アベルが走り出した後、私に刃を振り下ろす。私はシンボルの支柱で刃を受け止める。やみこさんがアベルの背後からナイフを振り下ろすが、アベルはもう片方の手に異空間から新たな武器を取り出すと同時にやみこさんのナイフを防ぐ。
私は目から光線を放ち、アベルの頭を捉える。しかし、アベルの頭は爆発こそしたものの、すぐに無傷の状態で姿を現した。
私はアベルと再び武器のぶつけ合いを続けた。アベルは剣から巨大な棍棒を取り出すと、細い腕からは想像出来ない怪力で振り下ろしてきた。私はシンボルの支柱で受け止めた。しかし、シンボルにダメージは無いが、私は勢いよく吹き飛ばされた。廊下の壁にぶつかった後、私は床に膝を着いた。壁が粉々に砕けて大小問わず瓦礫が私の背中に降り注ぐ。少し背中に刺さった。痛い。
「ん!」
私は瓦礫を浮かせて脱出した時、やみこさんがアベルの相手をしているのが見えた。しかし、アベルの方が圧倒的に上なのか、やみこさんは押されている。ナイフでアベルの刃を受け止め続けるけど、不利な状況から抜け出せない。大きさの問題じゃない。単にアベルの力と技量が、やみこさんを圧倒的に上回っているのだ。
「やみこさん!!シンボル!津波を起こして!!」
私はシンボルの標識部分を変化させた。それは、大波の絵柄が描かれたハザードシンボルである。その瞬間、私を含めてその場が突然大津生に巻き込まれてしまう。私は自分の周りに結界を張る事で津波を回避する。
「ぐうううう!?」
「んぅぅ!」
アベルは津波に抵抗してる。しかし、やみこさんは流された。悪いことしたな。私はやみこさんを結界内へ転移させる事で、やみこさんを助け出す。
私はシンボルを元の『一時停止』標識へ戻し、津波を解除する。
アベルは全身はもう濡れてないけど、表情は口元以外見えない。口元は笑ってるようにも見える。
「・・・・クハハハハハハッ!!」
アベルは笑っていた。
「あのドラゴン、そしてあの男以来だ!認めてやる!お前達は強い!」
「・・・私は戦士じゃない。私は魔女だよ。戦士みたいに戦いを楽しいと思えなかったんだけど・・・この場合は別!私も、スッゴく楽しい!!」
「はあ・・・」
やみこさんが溜め息を吐いたよ。呆れてるのかな?まあ良いけど。
私もなんだか楽しくなったのだ。戦士みたいに戦いを史上とする訳ではないけど、善悪抜きに勝敗を競う戦いは好きだ。死人が出ないなら尚更だ。クソトカゲとは違う。アベルとの戦闘は本当に楽しい。『事実は小説よりも奇なり』とは言うけど、正にその通りだ。
「シンボル!もっと行くよ!」
「まだまだ行くぞ!」
私はアベルと同じタイミングで走り出した。そして、同時に武器を振り下ろす。私はシンボルを、アベルは赤い剣を。お互いの武器がぶつかり合い、金属音と火花が散る。
「もっとだ!もっと戦おう!私を楽しませろ!」
「良いよ!ハァッ!」
私はアベルの懐に触れて、衝撃波を放つ。アベルは衝撃波に吹き飛ばされて後方へ下がった、のだが数歩しか下がらなかった。
私はアベルにある提案をする。
「・・・ねえアベル。私、思うんだよ。アベルは修行をしたらもっと強くなれるよ。そしたら、あのドラゴンと言ってるクソトカゲに勝てるかもしれないよ?」
「修行だと?」
「うん。アベルは強くなれる。もし暇なら私が相手してあげる。私の元に来てよ。アベルの力が必要になったら、力を貸して欲しい」
「・・・面白い娘だ。名をなんと言う?」
「シガーロス=ステファンスドッティル。元の体の持ち主から力と体を受け継いだ、ただの『ちいさな魔女』だよ」
「・・・転生者か。成る程な」
アベルは剣を構える。私はシンボルを手にして、再び走り出す。アベルは気付いたんだ。私が転生者と。半神だけあって、やはり知ってるんだね。そういう存在が居る事を。
「・・・もし貴様が私に勝てば、言う通りにしよう」
「良いね!でも、負けないよ!」
「私も負ける気は無い!」
私達は再び武器をぶつけ合う。耳に響く金属音が響き、皮膚には衝撃波と風が当たる。アベルの容赦無い剣技をシンボルの支柱で軽く受け止めた私。
後で思ったのだが、これはつまり絵面的には戦士と魔女の肉弾戦という、本来ならあり得ないカードだと思う。オーバーロードでも似たような事があったよね。
話を戻そう。私はシンボルの標識を変形させて、ハザードシンボルに変えた。今度は炎のマークが浮かんだ。あれはつまり、『火事注意』のマークだ。その瞬間、私達を中心に辺りが炎に包まれる。私も炎を浴びるけど、全く効かない。アベルも皮膚に炎を浴びているが、効いてなさそう。
「炎か。私には効かんぞ」
「らしいね。シンボルは下がってて。後は私がやるよ」
『yes』とシンボルが標識で表すと、私の右手の甲にデバイス形態になって装着される。
『鬼滅の刃』を知ってるかい?あれには『日輪刀』という太陽以外で鬼を殺せる武器があるのだ。つまり、私が生み出したオリジナルデザインの日輪刀を取り出す際に、私は見栄えを良くする為に演出を行った。周囲を冷気で包み込み、地面から氷の結晶が出現。柄だけが凍っておらず、私はその柄を掴んだ。駄洒落ではない。その瞬間、氷の結晶は砕けて、刀身が姿を現した。氷のようなデザインを掘られた刀身は、四つもある小さな穴には氷が埋め込まれていた。此れが私の生み出したオリジナル日輪刀だ。
そして、『鬼滅の刃』には『全集中の呼吸』と呼ばれる呼吸法が存在する。そして其処から繰り出す剣術体系があり、『日の呼吸』から派生した呼吸が存在する。基本的な呼吸としては『火・水・風・岩・雷』だ。
そして私は、水から派生させてオリジナルの呼吸を編み出した。それが、“氷”の呼吸である。
「行くよアベル!」
「素晴らしい・・・来い!」
私は走り出す。刀に冷気を纏わせ、最初の攻撃を放つ。
「『氷の呼吸!壱ノ型!氷面斬り』!」
私が刀を振り下ろす。氷を纏った刀がアベルの剣とぶつかり合い、軈てお互いの刀がぶつかり合った所から冷気が放たれ、壁や床を凍らせていく。
「『氷の呼吸!弐ノ型!氷雨!』」
距離を取った私はアベルの頭上に跳び、刀から冷気を放って空気を凍らせる。凍らせて生み出した無数の氷柱を、刀を振り下ろして放つ。氷柱はアベルに向かって降り注ぎ、その体に突き刺さっていく。アベルは私に向かって跳んできた。私はアベルを向かえ撃つ。
「『氷の呼吸!参ノ型!氷狼!』」
氷の狼を出現させて、振り下ろしたと同時に氷の狼がアベルに口を開いて喰らおうとする。氷の狼は、アベルが振り上げた剣に当たった瞬間に砕け散り、刀と再びぶつかり合った。
「認めてやる!認めてやるぞシガーロス!私はお前を“最強”と呼んでやる!」
「おおきに!!」
私は刀を振り下ろし、再びアベルの剣と再びぶつけ合う。
そして、決着が着いた。
私が再び振り下ろした刀がアベルの刀に弾かれて、私のお腹をアベルの腕に貫かれた。背中を貫通する程に貫通したせいで、感覚すら麻痺している。しかし、口から血を吐き出しながらも、私は隙を見逃さずにアベルの心臓部分に刀を突き刺した。
「氷の呼吸・・・陸ノ型・・・氷像!」
口から血を吐き出しながら、技を発動させる。その瞬間、アベルの体が凍り付いていく。下半身が凍り付き、粉々に砕けていく。軈て首元まで凍り付いていくのだが、私は見た。アベルが満足した笑みを浮かべていたのだ。まるで満足して遊んだ子供のように。或いは目的を果たせて満足した子供らしい大人のように。
「満足した・・・敗北した・・・私は貴様の元に行こう・・・いつか再び目を覚ました時、約束を果たそう」
「うん。約束だよ。アベル」
私はアベルが完全に凍り付いた後、刀を振り上げて抜いた。アベルは凍ったまま砕け散った後、黒い塵になって消えていった。私はその様子を見ながら、無意識の内に言ってしまった。
「可哀想なアベル・・・」
何故そう言ったのか?それは、私にもよく分からなかった。その様子を見ていたやみこさんも、頭に?を浮かべていた。
しかし、アベルの攻撃で傷付いた私は傷を瞬時に治した後、疲れたからそのままその場に座り込んだ。アニエスお姉さん達が迎えに来るまで、その場に座っていた。
しかし、翌日の事だった。
「なんでさ」
私の部屋に、アベルが眠る石棺が置かれていたのだ。後から聞いたけど、アベルは私の元に置かれる方が安全だと、判断されたからであった。
クローヴィスがびくびくしてたし、キャンディスが傍に居るお陰でなんとか出ていかれずに済んだよ。