日本皇国転移、異世界にて奮闘す   作:西住会会長クロッキー

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ご覧いただきありがとうございます。折角のアウトロー系PMCキャラの義誠連合会一門が活躍する場が有って良いと思い空賊狩りを行います。引き続きお頼みください!


第十九話 空中にて仁義執行す

ジンギスカン首長国連邦

アルタム

ジンギスカン首長国連邦は自然に恵まれている事から農業や畜産業を主な産業としているものの連邦が始まって以来、ずっと同じ領土を維持して来た平和な国だったが、時としてルシア帝国と清和帝国といった恵まれた領土を欲した国から侵攻の対象となるほか国境紛争が絶えなかった。

しかし、昔から陸の騎兵と空の竜騎兵を駆使して撃退して来た事に加えて近代化すると軽戦車を利用したものではあるが、異世界にしては珍しく現代的な機甲戦を仕掛けてボ連を撃退しつつ平和を維持していた。

だが、北部に位置するルシア方面は広大な森林と平野が広がっている事から国境を越境してくるまたは国内に根を張る盗賊や空賊との抗争が頻発している事から連邦軍所属の軽爆撃機が空を巡回しているため、盗賊が乗る車輛を見つけては対地攻撃を行うか空賊の小型飛行船と空中戦になるなど国が豊かでもその恩恵で満足せずに私利我欲に溺れる愚か者も存在している情勢だ。

 

「バローネ曹長、何かすまんのう。王国軍の精鋭に当たる近衛竜騎兵の方におなごの格好をさせて……」

 

「構いませんよ。近衛竜騎兵は今や偵察を重視した運用がされていますから、敵の懐に潜り込み飛んで火にいる夏の虫がどちらかを分からせるためには構いませんが……やはりクニミツ会長や一門の皆さんじゃないとこの姿は安心して見せられないです」

 

「そうか。せやけどこんなド昼間に空賊なんてホイホイ来るんかのう?明るくて目立つやろうに」

 

「でも、王国の御令嬢様に偽造した僕が懐に拳銃や催涙グレネード、ナイフ、鞄に自動小銃が入ってるなんて思ってもみないでしょうね」

 

イタリ・ローマ王国の仲介を経て日本皇国と国交が正常化した連邦は、市民で構成された自警団による治安維持を行って来た日本の経歴を参考にする形でその一角を担って来たヤクザ組織と偵察や特殊任務に特化した王国軍近衛竜騎兵隊による連携が民間用飛行船で試みられていた。

関西圏で勢力を維持する大阪の山王会の直系組織に当たる義誠連合会の会長と民間軍事会社の総裁を兼務する国光武之が、女装をして囮役となるカルロと会話しつつ雲一つない空を眺めていた。

 

「せやけど、汚い事はワシらに任せてもらっても大丈夫やから安心して大丈夫じゃ。まして若くして近衛兵になった曹長に危ない事はやらせんよ」

 

「クニミツ会長のご厚意、感謝いたします。お叱りを承知でお伺いいたしますが……何故、自己犠牲精神が強調される民間軍事会社とヤクザ組織というものに入られたんですか?」

 

「なんやそんな事か……結論から言うと正当防衛になったとはいえ十二歳の時に初めて人を殺してもうてから路頭に迷いかけた時に仁義と任侠道のイロハを教えてくれた東山の親っさんがきっかけや」

 

「そうなんですね。クニミツ会長がそこまで苦労されていたとは……」

 

汚れ役を自ら買って出てカルロの負担を和らげようとする国光からの厚意が気になった彼は、控えめな表情で国光に対してヤクザになった理由を聞くことにした。

この国光の経歴としては警察官の父親と専業主婦の母との間に生まれたが、十二歳の時に家庭内暴力に晒されていた同級生の少女を助けるために自身の父親の拳銃を持ち出して限度を越えた暴力を加えようとした彼女の父親を射殺した事で初めて人を殺めた。

当時、彼は少年による人命救助の為にはやむを得ない手段だったとして正当防衛が認められた事に加えて厳格な裁判を通じて更生すべき人間だけが適応される少年法の下で保護を受けたものの事件後すぐに神戸にある母親の実家に身を寄せていた際に、地域の自警団も担っていた山王会直系東山会会長の『東山悟志(とうやま さとし)』に出会い目を掛けられた事で中学卒業後はすぐに東山会組員となり、二十一歳の若さで東山会傘下で義誠連合会を結成した後に山王会の直系に昇格した。

国光の経歴を聞いたカルロは紆余曲折を経て任侠道に忠実な人物になった彼に感心して思わず目を輝かせていた。

 

「お話の最中すみません。親っさん!九時の方向から不審な飛行船が接近しています。恐らく、空賊のドアホゥ共やと思います!」

 

「そうか。兼政!カシラの底力を見せたれ!皆、戦争じゃい!真っ当な堅気さんに手ぇ出そうとしてるボンクラ共を蜂の巣にするかぶった斬ったれ!」

 

「押忍!!お前ら行くでぇ!」

 

「「へいっ!!」」

 

「バローネ曹長、ドンパチが始まってもキツくなったら何時でも言うてや」

 

「はい!僕も頑張ります!」

 

二人がそのまま話しを続けようとしたが、義誠連合会の若頭で国光の子分に当たる『西野兼政(にしの かねまさ)』が空賊船を発見した事を伝えると同時に彼は目つきが鋭くなり傘下の組員達に対して戦闘配置と事情を知らない乗客などの保護を行うように指示を出した。

指示を受けた西野とその子分達が元気よく返事すると、60式5.56mm小銃(史実におけるM16の日本仕様)や日本刀などを持って乗客達を避難させていく。

その流れに乗る形で国光がカルロの頭を撫でつつ空賊がなだれ込んできた際の対応を打ち合わせるのであった。

 

 

同時刻、奉州行き飛行船

日本が転移してくる以前の空賊たちは腐敗していたボ連の社会党員という主人に雇われて傭兵業を営んでいたが、日本との戦争によって主人たちが居なくなった彼らは使える状態で放棄されたボ連製小型飛行船や戦闘機、車輌で武装を増強させつつ連邦に飛来する貿易飛行船や民間飛行船に対する強盗行為を繰り返していた。

さて、空賊たちは運悪く日本の二大広域任侠団体の直系組長である国光が率いる義誠連合会一門が待ち構えているとも知らずに、乗って来た飛行船をアルタム方面に向かう大型飛行船に横付けすると同時に船内に雪崩れ込んでいった。

 

「ヒャッハー!!金目のものや人質に出来そうな奴が居たら持ってけぇ!!」

 

「ボス!!良い娘を見つけたら嫁にしていいですか?!」

 

「おう。奪え奪え!弱い男に女なんかいらねぇんだよ!!者ども掛かれ!!」

 

「「ヒャッハー!!」」

 

ある程度防御に気を使っているのかボ連軍の戦闘服やトゲが付いた肩パッド、空賊または盗賊である事を示すかのように二本の角が装着された鉄兜に身を包んだ男達が共和国製の小銃やトンファーを手に持って頭領からの指示通りエネルギッシュな奇声を上げながら船内を突き進んでいくが、客が見当たらない。

 

「おらぁ!出て来なきゃ鉛玉をぶち込むぞ!出てきたらモノが使えないくらいで許してやるからよ」

 

「それかさっさと出すもんを出せや!」

 

「おっ!お嬢さん発見!君は今から人質になってくださいね。あとお金も出しなさい」

 

「あら、それは怖いですね。お金なら……鉛玉しかないのですが?」

 

「てめっ……ぎゃあ!!」

 

五人の空賊が船内の渡り廊下を探し回っている中で一つの部屋の扉を蹴破ると、イタリ・ローマ王国方面からやって来たであろう大きなカバンを持った茶髪の少女が一人で軽食を口にしている光景に出くわす。

無論、彼らは無防備かつ金目のものをたくさん持っていると思い込みトンファーをちらつかせつつ怯えた彼女にニヤニヤしながら近づくが、女装した王国軍の兵士である事が見抜けるわけもなく鞄から小銃を取り出されると同時に響いた発砲音と共に三人ほど身体や頭部に銃弾を浴びせられて床に倒れ込む。

 

「おう。お前ら丸腰の人間相手にえげつない真似しくさって何考え取るんじゃ、死に晒せ!!」

 

「やめっぐぎゃあ!」

 

部屋の箪笥に隠れていた国光が部屋から退こうとする空賊に対して大きく振り下ろした刀で袈裟斬りをし、大きな図体を一撃で斬り伏せてから頸動脈から噴出した返り血もまんざらでもない様子で右手で拭い取りつつ刀にも付着した血と脂肪を振るい落とす。

 

「ようやった。このままゴキみたいにホイホイ入って来たアホ共を仕留めたるわい」

 

「はいっ!このまま会長にお供させていただきます!」

 

「おうっ!曹長、背中は任せたで」

 

カルロが女装に使っていた長袖のワンピースを脱ぎ、濡れたタオルで顔の化粧を拭き終えてからいつもの戦闘服姿とヘルメットを身に纏い国光と共に空賊達を撃破するために銃声が響き始めた渡り廊下を走り出した。

 

 

 

飛行船内メインホール

船内のメインホールに乗客を避難させた西野は自身が率いる義竜会の組員達が上げる喊声や空賊に対して浴びせられる罵声を聞きながら敵の本隊を待ち伏せていた。

メインホールにはテーブルや椅子、箪笥などで作ったバリケードが設置されており乗客を守っている彼らがリモート式のスタングレネードを利用した特性トラップを出入口付近に仕掛けている事を知らない空賊達は乗客達が守られている事に気付かずにドアを蹴破って来たが、西野達が用意した特性トラップが炸裂する。

 

「ぐわっ目が!ぎゃあ!」

 

「そんまま撃てぇ!一匹も逃がすなや!」

 

「西野のカシラ!後ろから行きまっせ!」

 

「挟まれたぁ!やめろぉ!」

 

スタングレネードから放たれる閃光が百人近く居る空賊達の視力を奪ってから怯ませると共に、バリケードに身を隠していた西野達が身を乗り出してから小銃の連射で無力化していき、仲間の悲鳴や血が飛び交うなか身体を押し合いながら部屋を脱出した三十人近くの空賊は別のフロアを制圧した義誠連合会若頭補佐の『中田美貴斗(なかたみきと)』が率いる十人の組員達が散弾銃で先頭の者達を銃撃しつつ日本刀で斬りつけて無力化していく。

 

「お前らは何処の回し者じゃ?言うてみ」

 

「て、天平会だ……ひっ!」

 

「ほう。この辺を荒らし回っとる広域強盗団か……お前らの連れは殆どホトケになったけどじっくりと情報は吐いて貰うで」

 

「ニシノ若頭、天平会といえば旧ボ連や漢国南部を支配する漢華人民共和国が傭兵任務や国内の抵抗勢力の掃討に利用した事もあるので奴らのアジトでやり合うには増員が望ましいと思います。それに我が騎兵団のアイドルとクニミツ会長が空賊が乗って来た飛行船に殴り込みをかけていますから、そいつを利用した斬首作戦といきましょう」

 

「そうですな。ワシらが先鋒を固めますから、ルッキーニ大尉達は空からの援護を頼みますわ」

 

西野と中田が生き残った空賊を捕縛して尋問していると、大陸の犯罪組織の一つである天平会の構成員である事が分かった。

この組織は連邦南部を根城とする漢華民族で構成されており漢華人民共和国の高官とも内通しているだけでなく共和国が退廃的人間科学と位置付けている恋愛の弾圧に協力してきた他、空賊行為を通じて対外工作を行うなど共和国への歪んだ忠誠心を持つ者達で構成されている。

王国軍近衛竜騎兵団の『ソフィア・ルッキーニ』大尉が漢国の情勢を説明した上で、二人に空賊の首領といった幹部クラスを仕留める斬首作戦を提案すると二人は彼女の提案を快諾した。

 

 

 

天平会系董一派船

奉州行き飛行船を襲撃した天平会の幹部である董は、乗り付けて来た飛行船の船長席で部下たちが容姿端麗な人質や貴重品、外国からの流通品を強奪してくるのを待っていた。

いつもは三十分もしない内に戻って来るのに広い船内で暴れ回っているのだろうと思いながらワインを飲みながら待っていたが、返り血が付いた国光とカルロが操舵室のドアを蹴破って入って来る。

 

「お前ら何者だ!者共!こいつらをぶち殺せ!」

 

「親分は呑気に酒浸りかい。曹長、周りの雑魚は頼むで」

 

「分かりました。会長の大暴れは邪魔させません!」

 

董を守るようにして取り囲っていた十三人の部下が彼の指示と共にヌンチャクや青龍刀を手に持って束になって飛び掛かるが、ニューナンブを二丁持った国光が青龍刀を持った者の頭部や胸部を撃つなどして弾倉内の銃弾を撃ち尽してから背中に背負った鞘から刀を抜いてヌンチャクを振り回している敵に対して腹部を狙った逆袈裟斬りや背後から襲い掛かろうとした敵の頭部に一文字斬りをお見舞いし、首を切断するなどして頸動脈から噴き出して来た鮮血をその身に浴びながら血塗れになった刃先を椅子から転げ落ちている董の鼻先に突きつける。

 

「あっひっ……待ってくれぇ」

 

「もっとデカい声で言うたらどないや?ワレがへたれとる間に廊下の方でもホトケさんがいっぱい出来上がっとるで?」

 

「も、もうっやめてぇ」

 

先程の高圧的な態度は何処へ行ったのか、気が抜けて額から大量の汗を流しながら国光の背後にいるカルロが淡々と自分を助けようとする部下たちを小銃で射殺しつつ束で掛かって来た者に対して容赦なく小銃擲弾を発射するなど船内が血の海と化すなど恐怖するのに十分な光景を見せつけられため、完全に心が折れていた。

 

「あーあ完全にヘタレよったわ。曹長、助かったで」

 

「クニミツ会長、お見事な剣さばきですね。あとは本拠地を叩く事になりますが、こいつ等は共和国軍並みの凶暴さを持つ連中です。増援を呼んでユーエーブイや竜騎兵団にも支給されているドローンという模型の飛行機みたいに飛ぶやつを使って混乱させてから突入した方が周辺地域の拉致被害者の救出も出来ると思います」

 

「せやな。曹長の言う通り待機しとる若い衆に用意させるわ。日本のヤクザの任侠道を天平会のド外道に教えたるわ」

 

ボ連との戦闘では、狭い場所や潜伏する非戦闘員の存在が懸念される場所ではUAVや威力偵察も兼ねてドローンを使用することで望まぬ犠牲を減らす可能性が高まるといった検証が行われた。

カルロの提言を受けた国光は、民間軍事会社でも厳重な管理が許されている無人機と翼竜が得意とする超低空飛行を利用した王国竜騎兵団による強襲を思い立ったのだ。




ご覧いただきありがとうございました。恋愛禁止法を人民の平等の為に施行しているやべー国が登場しましたが、出来れば狂人枠も増やしたいのが切実な願いです。
次回は第二十話(なろう版は第三十話)を投稿致します。ご感想や評価、ブックマークなどお待ちしております!

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