小さな魔女の財団職員生活   作:ちいさな魔女

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本編も進めなくては。


十七話

アベルが部屋に来た。棺ごとだよ?ゆっくり眠れそうにないじゃん。

 

「クローヴィス・・・いい加減にしなよ?そんなに苦手?」

 

「・・・うん」

 

棺は私が湖の近くまで運んでるから、部屋の中で目覚める事は無い。アベルがどうなったか?復活するタイミングは速い時もあれば遅い時もあるけど、今回は速かった。

 

「・・・先程ぶりだな。さあ約束を果たして貰おうか」

 

「シガー・・・私とキャンディスだけ逃げて──」

 

「だーめ」

 

クローヴィスの顔が青ざめる。キャンディスは宥めようと声を掛けてるけど、未だにクローヴィスは脅えてる。まあ、逃がさないけどね。

 

「だね。でもその前に」

 

私はクローヴィスの背中を押して、アベルの前に立たせる。アベルはクローヴィスを見て、一瞬驚愕した表情を浮かべる。表情こそ笑っていたが、目は見開いている。

 

「ひぃぃぃぃぃ!!!」

 

なんかクローヴィスの股間から妙な匂いがするけど気にしない。キャンディスはクローヴィスの傍に寄ろうとしてるけど、私は見えない壁を張ってキャンディスを妨害する。

 

「クローヴィス!ちょっとシガー!何をするのよ!?それと貴男、クローヴィスに何かしたら許さないわよ!」

 

「大丈夫だよ。クローヴィスには念の為に保険を掛けてるから」

 

「「そういう問題じゃないわよおおお!!」」

 

見事にハモる。息ぴったりではないか。

 

「・・・その女、悪魔か」

 

アベルはクローヴィスの正体を見抜く。

 

「ひっ!ああああ・・・」

 

クローヴィスは脅える。そんな彼女の元へ、アベルが歩いて来る。クローヴィスは脅えているが、アベルはそんな彼女の脅えた様子に興味が無いのか、躊躇う事無く歩いて来る。

 

「・・・質問がある。悪魔よ。お前は何故此処に居る?」

 

アベルが足を止めて、クローヴィスに剣を向ける。クローヴィスは脅えて表情を固くしていたが、ある方向を見た瞬間に表情が柔らかくなる。それは、キャンディスだ。そして、クローヴィスはアベルの元を向いて自分の意志を伝える。

 

「き、キャンディスを・・・私の愛する人を護る為です!」

 

「・・・私に脅えるなら去れ」

 

クローヴィスは安堵したのか、その場から去ろうとする。拘束はしてない。キャンディスは困惑した表情のまま、見えない壁に張り付いてクローヴィスを見つめる。

 

「そして私に其処の女の首を取らせたい場合も、この場から去れ」

 

その時、クローヴィスの動きが止まる。「それだけは駄目」と何度も呟いている。そして、アベルが手に持っている剣を握り締めて、腰を低くして跳躍体勢に入ろうとする。狙いはキャンディスだ。確かに殺そうとしている。アベルが跳ぼうとした瞬間、クローヴィスがアベルの腕を掴む。

 

「・・・それだけは駄目!キャンディスを傷付けるなら・・・私は・・・私は・・・貴男とも戦う!アベル様であろうと許しません!」

 

クローヴィスの目は、覚悟を決めた目をしていた。決意が伝わってくる。

 

「フッ!フハハハハハ!素晴らしい!素晴らしいぞ!その決意が本物か、私のやり方で確かめさせてもらうとしよう!」

 

アベルが拳を振り下ろそうとして、クローヴィスが片腕に魔術の線を流し込み、力を高めた。でも、アベルの方が圧倒的に上だ。このままではクローヴィスの半身が吹き飛ぶね。

 

「止まって二人とも!」

 

私は二人の拳を掴んで止めた。腕じゃなくて手の方ね。

 

「アベル。今は私のトレーニングを受けるんでしょ?なら、余計な事はやめて。クローヴィスもキャンディスを護る為に戦おうとするのは良いけど、自殺行為だけはやめて。自殺行為をして、悲しむ人が居るんだから」

 

「あ、ありがとう。それに、ごめんなさい。シガー、キャンディス」

 

「ふっ」

 

アベルだけは笑ってる。反省してるかな?いや、アベルだからしてないな。きっと。

 

「じゃあ早速・・・と言いたいけど、私、此からSCPー096の相手をしなくちゃならない。無力化するか生かすか自由みたいだし・・・それにさ、アベル。貴男の力も貸してほしい」

 

「何故だ?」

 

「096はさ。貴男が戦ったあのドラゴンですら倒せなかったし、奴は096に重症を負わされたんだ」

 

その瞬間、アベルの顔が怪しげな笑みを浮かべる。クソトカゲに重症を負わせた相手に興味があるんだね。

 

「ただね。条件があるよ。私と着いて来るなら、人間、動物等、生きている存在を襲わない。物を壊さない。そして私の言う事をちゃんと聞く事。良いね?でなきゃ貴男との約束も聞かないし、二度とあの棺から出られなくしてやる」

 

「そんな約束で私を制する事が出来るのか?」

 

「出来ないね。退屈なら私が何時でも相手するよ」

 

「・・・良いだろう」

 

私はアベルに手を差し出した。アベルは一度だけ首を傾げるが、私が握手を求めてる事を理解したのか私の手を握ってくれた。

 

なんかその手は・・・凄く温かく感じた。

 

──────────────────────

 

私はアベルと共に、096ことシャイガイが収容されているコンテナが置かれた部屋に来た。シャイガイ対策なのか、窓や通気孔一つ存在しない部屋だ。部屋を閉じれば、出入口以外で出る手段は無い。

 

アベルが大人しく私に着いて来てる事に財団職員全員が驚いてたし、すれ違ったテルややみこさんも驚いた顔をしてた。

 

アニエスお姉さんは連れて行ってくれる間も動きがぎこちなく、クレフ博士は笑いながら着いて来た。

 

「良い?私達は096の姿を直接見れないの。音波ビデオで見る事になるから、本当にどうなっているのかは分からないわ。それでも、一つだけ言わせて頂戴」

 

アニエスお姉さんは真剣な表情のまま、私達が入った部屋の扉を閉めていく。完全に閉まる瞬間、アニエスお姉さんは私達に一言告げた。

 

「“頑張れ”」

 

そして、出入口は完全に閉じられた。私とアベルは問題無い。そして、コンテナが完全に開き、中に居る“奴”が姿を現した。

 

異常な程に痩せた白い体、白い肌、大きな白い爪を持つ細長い腕、そして黒い目に白い瞳をした大きく開く顎。SCPー096ことシャイガイを、私達は目撃した。

 

そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

その瞬間、シャイガイが突然顔を両手で覆い、支離滅裂な言葉と鼓膜が壊れそうな悲鳴を上げた。

 

そして、アベルは嬉々とした笑みを浮かべながら、両手に黒刃の剣と棍棒を持って走り出した。私も『Fateシリーズ』における最強クラスのサーヴァント『ギルガメッシュ』の宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を展開し、宝具を一斉に放つ。

 

そして、シャイガイが悲鳴と支離滅裂な言葉を上げながら、私達に向かって走り出した。

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