また沈む。深い深い海の底に…
しかし、底は見えず、見えてきたのは走馬灯のような昔の記憶。
俺が物心着いた頃、確か鎌倉時代中期。俺が博麗霊威として生きていた時。
双子の弟が生まれて、命の凄さを知った。
小さい身体で力一杯に動かして、自分をアピールして今を生きているその凄さを感じた。
しかしその弟も、3年後の春に双子のひとりが突然死を迎える。そして、その年の夏を迎えるころ、もう1人弟が死んだ。死因は妖怪に食べられてらしい。
そのショックで、当時母のお腹に宿っていた妹が早産にて出産し、母は難産にて命を落とした。
その時に立ち会っていたのが紫だった。
紫は俺らの面倒を見てくれて、妹も俺も普通に育った。
そして、時が経ち……
妹が博麗の巫女としての使命を受け継ぎそしてその3年後に武士と結婚。そしてすぐに子供を授かるが、流産。
諦めた2人の間にまた子供ができる。次は元気な男の子を無事出産。
この後は安泰と思われた…がそれが絶望の始まりだった。
長男を出産した2年後次男を出産して幸せの絶頂にいた妹であったが、その3日後に長男が死亡。次に産まれたばかりの次男も突然死を迎える。
この悲惨な現実に耐えられなかった妹は塞ぎ込んでしまう。
不自然に思った俺は紫にこの件を話した。
が、頑なに話さない紫。それでもしつこくこの不可思議は事を教えろと迫る俺。
そして、この不可思議な出来事が立て続けに起るなか妹は長女を出産。
その後、直ぐに息を引き取った……
妹に最後にあった時、俺を見て彼女は俺に対して“化け物”と言い放ってその命を終えた。
それを見ていたのか、紫は博麗の血筋に話してくれた。
「貴方は確かに化け物よ。」
「俺が化け物?どういう事だ。」
「この博麗の血筋には男の子が早死する呪いがかかっているの…10歳を必ず迎えられない。そういう呪いがね。霊威、貴方は今幾つかしら?」
「20歳だな。という事は俺の存在自体がこの血筋の異端ってことになるのか。だから化け物と。」
「そういう事よ。呪いの術者はわかってるのよ。けど、あれを当時の私達では封印することしかできないし、今も解決策はないわ。」
「紫さんが珍しい、泣き寝入りなんて柄じゃないだろ。」
「いいのよ、必ず私が解決する。それがどんな手でも、使命であり役割であり、私の業なのよ。」
とても悲しい目と恨みの感情そして覚悟をその言葉から感じた。
今考えたらそれも当然だろう。
あの時のことを体験した唯一の妖怪だからな。封印して100年は余裕で経つ。
歴史から抹消されたその紫しか知りえない苦しみを知らないフリは出来なかった。
話しを聞く限りこれはおれらの呪いだ。それなら、俺が終わらせるしか無いだろう。
俺が異端なら、俺がイレギュラーなら、それが…この呪いの解呪こそが俺の産まれた意味なのだろう。そう感じた。
紫から呪いの話を聞いた次の日。早速俺は今の旧地獄に封印されている邪神を拝みに行った…
「ふーんこれがねぇ。とりあえず嫌がらせ嫌がらせっと。」
俺は自分の能力と霊力を使い、強固な結界を作り、その場を立ち去った。
その後の俺は、室町時代や、戦国時代で暗躍して、その後の江戸時代へと生きながらえた。
人間の寿命何てものはとっくに過ぎていって、怪我も負うし、死にかけた事もあったが、何故か老いることはなかった。
ここまで来ると自分も妖怪なんじゃないかとか色々探ったものの結果何を調べても自分は特殊な人間で博麗の人間。
結局、俺は人間で呪詛のお陰で特別な力を持っているだけの異端者ということしかわからなかった。
つまり、生まれて来なければ、何もかも上手くいっていたかもしれないという事だ。
現に俺がいても居なくても幻想郷は出来て、博麗の巫女は代替わりをし続けていける現実を目のあたりにしている。
自分が解呪の為に生まれてきたとはいえ、それ以外は俺の存在を全否定してくることが、胸の中でドス黒いものとしてうずまき、年月が経つにつれて肥大化し続けていく。
そのモヤモヤを晴らす為に、月に単身乗り込んで半壊させたり、妖怪共を根絶やしにしようとしたり、不老不死の人間と殺しあったりと、無茶苦茶な事をしでかした事を次々と思い返す。
「で、今回は何をしでかしたのかしら?」
「俺を全ての元凶みたいに言うなよ。今回はただの人助けだ。童喰いの妖怪を爆ぜたら返り血をどっぷり食らったわけよ。湯浴みさせてくれ。」
「いいけど、貴方自分の家があるでしょ。何でここなのよ。」
「ここが居心地が良いからに決まってるやん。その代わりまた覚えてきた美味しい料理振舞ってあげるから、まぁ待っとけ。」
「別に求めてないわ。まぁ貴方がここがいいって言うなら私は文句はないわ。」
何故か嬉しそうにする紫。大妖怪も形無しだな。
とりあえず、温まって落ち着くか…
……
…
身体が綺麗になった後、俺は浴衣に着替えて料理をする準備を整えた。
台所前には藍ちゃんが既に用意を始めていた。
「霊様お久しぶりです。」
「あぁ、お、美味そうじゃん。色々腕があがったんじゃないか?」
「よしてください。式神になった時にもう一度やり直しただけで、本当はここまでできたんですよ。いい男をたぶらかすにも色々出来てないとですから。」
「の割には、まだ子供っぽい所が多いよな。ほれ、ヨシヨシ。」
そう言って俺は、藍ちゃんの帽子の上から頭を撫でてやる。するとしっぽをパタパタとさせて喜ぶ。顔はいかにも何も無い感じで振舞っているというのに。
「しっぽ」
「うるさいです!私は副菜を準備しましたので後は任せました!」
ぷりぷりと可愛く怒って行ってしまった。可愛かったが流石にからかいすぎた。
さて、料理を始める前に左側にいるスキマから出てきている美女にも頭を撫でてやる。
するとさっきまで痛々しい視線を放っていた彼女のに表情はみるみる柔らかく溶けてゆく。
「大妖怪様もこの笑顔じゃ形無しだな。」
「いいの。どうせ貴方しか見れないのだから。」
「全く、人間喰いの憎らしくも愛らしい大妖怪が……」
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
「何処も褒めてねーよ。」
ツッコミが終わった所で紫から旅の成果やお土産話で盛り上がった。
「ん!これすごく美味しいわよ。霊威も食べなさいよ。」
「人間の俺が人の肉食ってどうするよ。」
「しかし本当に美味しいですよ。後で教えてくださいませんか?」
「お、いいぞ。」
「ありがとうございます!」
団欒と食卓を囲む。
最も俺が気を抜ける場所。
ここが大妖怪が住まう場所で、人間は食料として以外は立ち入れない場所なのだが、俺はここが落ち着いてしまうのだ。
食事も終わり。藍ちゃんに片付けを任せ
て居心地のよいその場から立ち去った。
何故だろうか
何でもいいが、ここで良かったんだ。
俺は誰にも認知されない方がこの世界的にもいいんだ……
どうせ、寝る気も眠気も無いので屋根の上に乗り星空を眺めていた。
「まーたここにいるのね。落ちて怪我しても知らないわよ。」
「ほっとけ、どうせ怪我もすぐ治る。化け物だしな、本当に忌々しい呪いだ。」
本当に生きている事が嫌になるぐらいに
「この呪いのせいで幾度も死んでいく他人や、兄弟、子孫を見てきた。その度にイライラして色んなことをしでかしたよ。」
「そのイライラで月に単身乗り込んで半壊させたり、妖怪たちを殲滅させたり、聞き分けのない先代の妖怪の山の族長をぶっ潰したりって、イライラに対する発散の仕方が大きすぎるのよ……本当に呆れる。どこが英雄なのかしらね。」
「俺も知らん。勝手に言わせておけ、なんも知らん人間たちに理解などできんよ。大妖怪にもわからんのだから。」
なぜ英雄呼ばわりされなきゃならないんだろうか…ただ俺は呪いを解きたいだけだったのに、知らないうちに寄り道、空回りの結果こうなってしまい、未だ解呪には至らなかった。江戸も落ち着いてきてそこに俺の居場所はなくなり、結果帰ってきて妖怪退治の生活に戻ってた。
「けど、結局人間の為に自分のやりたい事そっちのけで動く霊威の事私大好きよ。」
妖怪とは思えないそのキラキラする少女のような笑顔でそんなことを言ってくる。
何故か胸を打つようなその顔と裏腹に失ってきたものが次々とでてきた。
この胸を打つ感情は昔から感じている。
紫のあの寂しそうな顔を見た時からずっと…
だが俺にはそんな感情に振り回されている時間はない。
その前に、その寂しそうな顔をさせない為になんとしてでも、この呪いに早く蹴りをって……アレ?どっちが理由だったけ?俺の生まれた意味?それとも、紫の為?
まぁどうにしろ…
「そうかい、大妖怪にも好き嫌いな素直な感情があるんだな。」
「何それ?私の事なんだと思ってるの?」
「ん?憎らしくも“愛しい”大妖怪って何度も言っているだろうが、んじゃ寝るわおやすみ。」
高鳴る鼓動を引っ提げ、自分の寝室に戻った。そしてあまり見ない夢を見る。暗くとてつもなく大きい何かに意識ごと、深い底にゆっくり沈んでいく。そんな夢を…
そしてその数日後博麗霊威としての人生のピリオドが打たれた。
当時の博麗の巫女が娘を産んで、その子を紫が預かり次の巫女として隙間です育成していた時に最悪な野郎が目覚めた。
俺は人里に出たそいつを止めるために単身で挑みに行った。
人里は古明地さとりや稗田家、白上沢、妹紅のおかげで避難が手早く進み、人ひとり妖怪1匹も残ってなかった。
「よう、1人でお散歩かい?クソ野郎が。」
「貴様など知らないが、アイツの力の匂い…博麗の血族か…しかしなぜ男が?」
「知らねーよ。お前の呪いのせいだっての!兎に角、お前を す。」
俺は邪神に素早く近づき初撃を食らわせる。
「ふふッ、この世界のバグか、それともこの世界自身が対抗策として作った切り札か…どうにしろ呪いはこのまま続いてもらわなければ困る。俺と同じ苦しみを味わい、絶望していけ…」
しかし、奴はまともに食らったはずなのに傷1つ負わず、2撃目、3撃目と連続して奴に当てるもまるで手応えを感じない……
「俺を誰だと心得るか。お前らを滅ぼす神ぞ。今迄無意味な訓練を積んできたものにこの積年の思いを崩されるものか…」
俺からしたら迷惑極まりない言葉の羅列の後、邪神が放つ拳。その拳を避けたと思ったのだが、何故かしら直撃する。
肋が折れる音が身体中に響き、胃の中のものが全て吐き出してしまうほどに重く、深い一撃だった。
直撃して、悶え苦しむ俺を見て高笑いを始める。
「人の子よ、そんなものかい。数百年ぶりのやり合いだ。あの時は楽しかった。博麗の巫女が俺に対して全力で遊んでくれた…だから今回も、もっと俺を楽しませろ博麗の小僧!」
こいつは純粋に呪いと殺戮を楽しんでやがる。これ以上のさばらせるのは不味い。
コイツもこいつが放つ瘴気も…
前回紫達がこいつを封印した後、その瘴気のせいで飢饉が起こった。養和の飢饉と言う歴史にも名が知れているこの飢饉の元凶はこいつ自身である。こいつがこの世にいればいるほど、良くない影響が出る。
「もう、出し惜しみは無しだ。」
「ほう…俺に対して手加減をいていたとは、粋な小僧だ。では、その実力見せてみろ。」
俺は人間が無意識に貼っている壁を能力を使って、全て壊し、自分の限界を引き出す。
これを使い続けると俺が死ぬまで動き続ける事ができる。
本当に出し惜しみはしない。俺が死んだってやつが死ねば俺の役目は果たされる。
だから、後は任せた。
戦いは激化する。
戦いは日を跨ぐ。
戦いは終わらない。
戦いの末
俺は負けた。
長い戦いにやっとの思いで俺は邪神を再度封印することに成功はしたものの、俺の身体はどこひとつ言う事を聞かなくなった。
両腕は捻り折れ、内蔵はぐしゃぐしゃ。片足ももがれて、あらゆる所から血が出ている。極めつけに心臓付近に思いっきり風穴が、がっぽり空いている。これでまだ息があるとか本当に化け物なんだな俺。
「あーぁ、これまでの苦労が水の泡か…けど、とりあえず守ったぞこの世界は。」
結局、紫には迷惑かけてばかりだったな。
もう少し素直に生きれれば……なんて俺には無理か。
今この死ぬ直前でさえ、紫のことを考えてしまう。いっその事蓬莱の薬…不死の薬を飲んで一緒に生きて行ければ良かった。それぐらい俺の中で後悔とはち切れないほどの感情が迫ってくる。
今までために溜め込んだこの気持ちは爆発すること無く、どんどん薄れて消えていく。
それと同じく俺の意識も消えていく。
けどやったぞ、封印がとかれたクソ野郎はとりあえず再封印した。俺の死と交換条件だ。新たな呪いも作られないだろう…しかし、この手でその呪いが解けなかったんだ。悔しい。ここで終止符を撃つことが出来なかった。俺が死んだら次に呪いを解除するのは何時になるだろう。このままずっと解けないままなんて残酷すぎる……
だが、これ以上は望めない。あとは頼んだ
隙間妖怪---
愛しの大妖怪ーーー
八雲紫。
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悪い夢、と言うか走馬灯も一周したのか目が覚めた。
「お目覚めかい。英雄さん。」
お見舞いに来ていたのか、椅子に座った夕刃がこちらを見ていた。
「誰のせいでこうなったと思う…本調子になったら本気で潰すぞ…」
「ごめんごめん、あんまりシリアスが続くからつい。」
「シリアスって……てめぇ見てたのかよ。やっぱり潰す、今すぐ潰す。」
思いっきり起き上がってみたものの全身が悲鳴をあげる。
「イッテェ、くっ、こんなはずじゃないんだがなぁ…」
「初めて兄さんに勝ったような気がする。」
「そんな勝利は嬉しいですか?」
「うん!!」
「全力笑顔で頷くな…それでどうしてここへ?」
「あぁ、俺の能力……と言うか俺の刀について教えてくれ。」
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ここから、また
自体が二三転転がってゆく…
一気に過去を振り返り、次から最終章へと向かいます。
最後までゆっくり書いていきますのでどうぞよしなに
それではまた次話、別の作品でお会いしましょう。
バイバイ