GATE 魔弾の王と自衛隊。かの地においてかく戦えり。   作:caose

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 陰謀は・・・闇の中にこそ閃くものである。


陰謀と書簡

ブリューヌ王国首都ニース。

 そこはまさに中世のヨーロッパの様な雰囲気を醸し出し、美しい町であった。

 そう・・・だったのだ。

 先の戦で門の向こうに兵を派兵して生き残ったのは僅か数十名。

 王子レギンの死により一時は王都全体が重苦しい空気に包まれていたのに更に

重くした原因があった。

 それは・・・日本軍であった。

 門の向こうから異世界の兵隊が現れて近隣の土地を支配している事。

 更に言えば・・・テナルディエの一人息子であるザイアンが兵士と竜と共に

向かったきり帰ってこなかったのだ。

 そう・・・一人も。

 それを聞いたテナルディエ当主は急ぎ兵を集めて様子を見よと言い向かったが

出た答えはこうであった。

 

 

 

 

 

 

 「近隣の町に聞いたところ確かにザイアン様が通ったのを見たという者がいたが

その後にアルサスの地にて轟音と悪魔の様な歌を聞いた後に通った者は一人も

いなかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 そう・・・ザイアンがやられた可能性があると聞いてしまったのだ。

 それを聞いたテナルディエ当主は今回のザイアンの補佐をして兵の指揮を

執っていた者の家族を全員鞭打ちの軽処した。

 鞭は拷問用のもので先端に棘の付いた革紐が十数本取り付けられており

それで背中を叩きつけられるとどうなるかは・・・自明の理であった。

 川は裂け、肉は抉れ、血飛沫が舞い。飛び散る。

 然もそんなのされたら誰だって悲鳴を上げるものであるが上げれば・・・回数を増やすと脅されて大人たちは耐え忍ぶが子供は・・・どうであろう。

 子供たちは悲鳴を上げて回数を増やされて結果的にどうなるかは・・・

当然の帰結であった。

 ・・・子供たちは、特に幼い子供は・・・死体と姿を変えるのだ。

 当然親は情けを請うがそう言う人間たちはテナルディエ当主の命によって・・・永遠に喋れなくされるのであった。

 それだけではなく一般兵の家族は全員・・・熱した鉄の棒で背中に押し当て、

その痛みが町中に響き渡るようになっていたのだ。

 テナルディエ当主はそれを銀製のグラスに注ぎこなれたワインを口にするが

内心は・・・怒りで頭が可笑しくなりそうであった。

 本来ならば自分が軍を率いてアルサスに乗り込みたいのを堪えているのだ。

 そしてテナルディエ当主はこう呟いた。

 「確かにザイアンは年齢の割には愚かで頼りなかったが・・・それでも・・・

それでも」

 そう言って大声で・・・叫ぶかのようにこう言った。

 「己小僧!己異世界軍!!」

 そう言うと今度はアスヴァ―ル産の火酒をラッパ飲みした。

 すると後ろで・・・声が聞こえた。

 「荒れておいでですな。」

 「ドレカヴァクか。」

 テナルディエ当主はそう言って後ろにいる老人を見た。

 するとテナルディエ当主はこう聞いた。

 「お前の事だ、話は聞いておろう?」

 そう聞くとドレカヴァクはこう答えた。

 「ザイアン様については御気の毒に。」

 「勝手に殺すな、未だ死んだとは決まっておらん。

それで新たな竜についてだが」

 そう聞くとドレカヴァクはこう答えた。

 「一月ほどの時間と幾ばくかの金銭を必要とします。」

 そう言うとテナルディエ当主は銀色の鈴を取り上げて鳴らすと従者が現れ、

指示させた後にその従者は走って消えた。

 そして暫くすると・・・人間の頭程の大きな袋に入っている大量の金貨が

詰まっていた。

 それを受け取ったドレカヴァクはこう言った。

 「ありがとうございました。それで・・・アルサスの方はどのように」

 「貴様が知る必要はない。」

 そう言うとドレカヴァクはその部屋から出て行った。

 するとテナルディエ当主はこう考えていた。

 「虫を潰すのに斧を使う羽目になるとはな・・・さてどのようにすべきか?」

 「兵は無限ではない、『七鎖(セラシュ)』を使うか。・・・いや待てよ。」

 そう言うとテナルディエ当主はもう一度鈴を鳴らして従者に幾つか指示を

与えるとこう呟いた。

 「敵を消耗させるためには・・・他国を利用するというもの一つの手だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数日後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やっと着いたわい。」

 マスハス卿がそう言って王都に現れたのだ。

 テナルディエに見つからない様に馬は隣町で待機させ、自分は旅人の格好で

潜入した。

 受け取った書状を持って知り合いに渡してさっさとそこから出て行った。

 自分は日本側であり下手すれば拷問されて敵がどのような存在か

吐かせられるであろうがまあどちらにしても・・・。

 「勝てんと思うがな。」

 マスハス卿はそう呟いてニースを一目見た後に立ち去った。

 次に来る時がある時は内乱が収束しているであろうと・・・思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルジュラック家。

 王家とも縁が深く代々騎士の家系でもあった。

 領土はテナルディエ達に比べれば小さいが多大な影響力を持っている。

 そんな中でとある少女が窓の外を眺めていた。

 長い銀髪。

 性格は本来は明るいのであろう優しそうな顔つきをしていた。

 そして何よりも目に映るのが・・・左右で虹彩の違う両目だ。

 右は青色。

 左は赤色の瞳。

 この世界では異彩虹瞳(ラズイーリス)と呼ばれる瞳の少女がそこにいた。

 少女の名は『リュディエーヌ=ベルジュラック』。

 この家の跡継ぎである。

 そんな少女はあるものをずっと見ていた。

 テナルディエによって・・・殺されたと言っても間違いない人たち・・・

特に子供たちが磔にされている場所だ。

 カラスやハエが集り死体は腐り始めていた。

 正直な所見るに堪えないと言っても良いものだ。

 然し少女が見ているのはそれではなく・・・遥か向こうにある場所。 

・・・アルサスである。

 「ティグル。」

 リュディエーヌはそう呟いた。

 彼女はティグルとは幼馴染で子供の時からであった。

 「彼が裏切ったなんて・・・ありえないです。」

 そう呟いたのだ。

 「(確かに彼は何処か抜けているようなところがありましたし

弓を扱っていましたが・・・だからって腰抜けじゃないしそれに彼がそうするには理由があるのです!そうに違いないです!!)」

 そう思って何時ティグルに会うかを考えていたが今はそれどころでは

ないだろう。

 内乱に内部には敵軍。

 この国は今や混乱を呈している。

 そんな中で自分がティグルに会ったと分かればベルジュラック家にも迷惑が

掛ってしまう。

 そう思っている中で従者の一人がリュディエーヌに向けてこう言った。

 「お嬢様、先ほど文官のお方からお手紙を。」

 「・・・誰からです。」

 「は、先ほど聞いたところリュディエーヌ様にこう伝えて欲しいと。」

 「?」

 「『狼の毛皮を剝がそうとして失神した』と言えば分かると。」

 「!!!」

 リュディエーヌはそれを聞いて驚いた。

 何せそれを知っているのは自分と・・・彼だけなのだから。

 するとリュディエーヌはこう言った。

 「その手紙を渡してください。私が読むのです。」

 「畏まりました。」

 そう言って従者はリュディエーヌに向けて手紙を渡すと其の儘出て行った。

 「・・・ティグル。」

 リュディエーヌは手紙を貰って自室に入ると封筒から手紙を出すと・・・何かが出てきた。

 それは・・・。

 

 

 

 

 

 

 「これは・・・絵ですか?」

 そう呟いたのだ。

 リュディエーヌは知らないがそれは写真である。

 写っているのは・・・ティグルである。

 他にも自衛隊がいるだろうが万が一を考えて自分一人だけの方が

都合が良いと話して撮って貰ったのだ。

 「それにしてもこの絵・・・まるで生きているようなのです。今にもティグルが現れそうなくらいに。」

 そう言ってリュディエーヌは写真をじっと見ていると・・・手紙の事を

思い出して読んだ。

 内容は大雑把に言ってこうだ。

 ①ゲートの向こうにある世界がどのような世界であったか。

 ②自衛隊とこっちの戦力、技術力の違い。

 ③日本国からの要求。

 ④ザイアンの生存と負傷について。

 ⑤そして自衛隊が・・・どのような存在である事を。

 そして手紙にはこう締めくくっていた。

 

 

 

 

 

 

 『俺は此の儘テナルディエとガヌロンが内乱を起こしてこの国が他国から

侵略されて荒れ地になるだけは避けたいんだ。アルサスを・・・

父から受け継いだ土地を守るために俺は日本と行動を共にしているが

これは裏切り・・・まあ、そっちから見れば裏切りに見えるだろうけど

俺はブリューヌ王国と敵対する気はない。それだけは真実だ。』

 「だから国王陛下に書簡を渡し、少なくとも日本との戦を早期終結させ、

両家による内乱の終息を願いたく送る。これは君になら任せられると思って

送った。幼馴染として・・・俺が知る中で最も信頼できる君に送る。」

 ティグルヴルムド=ヴォルン

 そう書かれていた。

 そしてそれを読み終えたリュディエーヌは・・・頭を悩ませていた。

 今の国王は・・・心に大きく傷を作ってしまい閉じこもっている。

 正直な所国王陛下に書簡を渡しても聞いてもらえるか、それどころか両家を

懇意にしている文官共によって握りつぶされる可能性が高い事を考える中

リュディエーヌはある事を考えて・・・何かを思いついてしまったのだ。

 そう・・・思いついてしまったこれが・・・まあ、トンでもない事になるとはティグルも思いもよらなかった事であった。




 リュディエーヌは『魔弾の王と凍漣の雪姫』に出てくるティグルの幼馴染です。
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