作戦会議より少し前、ロキは高台から戦場となるダイダロス通りを見渡していた。嵐の前の静けさのように静まり返ったこの場所は考え事には最適な環境となっていた。
(ロキ様、お願いがあります・・・・)
数時間前の記憶。
突然ロキの部屋を訪れた総司は真剣なものだった為、ロキもいつものおちゃらけた雰囲気はやめて対応した。
そしてこの訪問はロキにとって予想通りだ。
「ふぅ・・・・」
あの時の総司の表情を思い出してそっと一息つくと、前髪を掻き揚げ不敵な笑みを浮かべる。
「あの子は手強いでぇ・・・どうする、
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ダイダロス通りの仮拠点では総司の発言により静まり返っていた。ベル・クラネルを斬る、仲間に対してそうはっきり言い放った言葉の重みはロキ・ファミリア全員が理解している。だからこそ総司の言葉は理解できないでいた。
「そ、総司・・・今、アルゴノゥト君をなんて?」
「僕が斬る、そう言ったんです」
聞き間違いではなかった事を再確認した団員達は驚きから怒りに変わる。
「何を言ってるんだ!」
「幾ら悪人扱いされてるからって・・・・」
「仲間を手に掛けようとするなんて最低ですわよ!」
本気で総司に怒っている。仲間の結束が人一倍強いロキ・ファミリアだからこそ起こる事だ。しかし総司は顔色一つ変えずにフィンを見詰める。
「お前達、少し落ち着け」
リヴェリアの一声で静かにはなったが、それでも総司に対する怒りが無くなった訳ではない。
「総司、確かにベル・クラネルはお前に対して攻撃をした。それで“裏切られた“と恨むのも無理はないだろう。しかしーー「総司・・・」ーーフィン?」
総司の心情を察したリヴェリアは総司を諭そうとするのを遮ってフィンは口を開く。
「詳しく話してくれ。君が何故そうするに至った経緯、全てを」
冗談で言っていない事はフィンも分かっている。理解できない、だから総司を理解する為に話しを聞く事を選んだ。
「何故って、人に仇なすモンスターに味方しているなら・・・・モンスターとして討伐するのが冒険者なのでしょう?」
殺すのが当然と言いたげな総司に団員達はザワつく。
確かにモンスターと共謀しようものならその罪は極刑に値するだろう。現時点で世間一般ではベルのあの行動はあくまでドロップアイテムが目的だと誤解している。しかし本当に協力関係にある事が明るみに出ればギルド側も罰せざるを得ない。
ヘスティア・ファミリアと武装したモンスターが協力関係にあると睨んでいる組織は例外を除けばロキ・ファミリアだけだ。それも確証は無い。
しかし総司だけは確信していた。
あの日、ベル・クラネルは
「だとしても殺す事はないだろ!」
「敵であるモンスターと内通している、それだけで粛清するには充分なんですよ」
「だからって・・・仲間だったんだろ!?」
「仲間だったからですよ」
その言葉に非難していた団員は理解できないと言った様子を見せる。それはそうだ、結束力の強いロキ・ファミリアにとって仲間を殺す理由などあってはならないと考えているからだ。
「仲間が道を違えたのなら・・・仲間の手で死を持って止める。それが・・・僕の、
価値観の違い、これまで気にしないようにしていた団員達はここに来てその違いに固唾を呑む。
そんな空気を無視して総司はフィンに向き直る。
「しかしこんな状況で他派閥の人間を手に掛けたとなれば確実にロキ・ファミリアに迷惑が掛かる・・・なので、僕はロキ・ファミリアを辞めます」
理解が追いつかない団員達に更に追い討ちを掛けるように淡々と話し出す。
「総司、流石にそれは無作法だ。団長である僕に何の話しも無く勝手に決めて良い内容ではないと分からない訳じゃないだろう?」
「勿論です。なので、主神であるロキ様には話し、許可を貰いました」
「っ!」
総司がロキに会いに行った理由がこんな所で明るみに出たがフィンはそれどころではなかった。
(何を考えているんだ、ロキ?)
混乱する脳内とは裏腹にフィンは冷静さを装う。
「仮に君がここを辞めて、ベル・クラネルを殺害したとしよう。それでもロキ・ファミリアに対する疑いは発生するし、君自身もどうなるかーーー」
「これは僕が誰に命令された訳でもなく、僕自身の矜恃に従っただけ・・・つまり僕の我儘なんです。なのでこの件が終わり次第、全ての責任を負って腹を切ってお詫びします」
総司の切腹発言にこの場の緊張度が一段階上昇する。
「僕が自害したところで全ての疑いが晴れる訳ではありません。そこは迷惑を掛けます」
文字通り最期の我儘なので許して欲しいと、総司はフィンに頭を下げる。
フィンがどんな決断を下すか全員が注目している。まさかこのまま脱退を認める事などするわけが無い。いつもならそう思えた。
「・・・・わかった。その退団を認めよう」
「フィン!?」
思わずリヴェリアが声を上げる。同時に団員達も目を見開いて驚く。
「今日この時をもって《人斬り》沖田総司をロキ・ファミリアから除名する事を宣言する!」
この宣言に団員達はザワつく中、総司は頭を上げてその場を立ち去ろと扉の方へ向き直る。
「フィンさん、皆さん・・・お世話になりました。今生の別れとなりますが・・・・お元気で」
その言葉を言い終えると総司扉の方へ歩き出す。先程まで総司を非難していた団員も沈黙している。総司は死ぬ為に戦いに行くのだ、誰もが掛ける言葉を見つけることが出来なかった。
総司が退出した後も暫くの間、静寂が支配したがフィンが切り替えを促した事によって団員達も動き出した。
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(不味い不味い不味い不味い!!! 完全にしくじった!)
爪を噛みながら街を慌ただしく走るのはヘルメス・ファミリアの主神ヘルメスだ。いつも冷静で怪しげな雰囲気を漂わせているヘルメスが珍しく慌てている。
それには理由があり、遡ること一時間ほど前。
「やぁ、総司君。今日は綺麗な夜だね」
「・・・ヘルメス様ですか」
総司が座っていた屋根にヘルメスが現れた。と言っても隣りにアスフィが居るのでヘルメスはただ連れて来てもらっただけのようだ。
「心中お察しするよ。ベル君に攻撃されるなんてね・・・・総司君からしたら辛い事だったろうけど、オレはこう思ったんだ」
総司がいつもと違うのはヘルメスも分かっている、その要因も分かっているつもりだった。自分に背を向けて黙っている総司を他所にヘルメスは話しを続けた。
「何故彼があんな愚行に走ったのか・・・・何かしら事情があったんじゃないかってね」
「・・・・・・」
「それに皆は手柄が目的だと思ってるけど、オレはもしかしたらあの
ヘルメスの言葉を遮り漸く総司は口を開いた。
「ベルさんがあのモンスターを庇った事も、散々悩んで苦しんで出した答えなのもーーー全部分かってます」
ベルが総司に攻撃したあの日、一瞬だが総司はベルの顔を見た。その表情は今まで見た中で一番苦しそうなものだった。
「なら話しが早い! ご存知の通り、今ベル君は苦しい状況なんだ。そこで総司君の力を借りたい。ロキ・ファミリアと言う立場もあるから直接的な行動は出来ないだろうけど、誤情報を流すくらいならーーー「っ、ヘルメス様!!!」ーーーモゴッ!?」
総司から何かを感じ取ったアスフィは協力要請をするヘルメスを黙らせる。
「ーーーヘルメス様達も“ベルさん側に立つ“と言うことでいいですか?」
《誠》の文字を強調するかのように殺気とも取れる大量の剣圧を感じ取る。ヘルメスとアスフィは冷や汗をかきながら戦慄する。
「あくまでリトル・ルーキーの疑いを晴らす為に我々ヘルメス・ファミリアは行動しているだけです。あの愚行の本心が邪悪である場合は擁護するつもりはありません!」
アスフィは咄嗟に弁解する。ヘルメス・ファミリアは武装したモンスターとは無関係、ベルの無実を晴らす為の行動だと言い張る。
数秒の静寂が流れ、総司は再び口を開く。
「・・・・・そうですか」
総司も納得したようで剣圧を引っ込める。重圧が消えた事によりアスフィとヘルメスはホッと胸を撫で下ろす。
「間に合うと良いですね。“それ“・・・・」
「「えっ?」」
それだけ言い残して総司は飛び降りその場から移動した。アスフィとヘルメスは暫く考え、ある一つの答えに結びついた。
「アスフィ・・・」
「えぇ、おそらく・・・」
《人斬り》沖田総司はベル・クラネルを殺害するつもりだ。そう悟らせるほど凄まじい悪寒が2人に襲い掛かる。
(このままじゃ、
現在に戻りヘルメスは打てる手で総司を足止め、又は無力化しなければいけないと画策する。
ベルを中心にロキ、ヘスティア、ヘルメス・ファミリアの三派閥、武装したモンスターやギルド、
IFとかでやって欲しい内容を活動報告で募集したいと思います。よろしければどうぞ。