・グッ・・・くッ・・・!」

 

跳躍の途中、急に総司が苦しみ出す。

右手で右目を抑え、左目は赤く血走らせている。まるで何かを抑え込もうと奮闘しているようだった。

 

「コロ・・・キルッ・・・・ダめ、だ・・・」

 

鬼の力に抗う総司に、チャンスと見るや蔓が炸裂する。今度は受け身を取れず地面に転がり込み、血を流しながら体を震わせていた。

 

「い、たイ・・血・・・テキ・・・コろス・・・」

 

そんな様子を見ていたロキ・ファミリアの団員達は困惑している。敵の殺害を楽しむ様な狂喜の如く戦いを見せられ、今度は敵をそっちのけで苦しんでいる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「どうしたんだ? 総司のやつ・・・」

 

「殺戮本能・・・・総司は今、それと戦ってるんや」

 

ロキの一言に団員達は注目する。

 

「それって、総司君には別の人格があると言う事ですか!?」

 

「そうとも言えるなぁ。けど、普段の無邪気で可愛い総司も、殺戮衝動剥き出しの総司も、どっちも総司や。片方だけ別の人間なんて事はあらへん」

 

自身の鬼を本能のまま解放してしまえば、以前の二の舞になってしまう。それが分かっているから総司は苦しんでいる。しかし時間をかけていられない、食人花は待ってくれる筈もなく刻一刻とタイムリミットは近づいている。

 

「やっぱり助けて来る!」

 

「わたくしも加勢しますわ!」

 

我慢の限界を超えたティオナが拳を強く握る。するとレフィーヤやアリシアなど次々と助けを名乗り出る団員が出てきた。横にいたリヴェリアは止める気があるのか無いのか、ただ総司の戦いに集中していた。

 

「てめぇら、そこを動くんじゃねぇ」

 

ティオナ達を止めたのは他でもないベートだった。屋根の上から声を掛けるが目線はリヴェリアと同じ所にあった。

 

「何さー! あたし達の邪魔しないでよ!」

 

「バカゾネスが。てめぇらこそ雄の戦いに水差すんじゃねぇ」

 

文句を言うティオナを一蹴したベートは殺気で不満を垂れる団員達を黙らせる。一歩でも動いたら蹴り殺されると思わせる程の悪意が込められていた。

 

「ベートの言う通りやで。ウチらに出来る事は勝つのを信じるのみや。少しは総司の事、信じようやないの」

 

「・・・・わかったよ」

 

渋々納得したティオナは矛を収めると、再び総司の戦いに目を向けた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

己の内に潜む殺戮本能が顔を出す。再び身を委ねれば戻って来れない様な地獄の沼の底。

 

「違ウ、僕ハ・・・・侍だッ!!!」

 

掠れた意識を呼び戻し鬼を無理矢理ねじ伏せる。しかしそう長くは持たない。考える間もなく駆け出し食人花の急所へ自然と足が動いた。

当然それを見た食人花も黙ってはいない。即座に迎撃として蔓を数十本伸ばす。

 

(最小限・・・意識するのは最小限で良い!)

 

蔓による攻撃を総司は避けない。正確に言うと致命傷、敗北の決定打となりうる攻撃以外は放置している。そのため総司の身体には無数の切り傷があった。

そうまでしないとこの食人花には勝てない。正攻法だけに頼っていては格上を倒すことなど出来ない。

 

(これで・・・届く!)

 

決死の立ち回りを切り抜け、総司は食人花の目の前に立っていた。この時食人花が初めて剣の間合いに入った。

一気に魔石のある口の中へ飛び上がろうと溜めていた足の力を解き放つその時だった。

 

(地面が盛り上がっ・・・・)

 

総司の足下の地面が盛り上がった。脳がそれを処理する頃には地面から突き出た三本の蔓が、背後から総司の身体を貫いていた。

 

「くっ・・・・がはっ・・・・!」

 

食人花は総司の行動を全て読んだ上で予め潜ませていたのか。そうだとすれば実に狡猾なモンスターだ。

 

口や傷口から流れる血が地面に落ちる。この時総司の意識は殆ど無かった。全てを出し尽くして尚負けたのだ、その表情は心做しか安らかだ。

 

追い討ちを掛ける様に蔓を振り回し総司を海へと落とす。

 

「そ、総司・・・・?」

 

「嘘・・・だろ・・・」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

陸より遥か遠い船の上で二人の冒険者は静かに観戦していた。そんな静寂を破ったのは総司が海に投げ捨てられた時だった。

 

「団長!」

 

「どうしたんだい? そんな大声を挙げて」

 

この状況になってまで助ける素振りを見せないフィンに抗議の念をぶつけた。総司の敗北、これが理解出来ないほどフィンの頭は悪くない。問題はフィンとティオネの認識の違いだ。

 

「早く助けにーー」

 

「ティオネ、これは命令だ」

 

救助に向かおうと動くティオネの肩を掴み、静止を促す。

 

「彼の邪魔をするな」

 

そう凄むフィンに気圧されたティオネはもう何も言えなかった。誰もが決着が着いたと認識する中、まだ戦闘は続行中だと言う事をフィンは一人把握した。

 

「時間は限られている・・・もたもたしてる余裕は無い。ここからどうする、総司?」

 

水面に広がる波紋の中心を見詰めながら、何かを確信する様に笑みを浮かべる。

 

 

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