オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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至高の刀

オラリオで唯一ダンジョンに潜らず運営が成り立つファミリア、《ヘファイストス・ファミリア》。ヴェルフがヘスティア・ファミリアへ改宗する前にいた所だ。多くの上級鍛冶師が日夜鍛錬しファミリアの名に恥じぬ武器を打つ事に夢中になっている。

 

そんなヘファイストス・ファミリアの団長、椿・コルブランドの鍛冶場に総司は来ていた。

 

鉄を打つ音が鍛冶場に鳴り響く。

 

それを総司は黙って見ている。暫くすると椿は一息ついて作業を中断する。一段落ついた様子で工具を起き、掛けてあったタオルで顔の汗を拭き総司の方へ向かう。

 

「大した持て成しもせずにすまんな。沖田総司」

 

「いえ、突然押し掛けたので。謝るのは寧ろ僕の方ですよ」

 

いつもの愛嬌は無く、総司は至って真面目な様子でこの場に来ている。そんな雰囲気に椿は薄く微笑み茶をテーブルに差し出す。

 

「いつまでも客人を立たせては悪いからな、座って話そうではないか」

 

勧められた椅子に総司は座ると椿も座り向かい合う。

本来なら事前にアポ取らないと会えないのだが、ヘファイストス・ファミリアにとってロキ・ファミリアはお得意様である為ロキの眷属である総司は特別に通してもらったのだ。

その辺の気が回らないほど総司は切羽詰まっていたのかもしれない。

 

「それにしてもお主が此処に来るとはな。大体察しはつくが、用件は?」

 

「刀を一振り・・・貴方に打って欲しい」

 

先日クノッソスにて打刀を折られたので代わりが居る。

 

「やはりか・・・手前を選んだ理由は?」

 

「今まで見て来た鍛冶師の中で、貴方が最も優れていたからです」

 

「ほう、しかしお主は刀なら何でも良いと聞いたのだが?」

 

確かに総司は武器の性能に拘りは無かった。無銘の刀でも今まで戦って来れた。それはある意味総司なりの意地だったのかもしれない。しかしクノッソスにて見せられた凶悪な武器の数々、自身の技術だけではどうにもならない敵・・・

 

「意地と仲間を秤に掛け、戦士の義務とも言える武器の強化を怠った・・・結果、仲間を失いました」

 

もちろん武器のせいにするつもりは無い。あの場で最強の刀を装備していたとしても結果は変わらなかったかもしれない、しかし総司はその可能性すら棒に振ったのだ。

 

「これは僕の恥です。もう繰り返さない為に・・・来たる弔い合戦の為に貴方が今打てる至高の刀を打って下さい!」

 

勢い良く頭を下げる総司を見た椿は一度茶を啜り再びテーブルに置く。

 

「意地と仲間を秤に掛ける、か・・・誰の言葉だったか・・・」

 

椿は立ち上がり鍛冶場の棚を開ける。取り出したのは刀袋だった。それを持って総司の前に立つ。

 

「実は、お主の刀はもう作ってあるんだ」

 

「・・・えっ?」

 

その言葉を聞いた総司は驚きで顔を上げる。

 

「本当は口止めされていたのだが・・・こうなってしまっては話すしかあるまい・・・戦争遊戯(ウォーゲーム)の後、お主の主神ロキから依頼されたんだ」

 

詳しく言うとロキ・ファミリアは戦争遊戯(ウォーゲーム)の報酬で龍鋼結晶を入手した。戦争遊戯(ウォーゲーム)で活躍したのは総司なので、ロキはその使い道を総司の為に使いたいと思いフィンやリヴェリア、ガレスと相談し椿に最高の刀を依頼したのだ。ランクアップのお祝いも兼ねて準備して来たのだが思わぬイレギュラーで明るみに出てしまった。

 

「受け取れ、今日からこれは総司・・・お主の相棒だ!」

 

差し出された刀を受け取り袋から抜刀する。藍色の柄に刃文は陽炎の如く揺らいでおり刀身は銀色に鈍く光っている。それを見た総司は冷や汗を流し絶句した。

 

「これほどの刀・・・凄まじいですねぇ・・・」

 

見ただけで斬れ味が伝わるほどの刀に思わず口角がつり上がり鬼子を発動させてしまった。

 

「その刀の名は《菊一文字(きくいちもんじ)》だ。手前が打った刀でも至高の部類に入るだろう。斬れ味も以前の刀とは別次元だぞ」

 

「でしょうね。今まで見た名刀を遥かに凌ぐ一振りですよ」

 

神の恩恵も最高の素材も無かった前世ではこれほどの名刀は存在しないだろう。

 

「さて、総司よ。料金の事だが、一度ロキを交えて話そうと思うから後日また一緒に来てくれ」

 

依頼主は元々ロキなので総司だけでは話しができない。

 

「では今日の所は帰りますね。ではまた後日・・・・」

 

「その前に、此奴を受け取れ!」

 

菊一文字をテーブル置き、帰ろうとした総司に椿は何かを投げて渡す。

 

「これは・・・小太刀?」

 

菊一文字の三分の二ほどの長さの小太刀だ。柄と鞘も菊一文字と同じ色をしている。

 

「その小太刀の名は《鬼小町時行(おにこまちときゆき)》と言ってな。ダンジョンで武器がそれだけだと心許ないだろう? 下層や深層では脇差しなど通用しない。持って行け」

 

「でも、お金が・・・・」

 

この小太刀も菊一文字ほどではないにしろ業物の領域に達している事には変わりない。そして小太刀の料金を払えるほど総司の稼ぎは良くない。

 

「これは手前が遠征から帰った後、直ぐに打った刀だ。まぁ、その・・・お主の戦う姿を見たら滾ってしまってな。だから金は要らん」

 

「えっ、でも・・・」

 

「分からん奴だな・・・お主の剣技に見惚れた。それ以外に理由などない。黙って受け取れ」

 

「っ、ありがとうございます、椿さん!」

 

深々とお辞儀すると総司は感謝の気持ちでいっぱいだった。そして必ず目的を果たすと心に誓い鍛冶場を後にする。

 

後日改めてロキと一緒に椿の所に来た時は、サプライズ出来なかった事をロキは嘆いていた。

その時決まった事だがこの菊一文字の料金は1億5800万ヴァリスで、総司の到達階層や現在のレベルを考えて一人で返し切るのは厳しいと判断し、一度ロキ・ファミリアで全額負担し徐々に総司が返して行くことになったようだ。

簡単に言うと1ヶ月に返す額を設定しレベルや到達階層が上がる度に返済額が増えて行く仕組みだ。

 

「ロキ様、今日はありがとうございました! 料金は必ず返しますので!」

 

「ええよ、ええよ。他ならぬ総司きゅんの為やからな! 寧ろもっとおねだりしてもええんやで?」

 

夕日がオラリオを赤く照らす中、2人でロキ・ファミリアの本拠へと帰って行く。

 

「なぁ、総司。これからも闇派閥と戦ってくれるか? もし嫌なら、これまで通りダンジョンに潜るだけでもーーー」

 

「あまり僕を見くびらないで下さいよ。賊を野放しにしては、散って行った仲間に合わせる顔が無い」

 

ロキの質問に瞬時に答えた。

 

「それに、僕が逃げたらあの人達に切腹を命じられちゃいますからね」

 

「そうか・・・そうやろな。すまんかった」

 

ロキにとって総司の答えは分かりきっていた。なのに何故そんな事を聞いてしまったのか、ロキ自身も分かっていない。

そして総司の言う“あの人達“とはフィン達の事ではないというのはロキも分かっていた。

 

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