アークナイツ気まぐれSS集   作:アシッドムシ先輩

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エクシアとテキサスのちょっとした配達

砂埃に塗れたチェルノボーグの一角、任された積荷を目的地へ確実に届ける為に奔走する2人はレユニオンの残党に遭遇していた。

アーツが雨霰と降り注ぐ中を、ジープが真正面から突っ切って行く。

 

「エクシア、このままでは積荷が危ない」

 

路地から路地へ器用にハンドルを捌きながら、ループス族の女性が助手席に向けて話しかける。

 

「一度この先にある空き地で迎え撃つのはどうだろうか」

 

積荷を守るためには敵を一度撃退した方がいい、自分とエクシアの2人であれば十分可能だろう。そう考えての提案だが、何故か返事はない。

 

「……エクシア?」

 

ちらりと助手席を見ると、相棒は助手席のヘッドセットに脚を絡め、ジープの天井部分に空いた穴から身を乗り出していた。アーツが着弾する音に混じって銃撃音が聞こえていたのだが、どうやらそれはエクシアのラテラーノ銃によるものだったらしい。

 

「……ん!?ごめんテキサス!何言ってるか聞こえなかった!」

 

一度頭を引っ込めたエクシアが問いかけると、運転していたループス族――テキサスは溜息をついて先程の提案をもう一度告げた。

 

「あ、いいねそれ!あの連中の乗り込んでる車がやけに頑丈でさ!多分ウルサス軍から盗んだヤツだと思うんだけど、銃弾が通らないの!何人かにはヒットしたから敵は今10人くらいかな!それなら私たちで何とかなるでしょ!」

 

その言葉にテキサスは無言でアクセルを踏み倒す。

 

「うぇえ!?待ってちょっとちょっと!」

 

エクシアの悲鳴も気にせず、テキサスは少しでも敵車両から距離を取って空き地に到着するため、あちこちの瓦礫や放棄されたトラックをギリギリで交わしながら突っ込んでいく。

 

そしてビルとビルに挟まれたよくある空き地に全速力で突入。ドラム缶を吹き飛ばしながら急ブレーキを掛けると、ジープは車体をややスピンしながら減速していく。広い空き地の一番奥、壁にあわや激突する寸前でジープはピタリと停止した。

 

「……おええ」

 

ジープから降りたエクシアが顔色も悪く塀に手をつく。

 

「テ、テキサス……余裕が無いのは分かってるけど、もう少し何とかならなかった……?」

 

今にも胃の中をぶちまけそうなエクシアの肩に手を回し、テキサスが強引に近くのゴミの山へと誘導する。

 

「身を隠そう。私が車から降りたヤツらを奇襲するから、エクシアは援護を」

「……吐いていい?」

「ダメだ」

「うう……」

 

げっそりした顔のエクシアが一際大きな鉄くずの裏に身を隠し、空を仰いだその時。必死に追いすがってきたらしいウルサス製軍用車両が空き地の中央で急停止した。

ドアが一斉に開き、レユニオンが次々とジープに群がる。

 

(術士4、重装兵2、近接兵3、そしてリーダーのクラッシャーか)

 

エクシアの潜む鉄くずの山とは反対方向にあるドラム缶の影、テキサスは冷静に敵を分析していた。

 

(重装兵とクラッシャーが厄介だな。先に術士を潰してから近接兵はエクシアに任せよう)

 

ドラム缶から手だけを出し、エクシアに見えるようカウントダウンする。

 

(5、4、3、2……)

 

そこまで指で示して、テキサスはドラム缶の縁に脚を掛け、

 

(…1、0!)

 

全力で空中に飛び上がった。

踏み台になったドラム缶が地面に倒れ、けたたましい音を立てて転がっていく。振り返ったレユニオンの残党達が見た物、それは獰猛な1匹の狼と共に降り注ぐ無数の源石剣だった。

 

「う、うわあ!」

 

ジープに最も近い場所にいた近接兵が源石剣を必死に避けるが、その混乱を見逃さずにエクシアのラテラーノ銃が火を噴く。的確に発射された3発の銃弾がフード越しに頭蓋を貫通する。

 

「チッ、ジープの裏に回れ!」

 

クラッシャーが素早く指示を出し、残る近接兵の2人が慌てて退避する。重装兵は盾を掲げて術士を庇っていたが、そのすぐ側を駆け抜けるテキサスへの反応が間に合わない。

 

「と、止まれええ!」

 

振り下ろされる盾を掻い潜って接近するテキサスを術士がありったけのアーツで迎撃しようとする。炎と雷の球が脚や腕を掠めるが、テキサスは怯まない。

 

「やめろ!来るな!来るなぁぁあ!」

 

恐怖に叫びながらひたすらアーツを撃つ術士の首を、源石剣が深々と貫いた。

 

「黙っていろ」

 

テキサスが呟き、直後に殺到した風のアーツをジャンプして避ける。着地するタイミングを狙って雷を放とうとした術士は、胸をエクシアの弾丸に抉られて倒れ伏した。

 

「あの鉄骨の裏だ!」

 

今度は銃弾の発砲をジープの裏から観察していたクラッシャーが指示を出すと、重装兵と近接兵が1人づつ鉄くず山の頂上付近に刺さる鉄骨へ接近する。

 

(不味い)

 

直前まで車酔いをしていたエクシアは、銃は何とか撃てたとしてもロクに動けないかも知れない。最後の術士を地面に刺さっていた別の源石剣で切り捨ててエクシアの援護に向かおうとするも、正面に回り込んでいた重装兵が立ち塞がっており動けない。

 

盾を捌く端から剣を差し込むも、この重装兵は余程の手練らしく急所まで剣が通らない。逆に盾の角で腕をしたたかに打ち付けられ、テキサスは僅かに呻いて一歩下がる。

 

「俺の仲間を殺した罪を贖って貰うぞ、ループス!」

 

水平方向に腰を狙って振られた盾をなんとかその場で上半身を倒して躱すも、盾を手放した重装兵は両手に炎を貯めていた。

 

重装兵は不退転の覚悟を決め、炎を解き放とうとする。アーツ適正が無い彼は、レユニオンの術士隊長に「アーツを使えばそれっきりだ。お前は死ぬ」と告げられていた。体内の源石が急成長する苦痛の中で、重装兵は叫ぶ。

 

「お前も死にやがれ!」

 

その言葉にテキサスは源石剣を掲げて答える。

 

「……誰にも縛られるつもりは、無い!」

 

再び降り注ぐ源石剣が、今度は規則正しくテキサスの正面に並んで突き刺さる。直接重装兵を狙っても自爆覚悟の敵には通用しない。少しでもダメージを減らすための咄嗟の判断。

 

直後、重装兵が全身を青白い焔で焼き付くしながら爆散した。飛散する大量の源石剣ごと爆風で吹き飛びながら、テキサスはエクシアの姿を探す。

 

その頃、エクシアは爆発の余波で吹き飛んだ隙を利用して近接兵を空中で撃ち抜いていた所だった。エクシアもかなり追い詰められていたらしく、近接兵のナイフで太ももを切り裂かれていた。

 

エクシアをなんとか見つけたテキサスは、服の一部を焔に焼かれつつも身を捻ってゴミ山の片隅で埋もれていた廃車のボンネットに着地。そのまま源石剣をエクシアの近くにいた重装兵に投げ付ける。だが、源石剣は重装兵ではなくエクシアよりに回転しながら落ちていった。

 

「ヤケになりやがったか!相棒と一緒にあの世へ行きな!」

 

源石剣を無視して盾を構える重装兵だったが、直前にエクシアが浮かべた笑みを見て違和感を覚える。

 

(一体何をするつもりだ)

 

経験によるカンが盾の動きを鈍らせる。結果的にそれが致命傷に繋がった。

 

「アップルパイ!!」

 

エクシアの叫びとともに発射された銃弾。それは重装兵ではなく、エクシアの目前まで落下してきた源石剣の柄を正確に撃ち抜いていた。

 

急加速する源石剣。その切っ先は盾を構え直そうとした重装兵の喉元を貫いた。

 

「……ぐっ」

 

胸に募った怨嗟を吐き出そうとするも、彼の声は溢れる血にせき止められて溺れるばかり。そのまま肺に血が雪崩込み、重装兵は地面に崩れ落ちた。

 

「テキサス!まともに爆発を喰らってたけど大丈夫?」

「大丈夫だ、問題ない」

 

テキサスは普段の調子で平然と立ち上がったものの、服は至る所が焦げ付いており、露出した脇腹や二の腕は火傷で爛れていた。至近距離で受けた爆発は源石剣の壁でなんとかガードしたものの、所詮は薄い壁でしかなくテキサスに深刻なダメージを刻んでいた。

 

「クラッシャーをさっさと片付けて、配達先のロドスに急がないと」

 

呟いたエクシアがジープの方向を振り返ると、クラッシャーは斧で壊したジープの荷台から積荷を抱え、軍用車に乗り込もうとしていた。

 

「このッ……」

 

素早く弾丸を詰め替え、エクシアはラテラーノ銃の狙いを定める。残った弾丸を全て使い切ることになりそうだが、彼女の取っておきでしかあのクラッシャーを倒せそうにない。

厚い防弾ガラス越しの敵を見つめながら、エクシアは静かに呟く。

 

「Deo volente.」

 

そして、引き金を人差し指でゆっくりと引き絞った。

 

一方のクラッシャーは、この場所に散っていったかつての仲間達に背を向けてエンジンを掛けていた。敵討ちを考えなかった訳では無い。しかし敵前逃亡の結果レユニオン本隊に見捨てられた彼らの目的は、ペンギン急便がロドスに配達する予定だという資材を奪取してレユニオンに捧げ、本隊からの信用を取り戻した上で復帰する事だった。

 

……もっともクラッシャーが無事に戻った所で、メフィストに散々嘲笑われた挙句に彼の『護衛』に加わるだけだったのだが。

 

もう俺だけしかレユニオンに帰れない。仲間から託されたこの命、無駄にはしない。決意してアクセルを踏む直前にそれはフロントガラスを貫いた。

 

銃弾の雨。強力なアーツすら跳ね返す防弾ガラスには一切通用しない筈であるのに、クラッシャーは身の危険を感じ咄嗟に身を屈めた。一点集中フルバースト。数ミリのズレもなく叩き込まれた弾丸は防弾ガラスに入った僅かなヒビを広げて、広げて、広げて、四十を超えた直後にフロントガラスを粉砕した。

 

そのままクラッシャーの背中を銃弾が次々に抉る。鮮血が座席に飛び散り、クラッシャーは苦悶の声をあげる。ウルサス軍の軍用車すら歯牙にも掛けない銃弾が、今度はエクシアからほんの僅かに見えるだけの背骨を一発も外すことなく貫いたのだ。

 

脊髄が順番に破壊される中で、クラッシャーは地獄の痛みに声もなく悶えて、悶えて、遂にはこの世全てを恨みながら息を引き取った。

 

 

 

「……ふぅ、何とかなるもんだね。もう銃弾すっからかんだけど」

 

ロドスが停留しているチェルノボーグの北端まで向かうジープの中、エクシアは右手でハンドルを握りながら左手でラテラーノ銃を撫でる。

 

オーバーロードの代償として比較的最近に購入したお気に入りの銃は一部がアーツの熱で溶解して使い物にならなくなっていた。ロドスに到着してから整備担当のオペレーターに頼むつもりだが、恐らくはもう駄目だろう。

 

「やっぱり銃は八丁くらいないとねー」

 

エクシアは冗談混じりに呟きながらロドスの3トップであるドクターのことを考える。案外今回の件を大袈裟に話せば八丁のラテラーノ銃を手配してくれるかもしれない。

 

お人好しなドクターなら有り得そうだし、対価として暫くロドスの元で働くのも悪くは無さそうだ。エンペラーに話を通しておく必要があるが。

 

「……エクシア」

 

助手席に横たわるテキサスが呼びかける。

 

「なぁに?テキサス」

「……ありがとう」

 

その言葉に、エクシアは一瞬驚いた顔になるも即座にニヤリと笑う。

 

「ふっふーん!テキサスにしては素直にお礼を言うじゃない!よーし、テキサスの傷が治ったらみんなでパーティでもやろう!ペン急のみんなは居ないけど、ロドスの暇してる人たちを集めれば人数は揃うでしょ!今回の報酬を使っちゃおう!」

 

にわかにテンションをあげるエクシアの横顔を見ながら、テキサスも微笑んだ。

 

「……ラップランドとレッドは呼ばないでくれよ」

「あっはっは!呼ばない呼ばない!当たり前でしょ〜!無難なところから集めるから心配しないでちょーだい!」

 

夕日をバックにチェルノボーグを走り抜ける小さなジープ。ペンギン急便のちょっとした日常は、ひとまず幕を下ろすのだった。

 

 

 

……数日後、ロドスの一室にはパーティの噂を嗅ぎつけたラップランドとレッドから全力で逃げるテキサスと、酒の飲み過ぎで酔いつぶれてアンセルに介抱されるエクシアが居たという。




エクシア育てて使ってみたけど強いなあ→こんくらいいけるやろ!
テキサスの源石剣って応用広そうやなあ→こんくらいいけるやろ!

って感じでノリノリになって書きました。ごめんさい。
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