俺の兄貴は天才だった。気持ち悪いぐらいなんでも出来て、その度に周りから疎まれ、怨まれ、妬まれた。
それでも兄貴は怯まず全てはね返した。普通こんなにも周りから嫌われてしまったら閉じもこってしまうものなのだが、兄貴はそれをねじ伏せた。喧嘩相手諸共。
こんな兄を持ったのだが、俺は親や周りに比べられる事もなく不自由なく生きてきた。まるで兄貴は別物扱いされるように。
親には感謝している。無茶苦茶な兄貴も尊敬している。
そんななにか間違っているようだが、俺にとってはそれが当たり前そんな日常をずっと生きていくのだとそう思っていた。
それが当たり前だと思っていた。
……これって語り部的には在り来りな展開だよね。
堅苦しい事はこの辺で、とりあえず俺、神先夕刃はいなくなった兄貴“神先唯人”を探していた。
兄貴は空手の試合後、帰ってくることはなく、連絡も取れず文字通り行方不明になったのだが、誰も覚えていないというとても不思議な神隠しにあった。
原因はわかっている。あの不気味な異空間からでてきた女性のせいだ。
俺は彼女を見た後の記憶はあまりないが、周りと違って、兄貴の記憶が消えたわけじゃなかった。多分、なにか運命に逆らった気分だ。なんというか自分でも気持ち悪い。
そんなこんなでって言うけどどんなこんながあったかは省くとして、俺は数日間兄貴と関わってきた人全てに当たってみるものの、誰もが知らぬ存ぜぬと一蹴りされた。
しかも名前まで知らないという。ついでにあの金髪美女についても聞くがそれも知らないと……なんとも手の込んだ神隠しなとこだ。
「全く、最近やっと兄貴の考えている事がわかるようになってきたって言うのに、今度はなーに考えてんだ。また厄介事に首突っ込まなければいいけど。」
今日は身体が言うことを聞かずそのままリビングで寝てしまった。
“守矢神社に行け”
どういう事だ。
“今のままが嫌なら……守矢神社にいけ。”
お前は誰だよ。
“2日後、午前○○時に○○県守矢神社だ。”
何故そんな所に、というか質問に答えろ!
“間に合わなければ、お前はそのままだ。変わりたければ、会いたければ、向かへかの場所へ”
おい、答えろよ!答えろよ!おい!!
「ってぇ!……夢かよ。」
なんとも、在り来りなオチだよこれ。俺はなにかの漫画の主人公かっての、そんなの願い下げなんだが。
と言ってもあの見透かしたような声は何だ。
確かに俺はこの世界がつまらないと思っている。兄貴は別格だった。けど俺は剣道が世界一強いだけ。勉強ができるだけで、その他は何も無いのだ。別に虐待だの、虐めだのと虐げられたわけではないのだが、何をやってもつまらない……そう心の中で客観視している自分が居た。
何故何も無い?多彩な兄貴を見てきて、自分自身に期待が持てず何もしてこなかったから。
何故つまらない?兄貴はあんなに生き生きしていたのに。
何故変わらない?兄貴のようにはなれないことはわかっているから。
何故どうして……
じゃぁ、あの声のまま、行ってみるか?
親を残して行ってみるか?
どうなるかなんて分からないが、どうなっても面白そう。知らない所だったら俺は……
変われるかもしれない、いや、変わりたい。俺は俺である為に、俺自身が兄貴と比べる事がないぐらい。
俺だけの長所、俺だけの特技俺だけの人生。全て兄貴と違う道を、兄貴と肩を並べられるぐらいになりたい。
だから、ここにいるよりは……
そう思ってしまったら最後。俺は2日後の指定の時間に指定の場所にいた。
普通に参拝していたら、緑髪の少女が、俺に話しかけてくる。
「あの〜もうそろそろここも御開ですので、出ていってもよろしいですか?」
「神社がお開きって面白いですね。なにか不都合な事でもあるんですか?」
そういうと、彼女は警戒し始めた。
「何を知っているんですか?」
「いいえ何も。けど、なにか面白そうな気配がしているので。」
「そうですか、けどあなたを巻き込む訳には行かないのです。」
そういうと、彼女は襲いかかってきた。
俺はその猛攻をゆうに躱す。彼女の体術は中々だと思う。それなりの上級者もしっかり相手にできるだろう。
「何故当たらないんですか!!」
だが、俺は昔から化け物と相手をしている。
兄貴という化け物といつも組手をしてきた。恐ろしい程さっきがこもり、なおかつ俺の考えよりも早く打ち込んでくるその拳より、彼女の拳はまだまだあまちゃんだと感じる。
「まぁ、化け物相手だったもので。」
彼女は攻撃の手をやめてくれない。さてどうしたものかな。
そう考えていた所、この土地が揺れ始めた……
「不味いですね。始まってしまいます。」
「何がだ?」
「貴方には関係ありません。」
そう言って彼女は何処かへ去っていった。さて何が起こるか楽しみだな。
そんな中々俺はその場から立ち去らずに、空を眺めていた。ただぼんやりと見上げた空の中に、なにかが飛んでいるのを見つけた。
「あれは……アイツ!!!!」
見つけた。金髪美女!!
間違いない紫色の服をまとって見たことの無い帽子を被ったあの時俺の記憶を消した時と同じ服装の金髪美女!!
「逃がさねぇ、今度はぜってぇになぁ!」
そうやって追いかけていたら、いきなり、俺の視界が白い光と包まれた。
そんな一瞬の出来事だ。その一瞬で、先程境内に居たはずの俺は見知らぬ場所にいた、当たりを見渡せば木々に覆われ緑が生い茂る。
多分森の中だ。
俺は大きく息を吸い。その息を全て吐き出すように一言叫ぶ。
「何処だここは!!!!」
そこから、俺の知らない世界の始まりとなった。主人公になりたくない俺の、俺を見つけ出す旅を……
2ヶ月投稿してない為、制作意欲が凄いです。
今月はあと1話投稿できると思いますがその後はまた投稿ペースがナマケモノ投稿に戻りますのでどうぞよしなに
という事でまた次回お会いしましょう
バイバイ