日本皇国転移、異世界にて奮闘す   作:西住会会長クロッキー

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ハーメルンでは今年初めての投稿になりますが、引き続きよろしくお願いします!


第十四話 敷洲列島燃ゆる 前編

大敷洲帝国

蝦南地方磐戸県・森嶋邸

森嶋家は大敷洲帝国の歴史の中で比較的に新参だが、島田家や徳澤家といった由緒正しき主要貴族とは異なって私兵を使った傭兵業への注力や放送業界への進出が見受けられる最先端型貴族だ。

しかし、近年は第一次世界戦争が列強諸国の痛み分けに終わった事の混乱に乗じて帝国外地の奉州に対する過剰投資を行いつつ地盤とする蝦南地方に対しては露骨な緊縮政策を行ったため財政破綻寸前まで行ったものの、義仁皇帝を始めとした皇族と大嵩首相をはじめとした親政によって放蕩ぶりが明らかになると帝国国内からは売国奴や潜在的反逆分子として痛烈な批判を浴びると同時に政府からの活動制限を受けた。

しかし、当代の森嶋は懲りもせずに民間財閥の乗っ取りを企てている他、奉州と国境を接する漢華民国に対する侵攻工作画策などといった国益よりも自己の利権を築き上げるべく同じ思想を持った田子島屋家、鴨川家の幹部達と会合を行っていた。

 

「神輿は軽い方が楽だな。折角、第一次戦争で中立を保ち、戦力を温存して来た我々が烏合の衆である漢国や腰抜けとなったブリタニスの南方植民地を奪取する絶好の機会なのに戦争の準備期間でしかないこの時間を延長するなんてあの人は何を考えているのやら」

 

「森嶋卿の仰る通りです。これからは生温い敷洲主義ではなく時代が求める国家観に順応していくベきことから我々主導の敷洲第二帝国を作るのも夢じゃないですね」

 

「しかし、帝道派という学生以下の低俗な思想を持った連中が好き放題我々に対する不満を口にしていますが。新時代を切り拓こうとして何が悪いのやら」

 

「田子島屋殿と鴨川殿は話が早くて助かる。それに弱者救済なんてわきの甘い考えは早く廃れさせて古き良き弱肉強食を主眼においた選別的階級社会を復権させるべきなのです」

 

どの世界においてもこの三人のような小物達が持つべき器量を見誤って持ってはいけない力を持つと国家や組織は凄惨な崩壊や末路を辿り、弱者が更なる迫害を加えられたり罪なき者が食いものにされるといった悪循環が作り出される。

そんなリスクを考える間もなく夢物語を語り続ける輩の横暴は長く続く訳もなく装甲車輌が外の門を突破する破壊音と共に現実に引き戻されると同時に血塗れの軍刀と森嶋の息子の切断された頭部を持った越智少佐が幹部達の集まる部屋へと入って来るなり、その頭部を彼に投げつける。

 

「ひっ……ああ」

 

「ふんっ絶大な影響力を持っていると聞いて少しは期待していたが、所詮は弱者から搾り取った富で成り上がった外道らしいな」

 

「越智!きさ…ぐぇっ!」

 

「これでおしまいか人間の真似事をした吸血鬼が……私が天罰を下してやる」

 

「ひ、ひぃ!!止めろぉ!!」

 

主だった三人は護身用の武器を持っていないのか会合の中に居た軍事会社の社長が懐から拳銃を取り出そうとしたものの越智が素早く拳銃を発砲して頭部に銃弾を命中させる。

自身を護る術を無くした幹部達は我先にと逃げ出そうとするが、阿鼻叫喚の中で彼によって頭部を切断されるか身体の急所を切りつけられるなど何れにせよ鮮血と臓物の一部が部屋の壁や天井、床、逃げ惑う中ひっくり返えされた料理などに飛び散っていく。

 

「あぁ……やめ、たす……ぐぁっ!」

 

「た、頼むっ!!ぐぎゃあ!!」

 

「お、お、お、越智!!お前達帝道派が望む利権や行政権は全て引き渡すから私の命は助けてくれっ!!」

 

「貴様の愚かな息子も今の貴様と同じく年端も行かぬ少女たちを使った実質的な奴隷化と売春計画の利権を譲渡するなど死ぬまで外道らしい事をほざいていたが、奉州に過剰投資をして何をする気だ?」

 

「て、帝国発展の為に蛮族たる漢国を平定し列強より最強を目指すためだ!!」

 

「ほう。脅威でも無ければ侵略を国家戦略とする蛮族でもない平穏な漢国を食いものにする気か……そして、貴様らはそれを背景に何も知らない国民を抱き込んで皇帝陛下に対する弑逆の正当化を企てていた訳か……問答無用だ。死ねっ!!」

 

「あぁっうぐっ!!ぎゃあっ!!止めろぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「貴様らがこの数年間、蝦南地方を搾取して来た報いだ」

 

「うぐっ!ごほぉっ!!や……めっ!!」

 

越智は田子島屋と鴨川の二人の頭部も刀で切断すると森嶋の眼前に来るまでに斬り伏せて来た幹部達の返り血を顔や軍服に浴びたまま彼の胸倉を掴んで詰問するが、貪欲かつ荒唐無稽な譫言を抜かした挙句、軽率に「帝国」と口走る事に怒りを覚えたのかそのまま刀で森嶋の腹部を切りつけるとその傷口に手を突っ込んで腸などの臓物を引っ張り出して、喚きもがき苦しむ彼の首を臓物で締め付けると大量の血を吐き出しながら森嶋は息を絶やした。

存分に腐敗貴族達の血を浴びた越智が死体の山となった大広間から出ると、部屋の前では彼が率いる戦車大隊の副官でもある『藤森謙作(ふじもりけんさく)』大尉が彼の退室を待っていたかのように静かに頭を下げた。

 

「越智少佐、知事が我々への支持を表明致しました。また我々と合流した『敷洲国民連盟』の会員達も春田県にて決起集会を開くと同時に残存する田子島屋系の幹部の拘束に成功し、帝都を地盤に置く鴨川の幹部の拘束の他、同家に流れていた森嶋家の私兵は第二戦車中隊が制圧いたしました」

 

「そうかご苦労だったな。中隊に損害はないか?」

 

「問題ありません、国民連盟の会員たちが協力してくれた事により円滑に事が進みました。同じく各地では腐敗分子に天誅を加えている最中でございます」

 

「それならよかった。国民連盟は革新的政治思想があるものの分別のある左派勢力で同じ敷洲の未来を憂いる同志だからな」

 

「今はともかくこの決起に共感してくれる国民が現れることを祈るばかりです。また関連企業からも売国奴共による敷洲の侵略国家化計画に関する資料も見つかった事ですし我々の正義を証明してみましょう」

 

「そうだと良いな。藤森、お前の言う通り寄生虫共を皆殺しにしていくべきだと思うが日本がどう動くかが問題になって来るだろうからもしもの時は腹を括るんだぞ」

 

「分かりました。しかし、日本軍の動向や皇帝陛下のお言葉が気になるところでありますが……我々の正義が実現される事を願いましょう」

 

「ああ、その為に我が国を蝕む癌を取り除いていくべきなのだ」

 

帝国内において君主制革新主義の実現を目指す左派政治団体である『敷洲国民連盟』も皇帝親政を高く評価していた事もあり、時代に合わせた政治腐敗の一掃や望まぬ戦争を避けるための帝道派によるクーデターに加担して提供された旧式装備や自分達が生活用に使う自動車などで武装した急造の決起部隊を組織して帝道派と共に腐敗貴族を攻撃すると同時に、各貴族が所有する関連企業も襲撃していた。

無論、軽武装の私兵集団では本職の帝道派軍人や旧式とはいえ立派な火器を提供された国民連盟の会員達に敵う訳もなく各個撃破されていき、戦果を確認した越智を始めとした帝道派は敵として認識した腐敗貴族や一部財閥の掃討に向かうのであった。

 

 

 

帝国領奉州・海四楼

国防陸軍仮設駐屯地

駐屯地では義仁皇帝や大嵩首相の不在を狙った帝道派によるクーデターの発生に対処すべく冷静かつ迅速に鎮圧の準備を完了させていた。

日本国防軍の最高指揮官たる中渕総理大臣とその中枢を担う防衛大臣の谷岡からは「敷洲のためなら程よく的確に動くように」と敷洲政府からの正式な声明を待つ形となり、今村大将と二日前に日本を発って職務に戻った藤田中将が義仁皇帝や大嵩首相とクーデターに関する意見交換を行っていた。

仮設兵舎は重苦しい空気で包まれ、義仁は重大な決断を下そうとしているのかその口は堅く閉ざされて神妙な面持ちとなっており大嵩に至っては彼の心情を悟ったのか仰せのままにという姿勢で静かに口を閉ざしていた。

 

「私のわきの甘さがかえって国民や帝国を守る兵士達に多大な負担となるとは……残酷な選択になるかもしれないが、同族同士での殺し合いやこれ以上の犠牲を避けるために日本軍による反乱軍鎮圧を要請する事と致しましょう。貴国の戦力に対して恐怖を抱く国民も出て来るかもしれないが私自ら国民一同に理解できるように貴国の正義を説明したいと思います」

 

「陛下のお気持ちをしかと理解致しました……首相である私が申すのもどうかと思いますが、貴国の優秀な戦術のもとで迅速に鎮圧していただけますでしょうか?反乱していない部隊には本国の方で待機と帝道派に加わらぬように厳命しておりますので」

 

「皇帝陛下ならびに首相のお気持ちを尊重いたします。我が軍の戦力を最大限生かしきる形で必要以上の犠牲避けるように致しますが、頑強な抵抗勢力に至っては排除致します」

 

「我が師団の鉄獅子達が率先する形で帝都の解放を目指して国民の皆様や良識持つ部隊の安全確保も約束致します」

 

「貴国に泥を被せる形となりますが、寄らば大樹の陰というべきでしょうか時間が経つにつれて過剰な犠牲を抑えるために貴軍による反乱軍鎮圧を正式に許可致します」

 

「陛下のご聖断を承りました。これより反乱軍鎮圧を開始いたします。藤田中将、早速第一機甲師団による帝都解放作戦を命ずる」

 

「了解致しました。皇国軍人として恥じぬように大和魂と敷洲の正義の尊重する形で全力を尽くして反乱軍鎮圧の任務に当たらせていただきます」

 

皇帝は日本を心の底から信頼していたものの、日本皇国の強大な戦力に対して恐怖するものが少なからず現れるという先見の明もあった上で自ら国民への理解を得るための行動にうって出ようとする意志を明確にすると同時に、国を憂いて腐敗分子への粛正を世間の為に実行しつつも現政治体制の打破を目的としている帝道派に対して複雑な心情を抱きながら国防軍による鎮圧を許可するのであった。

 

 

イタリ・ローマ王国

ナッポリ 国防軍関係者居住地区

戦火と無縁になった王国にある国防軍関係者の日本人が居留する住宅の一角にある藤田中将の自宅では妻の華穂が見守る傍らアンナ、カリーナの三人がぬいぐるみで遊んでいた。

夫が再び前線に赴いたため彼女が養子である二人と一緒に暮らしているが、日本がこの世界に転移してからずっと一人でいたものの共和国との戦争が終結して人が家に来てからは個人的に楽しい日々が戻ったものの国の情勢としては複雑になってきている。

アンナとカリーナが無邪気に遊ぶ横にあるテレビで放送されているのは政治に関するニュースであり、アナウンサーが分かりやすくその内容を読み上げていた。

 

『本日開かれた臨時国会において改進党の大沢一男党首が中渕内閣総理大臣に対し、海軍の一部を大敷洲帝国にも派遣して両国の友好と強力さを誇示すべきだ。という派遣軍の追加を提案したものの中渕総理は国防軍派遣のバランスを見誤れば敷洲帝国国民の皆様のみならず接触未定の諸外国に対して混乱や動揺を与えかねないため外交面を強化した上で検討すると回答しました。次のニュースです……』

 

「あの人もだけど、軍も政府も大変ね……」

 

「お母さんどうしたの?」

 

「何でもないわよ。そうだ、クッキーが焼けたから三人で一緒に食べましょ」

 

「あーっ!おいしそうな匂いだ!お母さん早く早く!」

 

「わぁ!すごく美味しそう。お母さんありがとう!お父さんが帰ってきたらまた一緒に食べたいね!」

 

「ふふっお父さんは今、私達や皆を守るためにお仕事に行っているからそれが終わったらまた四人で一緒にご飯でも食べましょ」

 

「「そうだね。お父さんが無事に帰って来れますように!!」」

 

「二人とも良い子ね」

 

「えへへっだって二人が大好きなんだもん」

 

「私も大好き!」

 

華穂は休暇が終わった夫の身にも関わるニュースに関心を寄せるものの二人の娘を心配させたくなかったが、アンナとカリーナは焼けあがったクッキーを頬張りつつ母である彼女の雰囲気を理解していたのか二人で父の安全を祈る言葉を口にする。

母である彼女は嬉しくなって二人をまとめて抱きしめ、二人は揃って無邪気で愛らしい笑みを浮かべて母と父に対する好意の言葉を口にした。




ご覧いただきありがとうございました!次回は後編を投稿する予定です。ご感想や評価、ブックマークなどお待ちしております!

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