「なあ、どうやったら女の子にモテるんだ?」
ある日の午後、八幡が不意に尋ねてきた。
突然なんだよ。珍しく自発的に話しかけてきたと思ったら、そんな話か。
「知らんよそんなこと。私が知りたいくらいだね」
「そうかぁ、そうだよなぁ」
私の答えに溜息をついて、椅子の背にもたれて反り返る八幡。何だねその物憂い気な態度は。いよいよ根暗帝王から暗黒大魔神にジョブチェンジか?
「きみ、もしかして恋でもしてんの?」
何となしに聞いてみた。
「いや、そういうわけではないんだが・・・」
「じゃあ、何だよ」
「最近さ、俺によく話しかけてくる子いんじゃん?」
「ああ、折本さんか」
私の脳裏に浮かぶのは、快活で活発なクラスの人気者、茶髪ウーマンこと折本かおり女史の姿であった。彼女はとにかく活動的で、友達であろうがなかろうが、所構わず会話をする女子である。かく言う私も何度か彼女に話しかけられた経験があり、それはクラス一のボッチ、八幡も例外ではなかったというわけだ。八幡は捻くれてはいるが、どこか単純で絆されやすい奴である。おおかた折本女史に話しかけられて、妙に意識してしまったのであろう・・・「コイツもしかして俺に気があるんじゃないかな」なんて。チョロい、チョロすぎるぜ八幡。チョロすぎて腹が捩れるわ。しかしここで彼の妄想が終わるはずがない。妙な根暗思考をしている八幡は、先ほどの考えの後、こう思ったはずだ。「いやいや、折本サンが俺に気があるなんて、そんなハズ無いじゃない」と。そしてこう考えるのだ、「でも俺折本サンのこと好きかもしんねー!どうやったら女の子にモテっかなー」ってな感じにね。
「ぷぷぷ」
「おい」
おっと、笑いが漏れてしまった。これは失敬。同士八幡よ、私はお前の恋路を見守っておるぞ。具体的なアドバイスは出来ないが、とりあえずお前はまず髪を切れ。
「どういうことだよソレ」
「髪が真横に伸びてる奴、お前が女ならどう思う?」
「キモい」
「だろう?」
「俺ちょっと髪切ってくるわ」
次の日、八幡は坊主になった。
「八幡クンよぉ、何でそうなんの?誰が丸坊主にしてこいって言ったよ」
「いやだって、お前が髪切れって・・・」
「言ったけどさ、何でそんなツルツルにしちゃうの?馬鹿なの?ハゲなの?」
「ああ、ハゲだぞ」
「チクショウ殴りてぇ」
軽口を言い合いながら、私は内心驚愕していた。万が一にも、八幡がハゲになるということなどが有り得るのか?いや、ない。それも自らの意思で坊主になるとは、到底信じがたい。何が原因でそんなスキンヘッドに?もしかしてウケ狙い?私を笑わせたいのか。それとも折本女史のリアクション待ち・・・?うーん、そうなのだとしたら、八幡、相当の馬鹿では?
そんなワケないか、うん。
私は、輝く八幡の額から目をそらす。これ以上奴の頭を見ていると、笑いを堪え切れそうにない。
「あっ」
その時である。八幡の乙女チックなか細い声が私の耳に届いたのは。それと同時に教室の扉が開かれる。なんだなんだとその方を見やると、件の折本女史が居た。どうやら今登校してきたようである。彼女は教室を目で一巡すると、八幡を見つけてニヤリと笑った。
「ウホッ、八幡ッ頭ツルッパゲwwマジ受けなんだけどwwっはあーーっwあんたおもろいわぁマジで」
彼女はそうやって一通り笑うと、八幡の肩をバンバンと叩いて「あんたギャグのセンスあるよ」と言って自分の席の方へと去って行った。
「なあ、これって脈ありなんじゃね?」
「知るかバーカ」
私はお前に幻滅だよ八幡。
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