「兄貴!手合せ願う!」
俺が児童館に併設してある道場で訓練しているところに、いきなり夕刃が尋ねてきた。
「どうした?相手なら妖怪の山に沢山いるだろ。」
「なんというか、みんなと同格になってきたから、更なる高みへ…目指したくなった…」
「それ、言ってて恥ずかしくないのか?」
「あぁ、今後悔の真っ最中だ。」
そう言って頭を抱え始めた。そのまま床で転げ回る未来が見えそうなぐらいの落胆である。
けど、そうか。そこまで行ったのならいっちょ、幻想郷の最強の一角にでもぶつけて見てもいいかもな。
「じゃ、俺じゃないけど、相手を紹介してやるから着いてこい。」
「お、おう…お願いします…」
俺は外出の準備を始めた。
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「で?なんで強くなりたいんだ?」
目的地に向かって歩いているところに、気になったので質問をしてみた。
俺の道場に押しかけて来るぐらい何か切羽詰まっているのだろか?
「ここでは、俺は弱いから……かな?」
「あぁ、お前、比那名居天子にボコボコにされたもんな。それと他には…霧雨魔理沙、後は紅魔館ってところのメイドと主だったか。」
比那名居天子が暇すぎて起こした“異変解決ごっこ”。
それを、射命丸と一緒に行動してた夕刃。
しかし、なんの力も持たないただの人間である夕刃にとって今回は辛く厳しい異変だったみたいだ。
これまで、現世で剣で適う相手はいないほど彼は強かった。しかし、ここ幻想郷では剣術もそれ以外も強いやつは多いし何せ、能力や人智を超えた力までもが戦いで使われる世界だ。そんな中に鍛えてるとは言えど、能力なき人間が戦うにはあまりにも不利だ。
それで今回の異変。色んな強者にもまれ、自分の弱さを知ったみたいだ。妖怪の山では手練までには成長したが、所詮は井の中の蛙と気づいたらのだろう。
「そう、もう本当に大敗って感じだ…現状の自分を知った今、今の俺には能力持ちと戦えるだけの技量が必要なんだよ。」
「んじゃ、更なる高みへ……なんて言わないで、素直に強くなりたいって言えよ。」
「誤魔化さなきゃやってけないぐらい、参ってるってことにしておいてくれ…」
「了解っと着いたぞ。」
目の前には、鳥居に続く段差の多い階段がある。
「ここは神社…だよな。」
「あぁ、神社の前にある石段だな。多分3桁ぐらいの段数はある。今からお前にはここの石段を階段ダッシュしてもらう。」
「それはいいけど、この神社に何があるって言うんだ……」
「それは登ってからのお楽しみだ。ほら、さっさと行け。」
夕刃は、身体、太腿、脹ら脛、アキレス腱の順に伸ばしていき、その後、石段を駆け上がって行った。
その後、俺も後をついて石段を上がっていく。
ちょうど、頂上につく頃。ヒデブ!というなんとも世紀末でやられた雑魚の台詞が聞こえてきたが、それを気にかけずにそのまま石段を登り終えて、鳥居をくぐった。
境内には、伸された夕刃とこの神社の紅白巫女が立っていた。
「よう、霊夢。」
「ようって、貴方ね。ここの石段は鍛えるためのものじゃないんだけど…。後、そこに転がっている奴は何者?言い訳や話だけ聞けば知り合いってのはわかるけど。」
あ、一応聞く耳はもってくれたのね。結果夕刃はやられてしまったけど。
「まぁ、説明するからこいつはここで伸びててもらうとして、一応お参りだけはさせてくれ。」
「えぇ、有難いわ。」
俺は、元実家である博麗神社へお参りを済ませて、いつもの縁側へと向かった。
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「ふーん。アイツが文が言っていた新しい人間の部下なのね。そして、今のあんたの弟でもあると。それは話も信じずに手を挙げてしまったのは、悪い事したわね。」
「まぁ、悪いやつじゃない事だけは俺が保証するさ。」
「そう。」
素っ気ない返事をした霊夢は、湯のみ入ったお茶を啜った。
最近、様々な用事でここに来る事が多く、霊夢ともそれなりに仲良くなってきた。
一応、元実家であるから気軽に帰ってくるって気分ではあるのだが、そうしてる内に紫からのお使いや、その他諸々で、ここに来る回数も増えてきたって感じだ。
「それで、神社の石段を駆け上がって来た意味はなんなの?」
「アイツが、強くなりたいんだとよ。この世界で自分の身と、大切なものぐらいはな。だとさ。」
「ふーん、そう。私にはわからないわね。」
「そりゃ、天才には分からない領域だ。」
そういった後、2人で茶を啜る。
まぁ、理解してくれてないのならそれはそれで俺からしたら好都合ではある。
彼女は天才であるのは事実であり、手合わせした時に俺自身も実感してが、彼女にはもう少し強くなって欲しいのが現状だ。
啜った後に、2人してホッと息を着いた時騒がしい足音が聞こえてきた。
「お、やっと起きたみたいだな。」
「起きたみたいだな……じゃねーよ!!何くつろいでんだよ!!」
勢いそのままに、夕刃が縁側へと突っ込んできた。境内で伸びていた彼は一体何処へやら。
「貴方もお茶、如何かしら?」
「あ、頂きます。……じゃなくて!訓練はどうしてくれんだよ!」
「ん?あぁ、それはこれからだ。それより先に、茶でも飲め。」
「チッ、後でぶっ飛ばす…」
そう言って、霊夢からお茶を受け取り、縁側には座らずにそのままお茶をいただいていた。
「お、このお茶美味い。」
「そう。」
「で、兄さんは何でここに連れてきたんだ?」
「お、そうだな。霊夢。こいつはやっぱり能力持ちじゃないよな。」
俺は霊夢に夕刃の能力鑑定をする為にここに来た。
一応、俺と紫で能力鑑定はしたもののそもそもの素質もないし、霊力も魔力もなしという残念な結果になった。
本人も、それを知ってさらに努力して、妖怪の山の鴉天狗共ぐらいは強くなったみたいだ。
だが、普通の人間は魔力や妖力持ちの鴉天狗に適うはずはないのだ。これが現実でリアルなのは間違いないのだが、彼、神先夕刃はハンデなしで、鴉天狗、そして妖精や妖怪を普通に倒してしまう。これは俺が実際に見た訳ではなく、彼の上司の射命丸文や天魔がそれを証明してくれているから嘘でないのはわかる。
しかし、証明しているからこそ、普通の人間からしたら有り得ないのだ。普段持っているのも普通の真剣で、今まで剣の道しか通ってきてない人間がここまでのひとならざるものと戦えてるだけで凄いのだ。
だから、今ここでもう一度博麗の巫女に彼の事を見てもらおうとここ博麗神社に来た。
俺の言葉でじっと夕刃を見ていた霊夢が溜息を履いてやれやれといった表情を浮かべた。
「駄目ね。なんの反応もないし、力もないわ。」
「やっぱりそうか。」
「あの〜期待させて落とすのやめてくれませんか?」
さりげなく期待していた夕刃が落胆する。
「すまんな。まぁそれはさて置き、霊夢。こいつと手合せしてくれないか?」
「えぇ、いいわよ。」
「そこをなんとか……っていいのか?」
「なんか面白そうだし。多分能力持ちじゃない人間の中で考えたら彼は怪物級よ。噂になっていたから、少し興味があったのよ。」
「へ〜そんなに。」
「何よ。」
「いやぁ、別に何も。」
まさか、こんなに二つ返事で進むとは思っていなかった。
普段は怠けに怠けて、面倒臭いことはしたがらないあの霊夢が、まさか積極的に行ってになるとは、いやはや、何がトリガーとなって動くのか分からないものだな。
「オイオイ!俺は1つも承諾してねーよ!」
「おっと済まない。けど、強くなりたいんだろ?」
「確かに、そう言ったが……幻想郷で最強とはいうものの、人間の女の子だろ?俺のポリシーに反する。」
んな、あまっちょろい事を言いやがる。
ポリシー云々にお前は彼女に指1本触れられるか分からないだぞ。
と言っても、確かに夕刃の戦闘スタイルは刀中心だから言いたいことは分かる。
タフな妖怪共と比べて、人に刃を向けることがどれだけ危なく、覚悟が必要か。
ただの組手と言っても、当たれば致命傷を負わすかもしれない物でやりたくは無いのだろう。
「じゃ、俺はパスと言う事で兄さんもごめん。」
そう言って俺らに背を向けた夕刃少し意外だったが仕方がないか。
「ふーん、大した事ないのね。」
歩き始めた夕刃が霊夢の呟いた一言を聞いたのか歩みを止まった。
なんか、嫌な予感がする……
俺の本能…いや、感みたいなものがそう告げている。
これは流石に止めねば。
「ちょっと待て。その言い方はちょっと良くないんじゃないか?あいつが使うのは真剣だ。それを扱うやつの気持ちにもなれよ。」
「そんな事私からしたらどうでもいい事でしょ。だって、私強いし。貴方より強い剣士とも戦ってい来たのよ。戦わないで逃げるなんて、腰抜けよ。大した事ないに決まってるじゃないの。」
「大した事ない……腰抜け…だと…」
振り返り、完全に覚悟を決めたのか、それとも、怒り出忘れた顔なのか分からないそんな顔を見せる。
俺の感は完全に当たりを引いてしまったようだ。これは本格的にヤバい気配がする。
思わず軽く身震いをしてしまう程に、目覚めてはいけない闘志がそこにはあった。
「霊夢。これはマズイわ。」
「どうしたの?顔色悪いわよ。」
「お前は夕刃の逆鱗に触れてしまったんだよ…俺もマジでやらないと止まらないぞ。」
「だったら、貴方を倒した私なら楽勝ね。」
霊夢もやる気になったところで、夕刃が鞘から刀身を抜き、霊夢に向ける。
「許さねぇ……ぶっ飛ばす!!」
夕刃の一言でお互いが地面を蹴り、戦闘が始まる。
夕刃は霊夢頑張ってる間合いに入った途端一太刀浴びせるが、それをわかっていたかのように躱し夕刃の背後に回る。
霊夢の一撃が背後から襲う。それを即座に左腕で受け止める夕刃。
一進一退の攻防をし始める二人。そこからさっきまでの霊夢の余裕はなくなってきた。
「何よコイツ!貴方より全然強いじゃない!」
「だから言っただろ?彼奴は昔から“負け犬”とか“腰抜け”呼びされるのが大っ嫌いなんだよ。こうなったら本気で叩きのめすか、叩きのめされるのかどっちかだ。」
「ウソでしょ」
「助けなさいよ」とでも言いたげな顔をこっちに向ける。
「よそ見すんな…」
こちらに顔を向けていた霊夢が声の主の方へ目を向けると目の前にはすぐそこに刃。紙一重で避ける霊夢。
「なんなのよ〜。」
「俺の兄貴は腰抜けじゃない。そういうなら、俺を殺してみろ……」
霊夢から距離を離し、夕刃は体制を整える。
すると、夕刃が持つ刀が翠色に眩き始める。
俺らは驚き、そして彼は当然のように、その緑の光を纏う刀を思いっきり振り下ろす。
斬撃が衝撃波のように霊夢に向け、一直線に飛ぶ。
その衝撃波は地面を抉り、周りの物質を吸収し、どんどん大きくなる。
つひには、博麗神社を飲み込むほどの大きさになり、霊夢をも圧倒する。
「流石にこりゃやべぇわ。
【箱符】一人きりの鳥籠」
俺の能力の壁を1人分の箱型サイズにして発動する能力で霊夢を包む。
どういう構造であんな衝撃波ができたかは知らんが、とりあえず霊夢に直撃する事はこれで無くなった。
あとは、夕刃を無力化するだけだな。
「加減なんてマジでねーぞ。」
俺は脳の限界の壁を2つ一気に壊す。
相手は弟。しかも前みたいに加減をする事は出来ない。
「夕刃止まれ。霊夢はお前に腰抜けといっただけで、別に俺に向かって言った言葉じゃない。」
そのまま地面を蹴り、夕刃の近くまで距離を詰めて、1発拳をお見舞いするも、完全にかわされてしまった。
「その後、俺より兄さんが弱いと言われたんだぞ!俺の地雷を2度踏み抜くやつは、ぜってーに許さねぇ!!」
「あーもう、めんどーだな!!」
「だけど、兄さんが俺に対して全力で倒しに来てるんだ。これを機に手合わせ願おうって事で、兄さんが攻撃を止めても俺は兄さんを躊躇なくボコボコにする。」
「うっわぁ、さらに面倒じゃん。」
夕刃と戦闘しながら、横目で霊夢の方を見た。
一応俺の能力はしっかりと昨日したようで、霊夢への直撃は免れたようだ。とりあえず、夕刃が落ち着くまでそのままにしておくとして……
にしても、流石に前とは違いすぎる。
前はこれで余裕もって躱していたのに、凄くギリギリになってきてるし、此方の攻撃を当てるのも用意でもなくなっている。
「お前強すぎじゃないか?これだったら修行しなくても戦って行けるっての!!」
「しらねーよ。俺だってここまでできるんだったら、修行なんて頼まねーよ!!俺自身びっくりしてるんだよ!」
一体何がどーなってるのやら。
考え事をしながら夕刃の相手をする余裕がない。最後の脳内の壁を壊してオーバーフローして思考してもいいが、そこまでしたら、後はどうなるかわからん。
俺は今の状態で最大限に使い、思考と戦闘のダブルタスクを開始する。
さて、夕刃が身体的に変わったところはひとつもない。先程、霊夢に見てもらった通り、能力もなければ霊力、魔力と言った特殊な力もないはずなのだ。
さて、冷静に考えて何処が変わったのか、心の持ちよう、覚悟、は変わったかもしれないが、実際それは能力を開花するトリガーとしては確率としては低い。
それがトリガーだとしても、夕刃自身から発言したわけじゃなさそうだ……ん?待てよ……
「おい夕刃。前の刀はどうした?」
「前の刀は比那名居天子との戦いでぶっ壊れた。そしたら天魔さんがこれを使えってコイツを貰った。」
なるほどね。
「夕刃。もう一度あの翠色の斬撃波を出せるか?」
「もう遅いっての。」
夕刃が言葉を話しながら、翠色の斬撃から飛ぶ。先程同様、触れるものを取り込み、その斬撃波はみるみる大きくなって俺に向かっていく。
「ふんっ!」
「は!?マジでバケモンかよ!」
俺は全力でその斬撃を思いっきり殴り飛ばす。拳の外に四角いバリアを纏わせ、俺の身体に触れさせることなく無傷で吹っ飛ばした。
「兄貴に向かってバケモンってそりゃねーだろ。」
「あ〜ぁ、あれを防がれたらさすがに負けだわ。完敗完敗。」
「んじゃ、霊夢の事も?」
「あぁ、もういい。兄貴と少しでも渡り合えるって事がわかっただけで良しってことやな。後、この力って一体なんだったんだ?」
俺は霊夢を囲っていた能力を消して、夕刃の急な変化については解説しようとした所……
あれ、声が出ねぇ。急に目の前もクラクラ、チカチカしてきた。
あ、流石にこりゃヤバい。
やり過ぎたわ。
俺の身体からするリと力が抜けていった。
本当にナマケモノになってしまった…
気長にお待ちいただきありがとうございます。
次はちゃんと月一です投稿出来ればなぁ…
それではまたお会いしましょう。
バイバイ