オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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天才剣士、オラリオに降り立つ

「なんだ・・・あれ・・・」

 

もんすたーの正体は異形の化け物。それが4匹、人を襲い、町を破壊し暴れ回っていた。

 

「おい! 突っ立ってないで早く逃げろ!」

 

逃げろと促すおじさんの声は総司には届いていなかった。

戸惑いや恐怖、興奮など様々な感情が入り交じる中、彼を突き動かした感情は・・・戦闘意欲(斬りたい)だった。

 

「あ、おいッ!」

 

おじさんの制止を無視して、最高速度でモンスターに接近する。

まずは1匹、抜刀した刀でトロールの首を跳ね飛ばす。

それに気づいた残り3匹のモンスターは即座に総司を取り囲む。

 

「ずっと寝たきりだったから・・・久しぶりだなぁ・・・この感じ・・・」

 

戦場の重くピリピリとした空気。それが眠ったままだった、剣士としての本能を呼び起こす。

 

取り囲んでいたモンスター達は一斉に襲いかかる。

その攻撃に対して総司は全て刀で往なす。スピードは一級品だがパワー不足である為、競り合いは避けたい。

先程のトロールは不意打ちだったので瞬殺する事ができたが今度は警戒されている為、中々攻めきれない。

 

「すごいな、あの子・・・」

 

「なぁ・・・段々速くなってないか?」

 

逃げ惑っていた住民も総司の戦いぶりについ見入ってしまっていた。

一般市民の目から見ても分かるほど、総司の動きや太刀筋が飛躍的に練磨されつつある事が分かった。

 

「市民の皆さん! 早くこちらへ避難してください!」

 

立ち止まっている姿を見て駆けつけた【ガネーシャ・ファミリア】の眷属が避難を促す。

 

「どこのファミリアの方かは分かりませんが、ここは頼みました! もう時期助けが来ますので、それまで持ち堪えてください!」

 

そう言うと眷属は避難して行く住民の誘導に移った。

 

「必要ないですよ・・・そんなの・・・」

 

小声で呟くと刀を握り直し構える。

本調子に戻りつつある総司の刀は容易にモンスター3匹の警戒網をすり抜け、両腕を斬り落とす。

両腕が無くなり、最後の手段として噛み付こうとしたところを飛び上がり、瞬時に首を跳ね飛ばした。

 

「うん。大分勘が戻って来たな」

 

刀に付着したモンスターの血液を振り落とし鞘へ戻す。

すると討ち取ったモンスターの体は砂に変化し、残ったのは宝石の様な石のみだった。

 

「怪物が砂に・・・? それにこの石は・・・?」

 

この石は【魔石】と言ってモンスターの体内の中心部に存在する核の様なもの。魔力が込められた紫紺の結晶であり、砕かれるとモンスターは即死する。

モンスターを倒しこの魔石をギルドで換金することで冒険者の主な収入源となっている。

 

「ッ!! 何かが来る・・・!」

 

強風とともに何かが地面に着弾する。

 

「・・・これ、君がやったの?」

 

そこにいたのは金髪金眼で神秘的な美貌を持ち、一見物静かそうな雰囲気の少女【ロキ・ファミリア】の眷属、アイズ・ヴァレンシュタイン だ。彼女の二つ名は【剣姫(けんき)】でロキ・ファミリアの中でも最強クラスの実力を持っている。

 

(この剣圧・・・あの芹沢 鴨よりも遥かに上だ!)

 

剣圧とは簡単に言うと戦闘力や威圧の事を指す。

そして芹沢 鴨は総司が生前、唯一負けた男だ。但し二度目の戦いでは総司が勝利し、芹沢は散った。

そんな彼よりも強い存在に総司は動揺している。

 

すると民家の屋根から新たに3人の少女が降りて来た。

彼女らもロキ・ファミリアの眷属、

アマゾネスの姉妹【怒蛇(ヨルムンガンド)】ティオネ・ヒリュテ

大切断(アマゾン)】ティオナ・ヒリュテ

エルフの少女【千の妖精(サウザンド・エルフ)】レフィーヤ・ウィリディス。

いずれもロキ・ファミリア上位の強さを誇る。それと同時に総司は自分よりも格上だと確信する。

 

「今の戦い見てたよー! 君強いね!」

 

「どこのファミリアの子かしら? 服装からしてタケミカヅチ・ファミリア?」

 

「あ、あの・・・実はさっきこの町に来たばかりで何も・・・」

 

「じゃあ都市外の子ね。どこのファミリア?」

 

「ふぁみりあ?」

 

何を言っているのか分からないと言った表情する総司を不思議に思い4人は顔を見合わせる。

 

「え、えっと・・・どこかのファミリアに所属しているんですよね? 主神のお名前は?」

 

「主神? 神様って存在するんですか?」

 

レフィーヤが両膝を地面につけて総司と目線を合わせ質問をすると、ファミリアの事どころか神の存在すら認知していない事に驚く。

 

「君、もしかして記憶喪失?」

 

「記憶喪失ならあんな動き出来ないでしょ」

 

記憶喪失の場合でも身体が覚えているパターンもあるが、あそこまで鋭敏な動きをするのはほぼ不可能だ。

 

「・・・・・・」

 

「アイズ?」

 

無言だったアイズが総司の方に歩み寄る。

 

「な、何ですか!?」

 

「ア、アイズさん!?」

 

有無を言わさず総司の襟を強引に掴み背中を覗き込む。それを見たレフィーヤは若干頬を染めている。異性の背中を覗き込む様な行為は他種族と比べて潔癖症なエルフにとってハードルの高いものだった。尤も心を許した異性なら話しは別かもしれないが。

 

「この子・・・神聖文字が無い」

 

神の眷族の証として神の恩恵(ファルナ)を背中に刻むのだが総司はそれが無い。一応個人情報を護る為施錠する事は可能だが都市外から来たと言うのなら遅かれ早かれ改宗(コンバージョン)する事になるだろう。その為わざわざ神の恩恵(ファルナ)を施錠する理由は無い。

 

「今の様子から考えると、おそらくこの子何処のファミリアにも所属していない・・・」

 

ティオネの考察を聞いたレフィーヤとティオナは目を見開き驚く。

それもその筈、今倒したモンスターはいずれも【迷宮(ダンジョン)】11階層レベルで、彼女らにとっては蚊みたいな存在でもLv.1にとっては猛獣と言っても過言では無い。ましてや冒険者でもない一般市民が武装して勝てる相手では無い。

それが常識であった筈なのだが、沖田総司という男はその常識を打ち破った。

 

「って事は神の恩恵(ファルナ)無しで倒したの!?」

 

「そんな人が存在するなんて・・・! 一体どれだけ鍛えれば出来るんですか!?」

 

「ティオナ、レフィーヤ、落ち着きなさい」

 

3人が揉めているとアイズは総司に興味を持った様に真っ直ぐ見つめる。

 

「君、名前は・・・?」

 

「えっと、僕は・・・」

 

突然地震が発生し、揺れは次第に大きくなる。するとすぐ近くで轟音が鳴り響く。見てみると巨大な花の様なモンスターが地面から突き出していた。

 

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