私は気が付くと、一つのベンチに座っていた。床を見る限り、何処かのビルの上だと解る。何故かって?周りを見渡せば雲のある青空が広がっているが、床から下を見下ろせば町が広がっているからだ。
「でも待てよ?此処って確か、シガーがあのドリームマンと出会い、遊んだ空間だよね?」
私は再び周りを見渡すと、今度はさっきまで無かったテーブルと二つの椅子、そしてテーブルにあるケーキスタンドには沢山のケーキやマフィン、クッキーが乗った皿が何枚も置かれていた。ケーキスタンドは三段構造をしており、どれも美味しそうなお菓子が乗っている。
そして、その椅子には一人の黒スーツに黒い帽子を被った男が座っていた。
「・・・君は・・・いや、中身は別人か。雰囲気も違うから何となく理解出来たよ」
「流石はドリームマン。私の事、解っちゃうんだね」
「話し方も変わりすぎてる。やはりそうだったか。しかし此も何かの縁だ。座って話そうじゃないか」
私はドリームマンに誘われて、テーブルに用意された彼が座る椅子の向かい側にある椅子に座る。ティーカップの近くにある皿へケーキスタンドにあるマフィンを四つ取って乗せる。ティーカップを手に取って、中にある紅茶を一口飲んだ。美味しい。
「ふむ。ティーカップの作法も心得て居るな」
「マナー違反です」
「まあ此処は一応夢の中なのだから、気にしないでくれ」
私のティーカップの持ち方は、取っ手に指を突っ込まない持ち方だ。此は『岸辺露伴は動かない』の『富豪村』で学んだマナーだ。この場合なら、ティーカップの受け皿は自分の膝、というか座ってるとはいえ私の肩までの高さにあるテーブルにある為、ティーカップのみを持つのが正しいマナーだ。八歳の体なら当然か。取り敢えずマフィンを一口食べる。ホントに美味しい。今度作ろうかな。
「それで、どうして私に会いに来たの?ドリームマン?」
「ああっ。その体の本来の持ち主と入れ替わった君と話をしたくてね。こうして君の夢に出向いた訳だ」
「・・・今度精神の防御も固めておくか」
ドリームマンに干渉されるとは、私も迂闊だった。SCPオブジェクトには精神に干渉する存在もある。今度からは気を付けないと。
「それはさておき、話をしたくて来たのだが、君に尋ねたい事がいくつかある。色々あるが、簡潔に質問するよ」
ドリームマンが紅茶を一口飲んだ後、私に質問をした。それは、私の事に関する質問だった。
「君はその体の持ち主と入れ替わった。君は自分の事を偽者だと思うかい?」
「・・・質問の意味が解らないよ?」
「つまりだね。君はシガーロス=ステファンスドッティルの偽物だと思うかい?」
成る程。入れ替わった私がシガーの偽物と、私が思ってるか訊いたのか。それは答える間でもない。
「私は自分の事を偽者とは思ってないよ。確かにシガーと入れ替わったけど、私は私。今の私はシガーロス=ステファンスドッティル。あの子の体と名前、力を受け継いだ、もう一人の“本物”のシガーなんだから」
「難しい話だが、今の君はもうシガーロス=ステファンスドッティルというわけか」
「初めは確かに自分が偽者じゃないかと思ったよ。けど私はシガーとして生きている。身代わりでも、影武者でも、ドッペルゲンガーでもない。今の私はもうシガーなんだから。だから私は、自分を偽者だと思わないし誰かに偽者と言われても否定する」
「・・・ではもし、その体の持ち主が目の前に現れたら?」
「その時は、二人揃って自分が本物だと言うよ。どっちもシガーなんだからね」
「・・・ふふ。そうか」
ドリームマンは笑った。難しかったかな?途中から自分でも何を言ってるか解らなくなったよ。でも、私は偽者じゃない。自分を偽者と言うのは、この体と力を託してくれたシガーを貶すようだと思うからだ。
私はケーキを食べて、ドリームマンと目が覚めるまで話を続けた。
「それでブライト博士が今度は女になってたよ」
「それは私も見てたぞ。全く女になるとは笑っちゃったよ」
ブライト博士の事だったり。
「えっ!?シガーの親!?あのカルキスト・イオンが!?何それ初耳なんだけど!?」
「事実だ。カルキスト・イオンの側近である少女が居てな。その少女の夢に入り、彼女から話を聞いたよ」
シガーの親がイオン様というカミングアウトを聞いたり。
「アベルったら酷いんだよ!私がこの間のバレンタインにチョコ作ってあげたのに、一気に頬張って『美味かった』って言うだけで他に何にも言ってくれないんだよ!美味しいと言ってくれるのは嬉しいけど、他に何か無いのかな!」
「美味しいの一言さえ聞けたら充分だと思うんだがな。それとも君は、アベルに美味しく食べて欲しくないのかな?」
「そ、それは違うけど・・・」
「恋をする乙女は複雑だね。好きな相手が美味しいと言ってくれたなら、それだけで充分じゃないか。頑張って料理するのなんて、相手を満足させる目的以外に何があるんだい?」
「わああー!!!違う違う違ーう!!!何であんな奴なんか!!あんな戦闘と料理にしか興味が無い脳筋なんか好きじゃない!!私は好きじゃない!!単にSCiPと戦う者同士の仲!!こここ、恋なんてしてない、全くしてないからあーー!!!」
「分かりやすいな」
ドリームマンはそう言うけど、違う・・・違う違う違う違う・・・違う違う違う違う違う違う違う。絶対違うよ違うと思う違うよね違うからね。
顔が熱いけど図星ジャナイヨ・・・。それより、他にも色々話をしたよ。
「あのサイボーグの少女にアリスと名付けたのか。不思議の国のアリスからか?」
「そうだね。容姿も似てたし、其処まで名付ける名前にセンスがあるわけじゃないから」
アリスの事を話したりした。しかし、ドリームマンとの楽しい話もすぐに終わる。
目の前が真っ暗に染まり始めたからだ。
「あっ・・・もう目を覚ますのか」
「でも、楽しかったよ・・・また、お話しよう」
「ああっ。私は何時でも待っているよ」
こうして私の意識は暗転した。ドリームマンと話せるなんて、スッゴク幸せだよ。アベルの事は余計だったと思うけど・・・・・・・・・。
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「・・・ん」
私は目を覚まして起き上がる。重い瞼を開くと、其処は私の寝室だった。大きく広いベッドから起き上がった私は、布団を整えてリセッシュを使って消毒を行う。
時刻は午前8時。でも日付みると二日も経過していた事が解る。つまりシャイガイ戦を終えてから、丸二日も眠っていたのだ。
アベルは目を覚ましたのか?暴れてないだろうか。
私はパジャマから沢山ある魔女の服の中から一つ選び、それを着た。
寝室を出て食堂に向かう。収容室は改変して、一つの家の中みたいに改装した。だから、以前よりも快適に過ごせる筈だ。
「おはよう・・・」
食堂に来ると、美味しそうな朝食の匂いがした。食堂には、エプロンを着けたキャンディスとクローヴィス、そして早めに朝食を食べるアベルの姿があった。
「あら、おはようシガー。二日も寝るなんて、余程疲れてたのね」
「おはようシガー。お腹空いてると思って、沢山作ったわよ」
「・・・目覚めたか。少女よ」
私は驚きで目が覚めた。アベルが大人しくしていたのだ。
「アベル!?目覚めてたの!?っていうか、暴れてたのかと思ってたよ!?」
「貴様が目覚めんから退屈してただけだ。だが、飯を喰えばすぐに修行を行うぞ」
やれやれ。でもまあ、私もアベルと競うのは好きだ。アベルも強くなってくし、本当に楽しい。
「うん!」
私も席に座り、共に朝食を食べていく。二日も食べてないから、沢山お代わりしたよ。ホントに二人の料理は美味しいや。