まさに絶望という言葉が相応しき惨状。コレを引き起こしたのはたった1匹の龍。
他の生物を認めず、暴虐の限りを尽くし、たった一夜で国を滅ぼした黒龍。
周囲に人の気配は無い。当然だ。俺以外の人々は全てかの龍に殺された。事実上、俺が最後の1人。
ある者は龍の炎で焼かれて炭になり、ある者は龍の顎で噛み砕かれ、ある者は爪で引き裂かれた。
身体の限界を迎え、動けぬ俺に向けて放つため、黒龍は口に炎を溜まる。そのあまりの熱に鉄が溶け始め、降り続く雨により出来た水たまりも一瞬で蒸発した。
黒龍はあまりにも強大だった。この国あらゆる兵器、人材、作戦を駆使しても、黒龍はその全てを焼き尽くし、今なお健在している。何もかもを犠牲にして、ようやく入れた最後の
勝てない。そう悟った人類は決死の覚悟で防御を固めたが、時すでに遅し。王城は焼け落ちた。もう俺に…否、我々に出来ることは無かった。
……だが、もし許されるなら。友との願いを果たす事が叶うのならば。
「次こそは、必ずーーー!!!」
黒龍の口から炎が放たれた。防げるもの無き絶対的な熱量。瞬時に石畳は焦げ、建物は崩れ落ち、鎧は溶け…俺は焼かれた。それは一瞬。苦む暇もなく焼けて消えた。俺がいた場所にはもう何も無い。ただ炎によって焦げた球状の跡が残るのみ。
かくして国は滅び、黒龍は咆哮した……
これは遠い遠い昔の記憶。忘れてはならぬ前世の記憶…
序章 伝説を探して
某日、ハンターズギルド本部。
重要会議室と言う名を付けられたその部屋の中には、数十名にも及ぶ人数が集まっていた。その誰もが各組織、各機関の最重要人物。または指導者だ。古龍観測隊、ハンターズギルド、各国の首領…その誰もが緊張の面持ちで何一つ物音も立たずに誰かを待っていた。
いきなり扉が開き、数名の人物が部屋に入ってきた。その人物は堂々とした歩みで円卓の空いている席に座った。
「お待たせしました。これより、最重要極秘任務。黒龍討伐作戦会議を始めたいと思います。」
コンコン、と誰かが俺の部屋のノックをする。そろそろ時間か。
「グランツ様、そろそろ準備をお願いします」
恐らくギルドナイトのものと思わしき声。既に準備を終えていた俺は、すぐにドアを開ける。
「準備は既に済ませてある。早速向かおう。案内を頼む」
「かしこまりました。こちらです」
帽子を深く被り、その男とも女とも取れぬ声の人物の後ろを付いて行く。彼女?は今、どんな表情なのかわからない。彼らはただ、上からの命令を遂行するだけの存在だ。感情なんて必要無いのだろうが…
お互い何一つ言葉を発さず、重苦しい沈黙の中、赤いカーペットを引かれた木造の廊下に2人の足音が響く。そして、そのギルドナイトはある部屋の前で止まり、部屋の扉を叩く。
「お待たせ致しました。今回の作戦の協力者を連れてまいりました」
入れ。返事はたった一言。だが、その言葉を合図に部屋の扉が開かれる。道案内をしてくれたギルドナイトに向けて軽く会釈をし、堂々とした歩みで部屋に入る。
「皆様、ご紹介しましょう。彼こそ、今回の作戦の鍵である人物。グランツ・バルカン殿だ」
部屋にいた人の視線が全て俺に集中しているのがわかる。俺は銀色の頭装備を脱いで脇に抱える。
「…グランツ・バルカンです。此度の作戦において重要な立ち位置に就かせていただきました。どうぞよろしくお願いします」
すると、席に座っていた人物のうちの1人が俺に近付き、右手を差し出した。
「私は此度の作戦で将軍の地位を賜った者だ。グランツ君、どうぞよろしく頼む。」
「将軍殿か。こちらこそよろしく頼む。どうぞ俺のことは存分にこき使って貰って構わない」
差し出された右手を握る。将軍は満足げに頷くと再び席へと戻って行った。俺もギルドナイトに差し出された椅子に座る。
「さて、では作戦の続きを説明させていただきます」
………
……
…
「グランツ君」
部屋を出た直後、将軍に呼び止められる。会議は無事に何事も無く終わったはずだが…何か粗相でもしただろうか?
将軍の側には、会議の時に少し離れた位置に座っていた人物もいた。
「この後は予定通り、古龍調査団の面々に協力を仰ぐために新大陸へと渡る。協力を確約したすぐ後にはシュレイドに出発する。君も戦闘が出来るように準備をしておいてくれ」
「わかりました。では、また後で」
「あぁ、また後で。新大陸行きの船で待っている」
2人の背中を見送り、1人部屋へと戻り、荷物を纏めてすぐに部屋から出る。行き先は…新大陸行きの船がある港。ここからそう遠くは無い。ゆっくり行っても数分で着く距離だ。
部屋の外で控えていたギルドナイトの1人にも手伝ってもらい、船へと自身の荷物を運んで行く….
この日、世界の命運を握る作戦が始まった。もし失敗すれば、数日でこの世界の全ては焦土と化すだろう。かの黒龍にはそれだけの力がある。俺は知っている。だからこそ、失敗は出来ない。
着慣れなぬ
この青空はきっと約束の地に繋がっているはずだ。誓った友との約束を今度こそ、必ず。
荷物の積み込みが終わると同時に、船の汽笛が鳴る。もうすぐ出発だ。我々は、この作戦に必要不可欠な存在である古龍調査団に協力を仰ぐべく、新大陸行きの船へと乗り込んだ。
こんにちは、shrimpです。
今回は初のシリーズ投稿となります!舞台は新大陸…いや、正確には現大陸ですね。記憶にも新しいであろうアイスボーン 最後の追加DLC、ミラボレアスのストーリーをオリジナル改造したものになります。
今後もチマチマと進めていく所存なので、良ければ見ていただければ幸いです。高評価や感想は筆者の励みにもなりますので、是非ともよろしくお願いします!
では、また次回! 新大陸編です!