オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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導く風(テンペスト)

「あ? あぁ〜? ぷっ・・・ひゃはははははは!! オイオイ、フィン〜! 遂にお仲間に見捨てられたかぁ〜!?」

 

通路に一人座り込むフィンを見つけたヴァレッタは大笑いする。その背後には天井に張り付いていたラウルが奇襲するが、ヴァレッタにはお見通しだったようで攻撃を捌きラウルの顔面を鷲掴みにして地面に叩きつける。

 

「まぁ、そんな事だろうと思ってたけどなぁ。アタシはLv.5だってこと忘れたかぁ? てめぇのちんけな奇襲なんか通用すると思ってたのかぁ!? 無能な部活を持つと苦労するなぁ、フィ〜ン?」

 

「僕の・・・部下に・・・無能なんて、一人もいないよ・・・」

 

何処からか投げ込まれた袋がヴァレッタや暗殺者達の頭上を通り過ぎると同時にラウルは小石を弾き、その袋へ着弾させ中身をヴァレッタにぶち撒ける。

 

「んだこりゃ!? 臭ぇ!!」

 

「メレンで手に入れた魔法の粉っすよ。効能は・・・ご存知っすよね?」

 

「ッ!」

 

メレンで取り引きしていた食人花を引き寄せる粉。まさかそれを坂手に取るとは思っていなかったヴァレッタ達は取り乱す。そして間髪入れず暗殺者の一人が異変に気づく。

 

「ヴァレッタ様! 奴等の仲間です! 大量のモンスターを引き連れています!」

 

「今来られたら、やべぇ!!」

 

それは闇派閥(イヴィルス)が得意とする道連れ戦術かに思えた。しかし明確に違うのは今回犠牲になるのは闇派閥(イヴィルス)側のみと言う事だ。

 

「これ、貰って行くわ!」

 

この混乱に乗じて通路の柱の影で息を殺していたアキがヴァレッタの所持する結晶を奪取する。この結晶は極彩色モンスター避けの魔道具、このクノッソスで闇派閥(イヴィルス)が極彩色モンスターに襲われない理由はこれだ。

 

「なっ、てめぇ! 返しやがれ!」

 

「あんたの相手は自分っす!」

 

アキに放たれた斬撃をラウルが防ぎヴァレッタを追撃しようとするが、モンスターの大軍によってそれどころではなかった。

 

「チィ! 邪魔だぁ!!」

 

暗殺者達がモンスターに手こずっている中、Lv.5なだけあってモンスターを無双している。しかしヴァレッタが相手にすべきはモンスターだけではない。

 

「っ、レイピアだぁ!?」

 

横から放たれる連突はヴァレッタに炸裂するが有効打にはなり得ない。

 

「そんな二流程度の武器捌きでーーー」

 

大剣をラウルに振り下ろそうとするもモンスターが邪魔で振るえなかった。

 

「そうっす。自分はどんなに努力しても二流止まりだったっす。だから、どんな武器でも人並みに使えるっすよ!」

 

ラウルが所持していた丸めた布を解き無数の武器が空中に舞う。そこから最適の武器でヴァレッタを攻撃する。この乱戦の中でもはやヴァレッタに余裕は無かった。

 

「強い武器なんか持ってるから、咄嗟に手放せないんすよ!」

 

「うぜぇなぁ!! 舐めんじゃねぇぞぉ!!!」

 

純粋な力技でラウルに襲い掛かるが冷静さを欠いたLv.5などLv.4でも対処できるーーー背後からなら。

 

「後ろ、失礼するわ」

 

「て、てめーーー」

 

「させないっすよ!」

 

フィンを抱えたアキとラウルの息ぴったりの連携に手も足も出ない。そんな時過ぎる嫌な記憶。

 

(この連携・・・)

 

フィンとリヴェリアの連携が脳裏を過ぎる。

 

「てめぇら、ぶっ殺すッ!!!!」

 

正直な話しダメージは殆ど無い。これ以上時間を掛ければ負けるのはラウル達だ。

しかしそれは皆分かっている事。二人の連撃に尻もちを着いたヴァレッタを見たラウルは踵を返す。

 

「今っす! 全員撤退するっす!!」

 

「バルカぁ!! アイツらを逃がすんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」

 

ヴァレッタの怒号と同時に天井が開き、その穴から食人花がワラワラと姿を現す。それを見たラウル、アキ以外の団員が追い付きそうな食人花を蹴散らし撤退の援護をする。

 

「ラウルさんばっかりに良い格好はさせませんよ!」

 

「私達も足掻きます!」

 

「でも気をつけて下さいね! ラウルさんがサブウェポンを全部使っちゃたから替えは無いですよ!」

 

「わ、悪かったっす〜!」

 

「締まらないわね・・・」

 

呆れながら溜め息をつくアキだが。何とか打開したので小さく笑みを浮かべる。

 

「っと、まだ安心できないわよね・・・」

 

「この分だとガレスさん達も分断されてる可能性は高いっすね」

 

「俺達みたいに数人纏まっていると良いんですけどね。ここで一人は絶望的ですよ」

 

「総司は大丈夫かしら・・・」

 

アキの不安は的中しており総司は今一人でこのクノッソスを彷徨っていた。

 

「総司なら絶対大丈夫っすよ! メレンので戦い見たでしょ?」

 

食人花との戦いを見ていたラウルは無事を信じているが、現在進行形で総司は絶体絶命の危機に陥っていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ここはクノッソスでも特別広く床に無数のパイプが張り巡らされた空間。そして部屋の中心には7つの培養装置のような物が並んでいた。培養していたであろうカプセルは全て割られている事から既に此処には居ないようだ。中身はおそらくロキ・ファミリアの遠征で59階層に出現した『穢れた精霊』その胎児と思われる。

 

「存外に粘ったな・・・アリア」

 

レヴィスとアイズが此処で戦い、アイズは深手を負う。しかもレヴィスに殺意は無く手加減している事から実力は歴然。

 

「その傷でよく動く・・・諦めてしまえば楽になるというのに。お前も、あの小鬼も・・・」

 

「小、鬼・・・?」

 

「あぁ、名前は確か・・・沖田総司と言ったか」

 

総司の名前が出た。それにアイズは反応する。

 

「その子・・・殺したの・・・?」

 

「邪魔が入って殺し損ねた。だがあの傷では助かるまい。ましてたった一人でこのクノッソスから生きて出る事は不可能だ。今頃モンスター共に食われている頃だろう」

 

それを聞いたアイズは静かに笑う。先程まで限界が来ていた身体が一気に軽くなるのを感じた。それは唯の空元気に過ぎないのかもしれない。

 

しかしアイズは確信する。

 

 

目覚めよ(テンペスト)!』

 

 

発動させた風魔法は今までで一番力強くこの部屋を揺らす程の高威力を誇っていた。

 

「まだ足掻くか。全て終わりだと言うのに」

 

「あなたは何も分かってない・・・」

 

荒々しい暴風が吹き荒れる中、アイズだけは静かに笑みを零す。

 

「あの子は・・・私は・・・みんな(ロキ・ファミリア)は・・・」

 

 

強い(テンペスト)!』

 

 

再詠唱により強大な風を放出し、その風は大部屋から通路へ抜け更に奥へ奥へと突き抜けて行きやがてこのクノッソス全体を支配する。

 

「大精霊の風・・・無駄な事を・・・!」

 

アイズの風に苛立ち、レヴィスは攻撃を再開する。それに反応したアイズは刺突を放つ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

クノッソスに風が吹き始める少し前。

 

「敵が、多過ぎる・・・」

 

薄暗いT地路にロキ・ファミリアの団員であるリーネやルーニー、負傷したロイド達が十数人の闇派閥(イヴィルス)達に囲まれていた。

 

「万事休す・・・俺を置いて行け。どの道この腕じゃ戦えねぇ・・・」

 

道中ロイドは毒妖蜞(ポイズン・ウェルミス)の毒を受けてしまった為戦闘は不可能だ。何とか毒妖蜞(ポイズン・ウェルミス)からは逃げ出せたものの食人花や他のモンスターに襲われ殆どが満身創痍。体力も気力も限界に近づいていた。

 

「諦めないで下さい! きっとベートさん達が助けに来ます!」

 

ロイドを支えるリーネは鼓舞する。

しかしロイドの顔は晴れない。リーネよりも先輩である筈の自分が一番足でまといになっている事が分かっているからだ。

 

 

「「「「「「ッ!!!!」」」」」」

 

 

両者が睨み合い、数瞬後にはどちらかが仕掛けるその時だった。極限の集中状態の中、両者の目の前に落下して来た“生首“に目を向け全員が戦慄した。

 

一瞬の後、最前列に居た闇派閥(イヴィルス)側の六名の首が転げ落ちる。

 

それを視認する間もなく二〜三列目の闇派閥(イヴィルス)を惨殺。

 

「総司!」

 

ロキ・ファミリアの一人、アンジュが総司の姿を確認する。

漸く現状を理解した残り三人は一目散に逃げ出した。

 

赤い眼で確認した総司は打刀を投げて最後尾の一人を貫く。一息でその一人に飛び移り打刀を回収して、そのまま飛び上がり先頭の一人を殺害する。

 

腰を抜かした最後の一人は自爆しようと懐に手を伸ばす。だがそれよりも速く総司の斬撃が四肢を斬り落とす。

 

「ぎゃあああああ!!!!!」

 

闇派閥(イヴィルス)は激痛により悲鳴を上げると、総司は手頃な石を闇派閥(イヴィルス)の口に突っ込み強制的に黙らせる。

 

「これで自爆も服毒も出来ませんね」

 

約五秒で闇派閥(イヴィルス)を制圧した総司は捕虜の襟を掴み、そのまま引き摺りながらリーネ達の下へ移動する。

 

「そ、総司・・・だよな?」

 

悪魔の所業を見た全員は目の前の男が総司か疑う。

 

「皆さん、無事で良かったですよ〜。あ、ロイドさん! 死に損なってるじゃないですか〜!」

 

「は、ははは・・・この減らず口、総司だ。間違いねぇ・・・」

 

と思ったらいつもの総司に戻った事によりもう笑うしかなかった。とりあえず一難去ったと言って良いだろう。

 

「あ、リーネさん。最低限で良いのでこれ治して貰えますか?」

 

「は、はい・・・」

 

リーネの前に差し出した捕虜に全員ドン引きしている。特に総司の一つ上の先輩であるルーニーは両手で口を覆って怯えていた。これは一般人に見せてはいけないと心から思う。

マイペースな総司にリーネは何も言い返せず治療を開始する。

 

「この捕虜はフィンさんかロキ様に持って帰るとして・・・取り敢えず合流しなきゃですね」

 

「それは分かってる。しかし道が・・・」

 

「ーーーん? どうやらそれは問題無さそうですよ」

 

ピクリと何かに反応した総司は確信したかのように微笑む。他の者が首を傾げていると突如突風が通路に流れ込む。

 

「こ、この風・・・」

 

「アイズさんだ! アイズさんが呼んでる!!」

 

「これを辿れば合流できる筈だ!」

 

風の主がわかるとリーネ達は希望が見えたと歓喜する。そんな中たった一人、この漢だけは皆とは別の喜びを抱いていた。

 

「ふふふ・・・良い剣圧()ですねぇ・・・」

 

燃え滾る闘志が鼓動に反映される。赤く揺らめく眼光に剥き出しの闘争本能を隠そうともしない吊り上がった口。

 

「皆さん、行きましょう。道中の敵は僕が相手取ります」

 

総司を先頭に全員で風の発生源へ走り出す。

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