今回で戦後処理とさせていただきます!
ボリシェ・コミン主義連合共和国
首都・クワモス
降伏する六時間前の地下総帥官邸ではジュガーリンが陸海空軍三人の将軍達を総帥室に呼び出していた。ここに残った将官達はジュガーリンと社会党の態勢に心酔した者達ばかりであるものの彼からの指示を静かに待っていた。
そして、開戦時と比べて憔悴しきった表情のジュガーリンから正気を感じない調子で口が開いた。
「同志諸君。このような現状でも君たちは私に付いてきてくれるかな?」
「勿論です!親愛なるジュガーリン総帥閣下の為なら最後の一兵となるまで!!」
「ふふふ……そうか嬉しいよ。では、地獄にも付いてきてくれるかね?」
「へ……っ?!」
ジュガーリンの一言に愚直な態度で忠誠を口にした将軍の一人が涙を流した彼に肩を叩かれた直後に言われた言葉に耳を疑う間もなくジュガーリンが手にした拳銃の乾いた発砲音と共に頭を撃ち抜かれ、残った二人もジュガーリンに声を掛けるも間もなく銃弾に頭を撃ち抜かれて床に大きく倒れた。
「そうだっ!!いつだってそうだ!!私の愛する妻子を奪った帝政派の奴らとその帝政派に協力していた下等思想者やヒトモドキ共もいざとなれば今の私のように狂人となるんだ!!あははははははっ!!でももう何も怖くない……私はこの戦争で死んでいった兵士達という地獄まで付いてきてくれる仲間がいるじゃないかっ!!」
「そ、総帥閣下!!これは一体!!」
「ははははっ!フルスチャフ君かぁ!残念だけど幸せな君は連れて行けないなぁ……私はもうこの国で好きなようにして来たからあとは君の好きなようにしたまえ!!異世界人共に裁かれて私のやってきたことが暴かれるくらいならこうして先に逝くよ!!」
「閣下!待ってくだ……」
部屋に入って来た『ミハイル・フルスチャフ』社会党委員長が理性を失い狂人と化したジュガーリンを説得しようとするものの発狂して支離滅裂な譫言を喚き散らかしている彼に言葉が通じるわけもなく、ジュガーリンは自身の頭に銃口を当てると発砲音と共に脳脊髄液と血液を飛び散らして床に倒れ込んだのだった。
強欲さと恐怖で支配する独裁者が居なくなった今、フルスチャフの脳内にはある意味強力だった彼という統制力が失った事と百万人以上の戦死者が出ている事が薄々と気付かれている事もあり、現実をよく知り洗脳されていない軍の下士官達が軟化している上層部に対して反旗を翻しかねない状況から降伏という二文字が浮かび、日本などに対して降伏を決断したのだ。
共和国第二代書記長ヨセフ・ジュガーリンは生涯の半分を自身のカリスマ性のもとで国を発展させて来たものの自分にとって都合の良い政治体制を築き上げることで国民を洗脳し、人民の公平を謳ったコミン主義の解釈変更を成すことで誤った方角に滑り出した共和国社会党の組織構造を会議での連携を重視した横並びの連合体から自身を頂点に置いた独裁制を敷き、侵略戦争の愚かさを都合よく正当化したことで国内の不満を諸外国に向けることで目先の利益や欲望を手に入れて来た。
だが、ジュガーリンが運転する愚行という名の暴走列車が招いた結果は彼に騙され人間としてあるべき理性や道徳を失った共和国陸海空軍から生じた百万人の戦死者だった。
そして、日本皇国国防軍が首都クワモス眼前まで迫ったところでジュガーリンは遅すぎた自身の暴走に気付き発狂した後に自ら命を絶った。
日本皇国
首都・東京 国会議事堂
日本が重軽傷者を出したものの戦死者を出すことなく戦争に勝利した事から早朝に開かれた国会は与野党の意見交換を行いながら滞ることなく進行していた。
中渕恵二総理大臣は、戦争進行の中で徹底的に穏やかかつ人道的な軍政を指示していた事と異世界という環境への適応化を狙った研修を兼ねた警察官の派遣や元居た世界での反省を活かした近代化を支援していた事が大いに評価されていた。
そんな中、戦後処理として必ず浮上する人権問題にまつわる議題が野党の日本民主社会党代表の『
「中渕総理にお伺いいたします。我が国とボリシェ・コミン主義連合共和国との交戦によって明るみに出た我々人間と異なった獣人族の皆様や共和国が支配していた諸外国及び先住民族の皆様に対する非人道的行為に対しての処遇についてはどの様な処遇を検討されていますか?我々民社党を含めた改進党、自由党、憲政翼賛会の四党が出した結果としましては我が国を主導に徹底した共和国政府高官や軍部の厳罰処分及び自由革命軍やルシア臨時政府軍、イタリ・ローマ王国そして大敷洲帝国の皆様にご理解を頂いた上でルシア地域の改造を行うべきであると思います」
「野宮代表ありがとうございます。我々民自党も非人道的行為を根本から修正する方針で野党の皆様と一致しております。しかし、私としましては日本主導ではなく我が国に対して協力的なイタリ・ローマ王国、勇気と素晴らしき理想を持って共和国政府に立ち向かったルシア臨時政府軍や自由革命軍そして、我が国と瓜二つといえる大敷洲帝国との合議制にすべきだと思います。また、野党の皆様と我々が開戦直前から可決してきた『特別人種関連法』に則って人間族と獣人族に優劣が付かないバランス調整や現代的な法制や条約をこちらの世界でも生み出していくべきだと考えております」
「中渕総理、ありがとうございました。我が国の立場も盤石になりつつある事や総理が持たれているこの世界に対する展望から合議制での戦後処理を希望されている事に納得いたしました。私からは以上です」
「こちらこそ我々の案にご理解いただきありがとうございます。他に異議等ございましたら与野党の皆様からのご意見をお聞かせください」
『異議なし』
こうして日本皇国によるボリシェ・コミン主義連合共和国に対する戦後処理は野党側の意見や異世界の国々の事情を尊重する形で可決の方向に向かった。
日本国内の世論は共和国が獣人族や先住民族に対して行って来た迫害への当然の処置であることや今回の戦争で十分に報復した上諸外国からの信頼を確保したとして中渕内閣の支持が上昇する事となった。
日本皇国国防陸軍特別統治地域・ルサビノ
ルサビノの街は共和国に支配されていた時代が嘘のように活気を取り戻しつつあった。住民と打ち解け親密な関係になったとはいえ、戦車や装甲車といった兵器を装備した第一機甲師団の主力や王国軍を駐屯させることに申し訳なく思った日イ両政府は話し合いの後にルサビノに駐屯する戦力を減らし、特別統治地域研修で日本から派遣されて来た軽武装の警察官が治安維持を担うことになったものの制服姿の警察官と住民達がプレハブの仮設交番で談笑しているほど警察が要らないくらい治安が良かった。
そんな穏やかな空気が流れる中で綺麗になった教会内の椅子にどっかりと腰掛けて無邪気に遊ぶアンナとカリーナ姉妹を眺める藤田は自身の妻『
『私は大賛成よ!あの子が二人になって帰って来てくれたみたい!』
「そやろ?華穂さんやったらそう言ってくれると思ってたで。身寄りも無いこの子らを引き取れるんはワシらしか居てないと思うんよ」
彼は日本が転移する十六年前、小児がんで溺愛していた一人娘を亡くしており華穂と共に最期までそばに寄り添えたもののこれ以降は任務や部下、戦友とのやり取りで空いた虚しさを埋めるしかなかった。
だが、幸か不幸か今回の戦争で境遇が異なるが大切な家族を亡くしたという点が一致している事や彼女らの両親の仇を討った事やカリーナが藤田に懐いていることもあってか今はアンナにも懐かれている。
間もなく妻との通話を終えると教会の中に上官でありイタリ・ローマ王国派遣軍の総司令官の今村季一郎大将が入って来た。
「藤田君、彼女ら二人を養子にする件だが大使館が快諾してくれたよ。ただ今のところは日本と王国がそれぞれの国民の往復に対して慎重な姿勢を取っていることからこの子たちを連れて日本へ帰る事に制限が掛かっているが、王国の国防軍関係者居住区でなら家族として住んで貰って構わないよ」
「今村閣下、ありがとうございます!これでウチの嫁も大喜びです!準備が出来次第、貰っている休暇を使わせていただきます!」
「ああ、何かあるまで存分に使ってくれて構わないよ。仇が取れたとはいえ一番甘えたい年頃にご両親を亡くしたんだ。心の傷に寄り添ってやってくれ」
「無論、そのつもりであります。閣下のご厚情を改めて感謝いたします」
今村は藤田がカリーナとアンナの二人を養子にする事が認められた事を告げた後に敬礼し合うと静かにこの場を去った。
しばらく日本語でのやり取りが行われていたため遊びながら藤田の行動を見ていた二人は、雰囲気で彼に何か嬉しいことがあったと感じていた。
「フジタの叔父さん何かいい事でも有ったの?」
「そうそう。時々私たちの方を見てたけど……」
「二人に聞きたいんやけど、ワシが二人のお父さんに成るって言うたら嬉しいか?」
「うん!すごく嬉しいよ。だってお父さんと同じくらい優しいしもん!お姉ちゃんもそう思うよね」
「カリーナの言う通り優しいしすごく強いから叔父さんがお父さんになっても良いよ!」
「……そうか。じゃあ、今日からワシが二人のお父さんやで。ワシも軍人やから帰れる時間は限られて来るけど二人の傍に居れるようにするで」
「叔父さんいや……お父さんありがとう!」
「お父さんよろしくね!でも、叔父さんは二ホンという国から来たから日本で住むの?」
「こっちこそありがとう。今は国の偉い人同士が話し合っているから日本じゃなくて王国にあるお家で一緒に住むで」
「「はーいっ!!」」
こうして藤田はカリーナとアンナの為に何か出来る事は無いかと考えた末に二人を養子として迎え入れる事にしたのだった。
彼女ら二人としては命の恩人でもあり両親の仇を討った彼が新しい父親になってくれる事を喜び、新しい家族として迎え入れる事にしたのだった。
その三日後ルサビノの住民に別れを告げて街を後にして藤田が住む王国領内の国防軍関係者が居住する地区に移り住んだのだった。
イタリ・ローマ王国
王都 ビザン・ティノプル
宮廷内の応接室にはイタリ・ローマ王国国王のイザルベライト二世やルシア臨時政府軍のバグラテオンやジュコーフ、大敷洲帝国皇女代行の島田美保近衛機甲団団長そして日本皇国からは中渕内閣外務大臣の『
「皆様、本日はお集まりいただき誠に感謝申し上げます。終戦から三日近く経とうとしていますが、旧共和国もといルシア各地は王国軍をはじめとする各国軍の皆様のおかげで非戦闘員の方を駆り出そうとしていた徹底抗戦派の牙を折ることが出来ました。そこで避けて通れないのが戦後処理とジュガーリン体制の下で過剰に肥大化した共和国領の今後について各国の皆様と意見交換を行いたいと思います」
「私が率いるルシア臨時政府軍及び自由革命軍のジュコーフ殿と話し合った結果、今回の戦乱は共和国政府が全ての元凶であるため他の諸外国の皆様の判断を聞き入れたいと思っております」
「私もバグラテオン殿下と同じく各国の皆様が持たれている戦後の展望を中心に聞き入れたいと思っております」
イザルベライト二世の言葉で会談が始まると旧共和国側の二人は他の三ヶ国に対する譲歩とよほど酷いもので無い限り口を挟まないという姿勢で決まっていたのかほぼ三ヵ国の判断に委ねる事にし、この場において一番に発言すべきという目線が吉生外務大臣に注がれる事になった。何せ今回の戦争において日本側に付いた王国や帝国、反共和国勢力の戦死者を出すことなく戦線を広げ共和国を降伏させた功労者だからである。
「ヨシオ外務大臣、二ホン皇国のお考えをお聞かせいただけますでしょうか?」
「国王陛下、我が国が国会や世論を通じて出た答えとしては今大戦の英雄であるバグラテオン殿下及びジュコーフ殿が新生ルシアの指導者として立つべきだというものであります。この会談を開始するまでの間で今回の戦争に関する資料を目に通していたのですが、バグラテオン殿下を皇帝に据えた新ルシア帝国の復権を望む国民が大半でありジュコーフ殿を新指導者として望む声もあります。しかし、ルシア復興として欠かせない条件としては真の民族自決とジュガーリン体制下において行われた侵略戦争で獲得した地域を独立させたうえでの自治権回復が望ましいと思います。無論、その件については貴国の国民投票を通じた上で確立したいと考えております。また、現在我が国が統治下においている旧共和国南部地区に至っては我が国が主導する形であることを了承していただきたく存じます。しかし、完全占領までに至らず一部の外国領土を不法占領している領土は直ちにその国に返還するのが新生ルシアに持っていただきたい筋であるというのが我が国の答えであります。最後にお伝えする形になりましたが、我が国は新生ルシアを従属国化する気はありませんのでご安心ください」
この時、吉生がイザルベライト二世に対して述べた戦後ルシアに対しての処遇を語り終えた頃になると旧共和国側の代表である二人は日本側が提示した戦後処理条件の良さに驚きを隠せなかった。
多額の賠償金支払いを免除出来たとしても他の三ヵ国による分割統治もしくはゴルバ・グラードといった近代的な港湾地区は半世紀近くの租借地化が免れないものであると考えられていたからだった。
流石に日本が住民からの信頼を得て設立した特別統治地域の統治継続了承や占領地の独立及び返還については承諾する気だったもののこれからルシアを再構築していく上で必要不可欠なものを失わないで済むうえ日本の従属国にならないことについて正直喜ばざるをえなかった。
「吉生殿が今仰った戦後処理案は我が大敷州帝国が理想の一つとして掲げている外地統治政策と一致している事から大いに賛成します!よって我が帝国の皇女殿下並びに皇帝陛下そして、臣民を代表する私から異議はありません」
「私も島田皇女殿下代行の意見に同調いたします。二ホン皇国が掲げる対外思想は今後この世界でも大いに浸透させていくべき考えであると思います」
「皆様のお慈悲を感謝いたします。我がルシアとしてはこの処理条件に異議はありません。また、二ホンが現在イタリ・ローマ王国と国境を接する旧南部地区に至っては二ホンの統治下であり続ける事にも異議はございません」
「バグラテオン殿下と同じく願っても無い条件である為、この条件での処理を希望いたします」
「こちらこそ聡明な判断を下していただきありがとうございました。イタリ・ローマ王国及び大敷洲帝国のご賛同に感謝御礼申し上げます」
こうして同盟国であるイタリ・ローマ王国や大らかな姿勢の大敷洲帝国そして、新生ルシアの土台となりうる反共和国勢力の賛同を得たことで穏便な戦後処理が決定したのだった。
今回の戦後処理条件は日本国内では武士道と先人の理想を尊重した上で計画したとして吉生太一外務大臣をはじめ中渕内閣の支持を不動たるものとした。
また、戦争中から秘密裏に交流があった『スオミランド共和国』やバルトニア諸島を越えた先にある『ポルスカ国』、日本が転移してくる前から連合共和国との紛争が絶えなかった極東部の『ジンギスカン首長国連邦』といった三ヶ国は日本皇国を『異世界から来た中小国の守護者』として大いに賞賛し、イタリ・ローマ王国や大敷洲帝国、新生ルシアの基礎に成ろうとしている二軍に対して戦争勝利の祝電を送ったのだった。
無論、日本もこの三ヶ国を帝国主義を掲げる大国の脅威から保護する為の準備を進めながら穏やかな接触を予定している。
日本皇国
首都 東京 首相官邸
首相官邸では総理大臣の中渕と内閣官房長官の『
「安藤君と吉生さんが言うように、この異世界で我々が元居た世界と同じ過ちを繰り返さないようにしないといけませんね」
「せっかく官房長官として総理のおそばに置かせて頂きましたから率直に申し上げると、勢力が弱まったとはいえど未だに高齢の構成員が予備役として従軍経験がある『盟朋大赦教団』の教徒たちの監視を継続していても世論からの批判が有ったとしても微々たるものでしょう。次にこれまでもそうであったように宗教国への干渉は極端かつ異常性が高いカルト教でない限り避けるべきであると考えております。出来る限りこの世界の国々の公安部もしくはそれに該当する機関との連携も強めてくべきであると考えております」
官房長官の安藤は日本が転移する十年前、テロ組織だった盟和道理教団の穏健派が組織した盟朋大赦教団代表との話し合いで教団が掲げる思想の甘さと脆弱さを実例を上げたうえで徹底的に指摘した事で大いな評価を得たもののこれを不服とて逆上した教団の構成員に自宅を放火された経験からお花畑な思想を掲げておきながらテロ行為に走るこの教団の監視と日本が元居た世界でイスラム過激派が生まれなかった要因の一つである宗教国への干渉を避けた上で、ある程度のしきたりをその地域における必要悪として容認すべきだ。という距離間保持も意見として挙げたのだった。
「中渕さん、シンちゃんが言うように俺も外国からの干渉防衛として国内外の馬鹿どもを抑えるべきだと思います。あと俺の話にはなりますが、大敷洲帝国の事は『さすが敷洲の兄弟!分かってるじゃねえか』って言いたいくらい我々の意見に同調してくれる事から我が国との対立の心配はありません。それと、会談の時に皇女代行として来ていた近衛機甲団の団長を張ってる兄ちゃんの気合いの入り方を見て、まんま八十年前の帝国軍人だと思いましたよ」
「二人の意見を聞かせてくれてありがとう。だが、ナチスのヒトラーやファシストを提唱したムッソリーニ、かつて不満のはけ口を大日本帝国にぶつけたルーズベルトのような人物がまだ知らないだけでいるかも知れないから。慎重な舵取りが必要になって来ますね」
次に吉生が安藤の意見を肯定する形で友好国の法治機関と連携したうえでお互いの国の不安要素を一網打尽にする案を述べた後に美保という敷洲人に対して持った率直な感想などを話し終えると、中渕は二人の意見に賛同しつつ自分達が元居た世界で見て来た指導者達のような人物を警戒するのだった。
日本皇国特別統治地域・ルサビノ
日本皇国がルサビノを含めた旧共和国南部地区は現地民の自治権を拡大した緩やかな統治機構を築き上げた事で抵抗や反感を買うことなく統治下におくことに成功した。
現在、戦争の功績から陸軍中将に昇格した藤田が休暇を貰い王国の国防軍関係者居住地区に帰省しているものの同じく休暇が出された第一機甲師団三羽烏の黒田や小棚木、蝶野が宿営地のベッドに寝転がって戦闘の経過報告を眺めていた。
「それにしても……いつの時代も外道には容赦ないね」
「そうですねクロさん。ヤーベリっていうベリヤのコピー版いましたよね?そいつの取り巻きもお察しな奴だったのか、我々に対して友好的な反共和国ゲリラが従軍報道者を案内した先で外道達を晒し首にしていたり、大人数で悪質な権力者を引き摺り回したのか血だるまの死体が何体もあったり『私は女性を虐げ快楽の道具にしていました』という言葉が書かれたプラカードを首に堤げて、死体を街頭に吊るしていたりといった光景が散見されたそうです」
「昭和後半の日本とか世界的にあった不良狩りと強姦魔狩りみたいですね。あと、まんま『スターリン最後の十二日間』っていう映画みたいですね」
「ナギ君、結構読み込んでるんだね……でもやっぱり因果応報って怖いよね。そうそう昭和の時にあった不良狩りと強姦魔は俺の地元はそんな奴がいないくらい平和だったから無かったんだけど、カツアゲとかおやじ狩りしてたやつに関しては地元の自警団とか地周りのヤクザさんに捕まると絶対に目が失明するか体の一部が一生使えないくらいボコボコにされたりとか、当たり所が悪くて不良少年を殺しても謹慎と役員交代だけでお咎め無しだったり、逆に逃げたら自警団から鉛玉が飛んで来り強姦魔狩りに関しては強姦魔を殺しっちゃっても問題なかったから警察による射殺が当たり前だったし、自警団に捕まった場合は車で引きずり回されるとか被害者さんと自警団が一緒になって強姦魔を原型が無くなるまでボコボコにするとかあったみたいだよ」
降伏前後の共和国内で起きたふんぞり返っている権力者たちに対する報復として不満や怒り、哀しみに満ちた人々といった暴政の被害者に共感した人々が手を取り合った結果、腐敗していた政府幹部や軍の幹部は捕まるやすぐに激しい暴行を加えられた後に容赦なく吊るしあげられたのだった。
また、この世界の日本やドイツ、イタリア各国の刑法は犯罪被害者が泣き寝入りする事がなく軽犯罪に至るまで徹底した取り締まりが行われ、弱者を傷つける強姦や強盗致傷にまで死刑が適応されたりするほどだった。
因みに史実通り少年法が存在するものの更生すべき人間と守られるべき人間だけが適応され、犯罪の凶悪さや外道に年齢は関係ない。というのが日本をはじめとした世界の共通点であり国際法にも善良な人間のための人権法と明記されている程善悪の区別が徹底されていたのだった。
「それ父からも聞いたことありますよ。まあ、外道の話は終わりにして楽しい話でもしましょうぜ」
「楽しい話といえば、黒田大尉って有翼人のお姉さんとデキてるんですか?」
「蝶野君、それって勘違いしているよ。俺はアーニャさんとは話しも合うけどそこまで関係は進んでねえよ。彼女と仲が良いのは否定しないけど」
「クロさんはそう言いながら自分がモテてるの自覚出来て無いんじゃないすか?だって補給班や整備班の姉さん達から結構いい評判ですよ」
「いやいや、それって蝶野君かナギ君の事じゃねえの?第一に撃たれるかも知れない状況の中でせっかく予備役から志願して補給と戦車の整備に来てくれるんだから暇があれば手伝うのは当たり前の事じゃなかったの……ん?」
蝶野が黒田に関する女性話を始めると、小棚木も蝶野に同調して彼をいじり出す。恋愛経験皆無の黒田は自覚出来ていないモテる行動を無自覚にしてしまっている事から相変わらず鈍感だった。
さて、先輩後輩で楽しく盛り上がっていると兵舎の中を亜麻色髪の女性……アーニャが手招きしながら覗き込んでいることに黒田が気付いた。
「アーニャさんでしたっけ?クロさんの事を見て手招きしてますよ」
「そうみたいだね。アーニャさん!今行くよ」
黒田は二人との話を後にして彼女のもとへ行くのだった。
アーニャと黒田は二人きりで街から離れて話すことにした。彼女は男女二人でいるところ見られるのが少し気まずかったのか近くの川まで来た。
誰も見ていないことを確認し終えたアーニャの方から口が開いた。
「クロダさんこんなところに呼び出してごめんなさい。実は二ホン軍の人が私のもとに任意での頼み事をしに来たの」
「軍の関係者が頼み事……というと自衛軍計画の事かい?」
「ええ、そうよ。私達有翼人種はこの世界の軍事学だと前線の偵察要員や回り込んで後方を突く戦術をやることが多いの。自衛軍に参画した場合は偵察部隊の指揮官をやるのだけど……もし、偵察隊の指揮官に成ったらクロダさんが上官になって欲しいの」
政府による穏やかな統治政策の一環としてこの統治地区の人達の自治権拡大を目的に『郷土自衛軍』を創立する事で民主主義国家復活の基礎作りも兼ねられていた。
日本は日独冷戦初期の装備を郷土自衛軍に提供することで本格的な軍隊化を目指しているものの、戦争の脅威が無くなったため志願制での創立が計画されていたのだった。そこで日本は反共和国派の元ゲリラといった戦闘経験者を幹部に登用する事で組織体制を強化する事も目指していたのだった。
「確かに戦闘報告を見ていると、アーニャさん以外の有翼人ゲリラが少数精鋭で敵後方に回り込んでそこそこの被害を与えたという実績もあるから特殊部隊運用もしくは偵察任務が最適かも知れないよね。今後、戦闘がないだろうからゆっくりする時が大半だけど。その時が来たら俺みたいな奴で良かったら一緒に戦おう」
「ありがとう!クロダさんならそう言ってくれると思ったわ!あともう一つお願いがあって、一応二ホンの武器を使わせてもらうみたいだから色々教えて欲しいかな……って思っているの」
「それに関してもある程度の旧式装備が到着したら一緒に個人演習が出来るだろうし、準備が整ったら声をかけさせてもらうよ」
アーニャと黒田はうまい具合に反りが合うのか、郷土自衛軍創立前から独自の混合部隊を考えたりするほど仲が深まっていた。さて、次に彼らが活躍するのはいつになることだろうか。
ご覧いただきありがとうございました!次回は第十一話を投稿する予定です!
※なろう版では第二十話を投稿します!
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