【凍結】愚者ガイル   作:邪骨

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第十二話 楽しい日曜日

 にーたやおさんぽするよ ままにーぽっぽーたのしいよ

 

(日記より抜粋)

 

 

♦♦♦

 

 

 初めて散歩をした。

 

 勿論、以前は沢山したが、この世界ではそう、初めてだ。

 

 お出かけ、じゃなくて散歩。雪乃君と出かけはしたが、あれは散歩ではないな。目的があるモノを散歩とは言わんよ。散歩って、春の陽気に包まれて、土手の上を歩くんだ。桜があって、川があって、小鳥が囀ってる。それが私の散歩だった。

 

 けど、まあ、夏の日差しにさらされて散歩するのも悪くない。

 

「ママーッ、見てザリガニィーーッ!」

 

「おい、そんなものを持って走るな」

 

 妹が走って、母さんが笑った。父さんがこの光景に混じることが出来ないのを、私は「ざまあみろ」と思う。勝手に死んで母さんと妹を困らせて、それ相応の罰ってもんだ。残念だね父さん、これは私だけの思い出だ。

 

「楽しそうね」

 

 私の隣で歩く雪乃君は言った。

 

「まあね、存外楽しい」

 

 私は答える。

 

「何もないわね、ここは」

 

「そこがいいんじゃないか」

 

 まったく、風情の分からん奴は嫌われるぜ雪乃君。

 

 家族水入らずで散歩だというのに、家の玄関まで出たところで君が来てしまうからイケナイのだ。間の悪い女だよホント。「遊んでくれないのか」みたいな顔をするものだから、つい連れてきてしまったではないか。散歩の良さがわからんなら、失せろ。

 

「でもあなた、風情がどうたらとか、思ってないでしょ」

 

 何を言う。

 

「ちょっとそのカメラ見せなさいよ」

 

 あ、コラ。私の一眼レフを返しなさい。

 

「うわッ、やっぱり妹さんの写真ばっかり。これが目当てだったのね・・・」

 

 ちょっと、誤解を生むようなことを言うな。私は欠けた父親役兼兄としての責務を全うすべく、このようにして家族写真を撮っているだけであって、決してその、コレクションするためではない。

 

「ふーん、どうだか」

 

「疑うのは勝手だけど、私だってそろそろ傷つくぞ」

 

 ホントは硝子の心なんだぜ。

 

「あら、ごめんなさい?いつでも余裕綽々でふてぶてしい、心臓に毛が生えたような変態だと思っていたものだから、つい」

 

「雪乃君の中で私がどういう評価なのか、よーくわかったよ」

 

 はあ、と嘆息。

 

 母さんと妹がこちらに微笑んで手を振っている。どうもあそこで昼飯を食べるらしい。

 そこは丁度木陰のある広場で、彼女らはすでにビニールシートを敷いたりして、準備万端整った様子だ。

 

「今行くよ」

 

 私はそうやって母さんらに返事をすると、雪乃君の手を引いて広場に向かう。

 

「恥ずかしいのだけれど」

 

 それはどうやら手を握られていることに対して述べた言葉のようだ。

 

「ああ、ごめん。いつも妹にやっているものだから」

 

「そういうお兄ちゃんアピールは素直に気持ち悪いわよ」

 

 顔を顰めて苦言を呈する雪乃君に謝り、私は手を離す。

 

 母さんと妹の待っていたところまで行くと、私はビニールシートの上に置かれたバスケットの中身を知った。

 

「今日はサンドイッチなんだ」

 

「そうなのだよ、にいた」

 

 妹が私の言葉にそう返した。

 

「妹は言葉が流暢で偉いな~、賢い」

 

 可愛いので褒めてやる。

 

「わたしかしこい」

 

 こら雪乃君、何故私の顔を見て唾を吐くんだ。ちょっとしたスキンシップじゃないか。

 

「あなたがお兄さんぶっているのを見ると、虫唾が走るのよ」

 

 そんな理不尽な。

 

 それから昼食を食べて、また一時間くらい散歩をした後私たちは帰路についた。雪乃君は妹に「あの男は変態だから気をつけなさい」と言い残して走って行った。君が元気そうで私はうれしいよ。

 

 ちなみにサンドイッチは大変おいしかったです。

 

 




大学入学までの暇つぶしで書き始めた本作を読んでくださりありがとうございます。本当はサッサと終わらせる予定でしたが、何故か連載が続いてしまっています。果たして完結できるのか。

ここで一つ謝辞を。いつも誤字報告ありがとうございます。一通り目は通させてもらっています。

今回は生存報告みたいなもんなので短めです。多分6月くらいにまた更新します。これからもどうぞよろしく。

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