【凍結】愚者ガイル   作:邪骨

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中学生編
第十三話 去る雪ノ下、来る比企谷


 結論から言うと、雪乃君は渡英することになった。

 

 彼女を虐めていたグループを相手取った裁判は、実際には行われることはなかった。あれだけクラスの人間の恐怖を煽ったのは、ただの脅しであったらしい。弁護士を挟んだ話し合いの末、加害者側が示談金を払うということで着地したようである。

 またこの事が公に報じられるようなことも無く、世間的には何もなかったことになっている。しかし、だからといって雪乃君がこれからも同じ学校に居続けるのは居心地が悪い。虐めてきた奴と一緒の空間に一秒でも居たいかと言えば、否だろう。

 故に、ほとぼりが冷めるまで、子細に言うならば、雪乃君が高校に上がって、新たな交友関係を築ける土壌が出来るようになるまで、エゲレスに留学しようということになった。

 

「じゃあ、そういうことだから」

 

「はあ」

 

 私と雪乃君が最後にした会話は、そんな感じだった。友達に対する別れの言葉として、それはいかがなものだろうか。私は密かに憤慨した。しかしその後も、毎日何通かEメールで連絡を取り合っているので、許す。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 from 雪ノ下

 

 今日の朝食。

 おいしい。

 

 添付画像(目玉焼きとソーセージとパン)

 

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 上記が今朝雪乃君から送られてきたメールの内容である。何故このようなくだらない内容を毎日送り続けることが出来るのか、心底不思議である。しかもこれをかれこれ三年間、欠かさずだ。でも、それで満足ならOKです。

 

 私は聖母のような慈愛に満ちた笑みでそのメールを眺める。その様子を愛しの妹からは「ゲロキモイよ兄ちゃん」と罵倒されるが、かまうものか。私は我が道を行くのだ。

 

 それはそうと、今日は記念すべき日である。

 

 人生二度目のジュニアハイスクール(ネイティブ)・・・即ち中学校の入学日なのだ。

 

 私は勢いよく学ランを羽織ると、自転車にまたがって、意気揚々と走り出す!待っていろよ中学校!我が圧倒的頭脳を見せてくれようぞ!!!!

 

「フゥーーーゥハハハハハハ!!!!私は最強だ!!!!」

 

 人生二度目の中二病の到来であった。

 

 

♦♦♦

 

 

「ハァアアアアアアチマンンンンンン!!!!」

 

 私は激怒した。必ず、かの根暗帝王を除かなければならぬと決意した。私には中学生がわからぬ。私にとってそれは、過ぎ去った昔のことであるからだ。だから我が友人、比企谷 八幡の薄気味悪い所作の意味も、気持ちも、推測するほか無い。しかし、どのような理由があろうとも、友人である私を放って屋上で昼飯を食おうなどと、そのようなことが許されるはずもない!断じて!

 

「オッホなにすんだお前、やめろ馬鹿!」

 

 我が渾身のくすぐり攻撃にうずくまった八幡は、悶えながらそう言った。

 

「貴様が私を放置し、斯様な場所で孤独極まる昼餉をとろうとするから悪いのだ」

 

「えッ、何その口調、気持ち悪・・・」

 

 私の口調に普通にドン引きした八幡は、いつもの死んだ魚のような目を八割増しにしてこちらに向ける。ごめんね。でも私だって傷ついたんだから!何よ、気持ち悪いだなんて、失礼しちゃうわね!ぷんぷん!

 

「そもそも、俺とお前は友達なんかじゃねーよ。仮に友達だったとしても、弁当を何処で食おうかなんて、俺の勝手だ」

 

「んもう、いけずぅ!」

 

「おえッ」

 

 嘔吐く八幡。ソレを見て笑う私。中学入学以来六ヶ月、毎日のように繰り広げられている光景だ。

 

 そんな彼と私の出会いは至って平凡なものであった。入学式後のクラス分けで、ちょうど同じクラスになって、偶然にも私の後ろの席が、彼のものだったのである。そして驚くべきことに、最初に声をかけたのは彼の方からであった。そのとき私は雪ノ下ロスに苛まれていて、夜しか眠れぬ生活を送っていた。そのため心身ともにネガティブとなっていて、誰かに話しかけられるというのを想定していなかったし、こちらから話しかけることも考えていなかったのである。なので私は驚き焦り、彼の顔を見てこう言った。

 

「きみ、人相悪くね?」

 

 その後、どれだけこちらが謝ろうとも、「お前なんか友達じゃないし、許さない」の一点張り。頑なにその主張を曲げず、私の謝罪を受け入れないその姿勢を見て、私は段々と面白くなってきた。これは弄りがいのある奴だな、と。それは雪ノ下ロスに苦しまされていた私にとっては、非常に幸運なことであった。

 それからはことあるごとに八幡に絡むようになって、様々な方法で彼をおちょくるのが日課になった。彼がそのことをどう思っているのかは知らないが、憎からずは思っているのだろう。多分。ホントに嫌だったら、そんな笑顔にはならんハズだぜ。

 

 つまり私は弄って楽しくて、八幡は友達が出来て楽しくて、互いにwin-winってこと♡

 

「だから俺はお前の友達じゃないっつーの」

 

 意固地ねェ、諦めれば良いのに♡

 

「うるへー!」

 

 八幡はそう言い残すと、教室に帰っていった。ププッ、何だソレ、萌えキャラかよお前は。今時そんな捨て台詞言う奴いないぞ。

 

 私は非常に満足したので、少し昼寝をすることにした。今は秋だが、今日は日差しもあって、ちょうど良い昼寝日和なんだ。




投稿遅れてすまんこ

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