東方呪魂転   作:吉兎

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Intro〜また、貴方に出逢うまで〜

 

 

 

 

この日私の中のなにかの歯車が止まった。

それまで見ていたあの笑顔はなく、ただただそこには風穴の空いている友人だったものである。

奇跡の子や異端児と呼ばれ、数百年生きてきた彼も結局は人間で、私と違い簡単に命を落としてしまう。それが今日だった。

 

仕方が無いとは思った。まだ博麗の巫女は幼く到底戦力にはならずほかの妖怪は自分の住処やってた人里を守るので精一杯。かくいう私も、この幻想郷や博麗の巫女を守るので手一杯だった。

戦いに行けたのは彼だけで、結果も撃退と封印という、あの邪神に1人で立ち向かったとは思えない程の戦果を挙げたものの、死亡者はその彼だけである。

 

初めにあの邪神と戦闘した時は倒しきれず、多数の負傷者やってた死亡者を出してようやく封印できたと言うのだから、今回は本当に上々な戦果なのは確かなのだ。

周りにとってはそうなんだ。しかし私にとっては違った。

 

 

 

何度も言うことではないが、彼は死んだ。

何時までも私の隣にいてくれると思っていた。たった1人の異性が今日いなくなった。

 

その事実が私の中から離れなかった。

ずっと、ずっと、ずっと…………

 

 

 

 

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彼とは、500年以上の付き合いだった。まだ藍を式神として迎える前で彼が小さい頃から知っている。

彼も私が恐ろしい妖怪で妖怪たちのための楽園を作ろうと企んでいる事も知ってる。

 

それでも、彼は私と仲良くしてくれた。

彼が成長しても変わらず、妖怪ではなく、同種族として仲良くしてくれた。

多分、博麗の巫女の一族だからと思っていたがそうでも無いみたいだった。

 

けれど彼の一族、博麗の巫女の一族は呪いにかかっているのにも関わらず、彼だけが特別なのは確かだった。

呪いにかかった博麗の巫女が男児を産むと、その男児は10歳を越えず死んでしまう。彼も例外に漏れず亡くなるかと思ったが10を越え、15になっても彼は死ななかった。むしろ彼を産んだ母や、血を分け合った兄弟姉妹さえ、彼の事を異端児、忌み子と言い始め挙句の果てには、彼の事を家族では無いと棄てた。

彼も薄々気がついていたみたいで彼は呪のことを聞いたので私はそれを全て彼に話した。

彼は全て受け入れて、呪いを解く術や自分の力をつける為に旅だった。

 

それから、彼が旅から帰ってくる度に成長を感じたつつ、どんどん人から遠ざかって見えたと同時に、私との距離はどんどん近づいて行った。

彼が私に近づく度に、そうやって月日が経つ度に、当たり前のように私の隣にいる度に、私にとって彼が必要不可欠な存在になっていくことがわかった。

 

 

そして、こうやって彼が居なくなってしまうなんて微塵も思わなかった。

 

彼がいなくなるのは、私の夢を叶える為にも相当痛手だった…………

いや、私らしくないが本当に悲しかった。こんな感情も久々に感じる程に…………

 

 

 

 

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あれから約200年後、この当時の博麗の巫女と博麗大結界を作り、その後、今の幻想郷を作り上げた。

 

あらゆる人、妖怪たちの協力を経てここまでやって来たが、ここまで来るのに200年以上かかった。

貴方がいたらもっと早く実現していた。皆の信頼を得ていた貴方がいたら100年ぐらい短くなっていただろう。

 

 

彼が亡くなった時、彼が言っていたように彼がいた記憶や歴史を人間や妖精から消し、稗田家の当主には彼を元にした御伽噺を作ってもらった。

しかし、彼の記憶が御伽噺だけになってしまうのは何処か寂しく、心が苦しくなった。

貴方を私だけ記憶しているのもそれは少し嬉しく思う。だけども、私以外誰も彼の事を覚えていないのもそれはそれで悲しい。

こんな矛盾を抱えた事もあったが、結局、彼と交流のあった妖怪達の記憶は消さないでおいた。

もし、本当は貴方が死んでいなければ、いつも通りふらっと帰ってくるかもしれない。

そう思ってつい約束を破ってしまった。

 

また、旅からいつも通りに帰って来る。そんな気持ちが何百年間も心の片隅にあったから。もし帰ってきても、彼が今まで通りに過ごせるように……

 

 

 

 

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今現在、あれから邪神絡みの問題もなく、たまに幻想入りしてくる者たちや妖怪たちが起こす異変以外には、基本平和な日常を送る幻想郷。

一部のもの以外はその昔、邪神による危機は忘れられ、彼の活躍は御伽噺として定着してきた。

 

「紫、貴方頑張りすぎじゃないかしら。少しは休みなさい。」

「休んでるわよ。最近は藍にも任さられるぐらい安定してきてるし、結界も定期的に管理する必要もあまりなくなったから。」

 

そういうと、友人である西行寺幽々子は扇子で口を隠しながら呆れた顔をされた。

 

「あのね、紫。ずっと気を張って何時でも動けるようにしているのは休んでるとは言わないわ。しかも、ここ数百年こんな感じよ。本当に休まないと幾ら貴方とはいえ身体壊すわよ。」

 

この子言葉は彼女からの優しさに溢れていた。

 

「霊夢も歴代で最強を誇るし、魔理沙だって人間だけど霊夢に並ぶ程の実力者よ。貴方も彼女らの力は私が起こした異変の時に痛感したでしょ?なら、もう少し肩の力を抜いたらどう?」

 

確かに、今の幻想郷は強者ばかりで私も異変解決などに動かなくても良くなり、幻想郷の管理に集中出来るほどに安心はしている。

多分、彼女からしたら、なにか余裕のないような見え方になっているかもしれない。

私が頑張りすぎているとか余裕がないとかそんな事は全くないし感じてもいない。

 

「わかったわ。これからは少し気をつける……」

 

そんな、フワッとした返事の後、現代で異様な霊力を感じた。何度も感じたあの懐かしいようなそんな霊力。彼だ。しかしどこか違う。本当に断定はできない。

だが、現代でこれほどの膨大な霊力は今までに感じたことが無い。もし、なにか誤って博麗大結界に触れようものなら、結界は緩まり、すぐさまほかの人々に幻想郷の事を知られるだろう。

 

「幽々子ちょっと急用ができたの。すぐ戻ってくるから待ってて。」

「ええ、いいわよ。」

 

そう言って幽々子はお茶をすすった。

私も早急に向かわなければ……

 

もしかしたら、彼かもしれないそう心のどこかで思ってしまい、足取りは自然と早くなってしまった。

 

そんな気持ちの中、霊力を持つ人物の所へ着く。ベンチに座り込んで、何やらブツブツと呟いている。

 

「あの子ね。にしても何を呟いて居るのかしら?」

 

観察している限りはちょっとおかしな青年って感じの子ね。

そう観察しているとなんか考えが纏まったみたいな顔をしたので、その下にスキマを作ってベンチに座っていたあの子を落とした。

落とした後、その子を観察したけど、慌てる様子や周りを見て気絶する事もないみたいだ。いたって落ち着いている。

 

話を聞く内に、雰囲気が彼に似てきた。寧ろ彼そのものだった。しかも極めつけには、

 

「まぁ、勿体ぶってもあれだ。俺だよ、俺。博麗の異端児だよ。転生したから容姿は違うけど、博麗の異端児ご本人だ。」

 

などと言うのだ。私はこの生意気な餓鬼の力を試すと共に、何故早く帰って来なかったのか、生きてくれているなら言ってくれればよかった。もし、この餓鬼が博麗霊威ならば、この怒り任せの弾幕を交わしてくれるだろうなんて考えもなく、ただただ感情をぶつけるような弾幕だった。

 

そんな弾幕もあっさりと躱された。それでも彼という確証が欲しかった為、発破をかけるもののあっさりと様々な過去を暴露された。

正直恥ずかしかった。

けど、彼が帰ってきたという感情は今にも爆発しそうだった。いや、この感情を止めていたものは全て決壊するのは時間の問題だったらしく、彼の胸に抱かれながら、全て爆発したのだった。

 

 

 

その後、私は彼の現家族である神先家の人間や、その他、神先唯人に関わってきた現代人の記憶を全て消した。そして彼の持ち物も全て幻想郷に運び、私は幽々子の待つ我が家に帰った。

幽々子にも、彼が生きていた事をすぐさま教えた。

 

「紫…貴方ウキウキし過ぎよ。もう少し落ち着きなさいよ。」

「え?そんな雰囲気出てる?」

「もうなんか、水を得た魚って感じよね。」

 

との言われようだった。

そんなに浮かれていたのだろうか?その時はそう思ったが、幽々子の言う通りで、その後のプチ宴会で私は久々に酔いつぶれた。

相当浮かれていたのだろう。

 

 

 

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彼が帰って1週間後。彼はここ迷家に拠点を置いて、何やら、児童館?という施設を建てて政経や情報を手に入れるみたいだ。その、児童館?と言うやつがなにか分からないけど、何やら子供達のための安全な遊び場みたいな所らしい。そういう所では彼らしいといえば彼らしい。

いつも、誰かの為に動き、自分の利はあまり考えないところは前世も今世も変わらないらしい。特に自分の兄弟や甥っ子が彼家の呪い。博麗家の呪いで幼くして死んでいるのだ。だから、他の今生きている子に対しては大切にしたいのだろう。たとえ、どこの誰とも知らない子だとしても……

 

そんな彼を夕食の為呼び戻そうとした時に私に彼は言った。

 

「お前の勝手な我儘かもしれないが、俺の知り合い達から俺の記憶を消さないでくれて、ありがとな。」

 

なんの事かすぐわかった。多分どこかの知り合いの妖怪にでも聞いたのだろう。

確かに私は彼の約束を破った。だけど、感謝された。

前世の彼からしたららしくない発言なのは間違えはないのに、私はすごく嬉しかった。

彼が死んだ時に止まった歯車がまた動きだしたみたいな感情が揺れ動く。

 

「なによ。貴方らしく無いじゃない。」

「そうかもな。まぁ、そういう時もあるってことで……紫、本当にありがとな。」

「……変なものでも食べたかしら?」

 

凄く嬉しいが、茶化してしまった。

そして、ちょっと時間が欲しくて、先に帰ってしまった。

スキマが閉じた後、私の顔が真っ赤になっているのは、火を見るより明らかだったのは言うまでもない。

 

 

これからはまた彼がいる。友人であり、心の支えであり、そしてこの私が初めて人間ではなく、異性として好きになった人がいる。

 

次は、貴方と一緒に歩みだそう。

例え最後が苦しい別れだとしても……

今世は貴方の隣にいる。

 

 

私って自分が思っているより重いのかしら?




前回の話数を執筆して、ちょっと描きたかったので書きました。
もしかして、蛇足。なんて事は思わない。
紫さんの感情が描きたかったんや!!後悔はしていない!!


ということで、また次話お会いしましょう。
バイバイ
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