SCPー239。それは八歳程の小さな女の子で、世界を好きなように改変出来る現実改変能力を持つSCPなのだ。
本名は、シガーロス=ステファンスドッティル。
現在彼女は、ある事件を切っ掛けに人類の手によって薬を投与され続けており、今も眠ったままである。
本来なら、彼女は目覚めない筈だった。
しかし、彼女は目を覚ます事になる。何故か投与された薬が無力化され、針も抜け落ちる。そして、彼女は目を覚ました。
──────────────────────
私の人生は、大好きに囲まれていた。作品が好きで、小説や漫画、アニメに映画が大好きで、その為に仕事で成果を出して趣味の為に生きた。仮面ライダーやウルトラマン、ジャンプにラノベ、MCU等も好きだった。後は糞ラノベにも目を通して、その設定もいつか使えるようにと記憶していた。
両親や仕事場の同僚、後輩もオタク趣味があった為、本当に恵まれていたと思う。
色んな作品展の中でも、特に好きだったのがSCPだった。あの特異な世界観とオブジェクトの細かい設定を見た瞬間、思わずハマってしまった。中でも一番好きだったのが、SCPー239。項目名は『ちいさな魔女』。彼女の事も好きだし、もし彼女に憑依転生出来たら、財団に協力してSCPオブジェクトを収容又は無力化し破壊する事を手伝いたいと思っていた。その機会が訪れた時の為にも、選んだ仕事は自衛隊だった。厳しい訓練も続けて、武道も一通り学んだ。
此処までする必要あったかって?いつか転生するかもしれないし、その時に備えて鍛えるのに何が悪いのかな?
すると、私が二十四歳になった頃に、その機会が訪れた。それは、私が無理したせいで過労で倒れてしまった後に起きたのだ。今思えば、転生する時の為に頑張りすぎて過労死するというお馬鹿にも程がある事して、あまりにも恥ずかしい。
そして、私は周りを見渡すと、星空が私の周りを囲んでいた。但し決して暗くはなく、明るく薄い紫色の星空だ。漫画で見るような美しい世界だ。そして私が立っているのは、一本の橋だ。先が見えないほどに長い橋に立っている。
「此処って・・・ん?」
私は目の前に一人の女の子が居るのを見つけた。その女の子はヨーロッパ系の美少女で、身長一メートルの八歳位に見える。背中を覆うウェーブの効いた金髪ロングの髪に、瞳は灰緑色の陰がちらついている。
「・・・やっと来てくれたね。お姉ちゃん」
「・・・貴女は、SCPー239?」
特徴だけで理解出来た。彼女はSCPだ。それも世界を好きなように改変出来る現実改変能力者だ。
「うん。でも、シガーって呼んで欲しいよ。お姉ちゃんに、そう呼んで欲しいの」
「う、うん。解ったよシガー」
私はシガーと呼んだ。その時シガーが嬉しそうに笑っていた。でも、何で彼女が此処に?
「あのね・・・私、死んじゃったんだよ」
「・・・えっ?死んだ?」
「うん。あの人達のお薬でずっと寝てたんだけどね。そしたら私は此処に来たんだよ。此処はね、あの世とこの世の狭間なんだよ」
「・・・成る程ね。寝てたら無敵じゃないから、薬を投与する内に病気になっちゃったんだね」
財団はいつの間にか、シガーを殺してしまってた。財団とはいえ、人間である事に代わりは無い。成功もするが、失敗だってする。取り返しの付かない失敗もするからこそ人間らしいのかもしれない。シガーという、現実を変えられるだけで本当は純粋無垢な優しい女の子を死なせてしまったのは、本当に取り返しの付かない失敗だ。それで、どうして私はシガーの目の前に居るのか?それについては、シガーが答えてくれた。心の中を読まれた。読心術って出来たっけ?もしかして、私に会えたから?
「お姉ちゃんの事、ずっと見てたんだよ。私になれたら、財団の為に力を使いたいんだね。他にもやってみたい事もあるんだよね?」
「全部見てたの!?」
「お陰で私の事、全部解ったんだよ。色んな事も解ったし、面白い作品もお姉ちゃんと一緒に見れて良かったよ」
成る程。通りで想像してたよりもシガーが上手く話せた筈だ。そして、読心術も使えるようになった訳か。
でも、それだと私と出会えた理由が解らない。
「で、何で私がシガーに会えたの?」
「私、死んじゃったから。私に代わってくれる良い人を探してたんだよ。そしたら、お姉ちゃんを見つけたんだ」
成る程。それなら私の事を見れたのも納得だ。シガーは死んだ後に、自分の代わりを・・・代わり?
「待って!それだと、私がシガーとして生きて欲しいって事だよね!?」
私の問いにシガーは首を縦に振る。
「シガーはどうなるの!?」
「多分、私はあの世に行っちゃうね。まだ色んな事をしたかったけど、あの世界に私は居ちゃいけなかったんだ」
「・・・居ちゃいけない訳が無いよ。と言っても、シガーは死んじゃったから、もう手遅れなんだよね」
「だからお姉ちゃん。もしお姉ちゃんが望むなら、私として生きて欲しい。その力、お姉ちゃんの楽しみと、困ってる人達、そして、財団の人達の為に使ってね」
それは、私が望んでた事だ。しかし、現実は重く残酷だ。相手はSCPだ。常識では計り知れない力を持つし、私だって全部把握してる訳ではない。
でも、私だって意地はある。それに、何より大好きだったシガーにお願いされた以上、私は断る訳には行かない。
「解ったよシガー!後の事は全部、私に任せて!」
「・・・ありがとう!」
お互いに涙は無かった。でも私達は確かに仲良くなれた気がした。
「それじゃあ、私は行くね。もし、また会えたら、その時は一緒に遊ぼう」
「うん。また会おうね」
さよならじゃない。何故か解らないけど、シガーとまた会える気がした。だから私達は、別れの言葉を言わない。だから、「いつか会おうね」と言う。
こうして私達はお互いに擦れ違って、それぞれの道を進み続ける。
そして、私は橋を渡り続けて行く内に、眩い光に包み込まれていくのだった。
ED:『会いたいよ(ダ・カーポED)』