《ダイダロス通り》
ここはとある名工が生み出した地上のダンジョン。このオラリオに滞在する様々な冒険者や専門家が揃って尚、全貌が明らかになっていない未知の領域。
此処に
勿論、最初からダイダロス通りに目を付けていたし調査も並行して行っていたが、ただでさえ広いオラリオでもダイダロス通りは特殊過ぎる為、ディオニソスとヘルメスのファミリアでは手に余る。
という訳でロキ・ファミリアが現在ダイダロス通りで調査を行っているのだが・・・
「全っ然見つからないわね!」
数人に分けてそれぞれ調査を開始して数時間経つが手掛かり一つ見つからない。アイズやレフィーヤヒリュテ姉妹といった女性陣チームで、一向に調査が進まない事にティオネは苛立っていた。
「色んな建築物が入り組んでいて隠れるには持って来いですね」
「うん、あたし迷子になりそ〜」
「ティオナさん、もうなってますよね?」
この場にいる全員が現在地を分かっていない。最終手段として建築物を伝って上から見れば集合場所に辿り着けるだろう。
「とにかく今は目的をーーー」
「レフィーヤ!」
何者かが屋根の上から飛び降りて来た。容姿がレフィーヤやリヴェリアと似ている所からエルフと言う事は分かるが、女性陣の殆どは初めて見る顔だ。
「フィルヴィスさん!? どうしてここに!?」
レフィーヤと顔見知りの彼女はデュオニソス・ファミリアの団長、フィルヴィス・シャリア。以前レフィーヤやベート、ヘルメス・ファミリアと協力して
「デュオニソス様の指示だ、お前達に協力してやれと。突然だが、同伴しても構わないだろうか?」
「私は大歓迎です! ありがとうございます! 嬉しいです!」
人手は多いに越した事はないのでレフィーヤだけでなく全員が歓迎している。中でもティオネは率先してフィルヴィスとコミニュケーションを取ろうと近く。
「私はティオネ。細かい自己紹介は道中やるとして、あっちのが・・・」
「フィルヴィス・シャリアだ。協力はするが馴れ合う気はない」
暖かい空気をきっぱりと切り捨てその場を凍りつかせる。フィルヴィスからは近くなオーラが出ており、案の定話し掛けられる雰囲気ではなかった。
「レフィーヤ。わ、私嫌われた・・・?」
「いや、その・・・フィルヴィスさんは極度の人見知りみたいなもので・・・」
困惑するティオネを宥めるレフィーヤはこれからの事を考え胃に穴が空きそうな感覚を味わう。
「ねぇ、フィルヴィスは好きな人とか居るの?」
「なっ、何だいきなり初対面で!」
「あぁ、知り合いに好きな人が出来てそれに影響された見たいね」
雰囲気も関係無くティオナは恋話を始める。メレンにてアルガナがフィンを好きになった事で恋愛に興味を持ったようだ。
「あ、照れてる」
「もしや、神デュオニソスと熱愛!?」
「ありうる・・・」
色々と想像する女性陣だがフィルヴィスがそれに過剰な迄に反応を示した。
「か、勝手に話しを進めるな! お、お前はどうなんだ!?」
「ひゃい!? わ、私ですか!?」
これ以上弄られる前に標的を他に移すためにフィルヴィスは慌ててリーネを指差す。
「わ、私は・・・ベートさん・・・ですかね・・・」
リーネは赤面しながら自分の想い人を暴露し、それを聞いた女性陣は挙って目を丸くする。
「えぇ!? 意外!」
「おい、考え直した方がいいぞ」
「フィルヴィスさん、何もそこまで・・・」
ガチ否定するフィルヴィスにレフィーヤは苦笑いだ。ベートの性格を知っている者ならフィルヴィスの様な反応を示すだろう。
「難しい恋なのはわかっていますけど・・・それでもベートさんを助けられるようになるのが私の目標なんです!」
リーネはアイズをチラリと見る。ベートはアイズに気があるという事をリーネは知っていたのだ。尤も当のアイズはまるで気づいていないのだが。
「そこまで言うなら応援するしかないわね」
「あたしも応援するわ! 頑張れリーネ!」
「本当にアレで良いのか? 本当に本当にホントーにアレで良いのか?」
「フ、フィルヴィスさん・・・」
最後までフィルヴィスは否定派だったが流れは変わった。このまま上手いこと場を和ませられれば女性陣とフィルヴィスの距離を一気に縮められるとレフィーヤは考える。
「皆さ〜ん! 探したっすよ!」
「あ、ラウルだ」
血相を変えてラウルが手を振りながら女性陣に駆け寄る。
遂に見つかったのだ
場所はオラリオ地下水道、ダイダロス通りの地上を幾ら探しても出て来ない筈だ。しかし元々目を付けていなかった訳でも無い。
以前調査した時は地下へ通じる階段など無かった。見つけたというより見つけさせられたという方が近いような気もする。
ーーーーーーーーーーーーーーー
闇の中、ランプの光だけが1人の男と内部を照らす。洞窟に響く甲高い音の正体は男が刃物で何かを掘っているようだ。男の後ろは綺麗な壁になっている事から洞窟を掘り進めながら内装を作っているみたいだ。
そんな男の前に一柱の神が暗闇から姿を現す。
「力を貸してくれない? バルカちゃん」
「邪魔をしないでくれ。タナトス」
作業を続ける男の名前はバルカ、それを退屈そうに眺めているのは神タナトスだ。現在
「貴方と違って私達は永遠を生きられない。『作品』の完成には未だ・・・」
「それがさぁ、いよいよロキ・ファミリアがここを嗅ぎつけたみたいでさ。俺としてはここに招待して闇と共に安らかに眠らせてあげたいんだけど、ここの仕掛けはバルカちゃん達にしか扱えないでしょ? ちょっとだけ出て来てよ」
「・・・我々の作品に傷をつけるつもりか、タナトス?」
この迷宮とも言える規模の創作物は何十、何百と歳月を重ね、バルカとその先代達の生涯を懸けて掘っているようだ。
「アレはこんな時の為に使う物でしょ? このままじゃ、ご先祖さまの『迷宮』を作れなくなるかもよ?」
その言葉を聞いたバルカは動きを止めた。おそらく何世代も続けて来たであろう迷宮作りが出来なくなるのは不本意に思ったようだ。
「・・・時が来たら呼んでくれ」
「ありがと、バルカちゃん」
少しの沈黙の後バルカは作業に戻り重い腰を上げた。それを見た不敵な笑みを浮かべながらタナトスはその場を去る。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
扉は禍々しく、まるで地獄に繋がる門の様な悪魔的な装飾が施されている。オリハルコン製の扉はアイズのデスぺレートと同じ素材。破壊はほぼ不可能と言って良いだろう。
位置的にこの扉はダイダロス通りに繋がっている事から此処が
「つまり・・・罠、という事ですか?」
「そう考えるのが妥当だね。レフィーヤ」
女性陣が合流し総司を含むロキ・ファミリアのメンバーが出揃う。そして現状を理解し誰もが罠だと推理する。
「っ! 扉が開いた!?」
「敵だ!!」
突如扉が開いたと同時に四人の
しかし誰よりも速く動いたのはこの中では下っ端である筈の総司だった。
「ふむ、やっぱり久しぶりの仕事だと勘が鈍ってますね。こういう時は一人か二人は生かして情報を吐かせるのが基本なんですけどね。フィンさん、すみません。全員粛清してしまいました」
「・・・いや、いい。良くやった」
打刀に付着した血液を払い落とし鞘へ納刀する。それを見たフィンはそっと親指を隠すように握る。
(この疼きは・・・扉の向こう側に対してか、それとも・・・いや、今は考えるだけ無駄だ)
奇襲を回避した後、全員切り替える。
奇襲を受けた際、フィン、リヴェリア、ガレスは扉の奥から走り去って行く人影を見逃さなかった。
「フィン」
「あぁ、“仮面の人物“・・・間違いない。この扉を開けてくれたのはあの
怪人《クリーチャー》とは人間とモンスターの混合種であり、魔石を吸収する事でモンスターと同様に自身を強化する事が出来る。現在フィン達が知る怪人《クリーチャー》の内の一体があの仮面の怪人だ。
「ベート、ルクス、内部に侵入して偵察に向かえ。ただし深入りはするな、すぐに戻って来るんだ」
フィンの指示通り二人は少し先へ進み内部を調査する。分かった事は入口付近にはモンスターや人は居らず、迷路の様に複雑に道が分かれているという事だけだった。それはまるでダンジョンだったという・・・
「となると、これからどうするかだ・・・」
主力メンバーが口々に意見を出す。
罠なら敢えて行かないか・・・時間を与えればそれだけ敵に猶予ができ精霊の分身《デミ・スピリット》が地上に孵化する可能性が出て来るため却下。
外から中を罠ごと吹き飛ばすか・・・内部構造が分からない、しかも上には街があるという理由で却下。
「誘いに乗る形にはなるが・・・このまま突入するしかないな」
幸い戦闘に向けて準備はしてある。
「フィン、雑魚は置いて行こうぜ。足でまといは邪魔だから要らねぇ」
「ちょっとベート、仲間なんだからいい加減そんな言い方やめなよ」
「後衛の支援無しに私達がどれだけの力を発揮出来るのよ。後で武器が無くなったとか言って泣き喚いても知らないわよ?」
一軍メンバーだけで突入する事をベートは勧めるがヒリュテ姉妹は反論する。ダンジョンではないとはいえ未知の領域に足を踏み入れるのだ、頭数がいる。そういう理由からベートの案は却下された。
「前衛と後衛、治療班は僕とガレスが率いて侵攻する。リヴェリアやロキと数人は万が一のためにここで待機」
次々と人選が決まって行き、一番最後に残ったのは総司だった。
「最後に総司だが・・・」
フィンは迷っていた。総司を連れて行くか残すべきか・・・
そんな様子を見てベートは口を開く。
「おい、チビ野郎の役職的には前衛だ。後衛で支援なんて向いてねぇだろ。半端な力じゃ俺達には着いて行けねぇ。そいつこそ足でまといだ」
確かにこの中でLv.2の前衛は総司以外メンバーに入っていない。後方支援組に数人いる程度だ。スキルで実質Lv.3だという事を考慮しても一軍、二軍メンバーと比べると不安定だ。
「そうーーー」
「私は突入組に総司を入れる事を推薦する」
フィンの言葉を遮り、リヴェリアは総司を推す。誰もが、フィンですら驚愕した、おそらくベートと同意見であろう筈のリヴェリアが自ら推薦したのだ。
「理由を聞いても良いかな?」
「先程の出来事と、以前メレンにてギルド支部を調査した際の“悪を嗅ぎ分ける嗅覚“はおそらくこの場の誰よりも優れていると感じた。その嗅覚はこのダンジョンもどきには必ず役に立つ。私はそう信じている」
「ふふ・・・随分と評価するじゃないか。なら僕も信じるしかないな」
「リヴェリアが言うなら間違いないわね」
「総司、よろしくね!」
リヴェリアの一言で場は少し和み、張り詰めた空気が緩和する。丁度いい雰囲気という奴だ。
「決まりだな。突入部隊、前進だ!」
こうしてロキ・ファミリアは
しかし今回の調査に総司を推薦した事を後々リヴェリアは後悔することになるのだが、それはまだ少し先の話しだ。