翌日。私はアニエスお姉さん達に案内されて、SCPー993の元へやって来た。SCPー993。又の名を『ピエロのボブル』。テレビのSCiPではなく、『ピエロのボブル(英語では“Bobble the Clown”)』という子供向けテレビ番組を放送するSCPオブジェクトだ。子供向け番組だけど内容は残酷。SCPー993ことボブルが放送するのは殺人、拷問、食人、果てには記載出来ない程に残酷な活動を擁護し、その方法を子供達に教える。子供向けと言っても、視聴出来るのは十歳以下の人間だけ。十歳以上の人間が視聴しようとするとすぐに突き刺すような頭痛に襲われて、番組終了まで意識を失ってしまう。
で、私は見れるのかな?私は精神年齢は大人だけど、体はシガーの物だ。つまり、八歳の肉体だ。果たして肉体年齢で子供と判断するか、それとも精神年齢で私は番組を観れなくなるか。
『~♪』
テレビ画面から音楽が流れる。今の所、私に変化は無い。しかし、周りに居た大人達は頭を押さえて倒れてしまった。私は、観れるんだね。肉体年齢で判別されたか。精神年齢は大人だけど、大丈夫だったね。
『やあ皆、ハロー!』
画面に映ったピエロ。私が記事で見た『ボブル』というキャラクターだ。
『今日も元気な子供が観に来てくれて嬉しいよ!今日はとっても面白い物を見せてあげるね!』
ボブルが見せてきたのは、ベッドに並んで眠っている二人の女性・・・えっ!?
「キャンディス!?クローヴィス!?」
『今日はこの二人を使って活け作りを見せてあげるよ!美味しい人肉ステーキを料理するんだから!』
「駄目!キャンディス!!クローヴィス!!お願い目を覚まして!!」
私は画面に叫ぶ。二人は画面越しとはいえ、目を覚ました。そして、二人はボブルの存在に気付き、即座に戦闘態勢に入る。キャンディスは炎を吐くが、ボブルには攻撃が通らない。クローヴィスが殴ろうとしても通らない。番組のSCPオブジェクトだからか全く攻撃が通らないんだ。
「・・・確かに番組のオブジェクトなら、普通に戦っても手も足も出ないよね。私が相手じゃなかったらね!」
私は画面に手を伸ばす。テレビに手を突っ込むが、壊していない。だって、私は番組の中に手を伸ばしているのだから。
そして、ボブルの首を掴んだ。変な感触。痺れるというか、冷たいというか、兎に角人の肌の感触とはまるで違っていた。
「捕まえた」
『そ、そんな!?何故!?何故僕に触れる!?というか画面越しに触ってくるなんて、お前は!?お前は何者なんだあ!?』
ボブルが慌ててる。私はボブルを掴む手を輝かせながら、ボブルの問いに答えた。聴こえてるか解らないけど、伝えておこう。
「私はただの、“ちいさな魔女”だよ」
そして、ボブルの肉体を消滅させた。『即死チート』及び『
「目が覚めた?おはよう」
「・・・ああっ、どうなったんだ?」
「SCPー993はもう放送しないよ。無力化しちゃったし」
すると、その場に居る研究員が全員驚愕した顔を浮かべる。
「・・・まさか他のSCiPも無力化出来るとは」
「だが、あの不死身のクソトカゲは・・・」
「仕方ないだろ。奴は次元が違う」
「正にThaumielだ」
Thaumiel。財団が他のSCPオブジェクトを収容する為に使用するオブジェクトに付けられるオブジェクトクラスだよね?
私、Thaumielクラスになってたんだ。確か、今の私ってSCPー239ー1って呼ばれているから、キャンディスが239ー2、クローヴィスが239ー3と呼ばれてるから、私達三人は財団の切り札になったんだよね。アベルは元の番号のままだからね。アベルは私達239に含まれてないんだよね。
まあ兎に角、SCPー993は異常性を壊しちゃったから、もう子供達に悲惨な番組を見せる必要も無くなった。いや、その方が良いんだ。子供達に残酷な物を見せたくないからね。
後日、アニエスお姉さんからの報告によると、SCPー993は無力化されたオブジェクトに付けられるオブジェクトクラス『Neutralized』に指定されたようだ。私はアニエスお姉さんを通じてオブジェクトを無闇に破壊するなと叱られた。でも、子供達に番組を見せなく出来たなら、安い事だよ。
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私はアベルと精神と時の部屋で修行をしていた。勿論実戦訓練だ。
「良いでしょ重力トレーニング!キャンディスやクローヴィスも三百倍重力に耐えられるようになったしね!」
「ああっ!千倍重力は体に効く!鍛練が捗るな!」
拳での実戦訓練や、武器を使った実戦訓練を行い、実力を高めていく。
そして、休憩を入れた時に私のスマホが鳴り響く。
「アニエスお姉さんからだ。もしもし?」
私はスマホを耳に当てて通話に出る。
『シガー、ちょっと良いかしら?』
「どうしたの?」
『実は、貴女に相談があるのよ。財団でもこのオブジェクトに拐われた一般人をどうやって救出するか悩んでたのよ』
「救出?それって、場所系のオブジェクト?」
『そうよ。名を『SCPー1357』。解るかしら?』
成る程。あの子供を拐う遊園地か。確かに私なら、拐われた子供達を救う事が出来るかもしれない。
「分かったよ」
『ありがと』
そうして、私は通話を切る。
「何事だ?」
「仕事だよ。アベルも着いて来て」
「ああっ」
相手は遊園地だし、従業員が全員拐われた子供達なんだよね。あの遊園地の事を遊びつつ調べる必要がある。
私はアベルと共に精神と時の部屋を出て、キャンディスとクローヴィスにも声を掛けた。
そして、アニエスお姉さんとクレフ博士に案内された私達は、一般人に紛れて遊園地からさほど離れていないある家で過ごす事になった。遊園地から贈られてくるチケットが来る、その日まで。
恋愛関係にある人二名なら、キャンディスとクローヴィスで問題無いと思うし、アベルも家族みたいなものだし問題は無い。そして私は精神年齢は大人だが、肉体は八歳の子供だ。
まあ、上手く行く事を願うのみだ。もし駄目だったら、テルとやみこさんが三人に代わって私と過ごす事になる。
上手く行くと思うな。多分・・・ね。
『ボブルの裏側』
http://scp-jp.wikidot.com/behind-the-scenes
『SCPー1357子供ための遊園地』
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1357