突入して直ぐに気づいた事は閉じられている扉と開いている扉がある。なので進路が限定されてしまうので誘導される可能性が高い。壁を壊して進もうとするが、外見は石だが中身はアダマンタイトで出来ているためガレスでも容易には破壊する事は不可能なのだ。
オリハルコンの扉にアダマンタイトの壁、脱出も侵入も困難な難攻不落の要塞。
本当に
「ここからは二手に別れよう。この大所帯では襲われたら録に戦闘ができないしね」
広大なマップである為、最低でも二部隊に別れた方が効率が良いのだ。
ガレス率いるアイズ、ヒリュテ姉妹、他18人とフィン率いるベート、レフィーヤ、フィルヴィス、ラウル、アキ、そして総司を含む11人に別れた。
「沖田総司、お前はこの場所をどう思う?」
進みながらフィルヴィスは総司に声を掛けたことによってレフィーヤは密かに聞き耳を立てる。会話が詰まったら直ぐにフォローを入れる為にスタンバイしている。
「・・・ダンジョンに潜った時、壁の向こうから度々妙な気配を感じていました。そしてその気配とこの迷宮に漂う邪悪な気配は酷似している・・・もしも此処とダンジョンが繋がっているなら納得ですね」
ここの位置は大体ダンジョンの1階層か2階層と同じ、そしてこれまでフィン達が
「なるほどな。此処が
「そういう事です」
フィン班が広場に到達した頃、フィルヴィスと総司の会話は終了する。そこでレフィーヤは出番が来たと思い2人の仲を深めようと登場する。
「も、もしかしたら!
「その可能性はありますね。それほど重要な鍵なら先程の雑兵が所持していなかったのも頷ける・・・流石です、レフィーヤさん」
「となれば、鍵はーーー」
「フィ〜〜〜〜ン!」
広場の奥、階段を登った先の通路から突如フィンを呼ぶ声が聞こえた。その声は女性のもので、ロキ・ファミリアの誰のものでも無い事は瞬時に理解した。
「てめぇは私の事覚えてるか? 覚えてるよなぁ!? 忘れたなんて言ったらブチ殺すぞ、このスカした勇者様よぉ!! 腸を引きずり出してぇ、顔を切り刻んでぇ、全身を滅多刺しにしてっ! 二度と舐めた口きけねぇようにしてやるよぉ!!」
怒気を荒げる女性は口振りからフィンに相当恨みがあるようだ。
「だ、団長! 知ってるんですか?」
「あぁ・・・やはり生きていたか。彼女はヴァレッタ・グレーデ。
当時の
「で、でも、彼女は死亡扱いされてたっす!」
「『27階層の悪夢』で死亡したと思っていたが、あれは死を偽装するための隠れ蓑だった訳か」
『27階層の悪夢』
それは
因みにフィルヴィスも27階層の生き残り。
「腹が立つほど正解だよ、クソ勇者! あの日てめぇは27階層の救援に向かわなかった! 情報を聞くなりフレイヤとガネーシャの連中を連れて私達の主神どもを攻め入った! ひでー奴だよなぁ! この薄情者の悪魔が!」
27階層が手遅れと判断したフィンは手薄になった
「主神様が送還されてダンジョンの中で
「死ぬのは貴方ですよ」
ヴァレッタの目の前に現れたのはいつの間にか接近していた総司だった。彼女がごちゃごちゃ言っている間、総司は【虚】で近づき抜き身の刃をヴァレッタの首筋へ振るう。
「誰が死ぬって?」
所持していた歪な大剣で総司の打刀を防ぎ、払い落とす。現在のヴァレッタはLv.5。【虚】で近づいたは良いが《武士ノ道》が発動した事により光の粒子が発生し【虚】の意味が無くなってしまった。よってヴァレッタへの不意打ちは失敗した。
「躾がなってねぇ犬だな! だが、てめぇらはこの『クノッソス』で全員死ぬんだよぉ!」
この迷宮の名前と共にヴァレッタが球体の魔道具を掲げた瞬間、ヴァレッタの背後の通路を除く広場全ての扉が封鎖された。
閉じ込められた。全員がそれを認識して間もなく、扉の向こうから何かが向かって来るような振動が起こった。
「扉から離れろ!!」
全ての扉が一斉に開き、そこから大量の食人花が出現する。
「総員、正面に進め! 狙うはヴァレッタ・グレーデの持つ魔道具だ!」
襲い掛かる食人花の相手は最低限で階段を駆け上がる。既に階段に居た総司はそのままヴァレッタを追う。
「チィ! ちょっとは動揺しろよ、クソ共が! それに思ったより動きが速ぇ・・・だけどなぁ」
邪悪な笑みを浮かべ、踵を返して通路へ逃げる。
ヴァレッタが掲げたあの魔道具はこの『クノッソス』の扉を開ける鍵になっている事を印象漬け、本命の罠へ誘き寄せるつもりだ。しかしこの状況なら乗るしかない。
「団長! 殿は私とフィルヴィスさんで引き受けます!」
「頼んだよ。レフィーヤ」
「はい!」
通路の中まで追い掛けて来る食人花に向かってレフィーヤとフィルヴィスは同時に詠唱を始める。
『盾となれ
フィルヴィスの魔法で盾を作り食人花を足止めする。
『解き放つ一条の光、
レフィーヤの魔法で食人花を一掃する。信頼し合っている2人だからこそ出来る連携魔法だ。
「はっ! やっと使い物になって来たじゃねぇか!」
先頭のベートはレフィーヤを見て笑みを浮かべる。そんなベートの前方から食人花と単眼で蜘蛛の様な外見のモンスター*1が現れた。
「ベート!」
「構うか! 仕掛けて来る前に潰しちまえばいいだろうが!」
ヴァルグが攻撃を仕掛ける前に殲滅して行く。よく見たら落とし穴からも湧いて出てきていた。
(ヴァレッタ・・・何処かで見ているな?)
ヴァレッタを見失ってしまったが、幾多の戦いでフィンは彼女の思考を熟知していた。
(親指が疼く。それもかつてないほどに・・・)
親指の痛みに意識を向けているとモンスターの波が割れる。まるで道でも作るように、王の為の道のように・・・
フィンがそれに気づいた時には“王の代行者“は刃を振るっていた。
「赤髪の怪人!?」
以前、遭遇した時よりも戦闘力が有り得ない程に跳ね上がっている。
怪人とはモンスターと人間の融合体であり、モンスターと同じ様に魔石を喰らえば自身を強化できる。
「18階層での借りを返すぞ」
赤髪の怪人、レヴィスの一撃はフィンの槍をへし折りその体に斬撃を与える。ロキ・ファミリアの要、決して倒れてはいけない存在だった。あってはならならい光景に誰もが思考を奪われる。レフィーヤ、フィルヴィス、アキ達、ベートでさえも凍った時間の中でーーー
「死ね」
総司とラウルは跳んでいた。
剣が振り下ろされる瞬間を狙って総司はレヴィスに向かって斬り掛かり、ラウルはフィンを抱えて緊急脱出をしていた。
「邪魔をするな、羽虫」
「くっ!」
総司の一撃を振り払いレヴィスはフィンの方へ視線を向けるが、今の間にラウルはフィンを抱えて落とし穴へ飛び込む。それを見たアキ達も穴に飛び込み離脱する。
「ざまぁねぇな、フィ〜ン! お前が尻尾巻いて逃げるなんてなぁ!」
扉の影に隠れていたヴァレッタは姿を現す。
「てめぇ・・・ら!」
取り残されたベート達はレヴィス達に対して明らかに怒りを顕にしていた。
一番に飛び出したのはベートだ。雄叫びを上げながら真っ直ぐ向かって行くが、既のところで扉が閉じてしまう。
「くそったれが!!」
悔しがるベートだが間髪入れず食人花やヴァルグが襲い掛かって来る。
一方その頃、扉の向こうでは総司、レフィーヤ、フィルヴィスが取り残されていた。
(ここは、私が2人を守らなきゃ!)
レベル的には一番高いレフィーヤが杖を構える。
「総司君、援護をーーー」
レフィーヤの言葉が届く前に総司は動いていた。
【鬼子】と《武士ノ道》を発動させた総司はレヴィスに再び斬り掛かる。
「フィンさん・・・よくも・・・!」
「そんなに死にたいのか?」
しかし総司の連撃をレヴィスは顔色一つ変えずに全て防がれる。
「おい、用心棒様。遊ぶのも良いけどよぉ、そこのエルフどもは片付けておいてくれよ。私はフィンの泣きっ面を拝みに行くからな」
攻防の横でヴァレッタはラウル達を追うために穴に飛び降りる。
「フィルヴィスさん。私達は総司君の援護を!」
「あ、あぁ」
2人が詠唱を唱えるとレヴィスはそれに気づき、総司に蹴りを放つ。扉の向こうへ吹っ飛んだ総司を追うと、扉は閉じられてしまい2人はこれ以上の介入は不可能になってしまった。
「総司君!! くっ、どうしたら・・・!」
「落ち着け、レフィーヤ! 扉がある以上、先には進めない。取り残された仲間を救うにしても、リヴェリア様達に助け求めるにしても、今私達がやるべき事はーーー」
「新たな経路を見つけ出す!」
「そうだ。極力戦闘は避けて進もう!」
一刻も早く別の出入り口を見つけるために先に進む事を決意した2人は走り出す。