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夜のダイダロス通りは相変わらず静かだが、その静寂を破ってヘスティア・ファミリアが動き出す。それを察知したロキ・ファミリアや他の派閥、
誰よりも早くベルと対峙したのは他でもない総司だった。
「総司・・・あの時はごめん! 謝っても許して貰えないかもしれないけど、僕はーーー」
「分かってますよ。ベルさんの事ですから、この状況も覚悟の上なんでしょう?」
「総司・・・」
怒っている様子は無く、それに安堵する内心とは裏腹に心拍数は上がり続けている。
「なら、死を覚悟しなさい」
「えっ?」
耳を疑った。
「一度その道に進むと決めたなら、それがどんなに茨の道でも最後の最期まで走り切りなさい」
武装したモンスター、改めて
「僕はとうの昔に覚悟はできています・・・・」
総司は静かに菊一文字を抜刀しながらベルを見据える。冷血な眼差しにベルは自身と戦いに来た事を察した。
「本当に残念ですよ。こんな形で・・・貴方と死合いたくはなかった」
言い終えると同時に総司はベルへ斬り掛かる。狼狽えつつもベルはヘスティア・ナイフで総司の連斬を防ぐ。
「ま、待ってよ・・・いやだ! 僕は総司を傷つけたくない!」
「それは僕じゃベルさんには敵わないって意味ですか?」
もちろんベルはそんなつもりでは無い。何度も死線を潜り抜けてきた仲間だから殺し合いなんてしたく無いという意味だ。しかしベルの中には総司を傷つけたくないという、慢心にも似た気遣いが心の奥底にあった。何故なら総司がLv.2になってからも度々ヘスティア・ファミリアの本拠に訪れ、ベルと模擬戦を行っているからだ。その情報でベルは総司の戦力を把握し“本気で戦えば勝てる“と無意識にそう思っていた。
「ち、違う! 僕は仲間と戦いたくなんてーーーッ!」
そんなベルの慢心を悟ったか、総司は数段加速させた斬撃でベルの頬に傷をつける。
「あはは、やだなぁ・・・今なら僕に勝てるとか思っちゃってるんです?」
頬に伝う血を拭いながらベルは目の前にいる《人斬り》に恐怖を覚えた。
「勘違いしないで下さいよ? 言っときますけど僕・・・・“ベルさんごとき“に、今まで一度も本気を出した事ありませんから」
ここに来て漸く気づいたーーー嘗ての仲間は自身を本気で殺すつもりなんだと。
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幕末の獅子と若き英雄の戦いが始まった中、ヘルメスはバベルの塔、最上階へ駆け込んでいた。両雄の戦闘を止めるべくフレイヤの所へ救援要請を出しに来ているのようだ。
「知性のあるモンスターねぇ・・・・」
「そう、それがウラノス達が秘匿していた事だ」
ヘルメスはフレイヤの前に片膝を着き
「フレイヤ様、オレはベル君の現状を憂いている。色々奔走してはいるが、どうしても止めなければならない存在がいるんだ」
ヘルメスの脳裏には先程見た《誠》が焼き付いていた。そして現状であの人斬りを止める事が出来るとしたらフレイヤ・ファミリアしかいないと確信していた。
「それで私に泣きついて来たわけね」
「返す言葉も無い。しかし貴方とてあの白い光が喰われるのは不本意だろう?」
ベルを特別なまでに気に入っているフレイヤならこの提案を受け入れてくれる、これで総司の魔の手から救出できるとそう考えしたり顔でフレイヤの返答を待つ。
「貴方・・・・本当に
返ってきたのは蔑むような眼差しと冷たい回答だった。
「なっ、このままだとベル君が・・・!」
「落ち着きなさい。私達が見て来たあの子は・・・どんな苦難にも抗って来た。貴方が用意した試練とやらもね」
イシュタルの件、ヘルメスが裏で糸を引いていた事などフレイヤにはお見通しだったようだ。しかしフレイヤはそんな瑣末な事などもうどうでもいい。
「
そう言うとフレイヤは大窓からオラリオ中を映画鑑賞でもするように眺める。その歪んだ笑みはヘルメスに戦慄を覚えさせるのに十分だった。
「なら、英雄が返り咲く舞台はオレが用意しよう。その為にはクノッソスの鍵を貰いたい」
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「はぁ、はぁ、はぁ ・・・・」
戦闘が開始して数十分が経過した。
戦況で言えば総司が優勢だ。ステイタスの面ではベルに軍配が上がるが、対人経験では圧倒的に総司が勝る。
所謂、経験の差という奴だ。
少し対人戦術を齧った程度では到底埋められない技。
「終わりですね・・・・」
切り傷塗れになりながら息を切らしているのはベル、対して総司は無傷で冷たい視線を向けながら頸へ目掛けて菊一文字を振るう。
「ま、持ってよ、総司! あのモンスター達は・・・・心があるんだ!!」
ベルの言葉に総司の刃が首筋を切り裂く前に止まる。
「あのモンスター達には・・・・ウィーネには僕達と同じ感情がある! 僕達と同じ言葉を話し、笑い合い、仲間を死を悲しみ、夢を語り合える事ができるんだ!」
息を切らしながら訴えかけるベルの表情は必死そのものだった。
「ーーーーそれがどうしたんです?」
返ってきた答えはとても冷たいものだった。
「えっ、だ、だから・・・」
「同じ言語を使う、僕らと変わらない喜怒哀楽がある・・・・それでもヤツらはモンスターで、粛清対象である事には変わりない」
ベルは言葉を失う。
総司が過去にどれほど内通者を粛清して来た事か。人と同じ感情を持とうが今更総司の刃が止まるわけが無い。
「ヤツらの存在を許せば、世の常識が覆る。それは良い事でもあり、とても危険な事でもあります」
フィンが危惧した事と同じで、人類の味方になるモンスターを人間が下手に受け入れ信頼関係を築き上げれば、通常のモンスターを攻撃する時に躊躇する者が必ず現れる。戦闘に於いてその隙は致命的であり命取りなのだ。
「これ以上は無駄ですね・・・・」
そう呟いた後総司は素早く足払いをすると、ベルは尻もちを着き総司を見上げる。ベルは完全に戦意を喪失しているように怯えた表情をしている。
「ーーーさようなら、ベル・クラネル」
月明かりが刀身を照らし銀色の鈍い光の残像だけを残して静かに菊一文字を振り下ろした。