オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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暗黒期⑤

「どうした!? その程度か新撰組!」

 

双頭の斧を振り回し左之助と源三郎、平助、魁の攻撃を捌くオリヴァス。周りにいる闇派閥(イヴィルス)との連携で中々オリヴァスに集中できず攻めあぐねていた。

 

「チィ! 周りの雑魚共が邪魔だ!」

 

「オレ達の対策はバッチリってことッスね!」

 

闇派閥(イヴィルス)は常に二つ以上の攻撃がオリヴァスに向かないように立ち回っており、加えて左之助と源三郎が同時に攻撃できない状況を意図的に作り出している。しかも一人倒すにも連携により時間が掛かり、増援により闇派閥(イヴィルス)の数は増える一方なので戦況は悪くなる。

周りには他派閥の冒険者もいるとは言え敵の数が多すぎる。

 

「まずは貴様からだぁ!!」

 

オリヴァスは跳び上がり平助へ斧を振り下ろす。二刀を構える平助だがまともに受ければ刀は折れ、そのまま即死することはわかっている。

 

「“あいつ“に比べたら・・・・てめぇなんざトカゲも同然なんだよぉ!!!」

 

嘗て自身に強烈な恐怖心を与えた“人斬り“を思い出す。

 

紙一重で斧を躱し、着地の隙をついてオリヴァスの首へ刃を振るう。その太刀筋には一切の迷い、恐怖心は無く自身のレベル以上の冴えを発揮したと確信する。

 

「甘いわァ!!!」

 

あろうことか迫り来る刃を噛みつきによって止める。しかしそれでも平助の魂は揺るがない。素早く噛まれた刀を手放しもう一刀で刺突を放つ。

 

「二度と自分(てめぇ)に負けねぇって決めたんだよ!!!」

 

予想外の剣圧に一瞬動揺したオリヴァスは咄嗟に後方へ跳んで距離を取る。レベル差による身体能力で回避されてしまったが、平助の器があと少し昇華していれば或いは決まっていたかもしれない。

 

「くっ、雑魚がーーー」

 

「ウオォォォォ!!!」

 

「・・・・・・・!」

 

着地に合わせて魁と源三郎が挟撃を仕掛ける。魁の棍棒を左腕で止め、源三郎の装備するチャクラム状の刀は斧で応戦する。

 

「グッ!!」

 

レベルで上回るとは言え片手では防ぎ切れず刃が薄皮を断つ。

 

「この、羽虫共めぇ!!!」

 

格下に一杯食わされたのが癪に障ったのか、オリヴァスは自身から流れる血を見て怒りに震えていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「Lv.3と聞いておりましたが・・・・それ以上の実力ですねぇ。局長殿」

 

「賊の前では張り切ってしまう性分なものでな!」

 

ヴィトーと勇の鍔迫り合っている。勇のステイタスはパワー型、それに大刀の重量を加える事によって攻撃力だけならヴィトーを上回る。それを察したヴィトーは大刀に力が伝わり切る前に距離を詰め、鍔迫り合いが成立しているのである。

 

「私もいることをお忘れなく」

 

「勿論ですよ。お嬢さん」

 

敬助の斬撃を回避するために勇から離れ、素早く敬助の背後に回り込み剣を振るう。

 

「私は男です」

 

予想通りだったのか迷いも無く後方のヴィトーへクナイを投げる。ヴィトーにとってそれは予想外の出来事だったため咄嗟に後方へ跳ぶ。一息ついて「おっと失礼」と薄ら笑いを向ける。

 

「このまま攻めましょう」

 

「うむ、迅速にな」

 

2人とも構えると一斉に駆け出す。ヴィトーは相変わらず薄ら笑いを浮かべている。勇の斬撃は受け流す事によって敬助の方へ逸らし行動を妨害するように立ち回り、二対一の状態でも互角に立ち回っている。

 

「思った以上にできるな!」

 

ヴィトーも新撰組のメンバーと同じで同レベル帯の中でもトップクラスの実力者なのだろう。

 

「嗚呼・・・良い、実に良い! これほどまでに美しく気高い魂を持った人間に出会えるとは! あなた方を引き裂いて流れる雫はさぞかし美しい色をしているのでしょう!!」

 

勇の斬撃を捌いた後、蹴りを繰り出し敬助の腹部へ命中する。

 

「グッ・・・・破綻者め!」

 

後ろへ跳んで威力を殺したため戦闘不能には陥らなかった。

 

「“破綻者“・・・実に歪で心打つ響きです。きっとかの有名な英雄の様に永劫私に付き纏う愛しき称号なのでしょう!」

 

「賊と英雄を一緒にするなど痴がましいな。貴様のそれは英雄に対し唾を吐き掛けているのと同じだ」

 

「誤解ですよ。私、こう見えて英雄に憧れておりますから・・・・それよりも、私にばかり気を取られても良いのでしょうか?」

 

勇の背後にはいつの間にか闇派閥(イヴィルス)が接近していた。万事休すかに思われたが、勇はヴィトーから視線を外さない。

 

「一騎討ちに持ち込まれた際、貴方達がどう動くか予測できないとでも思いましたか?」

 

クナイで闇派閥(イヴィルス)の手の甲に投擲し凶器を奪う。その隙に勇が胴体を一刀両断し、敬助がヴィトーを攻撃して引き付ける。

 

「先程からこちらの様子を伺う卑しい視線は感じてましたからね。そう簡単に王将は取らせませんよ」

 

「ならばこの局面、すぐに詰んであげますよ」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

オラリオの中央広場付近でも多くの闇派閥が襲撃していた。

 

「こ、こいつら何処に隠れてやがった!?」

 

「こっちにも応援をくれ!」

 

「くそっ! 数が多すぎて助けに行けねぇ!」

 

混乱した現場で冒険者達は防戦一方。1人、また1人と倒れて行く中、一匹の鬼が血の風と共に現れた。

 

「やれやれ・・・・随分舐めた真似してくれましたねぇ」

 

オラリオ最強の漢、沖田総司は奇襲開始から今この時点まで手当り次第闇派閥(イヴィルス)を粛清していた。

 

「沖田、総司・・・!」

 

「た、助かった。恩に着る!」

 

「安心するのはまだ早いですよ」

 

 

 

「ーーーーー五月蝿い」

 

 

 

そんな声が聞こえて来た瞬間、上から“何か“が着弾した。土煙が晴れそこには気絶しているガレスが居た。

寝起きの様な気怠い女性の声、華奢で白髪長髪の女性が屋根の上に立っていた。しかしそれだけでもこの場にいる者の誰よりも強いと確信させる。何故ならその手に掴んでいたのはリヴェリアなのだから。

 

「これが現在の最大派閥の幹部か・・・・ん? 貴様はーーーー」

 

白髪女性の話しを遮り総司は瞬時に斬り掛かる。

 

「ほう、大した速度だ。なるほど、これが噂に名高い《鬼子》か。確かに他の有象無象とは文字通り格が違う」

 

斬り掛かる際、リヴェリアを奪い返して地上の冒険者へ預ける。

 

「気をつけろ、総司・・・奴は・・・」

 

「喋らなくて良いですよ。後は、僕がやりますから・・・・」

 

掠れ声で意識を保つのでやっとなリヴェリアにそう言うと総司は再び屋根の上まで跳び上がる。

 

「貴方が《静寂》ですね?」

 

彼女は神ヘラの眷族《静寂》アルフィア、Lv.7。爆風で靡く髪を押さえて総司を真っ直ぐ見つめる。

 

「我らが去った後に凶暴な鬼がこの地に現れたと聞いていた。まさかこのような愛らしい姿をしているとは夢にも思わなかったがな」

 

「はじめましてですね。ではさようなら」

 

総司はお構い無しに刺突を繰り出す。しかし幕末一の天才である総司と同じようにアルフィアもまた神時代以降最も才能に愛された眷族と呼ばれるほどの天才である。そしてレベルも考慮すれば総司の攻撃を往なすことなど容易なのだ。

 

「そう急かすな」

 

攻撃を“素手“で往なされたことはそこまで驚いてはいない。嘗て同じことをした漢が居たのだから。

久々に遭遇した格上の相手に総司は冷や汗をかく。人生で間違いなく最強の敵を前に武者震いすらしていた。そんな時、ここから少し離れた場所で一際大きい轟音が鳴り響いた。

 

「オッタル、さん・・・・・・?」

 

「あちらは終わってしまったようだな」

 

総司が・・・・いや、周辺にいた敵味方、神、一般人全てが目にしたのは、総司と並んで都市最強の冒険者と呼ばれた男、《猛者》オッタルが地面に倒れ伏す姿だった。

全ての時が止まったかのような静寂が訪れる。その無音を破ったのは闇派閥(イヴィルス)の勝ち鬨だった。

 

オッタルの敗北により動揺を隠せない冒険者達、反対に士気が上がる闇派閥(イヴィルス)

 

希望はもう一人の都市最強に託された。

 

「冷静だな」

 

「ここで貴方を野放しにする訳には行きませんからね」

 

オラリオ全体の希望を一身に背負う総司、そのプレッシャーは計り知れないものだろう。しかしそんなことは意に介さないといった様子で刀を構える。

 

「さっさと終わらせましょう」

 

鬼子を発動させ超高速で攻撃を仕掛ける。いきなり速度が上がったことにより一撃目は頬を掠めた。

 

「お前のその音・・・・気に入った」

 

二撃目で鬼子の速度に適応したアルフィア。その顔は薄らと笑みを浮かべているようにも見えた。今は総司から奏でられる音を楽しんでいるようだ。その音に合わせて踊るように舞う。

 

「心地良い死の音だ」

 

四十、五十の斬撃の嵐を難無く掻い潜り総司の背後へ手を伸ばす。

 

 

福音(ゴスペル)

 

 

耳にしたその言葉が詠唱だというのは直ぐにわかった。しかし予想外だったのが発動までに掛かる時間だった。総司が知っている魔法はどれも詠唱が長い、よってアルフィアが放つ魔法も発動までに時間を要するものと勘違いしてしまったのだ。

 

「ッ!?」

 

前方へ跳んで回避した筈の総司に“何か“が着弾する。体中に走る激痛で意識を保ちながら考える。

 

この魔法は超短文詠唱。

 

見えない何かを放つ魔法。

 

詠唱時間に比べて不釣り合いな破壊力。

 

(これは・・・・骨が折れますね)

 

辛うじて地面に着地し屋根の上で見下ろすアルフィアを捉えて深く深呼吸をする。

 

「ほう、まだ上の領域があるのか」

 

意識を集中させ鬼子によって加速させた心拍数を更に超加速させ、それによって体温も上昇し赤く光る瞳が炎の如く燃え上がった。

 

 

 

《鬼子》の“向こう側“

 

 

 

散れ(チレ)

 

 

 

この瞬間《鬼子》は《剣鬼》へと覚醒する。

 




オリヴァスのレベルってこの時点では3だった気がするのですが5という事にして下さい。
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