千年一夜物語   作:shrimp horn

2 / 2
暁の凱旋
煌めく星々 1


 話は少し前に遡る。

 

「まさか…アルバトリオンが!?」

 

 それは総司令が現大陸へと一時的に帰還する直前の話だった。

 

「ありえないわ!こんな短期間で!」

「観測隊も目を疑ったらしい。…アルバトリオンは破壊の象徴とも呼ばれる古龍だ。ここで、奴を抑えないとーーー」

 

 煌黒龍アルバトリオン。あらゆる天災を司りし禁忌の古龍。かの龍は赤龍ムフェト・ジーヴァ討伐後に、この新大陸に姿を見せた。目的はわからない。だが、私たちはかの古龍を撃退した…はずだった。

 

 しかし、かの古龍は再び新大陸へと舞い戻った。やつは()()()()()()()であらゆるものを破壊する。故に、放置など出来ない。

 

「特別任務にクエストを用意した。調査班は十分な準備の後、幽峡の谷に向かってくれ」

 

 わかっているとも。そういう意味を込め、深く頷く。かの古龍と会い見えられるハンターは世界中でもほんの一握りだ。ましてやこの新大陸ともなれば、更に少ないだろう。

 

「どういうことなの…なぜこうも立て続けに?」

「赤い龍といい、アルバトリオンといい、このところ、大きすぎる異変が目立ちますね」

「広く見れば、新大陸も俺たちの故郷も同じ生態系の一部だし、あっちでも、同じような超大イヘンが起きてなきゃいいスけど…」

「あぁ、心配だな……」

 

 確かに、このところ大きな異変が多過ぎる。これだけ新大陸で起きているならば、現大陸でも同じように異変が起きていると考えるのが妥当だろう。だが、あちらにはここよりも多くのハンターがいるし、()()と呼ばれるハンターたちもいる。心配はいらないだろう。

 

「では相棒、私は先に行っていますね!」

「私も先に行くわね。後で会いましょう」

「わかった。今回もサポートの方、よろしく頼むよ」

 

 2人は先行してキャンプ地の準備をするため、一足先に飛び立って行った。

 

「俺も武器と防具の調整が終わり次第出発するっス」

「わかった。私も準備があるし、向こうで落ち合おう」

「了解っス!」

「2人とも、わかってはいると思うが…一度撃退したとはいえ、やつは破壊の象徴と呼ばれる古龍だ。くれぐれも気を付けてくれ」

「「はい!」」

 

2人と1匹は外へ出る。1人は工房へ。1人と1匹はマイハウスへと向かった…

 

 

 

 

「えーと…うん、これで丁度だね。毎度!」

「いつもありがとうございます。また来ますね」

 

 また来てね!という声を背に受けながら、赤龍装備の少女リィズは相棒であるオトモの元へ戻る。

 

「ほい、お待たせー。これで必要なものは全部揃ったね」

「やっとかにゃ。ご主人は買い物が長過ぎるのにゃ、こっちの事も考えてもう少し短くして欲しいにゃ。」

「おやおやミケさんや、そんな事をご主人様に言って良いのかな〜?」

 

 ニヤニヤしながらミケの方へと買い物袋から取り出した()()()()を見せる。すると、ミケは一瞬にして呆れ顔からまるで星でも見えるんじゃないかというほどにキラキラとした顔になる。

 

「そ、それは…まさか…!」

「ふふふ…そう、コレは無理を言って捕まえて来てもらったドスサシミウオの切り身さ!」

「ご主人!頂戴!頂戴!」

「さーて、どうしようかなぁー?」

 

 からかうのもそこそこにサシミウオの切り身をミケに手渡す。そもそもコレはミケのために用意してもらったものだしね。

 オトモ用武具の整備を放り出してすぐに食べ始めた相棒を、呆れながらも横目で見つつ最終準備を終える。アイテムポーチの中身を確認し、ボックスを締めると丁度食べ終わったらしきミケが準備を終えて待っていた。

 

「…ご主人、準備はいいかにゃ?」

「当然。ミケは準備出来たかい?」

「勿論にゃ、いつでも行けるにゃ!」

 

 自信満々の答え。相変わらず頼もしい相棒だ。この憎たらしくも頼れる相棒に何度も命を救われてきた。まだ少し震えてはいるが…当然か。

 

「なら…そろそろ行こうか。相棒!」

「了解にゃあ!ご主人!」

 

 指を口に当て、天へと高らかに口笛を響かせれば、専属のメルノスがいつものように飛んでくる。

 決意は十分。目指すは幽峡の谷、その最深部。かつてベルナの英雄と呼ばれたリィズたちは、セリエナの肌寒い空へと飛び立った。

 

 これより始まるは禁忌との再戦。二度目の災厄。2人と1匹の戦いが、幕を開けようとしていた。

 

 

 

 

 幽峡の谷の第三層。そこで静かに佇んでいるのは禁忌の古龍、煌黒龍アルバトリオン。

 異様に右角だけが長いこの個体についている傷は、かつてこの地に訪れた際に負った傷だ。大半は完治しているとはいえ、使った体力はまだ戻ってはいない。

 彼は忌々しそうに、ここに訪れた時からずっと感じる視線の主を探す。かつて訪れた時もそうだ。この視線を感じた少し後、彼らはやってきた。

 

 思い返すだけで苛立ちが募るのか、己の心のままに周囲に火炎を吐き、焼き尽くす。

 彼らは弱点を正確に射抜き、一撃に頼らず連撃を用いて鱗を剥がし、トドメの強力な一撃で左角を折られた。忌々しき苦い記憶だ。

 

ーーたかが人間風情が……!!!ーーー

 

 そう吐き捨て、この地を去ったのは記憶に新しい。たかが人間と侮り過ぎた。確かに驕っていたのは事実だ。否定はしない。だが、人間風情にやられるなど…!!

 

 彼はまだ若かった。他の老齢の個体にウンザリし、新たな縄張りを求めてこの場へとやってきただけだった。だが、若いとはいえ天災。ハンターたちが彼を見逃すはずはなかった。彼は討伐され、追い出された。が、再び彼は戻ってきた。

 

 半端正気を失いかけている彼でも既に気付いている。あの時自分に屈辱を味あわせた人間どもの気配が真上にある事を。もうすぐ、復讐の機会が訪れるのだと。

 

 谷の底で黒き龍は口角を上げる。すぐに訪れる再戦の時をただひたすらに待ちながらーーー




キャラ

【グランツ】
 本名、グランツ・バルカン。30代後半の男性。装備等は現在明かせられないので…大剣使いという事だけ。とある事情により、少年期の頃からハンターとしての素質を表しており、ハンターとして活動し始めてからすぐに頭角を現し、あっという間にGのクラスにまで登り詰めました。この作品のストーリーを原作と違う流れにした原因でもあります。


【リィズ・ベルーニア】
 導きの青い星とも呼ばれる赤龍装備の少女。得意武器はハンマー。元々はベルナという小さな村で英雄として語られた人物。お守りとして持っている"灼けた甲殻"はルールを破ってでも持ち込みたかった仲間との大切な思い出でもあります。


【ミケ・ベルーニア】
 名前が示すとおり、リィズとは家族関係。元々はニャンターとして活動していましたが、リィズが新大陸へ行くと聞いて、オトモに転職し付いてきました。元は野良アイルーで、リィズに拾われた事を今でも感謝していたりします。





この話は千年一夜物語の二話目になります!第1章はストーリーで前座的扱いだったアルバトリオン戦です。弱体化はするつもりですが…前座とはいえ禁忌の古龍。この作品ではそれ相応に強くするつもりです。今後も楽しみにしていただけば幸いです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。