『死闘』
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『起動部隊Ω-7事件記録』
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ペスト医師の元から去り、私達はアベルの部屋へやって来た。アベルの収容室は財団の地下から通って入れる海中の施設に封じられている。
「・・・じゃあクローヴィス。私達は行ってくるわ」
「キャンディス。私からのせめてもの魔術よ。此でもアベルの攻撃を凌ぎきれるか怪しいわ」
クローヴィスがキャンディスの体を、透明な膜で覆った。その間もクローヴィスの表情は優れない。まるでライオンに脅える兎だ。
「クローヴィス。私達は大丈夫だよ。アベルの相手は任せて」
「シガーの言う通りよ。クローヴィスは休んでて頂戴」
「・・・頼んだわ・・・クレフ博士じゃないのが残念だわ」
クローヴィスの隣にはブライト博士が居る。今度はチンパンジーだよ。例の首飾りをしてるから間違いない。
クローヴィスはアベルに近寄りたくないと言ってたのに、何故かクレフ博士は平気みたい。クレフ博士と話してるクローヴィスは、私とキャンディスの次に楽しそうにしている。クレフ博士って、もしかして悪魔かな?まあ確かにクレフ博士は会うだけでも嫌な気配がするんだよね。
そして私とキャンディスは、アニエスお姉さんに部屋の扉を開けて貰おうとした、その瞬間。其処へある二人組が現れる。
「あれ?もしかして、SCPー239ー1とSCPー239ー2ですか?」
其処へ現れたのは、一人の青年だった。更に隣には、黒髪セーラー服で下駄を履いた美少女が居た。この二人は知ってる。青年の名前はテル。彼は財団の研究員で、実はかなり高いクリアランスを持っている。やみこさんと共に、数々のSCiPと出会った青年だ。そしてテルの隣に居るのは『消照闇子』ことやみこさん。前の名前は『SCPー835ーJPゼノフォビア』。私もそれなりに広めたけど、一番やみこさんの収容プロトコルを広めてくれたのはテルだ。彼のお陰でこうしてやみこさんが大人しくなり、Thaumielばりの活躍をしてくれたのだ。
最も、何でテルの元へ現れ、彼の傍に居続けて、彼を護っているのかは不明だけど。テルも理由が解らないらしいしね。
「あっ、僕も名前で呼べば良いかな?」
「・・・名前」
「あら?好きに呼んで構わないんじゃない?この子達が気にするとは思わないわ」
テルの問いにやみこさんが答えて、アニエスお姉さんが付け加える。
「私はシガーでいいよ。キャンディスも名前で良いよね?」
「ええっ。でもテルって言ったかしら?私はクローヴィスに手を出すんじゃないわよ」
「しませんよ!」
「キャンディスったら・・・でも、私からも言うわ。キャンディスに手を出したら、貴男を燃やしてやるわよ」
クローヴィスが青い炎を掌から出す。テル完全に脅えてるし、やみこさんは目の部分に影が出来て殺気が伝わる。やみこさんは強いけど、クローヴィスは悪魔だよ?おまけに私の作った精神と時の部屋で修行して強くなった。流石に勝てると思えない。
「・・・あれ?テルお兄さんとやみこさんが居るって事は?」
「はい。僕とやみこさんも、SCPー076の相手をする事になりました」
『マジかー。
突然赤い警告ランプが点滅し、収容違反の警告ブザーが鳴り響く。それと私は、扉の奥から感じた強い殺気に気付く。
「ひっ!?あ、ああああの方がががが・・・ごめんキャンディス!シガー!嫌ああああああああッ!!」
「私が追い掛けるよ」
クローヴィスが一目散に逃げ出した。それを追っていくブライト博士。キャンディスは心配の眼差しで逃げたクローヴィスを見つめる。
「行ってあげなよキャンディス」
「えっ!?大丈夫なの!?」
「クローヴィスを宥められるのはキャンディスだけだよ」
「・・・解ったわ」
キャンディスがクローヴィスとブライト博士の後を追う。
そして鳴り止まない収容違反の警告ブザー。扉の奥から感じた強い殺気。間違いない。アベルが居る。
そして、扉は爆発と共に蹴破られた。私は横へ跳んで飛んできた扉を避けた。その時にアニエスお姉さんを片手で抱えた。やみこさんはテルお兄さんを抱えて跳び、蹴飛ばされた扉を避ける。
「あ、ありがとうございますやみこさん!」
「ん」
テルはやみこさんに降ろしてもらい、立ち上がる。
そして、人型SCiPで最強の身体能力を持つアベルが姿を現した。煙の中から現れた黒い長髪、灰色の瞳、オリーブ色の肌をした身長二メートルの人型SCiP。下半身は布で覆っており、大事な部分は見えない。
確かに強いオーラが伝わる。彼は強い。他のSCiPが厄介なだけで、身体能力はアベルが最強なんだ。それが伝わってくる。寧ろ人間のエージェントが立ち回れたのが奇跡だ。そう言える程にヤバいオーラが漂っている。
弟のアベルでこれなら、その兄たるカインは一体・・・まあもし彼に出会ったら解ると思う。
「・・・何者だ?私の邪魔をするのか?【解読不能】な奴等め」
アベルの言葉の中で、私でも理解出来ない言語が現れた。アベルが武器を向けてるのは、私だ。この中で私が一番強いと見なされてるのか?
「・・・強い!」
「だね」
やみこさんの表情が険しい。アベルの強さを肌で感じてるからだ。
「アニエスお姉さん。テルお兄さん。下がってて」
「えっ、ええっ!私達は離れてるわ!」
「二人とも、気を付けて!」
二人が離れ、私とやみこさん、そしてアベルの三名だけになる。タイムリミットは九十分だ。つまり、一時間三十分。それが過ぎたら、収容エリアは海水で満たされてしまう。そうなったら、テルお兄さんとアニエスお姉さんは死んでしまう。
「シンボル!」
私はシンボルを展開して、支柱部分を両手で持つ。やみこさんはナイフを手にして、アベルを睨む。
アベルは殺気が籠った笑みを浮かべて、何もない場所から黒い穴を発生させ、其処から黒刃を取り出し、その柄を握り締める。
そして、アベルは跳んだ。
私とやみこさんも、同時に駆け出した。