ソードアート・オンライン handle a system   作:ハマT

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少しだけ設定を説明します。本編はホワイトとクロノスが互いに干渉して無茶苦茶にした世界が舞台です。後にホワイトが修正していますがいくつかその傷跡が残っています。今回の話はホワイトだけが干渉した世界、つまり本編とはパラレルワールドでの物語です。ただ本編に近く作ってあるのであまり関係のない設定ですが・・ 


OS編完全版

 

 

今でも時々夢に見ることがある。あの城で出会った一人の少女の事を。皆の前で歌い続けた一人の少女。あの少女と最後に話したのはいつだったんだろう?

 

世界初のVRMMORPGソードアート・オンライン、通称SAO。このゲームが平和だったのはわずかな間だった。開発者である茅場昌彦によってログアウト不能のデスゲームとなってしまった。閉じ込められた一万のプレイヤーはそれぞれ、クリアを目指し剣をとるもの、助けを待ち籠るもの、勇敢に戦い命を落とすもの、絶望に負け自ら命を絶つもの、さらにはプレイヤー同士で命を奪い合うものさえいた。そして最終的に四千人が命を落としたが、デスゲーム開始から二年がたったころ、一人のプレイヤーの英雄的行動によってSAOはクリアされた。生き残った者たちはSAO生還者として今を生きている。

 

どこかの会社の中

一人の男が暗い建物の中を歩いていた。その男はある部屋につくとその部屋の前につけられたプレートを何かをつぶやきながらなでる。部屋に入りその男はカバンからPCを取り出す。部屋に明かりをつけると巨大なサーバーが。怪しく光っていた。

 

 

 

その日リュウヤは菊岡に呼ばれとある場所に来ていた

「やっと来てくれたねリュウヤ君」

「いきなりこんなところに呼び出さないで下さいよ・・スグ達誤魔化すの大変だったんですよ」

「それはすまない・・お、君も使っているんだねオーグマー」

菊岡がリュウヤの顔につけている機械を指差す。

ーーAR型情報端末オーグマー。最近世間ではこのオーグマーが人気を博している。リュウヤの通う生還者学校の生徒にも無料配布されておりリュウヤも使用している。

「オーディナルスケールというゲームを知っているかね?」

オーディナルスケール。オーグマーで遊ぶことができるARMMOだ。プレイすることでランキングが上昇しそれに応じて色々なクーポンやサービスを受けることができる。

「一応俺もやってるからある程度は知ってるさ」

「ある程度・・ね」

菊岡もオーグマーを起動してリュウヤのランクを見てみる。そこに表示されているのは137という数字。

「一応どころか結構やっているんだね」

「それよりそれがどうしたんだ?」

「ああ、実は最近変な事件が起きているんだ」

「変な事件?」

「オーディナルスケールのサービス開始から五日目、ある一人のプレイヤーが体調不良で病院で検査を受けた。その結果ある記憶が抜け落ちていた。また似たような案件が他に五件ほど報告されている」

「ある記憶?なんの記憶だ?」

「アインクラッド」

その言葉にリュウヤは反応を示す。4000人もの死亡者を出した最悪のテロ事件。その事件の舞台となったのがアインクラッドだ。

「そのプレイヤーは全員アインクラッドで生きたという記憶を全て失っている。更に彼らは全員オーディナルスケールをプレイ中に体調不良を訴えている」

「………偶然じゃないな」

「僕もその考えに至ってねリュウヤ君。君に頼みたいだ。オーディナルスケール、そしてユナの調査を」

「ユナ?」

オーディナルスケールのイメージキャラクターで世界初のARアイドル、ユナ。余りにも自然な表情も受け答えから本物の人間が演じているのではないかと噂されている。

「リュウヤ君も知っているだろ?彼女のデータは実に興味深いだから・・」

「分かっています」

 

四月十四日

リュウヤは一人である場所に来ていた。近くにバイクを止めると広場を一望することができるテラスへと向かう。広場を見ると多くの人が集まっている。

この日の午後八時半頃突然オーディナルスケールのイベントバトルの場所が告知された。オーディナルスケールの調査を始めたリュウヤもその場所に来ていた。

「40人くらいか……少し多いな」

たった三十分の間に40人もの人が集まったということはそれほどオーディナルスケールのプレイヤー人数が増えていると言うことだ。

「そろそろか………オーディナルスケール起動!!」

リュウヤの声に合わせて白を基準としたジャージは真っ黒なロングコートへと変化する。オーグマーの周辺機器であるタッチペンもリュウヤの好む細い片手剣へと変化する。そして時刻が九時を示した瞬間辺りが次々と変化を始める。車は木箱等の置物に、建物は何処か異世界のような形に変化する。一通りの変化が終わると10分という時間が表示されボスが現れる。

「?!イルファング・ザ・コボルトロード?!」

現れたのはアインクラッド第一層のボスモンスター、イルファング・ザ・コボルトロードだ。更にリュウヤの近くにドローンが飛んでいき一人の少女が具現化する。

ーーARアイドルのユナだ。ユナがオーディナルスケールの戦いに現れると戦いに参加しているプレイヤーにボーナスが与えられる。

「さーてみんな行くよ。戦闘開始」

その言葉と同時に歌い始めるユナ。それと同時にプレイヤーとボスが戦闘を開始した。

「お久しぶりですリュウヤさん僕は重村教授から指示を受けてきたエイジです」

リュウヤに声をかけてきたのは一人の青年だ。

「・・・お前もしかしてノーチラスか?」

「すみませんその名前はやめてください今はエイジとなのっていますので」

ーーノーチラス。かつてリュウヤが所属していたギルド血盟騎士団に所属していたSAO生還者の一人だ。とある理由から前線での戦いで何度もピンチに陥りそれを毎回リュウヤに助けられていた。

「敬語はやめてくれよお前の方が年上なんだし」

「いえあなたには何度も助けられましたから・・それよりどうですか?」

エイジに言われて戦闘を見るのプレイヤーとボスが戦闘を繰り広げている。ボスの攻撃は全てかつて戦ったときと全く同じパターンだ。

「良くできているなお前が攻略に参加したのって確か・・」

「三十五層からです。あのボスのデータを何処から持ってきたかはまたのちほど・・まずはアイツを倒して下さい」

「重村教授の指示か?」

「いえただもう一度見てみたいのです・・鬼神や女神、紅白の剣士と呼ばれたあなたの力を。それとこれを・・」

そういってエイジが渡してきたのは何かの装置だ。

「これはつけている人の身体能力をブーストしてくれる機械です。試しに使ってみてください」

「分かったよ」

そう言うとエイジから機械を受け取り首につけテラスから飛び降りてボスに向かうリュウヤ。ボスもそれに気づきリュウヤを攻撃する。それを横にとんでかわしボスに攻撃する。攻撃されたボスはスグに凪ぎ払いで攻撃するがそこにリュウヤの姿はない。皆が上を見るとそこにリュウヤはいた。凪ぎ払いをかわした後辺りの障害物や壁を使って空高くまで飛び上がっていた。その姿を見た瞬間武器を投げ捨てるボス。そして背中から野太刀を引き抜く。一方のリュウヤは2階近くにあるワイヤーを掴み一回転しボスに突撃する。ボスの野太刀とリュウヤの剣がぶつかり合う。轟音が鳴り響き閃光がひた走る。全てが晴れるとリュウヤの目の前でボスが四散した。

「ス、スゲェ!!」

「マジかよ!!俺あんなの見たことねぇぞ!!」

戦闘を終えると参加していたプレイヤーがリュウヤに称賛の声を上げる。

「お取り込み中ごめんね。今日一番頑張った人にボーナスを上げるね。今日のMVPは君だよ」

称賛を浴びるリュウヤに近づいてきたユナはその頬にキスをする。

「じゃまたねー」

ユナが消えると同時に辺りも元の風景に戻る。それと同時にリュウヤのランキングも更新され順位が45に上がる。

「お疲れさまですリュウヤさんさて重村教授からの指示ですが・・」

「それについては俺が話すぞ」

リュウヤとエイジの話に入ってきたのは赤い髪をした大柄な男だった。

「空野さん来ていたんですか?」

「教授の指示でな・・んでお前がリュウヤか?」

「ああ」

「俺は空野優雅、オーディナルスケールじゃあジェネシスって名乗ってる。それで教授からの指示だがしばらくはSAO生還者を探れだとよ」

 

 

 

四月二十四日

「ランク・・・4?!」

「一体何してたのよ・・」

この日リュウヤはキリト達と学校帰りにカフェによっていた。そこではあるゲームをクリアするとケーキ無料クーポンを貰えるのでオーグマーを起動した瞬間皆がリュウヤのランクをみて絶句していた。重村教授の計画に参加してから何度もイベントバトルに参加していたリュウヤはランキングを4まであげていた。ちなみにエイジは2、ジェネシスは3だ。

「まぁ適当にオーディナルスケールをやってただけだ」

「適当にって・・そんな理由でそこまでランキング上がらないわよ!!」

「そんなことよりさっさとゲームクリアしてケーキ食おうぜ」

 

その後ゲームをクリアしケーキを食べたリュウヤ達は近くにあるショッピングモールに来ていた。

「キリトお前オーグマーに慣れろよな」

「そんなこと言っても何かなぁ・・・」

巷で流行っているオーグマーだがリュウヤの予想道理キリトはあまり乗り気ではなかった。

「ユイといつでも会えるからいいじゃねぇか」

「にぃの言う通りですよパパ」

「確かにそうだけども・・・リュウヤ?」

話しているとリュウヤが突然立ち止まる。リュウヤが見ているのは液晶に表示されたユナだった。

「どうしたんです?」

「・・いや何でもない」

(・・ユナ・・始めて見たときから感じるこの違和感はなんだ?)

かつてデビューしたばかりのユナを見た時から何故かユナにある違和感を感じていた。最もその違和感の正体は本人にもわかっていないが。

「そういえばユナのファーストライブの話聞いてますか?」

「ファーストライブ・・ああ、生還者学校の生徒全員が無料招待されたやつだろ」

「何でそんなことするだろうね」

「本当、ライブに行くことが何の授業になるんだか」

「まぁまぁ良いじゃないですか」

「そーいやシリカってユナの大ファンだったよな」

「確かにあんた直葉とカラオケで熱唱してたしね。ほら皆にも聞かせてやりなさい」

そういってリズがオーグマーを操作してユナの曲を流し始める。それに合わせてシリカが歌い始める。しばらく歌うと周りから拍手が飛び交う。それで我に返ったシリカはスグにリュウヤ達の所に走ってくる。

「そーだキリトさんもユナのライブに行きましょうよ!!」

「まぁ・・・気が向いたらな・・」

「そういえばあの噂って本当なんですかね?」

「噂・・ああ、オーディナルスケールのイベントバトルで旧アインクラッドのボスモンスターが現れるってだろ?」

「それそれ、場所も直前まで隠されてるから足のない私達には参加できないのよね」

「ふーん足があればいいのね」

アスナのその言葉を聞いた瞬間にその場から逃げ出そうとするキリト。そのキリトにクラインからメッセージが届く。そのキリトの肩を掴むアスナ。

「キリトくん」

最早キリトに逃げ道はなかった。

 

 

 

「・・ハイわかりました教授・・」

キリト達と別れた後リュウヤは重村教授と連絡を取っていた。今日行われるイベントバトルについてだ。元々リュウヤは今日のイベントバトルに参加するつもりはなかったが重村教授から参加するようにと指示がきた。指示がきた以上は仕方がない。まだ今回の調査の核心にたどり着いていないため教授を含めた三人の信頼を得ることが必要である。リュウヤはバイクに乗ると今回のイベントバトルの場所、秋葉原UDXに向かった。

 

キリトはアスナをバイクにのせ少し前に発表されたイベントバトルの場所に向かっていた。あの後キリトのバイクに乗れるのは一人だけと言うことになりジャンケンの結果アスナが参加することとなった。近くまできたキリトは路肩にバイクを止めヘルメットをのけ目的地に向け走り出す。目的の広場には既に40人位の人が集まっていた。

「場所が告知されたのって確か三十分前だよね」

「それだけプレイヤーが増えたってことだろ」

「お、キリトにアスナじゃねぇか」

声のする方向を見るとクライン率いるギルド風林火山のメンバーがいた。どうやら彼らもこのイベントバトルに参加するつもりのようだ。

「なんだクラインお前も参加するのか?」

「へへ、まぁな・・よし皆アスナにいいとこ見せろよ!!」

「ごめん遅くなっちゃった」

声のした方を見るとそこにはアンナがいた。彼女はかつてラフコフ一員だったが討伐戦や死銃事件を得て現在はクラインと婚約しており今年の九月に結婚式を挙げる予定だ。

「そろそろだな」

時計を見ると開始時間まで後少しとなっていた。

「オーディナルスケール起動!!」

皆がそれぞれオーディナルスケールを起動する。そして時計が九時を指したとき辺りが変化する。一通り変化を終えるとボスが出現する。現れたのはアインクラッド第十層ボス、カガチ・ザ・サムライロードだ。

「やっぱりあの噂は本当だったんだ・・」

プレイヤーがそれぞれ武器を構えるとボスの奥にARアイドルのユナが現れる。

「さぁ皆行くよ戦闘開始」

ユナが歌い始めると皆に特別なバフがかかる。それと同時にボスとプレイヤーが戦闘を始める。剣や斧といった近接武器で攻撃するプレイヤー、銃や弓で攻撃するプレイヤー、それぞれがそれぞれの戦い方でボスを攻撃する。

「風林火山でボーナス頂くぞ!!」

クラインの号令でボスに向かっていく風林火山。ボスの攻撃をタンクが受け止めその脇からクライン達が攻撃する。その攻撃を受けクラインを攻撃しようと追いかけるボス。今度はそのボスに別の風林火山のメンバーがタックルをかまし吹き飛ばす。そこにアンナが刀で追撃する。建て直したボスは遠くで様子を見ていたキリト達に目標を定め突撃する。それをあわせキリトもボスに向かって走り出すが段差につまずいて転ぶ。転んだ先はボスの目の前。なんとか紙一重で攻撃をかわし体制を建て直すため一旦ボスと距離を取ろうとするがボスに追いかけられ思うようにいかない。

「やっぱり体が重いな」

「もうキリトくんのはただの運動不足でしょ!!」

「LA頂き!」

二人とのすれ違い様に一人のプレイヤーが銃を撃つがボスはそれをかわす。

「やっべ」

外れた銃弾は歌い続けるユナに向かって飛んでいった。

 

リュウヤが着くと既に戦いは始まっていた。

「悪い遅れた・・様子はどうだ?」

「リュウヤさん順調ですよ今回参加しているのは9人、風林火山に黒の剣士にアスナさん。後はアンナって人ですね」

エイジに言われてオーグマーで戦闘を覗くと参加しているプレイヤーの中からSAO生還者の名前がピックアップされる。

「そうだコレ・・独自で調べたオーグマーを使用しているSAO生還者のリストだ。赤い丸でチェックしているのは生還者学校に通う生徒だ」

リュウヤはエイジに資料を渡した瞬間だった。ボスを狙ったはずの銃弾がユナに向かって飛んでいった。それを見た瞬間エイジはユナを守るためにテラスから飛び降りた。その様子を見た後再び戦闘を眺める。その瞬間、一瞬クラインと目があった気がした。

(ヤバイ!!)

キリト達にバレたらまずい。そう考えたリュウヤはスグにその場を後にした。

 

「・・・例の資料ありがとうございます菊岡さん」

『別に構わないよそれよりユナの方はどうだい?』

「核心につけるようなことはまだなにも・・例の件に関してもまだ詳しいことはわかりません」

『そうか・・では引き続き頼む』

広場を後にしたリュウヤは少し離れた場所の裏路地に入り菊岡に今までのことを報告していた。

「やっぱりスパイだったかリュウヤ」

報告を終えたリュウヤに一人の人物が声をかける。

「ジェネシス・・何時から俺に目をつけてた?」

「最初からだ・・お前は昔からそうだったよなぁ」

「昔・・・ジェネシス・・お前もしかして?!」

「もういいやどうせこうするつもりだったからな」

 

 

ALO内

「ユナにあったの?!」

キリトとアスナの家にはリーファ達いつものメンバーが集まって今回のイベントバトルの事について話していた。突然乱入してきたランク2のエイジの事やアスナがMVPとしてユナにキスされた事などを話していた。

「あーユナに会えるなら行きたかったなー」

「仕方ないよリュウヤ君用事で来れなかったんだし」

「リュウヤならいたぞあのエイジってやつが出てきたテラスのとこに」

「ちょっと!!それってほんとなの?!」

クラインの言葉を聞いたリズがクラインに詰めかける。

「ほ、ほんとだ確かにいたぜ。でも俺の顔を見た瞬間スグにどっかにいきやがった」

「アイツ!!用事があるっていって逃げたのね!!とっちめてやる!!」

そういってALOからログアウトするリズ。

「リーファ?」

なぜかそのやり取りを見ていたリーファの顔が少し不安な顔つきになっている。

「・・何か嫌な予感がして・・」

 

ログアウトしたリズはスマホをとりリュウヤに電話をかける。リュウヤにしては長い呼び出し音のあとリュウヤが電話に出る。

「アンタ!!今日用事があるっていって逃げたでし

ょ!」

『・・リズ・・・SAO生還者は・・』

「リュウヤ?」

何か様子がおかしい。

『・・ランク・・・・』

その言葉を最後に電話は途切れた。

 

「あんた達なにやってるのよ?」

リズがALOに戻るとリーファがシノンに、クラインがエギルに泣きついていた。話を聞くともうすぐ行われるユナのファーストライブのペアチケットを手に入れた二人に連れていって欲しいと頼んでいた。

「そういえばスグ来週合宿じゃなかったか?」

「お兄ちゃん・・・いやなこと思い出させないでよ・・」

「そういえばリュウヤさんどうなったんですか?」

「それがよくわからないのよSAO生還者とかランクとか何かよくわからないこといった後電話切れるは繋がらないはで・・」

「リュウヤ・・」

 

 

次の日の朝

この日から直葉はしばらく部活の合宿に行くことになっておりしばらくはキリトとリュウヤは二人で過ごすことになるのだが・・

『結局帰ってこなかったんだね』

「ああ、全く連絡もとれない」

結局昨日リュウヤが家に帰ってくることはなかった。それに一切の連絡も繋がらない。そんなことをアスナと電話で話していた。最近こんなことはよくあるがそれも事前に連絡がある。しかし今回は何故か連絡もない。そんなときキリトのオーグマーにメッセージが届く。差出人はY。内容は何処かの位置情報。何かを感じたキリトはその場所に向かった。

 

 

「ここか?」

スマホのナビ通りに来るとそこにあったのは病院だ。

「ここに何があるんだ?」

とりあえず病院の中を見て回ろうとして少し進むとある人物が目に入り足を止める。

「とりあえずスマホの充電も終わった頃だと思うし一回御家族の方に連絡をとった方がいいよ」

「ありがとうございます先生」

間違いないリュウヤだ。それに気づいたキリトは急いでリュウヤの元に向かう。

「兄貴!!何してたんだよ連絡も通じないし」

「すみませんあなたは誰ですか?」

リュウヤのその一言にキリトは何が起きているか理解することが出来なかった。

 

 

リーファは合宿に向かう新幹線の中にいた。外の皆がワイワイと騒ぐ中リーファは一人外を眺めていた。昨日から連絡のつかないリュウヤの事が頭から離れない。少し前にリュウヤとのデートで買ったお揃いのペンダントを取り出し中の写真を眺める。ペンダントの裏には『R to S』――RAINからSMILEにという意味――という文字が刻まれている。しばらく眺めているとリーファのスマホにメッセージが届く。

『リュウヤの事で話したいことがあるから誰もいないところでオーグマーを起動してほしい  Y』

そのメッセージを見たリーファは新幹線の女子トイレに向かった。

 

「記憶喪失?!」

先生につれらて医務室にきたキリトはリュウヤのことを聞いていた。早朝、都内の路地で倒れていた所を発見されたリュウヤはスグにこの病院に搬送された。特に外傷はなくスグに意識を取り戻したが名前以外の記憶を全て失っていたらしい。

「先程MRIで脳の方をチェックしてみてわかったんだがどうやら彼の記憶喪失の原因は強い精神的ショックみたいだね」

「強い精神的ショック・・・」

「それも相当強い精神的ショックのようだ・・まぁ原因は何にせよ日常生活に支障はないからねひとまずは自宅で経過を見よう。もし何かあったら連絡をしてくれ」

 

 

 

女子トイレに入ったリーファはメッセージの通りオーグマーを起動する。すると目の前に一人の少女が表れ絶句する。

――数週間前に病死したユウキが目の前にいたからだ。

『大きい声出さないでリーファ・・今リュウヤは大変なことになってる』

ユウキから告げられたのはリュウヤが記憶喪失となったこと、そしてそれにはオーディナルスケールが関係しているということだ。

「・・それって本当なの?!っていうかなんだあなたがここに・・」

『・・ええっとね話せば長くなるんだけどね・・要点だけまとめると僕はリュウヤの手でユウキという人から魂をコピーされたAIなんだ・・あ、でも僕のことはリュウヤや皆には内緒だよ・・リーファこのままだと取り返しのつかないことになる・・だから僕たちでやろう!!』

ユウキの言葉でリーファの決意は固まった。顧問に全てを説明し東京に戻る。もしキリトにこのことがバレれば最悪軟禁状態で身動きが取れなくなるだろう。だからこそいくつものアリバイ工作をしなければならない。そのことを考えながらリーファは東京行きの新幹線に乗り換えた。

 

リュウヤを連れて自宅に戻ってキリト。

「ここが兄貴の部屋だ」

リュウヤの部屋に案内するキリト。

「ここが僕の部屋ですか・・・」

しばらく部屋を見渡すが記憶が戻りそうな様子はない。

「これは・・」

「ナーブギアだ。昔はそれでフルダイブしてたけど最近じゃあ兄貴アミュスフィアでフルダイブしてんだぜ」

その後リーファや、アスナ達の事を話すキリトだったが結局リュウヤの記憶は戻らなかった。

 

 

八時五十分頃代々木公園

今日のオーディナルスケールのイベントバトルの場所はアスナの家から近い代々木公園だ。お風呂に入っていたアスナもクラインに誘われて代々木公園に来ていた。

「アスナすまねぇないきなり連絡して」

「構いませんよ。そういえばキリトくん今日は来れないそうです」

「やっぱりか・・あんまり乗り気じゃねぇみたいだしな」

「まぁリュウヤ君のこともありますし・・」

キリトはリュウヤが記憶喪失になったことをまだ誰にも話していない。その為皆リュウヤは行方不明になっていると思っている。

「・・ってもう時間来るじゃねぇか・・アイツなにしてんだ?」

「どうしたんです?」

「あ、ああ実はなメンバの一人と連絡がつかねぇんだ。アスナは先いっててくれ俺達は全員来たら参加するからよ」

 

クラインと別れ一人公園の中に入るアスナ。公園の広場になっているところには既に多くのプレイヤーが集まっていた。

「オーディナルスケール起動!!」

辺りがあっという間に変化しボスが出現する。

「さーてみんな準備はいい?戦闘開始」

やはりユナも現れ歌い始める。

 

公園の入り口でメンバーを待つクライン達。入り口まで届く歓声に苛立ちを隠せないでいた。

「おいユナステージ来てんじゃねーか・・早くしねぇと獲物が・・」

「その心配はない。今日の獲物はお前達だ!!」

声のした方に振り返るとエイジが立っていた。

「お前昨日の・・」

突然後ろから怪物の声が聞こえ振り返るとそこにはボスがいた。

「やるしかねぇ・・いくぞ!!戦闘開始だ!!」

 

 

 

「動きがはぇぞ!!」

公園内に現れたボス、ザ・ストームグリフィンに苦戦を強いられていた。素早い動きで空を飛び回りプレイヤー達を翻弄していた。

「そんな戦いかたしか出来ねぇのかよモブどもがよ!!」

そのボスに突然ジェネシスが飛び乗り叩き落とす。

「ランク・・3?!」

 

「へへ、楽勝楽勝!」

突然現れたボス、ゼーギ・ザ・フレイムコーラと戦うクライン達はその連携でボスを圧倒していた。

「なかなかやりますね・・ならこれはどうでしょう」

その戦いを見ていたエイジが風林火山のメンバーの一人に向かって走り出す。それに気づいたメンバーが振り返った瞬間エイジの拳が腹に突き刺さる。それを皮切りにエイジは次々と風林火山のメンバーを一撃で沈めていく。

「てめぇ!!何しやがるんだ!!」

それに気づいたクラインがオーグマーを外しエイジに殴りかかる。

「かつてSAO攻略組の一角を努めたギルド風林火山のリーダー、クライン。オーディナルスケールだとやはりこの程度か」

クラインの拳を簡単にかわすエイジ。しばらくかわした後突然エイジがクラインの拳を掴む。その瞬間クラインに関節技を決めその勢いのままクラインの右手をへし折る。その場に倒れたクラインにもう一度オーグマーを装着させた後首をつかみなにもない空間に差し出す。

「ちゃんと目を開けて見てくださいよ」

エイジ言われ目を開けるとボスがクラインを間近で睨み付けていた。あまりの恐怖で目をそらそうとするが何故かそらせない。

「クラインを・・離しなさい!!」

倒れていたアンナがエイジに殴りかかる。エイジはクラインを盾にしてアンナを蹴り飛ばす。

「俺の嫁に何しやがるんだ!!」

クラインがエイジの顔を殴り飛ばす。

「やはりこの程度だったんですね・・風林火山は!!」

そう言ってクラインを殴り飛ばすエイジ。エイジはゆっくりと別のメンバーに近づくとそのメンバーに執拗に暴行を繰り返す。

(チキ・・ショウ・・・)

そこでクラインの意識は途絶えた。

 

 

 

代々木公園広場

「ちっ、以外にしぶてぇな」

ボスと戦闘をしているアスナ達だがボスの素早い動きに翻弄されうまく攻撃を当てられないでいた。そんなときアスナがあることに気付く。今戦闘しているのはかつてアインクラッドで戦ったボス。つまり攻撃やそのモーションもアインクラッドと同じで・・。

「もうすぐ範囲攻撃が来ます!!タンクの皆さんはそれを防いでください!!範囲攻撃のあとボスは空に飛び上がりますので銃使いの人は羽を狙って打ち落としてください!!近接武器の人は打ち緒としたボスを集中攻撃してください!!」

かつての記憶をもとにアスナが皆に指示を飛ばす。

「あなたも集中攻撃に加わってください」

「わーってるよ閃光様」

「来るぞ!!」

ボスが羽を広げ辺りを攻撃するが全てタンクのプレイヤーに防がれる。

「いくぞ!!」

飛び上がったボスを銃で蜂の巣にするプレイヤー。打ち落とされたボスにジェネシスを含めた近接武器を使うプレイヤーが攻撃する。しかしボスを倒しきることはできなかった。再び動き始めたボスの標的はアスナだ。真っ直ぐにアスナに向かっていくボス。それをアスナは迎え撃つ。瞬間アスナのレイピアがボスの体を貫きボスはその体を四散させた。

「おめでとー今日も貴女なのね」

戦闘を終えたアスナの元にユナが近付く。それに気付いたアスナは昨日の事もありスグに距離をとる。

「あら残念・・じゃあ皆またねー」

 

イベントバトルの帰り道アスナはあることを考えながら帰っていた。クライン達風林火山のことだ。結局今回のイベントバトルに参加しなかったのだか何か嫌な予感がした。クラインに連絡を取ろうとするが繋がらない。嫌な予感を抱えながらアスナは一人家へと帰っていった。

 

 

 

リュウヤが記憶喪失になった次の日

キリトは前日にイベントバトルの行われた代々木公園に来ていた。ここにきた理由はイベントバトルの話をアスナから聞くこととリュウヤの事を話す為だ。

「・・結構早くついたな」

『折角だからオーディナルスケールの戦いを練習していきましょう』

ユイに言われやむを得ず剣をふるい体をならそうとするキリト。

「・・やっぱりなれないなフルダイブと反応速度が違うせいかな?」

とりあえず剣をふり続けるキリト。そんなとき後ろから近づいてきた少女とぶつかりそうになる。

「あ、すみせん」

少女の手をつかみ起き上がらせようとするがその手は少女をすり抜けてしまう。

「え?」

驚きのあまり立ち尽くすキリト。そのキリトをよそにその少女は何かを拾うような動作を行いやがて立ち上がると何かを呟いて何処かを指差しそのまま消え去った。

「ユイ・・今のって」

『NPCでもないみたいですし・・それにさっきの口の動きからして探してといっていたみたいですが・・』

「・・どういうことなんだ?」

そのキリトの肩に突然誰かが手を乗せる。反射的に振り返るとそこにいたのはアスナだ。

 

 

「なぁアスナこの辺で幽霊が出るっていう噂聞いたことないか?」

アスナと合流したキリトは公園内の売店前の椅子で先ほどの少女について聞いていた。

「そんな話聞いたことないわね・・」

「そうか・・そういえばこの前のイベントバトルの時にもう一人SAO生還者がいたって言ってたよな?」

アスナがキリトを呼んだ理由、それがイベントバトルで見かけたSAO生還者の事だ。

「うん・・多分血盟騎士団にいた人とソロプレイヤーだった人だと思う」

「・・?二人?」

「昨日会ったの・・一人はノーチラスって名前で血盟騎士団の一人だったんだけど結局死の恐怖の乗り越えられなかったの。この人はランク二位の人。もう一人は・・SAOの名前は分からないんだけど今はジェネシスって名乗ってる。私の事を知ってたから攻略組だと思うんだけど・・」

「ジェネシス・・って確か?!」

『パパ、ママ!!オーディナルスケールのイベントバトルについてあることがわかりました!!』

 

 

「ハァー」

リズは一人自分の部屋でため息をついていた。それもそうだ。二日前リュウヤと謎の電話をした後連絡は一切つかなかった。

「アイツ・・・なにしてんだろう?」

そう呟いた瞬間リズのスマホにメッセージが届く。送り主はユイ。オーディナルスケールの事で話したいことがあるらしい。リズはアミュスフィアを被るとALOにログインした。

 

「皆さん実はオーディナルスケールのイベントバトルの場所についてある法則性が分かりました」

そういってユイはテーブルの上に関東の地図を表示させる。

「まずこちらが今まで十一回行われたイベントバトルの場所です」

ユイの言葉にあわせ地図に十一個の点が表示される。

「これをアインクラッドの平面図と照合します」

「え?!」

「う、うそ・・」

アインクラッドの平面図と照合した瞬間、アインクラッドの各層の迷宮区とイベントバトルの場所がほぼ一致した。

「どうやらオーディナルスケールのイベントバトルはアインクラッド迷宮区のある場所またはそこに近い広場などで行われているようです。この事から今日のイベントバトルはここ、恵比寿グランドガーデンで行われると推測できます」

そういってユイが指し示したのは都内にあるショッピングモールだ。

「場所が先に分かってるなら足のない私にも参加できるわね」

「今日は私も参加しますよ」

話し合いの結果今回参加するのはアスナ、リズ、シリカとなった。

 

「ハァー」

リズはログアウトするとか再びため息をついた。直感だがリュウヤの行方不明はオーディナルスケールに関係していると思っている。リュウヤはそんな人間だ。何かあれば首を突っ込んでいく。それで何回死にかけた事か。

「あのバカは・・本当に」

もし何かの事件に首を突っ込んでいるなら少し応援したいと考え一言スマホで頑張れとメッセージを送る。

「さてと早めに準備しますか」

ベッドから起き上がったその瞬間だった。スマホにメッセージが届いた。確認すると送り主はリュウヤだった。内容は何を頑張るんですか?。

「う、うそ・・・」

突然のことに驚きを隠せないリズ。しばらくして何とか落ち着くとリズはリュウヤにメッセージを送信した。[newpage]

 

 

リュウヤは一人恵比寿グランドガーデンに来ていた。数時間前家で自分が何者なのかを考えているときにリズからメッセージでここに呼び出されていたが・・・

「リズさんってどの人なんだろう?」

記憶のないリュウヤはリズが誰かは一切分からない。向こうが知ってるなら自分を見たら多分声をかけてくれるだろうと思って中に入った瞬間何者かに背中を叩かれる。

「リュウヤあんた今まで何してたの?」

「皆さん心配してたんですよ」

振り向くとリズとシリカがいた。

「もしかしてリズさん?」

「そっちはシリカよ」

リュウヤが指差したのはシリカ。

「あんた一体どうしたの?二日くらいあってないだけで私とシリカ間違える?」

「確かに何かいつもと違って少し穏やかな感じがしますし・・・」

穏やかって、普段の僕はどんなやつなんだろ?。と考えるリュウヤ。

「ごめん遅くなっちゃって・・あれ?リュウヤ君?」

その三人に合流してきたのはアスナだ。

「アスナ、実は家を出る前にリュウヤと連絡がついたから尋問目的で・・」

「リュウヤ君大丈夫なの?」

「まぁ、病気や怪我をした訳じゃないですし・・」

 

 

 

何処かの庭園

「よぉエイジ調子はどうだ?」

「ジェネシス今日は風林火山の記憶を手にいれました」

そういってエイジは一冊の本を取り出す。少し前に発売されたSAO事件全集だ。この本にはSAO事件のことがほぼ全て書かれている。彼はその本のギルドのページを開き風林火山の名前に×をいれていく。

「リュウヤの名前にも×つけとけ」

「ジェネシスもしかして・・」

ジェネシスの言葉の意味に気づいたエイジはジェネシスに掴みかかる。

「アイツはスパイだったんだ。それにアイツ意外と会ってたみたいだぜ」

ジェネシスにそういわれエイジはその手を離す。

「教授からだ。今日の作戦はお前に任せる。俺はそれのサポートだ」

 

 

 

キリトは再び代々木公園に来ていた。理由は今朝であった謎の少女のことだ。最近オーグマーを使用する人たちの間で噂となっていた。町を歩いていると一人の少女が現れ何処かを指差し消えていく。もはや都市伝説に近いものとなっているその噂に何か気になるものがあったからだ。とりあえず少女と出会った歩道橋の上にきたが何もない。しばらく何かを考えていたキリトに電話がかかってくる。

『キリトお前何してたんだ?』

エギルだ。キリトはALOからログアウトした後エギルにクライン達の事を聞いていた。

「少し考え事をしててな・・で何かわかったのか?」

『ああ、どうやら昨日代々木公園で乱闘騒ぎがあったらしいんだが・・』

代々木公園の乱闘騒ぎのことはアスナから聞いていた。どうやらイベントバトルが起きているときと同じ頃代々木公園の別の場所で乱闘があったらしい。最も目撃者はおらず本当に乱闘だったかも分からないらしいが。

「それがどうしたんだ?」

『どうやらクライン達はその乱闘騒ぎに巻き込まれたらしい。それで全員怪我して今は代々木の病院に入院中だ』

「そうか・・分かった」

 

エギルと電話を終えた後キリトはカガチ・ザ・サムライロードと戦った場所に来ていた。リュウヤはクラインに気づかれた後何処かに移動し記憶喪失になった。

「メッセージ?」

突然キリトにメッセージが届く。送り主はY。内容はまた位置情報だ。

「もしかして・・」

何かを感じたキリトはその場所に移動した。

 

 

 

位置情報の場所はさっきの場所から少し離れた所の裏路地だった。

「ここに何かあるのか?」

しばらく裏路地を進むと寂れた小さなビルを見つけた。中は一階が丸々広間になっており数本の柱と階段があるだけだった。

「・・ユイこのビルが何か教えてくれ」

『このビルは昔はとある会社のオフィスとして使われていました。今は誰も使ってはいないみたいですが・・』

やっぱり何か特別なことがあるわけでもない。そう思ってビルから出ようとした瞬間だった。柱の影に何かを見つけた。

「・・これは・・」

ペンダントだ。どうやら中に写真が入っているみたいでキリトはそれを開けてみる。

「これは?!」

写真に写っていたのはリュウヤとリーファだった。裏を見るとR.to.Sと掘られていた。間違いないリーファのペンダントだ。少し前にリュウヤがデートでお揃いのを買ったと言っていた。でも今リーファは合宿に行っているはずだ。何故ここにリーファのペンダントが落ちているんだ?そんなことをキリトは一人考えていた。

『パパ!!このペンダントの中に小型の通信端末が入っています!!』

「本当かユイ?!」

『はい!!・・でも中に入っているデータは解析できません・・・』

また突然Yからメッセージが届く。内容は『それはリュウヤのペンダント。ここにはまだ秘密があるよ』

「秘密?」

『パパ!!にぃと連絡できなくなった日ここでにぃはオーディナルスケールをプレイした形跡があります!』

 

そのビルを調べ終わった頃には既に日は落ちていた。結局分かったのはここでリュウヤはオーディナルスケールをプレイしペンダントを落としたと言うことくらいだ。とりあえずコーヒーを飲むため自動販売機にお金を入れる。すると当たりと表示される。どうやらオーグマーを使ってスキャンすると1本無料のクーポンが貰えるようだ。とりあえずオーグマーつけてクーポンを入手するキリト。そして振り替えると例の少女がいた。驚き後ろに飛び退くキリト。その少女はまた何処かを指差すとそのまま消えていった。

 

 

 

「「記憶喪失?!」」

イベントバトルに参加するためショッピングモールに集まったリズとシリカはカフェでアスナからリュウヤが記憶喪失になった事を聞かされていた。

「ってことはあんた私と付き合ってることも忘れたの?!」

「ちょっとリズ!!リュウヤ君に嘘の記憶覚えさせないで!!」

「ぼ、ぼくって二股かけてたんですか?!」

「リュウヤ嘘ですよ嘘!!」

リズの言葉を信じてしまったリュウヤをなんとか説得しリズと付き合っていないと覚えさせた三人。

「あ、そうだあんたオーディナルスケールの戦闘に参加したら?」

リズの提案に皆が?を浮かべる。

「ほらリュウヤって戦闘狂のスピード狂じゃない?もしかしたら戦いで何か思い出すかもしれないし」

 

その日のイベントバトルが行われるのはユイの予想道理恵比寿グランドガーデンだった。戦闘が始まる10分前だが既に多くのプレイヤーが集まっていた。

「リュウヤ君あまり無理しないでよね」

「あ、はい・・なんでしょう・・何かこれを手にしてると少し落ち着くと言うか・・」

どうやらリズの作戦は効果があったみたいだ。

「そう言えば今日戦うのって十二層のボスなんですよね?」

「多分そうだと思う・・確かヤドカリの・・・」

アスナが説明をしていると時計が九時を差す。それと同時に辺りが変化しアインクラッド十二層ボス、ザ・ストリクトハーミットが出現する。そしてボスから少し離れた所の岩場にユナが出現する。

 

 

戦闘が始まった頃キリトもイベントバトルの場所に来ていた。オーディナルスケールを起動すると近くの柱に隠れユナの様子を伺う。

「やっぱりあの子・・・何処かで・・」

「おい黒の剣士そんなところに隠れてないで出てきたらどうだ?」

隠れていたキリトに一人の男が声をかける。

「ジェネシス・・」

「ほう俺の事を覚えててくれたんだな」

「どういうことなんだ?お前あのとき・・」

 

 

 

これはアスナから聞いて思い出した話だ。

当時アインクラッドの最前線は五十五層。その日は迷宮区前を守るフィールドボスとの戦闘があった。ボスのステータスは五十五層の段階ではあまり強くないがとても素早いためタンクを少なめにしダメージディーラーを中心に集め討伐隊を組んだ。その中に俺、そしてジェネシスもいた。結論を言えばジェネシスはその戦いで外周から落ちた。全くダメージを与えられなかった俺達はボスを外周から落とすと言う作戦に変更し外周に誘導を始めた。その戦いでヘイトを稼ぎボスを外周に誘導したMVPがジェネシスだ。しかしジェネシスはボスが落ちる瞬間服を掴まれ道連れに落ちていった。[newpage]

 

 

「いくらタンクがいないからって!!」

ボスの攻撃を一人で防ぐリズ。その横からアスナが攻撃し吹き飛ばしリュウヤが追撃を喰らわせる。

「リズ!!このままおしきろう!!」

アスナの言葉を聞きシリカとリズはボスに向かって走り出す。二人を追いかけようとしてアスナはある人物が目に入る。

「あなたノーチラス君ね」

「アスナさんその名前はやめてください」

そういってアスナに自分の名前を示すエイジ。

「今の僕はエイジです。もうあの時と違う」

エイジがユナを見上げる。それにつられアスナもユナを見る。その瞬間だった。ユナの歌が一瞬止まり違う歌を歌い始めた。

 

「始まったか・・」

「ジェネシス?」

「さぁショーの始まりだ・・さて今日は何人のモブが狩れんだろうなぁ」

 

ボスと戦闘するシリカたちの近くに何かが現れた。小さな青いドラゴン、ピナだ。

「ピナ!!どうしたの?」

シリカがピナに近づこうとした瞬間だった。

「シリカさん!!ソイツは何か嫌な予感がします!!」

リュウヤがシリカを抱き抱えピナから離れる。その瞬間だった。ピナの体が変化し巨大なドラゴンに変化した。

 

「なんだあれは?!」

『パパ!!あれは九十一層のボスに予定されていたドルゼル・ザ・カオスドレイクです!!』

「九十一層?!」

アインクラッドは七十五層でクリアされた。つまりあのボスの事を誰も知らないと言うことだ。

「?!兄貴?!」

新しいボスの出現に混乱するプレイヤー達のなかにリュウヤの姿を見つけたキリト。リュウヤはシリカを庇いながらドラゴンを相手にしている。その姿を見たキリトはリュウヤのところに向かって走り出した。

 

 

「なんでシリカさんばっかり!!」

突然現れたボスを迎撃するリュウヤだがボスの狙いは何故かシリカだった。

「シリカさん!!一回逃げて・・え?」

リュウヤが振り返るとエイジがシリカを突き飛ばしていた。それに驚きを一瞬手を緩めてしまった。それを機にボスはリュウヤを無視しシリカの元へ向かう。突き飛ばされたシリカはスグに立ち上がれずただボスの攻撃を喰らうだけだった。

「シリカちゃん!!」

そのシリカにアスナが覆い被さりシリカを庇う。その瞬間、ボスのカギヅメがアスナの背中を切り裂く。その一撃でHPは0になりゲームオーバーになった。その瞬間目の前にかつてのことがフラッシュバックする。七十五層でのスカルリーパーとの死闘、そしてヒースクリフからキリトをかばい死亡したこと。

ーーあの城での辛い思い出を思いだし涙を流すアスナ。そこでアスナの意識は途絶えた。

 

「アスナ!!」

二体のボスの出現で混乱するプレイヤーを掻き分けアスナの元にたどり着いたのはアスナがやられた直後だった。

「お前ぇ!!何をした?!」

キリトがエイジに殴りかかろうとした瞬間エイジはキリトに剣をむけそれを制する。それと同時にイベントバトルの制限時間である10分が終了し二体のボスは何処かへと消えていった。

 

 

「見てキリトくん!!湖が見えるよ!!」

アインクラッド二十二層の森の中でアスナはキリトに肩車をしてもらい森の中を進んでいた。しかし気が付くと何故かキリトの姿はなかった。一人薄暗い森の中を進むアスナ。また気が付くと今度は真っ暗な場所にいた。辺りには色んな物がポリゴンとなり消えていく。遥か先にキリトがいる。そこに向かって走り出すアスナ。

「キリトくん!!」

ゆっくりと歩いていたキリトが足を止めアスナに向かって振り返る。

「君は誰だ?」

キリトのその一言に足が止まりそうになる。やがてキリトの後ろにエイジが現れキリトを包み込みーー

 

 

「?!はぁはぁ・・夢?」

どうやらさっきまでみていたのは夢だったようだ。少し前都内のショッピングモールでのイベントバトルで気を失ったアスナ。スグに目を覚ましたものの大事をとりキリトに家まで送ってもらった。その後疲れたアスナはスグにベッドに入った。

「アレ?・・」

飛び起きてから何故かアインクラッドの記憶にモヤがかかったように思い出せない。

 

 

 

アスナからキリトに連絡が来たのは夜の2時を過ぎていた頃だった。話があると言われキリトはALOにダイブする。

「アスナどうしたんだ?電気もつけないで」

真っ暗な部屋の中にアスナは一人でいた。キリトはメニューを操作し明かりをつける。

「キリトくん私達この家に何時から住んでたんだっけ?」

「確かSAOがクリアされる少し前からだから・・・2年くらいかな?・・アスナ?」

「・・キリトくんごめん何も思い出せないの・・アインクラッドでキリトくんと過ごしたことが・・」

 

「検査の結果どうやらアスナさんの脳に限定的な記憶スキャンが行われた形跡があります」

次の日の早朝キリトはアスナをつれて病院に来ていた。検査の結果アスナがアインクラッドの事を思い出せないのはアスナの脳に限定的な記憶スキャンが行われた影響で記憶障害が発生しているかららしい。

「最近似たような案件がよく報告されています。聞いた話だと記憶全てを失ったという人もいるみたいですね。彼らの共通点はオーディナルスケールをプレイしていたということです」

「それってオーディナルスケールをプレイしたら記憶障害が起きるってことですか?!」

「今の段階ではなんとも言えません」

 

 

病院から帰ってきたアスナとキリトはALOにログインしアインクラッドの思いでの場所を巡っていた。初めてであった広場や鍛冶詐欺にあった場所などを巡るが結局アスナが何も思い出すことはなかった。

 

東京に戻ってきていたリーファとユウキはイベントバトルが行われたところを調べていた。

「・・何も見つからない・・」

『まぁ相手はARだからね・・見つかっても証言だけだし・・』

東京に戻ってたがリュウヤの記憶やオーディナルスケールの手掛かりは何一つ見つからなった。

「・・そういえばSAOの記憶を失う事件が起きてるんだよね?」

『うん・・ちょっと待ってすぐに情報を出すから』

ユウキがそういうとリーファのオーグマーに事件についてリュウヤが調べた資料が表示される。

「ユウキ!?コレ!!」

リーファが示したのは一つの資料。

『これが本当なら記憶障害の原因って・・』

「多分・・SAOにいたモンスターに倒されることで起きてるんだと思う・・なら」

何かに気付いたリーファは今日のイベントバトルに参加するために東京タワーへと向かった。

 

 

夜キリトは一人で東京ドームに来ていた。ここでは今日オーディナルスケールのイベントバトルが行われる事となっている。エイジとジェネシスがアスナの記憶を取り戻す方法を知ってると考えたキリトはこのイベントバトルに二人を探しに来ていた。

『パパ・・すみませんがジェネシスとエイジのプレイヤーデータは見つかりませんでした・』

ユイにも探してもらったが結局見つからず仕方なく近くのベンチに座るキリト。

「何て顔してるのよ」

そのキリトに一人の少女が話しかけてくる。シノンだ。どうやらこの場所はシノンの家の近くらしい。

「キリト・・一人で悩んでどうするのよ」

「シノン・・オーディナルスケールは危険だ!!もしオーディナルでやられた君の記憶だって・・」

「心配要らないわ。だって私はSAOの記憶が無いもの。それにあなたが私を守ってくれるんでしょ?」

「・・あんまり無茶はしないでくれよ」

そういって立ち上がるキリト。どうやら戦闘開始まで後少しとなっていた。

「オーディナルスケール起動!!」

時間が来て現れるボス。その姿を見てキリトは絶句した。

「十八層のボス、ダイアータスクだと?!今日は十三層じゃないのか?!」

「パパ!!現在都内十ヶ所でボスが出現!!その影響でボスがシャッフルされています!!」

 

 

東京タワー

「・・やっぱりここに僕の記憶の手掛かりが・・」

オーディナルスケールのイベントバトル参加禁止令を出されていたリュウヤだがいてもたってもいられず東京タワーに来ていた。今回の通知だとここでイベントバトルが行われるらしい。

「全く・・そんな顔してたら記憶も戻らないわよ」

参加するにあたってリズに協力を求め今は開始を待っているだけだった。

「リュウヤ!!君もこのバトルに参加するの?」

「最近ALOを引退するという噂が流れているが本当なのか?」

そのリュウヤに二人の人物が声をかける。フィリアーー竹宮琴音とスメラギーー住良木陽太だ。フィリアはSAO生還者でかつてとあるプレイヤーにMPKされかけたところを、リュウヤに助けられた。スメラギはフィリアも参加していたとあるレイドのリーダーで、ALOでのイベントの際にリュウヤと知り合った。

「ええっと・・・」

「ごめんね二人とも今のリュウヤは記憶喪失なの」

リュウヤの事や今起きていることを二人に説明するリズ。

「・・そんなことが・・」

「なるほどな・・恐らくSAO生還者がオーディナルスケールで倒されることによって記憶障害が発生すると考えられるな・・七色にオーグマーの解析を頼むとして・・フィリア、リズ、二人は危なくなったらすぐに離脱してくれ・・始まるぞ!!」

 

少し離れた場所

ここではリュウヤたちの様子をリーファが見ていた。

「何でここに・・」

『リーファ準備できたよ・・これならリュウヤたちにバレずに戦えるよ』

 

 

時計が九時を指すと当たりが変化する。変化が終わるとボスが出現する。

「・・嘘?!」

「リズ知っているのか?!」

「こいつはアインクラッドクォーターポイント・・二十五層のボスよ!!」

≪ジャイアント・ザ・ダブルヘッドゴーレム≫。そのボスが手に持った巨大な棍棒を振り下ろすと地面がめくれ瓦礫がプレイヤーを襲う。

「こんなの近づけないじゃん!!」

「・・うまく回避できればいける・・」

あまりの攻撃の激しさに皆近づけない。近づけてもボスの棍棒の前にあっさりと倒されていく。

「・・あの攻撃・・多分法則性がある・・」

「本当?!」

「多分ですけどボスが振り回す棍棒は左右交互・・後は正面に来たプレイヤーを潰すように振り回してる・・」

フィリアの後を追いかける三人。すでにフィリアはボスの足元に接近し攻撃を始める。

「ボーナスいただき!!」

「?!フィリア!!よけろ!!」

フィリアが攻撃しているとき突然ボスが棍棒を上ではなく横に振りかぶった。薙ぎ払いだ。

「え?」

フィリアが気付いた時にはもう遅く棍棒は目前に迫っていた。フェリアが棍棒に殴られる瞬間、突然フードを被った一人のプレイヤーが表れフィリアごとボスを切り裂く。

「フィリア!!」

何とかフィリアの元にたどり着いた三人。そのフードのプレイヤーはリュウヤたちには目もくれずボスを攻撃する。それと同時に倒されそうになったプレイヤーを次々と倒していく。やがてボスが倒れるとその人物は駆け足でどこかへと去っていった。

「大丈夫なのか?」

「う・・うん」

「フィリア・・無茶しすぎだ・・これでお前の・・」

「それなんだけど・・記憶がなくなるどころか・・はっきりしてるの」

 

少し離れた場所

『リーファ!!やっぱり推測道理・・旧アインクラッドのモンスターに倒されないと記憶障害が起きない!!』

「やっぱり・・でもどうするの?私だけじゃ全てのプレイヤーを・・」

『大丈夫足なら任せてよ!』

[newpage]

 

ダイアンタスクとの戦いを終えたキリトとシノンは広場から少し離れた場所にいた。結局ジェネシスもエイジもイベントバトルに現れなかった。またユイも一部のプレイヤーに不可解なプログラムが働いていたことに気付いたが後一歩のところで情報を得られないでいた。

「・・結局手詰まりか・・・」

「・・ねぇ何かまだあるんじゃない?何か見落としていることとか・・」

「・・・もしかして・・ユイ!!あの少女が指差した方向と東京の地図を照らし合わせてくれ!!」

 

 

 

次の日キリトは大岡山にある東都工業大学の教授である重村に会いに来ていた。重村はオーグマーの開発者であり何かを知っていると考えたが結局分かったのは教授の娘がSAOで死亡したことくらいだった。何かないかと考えるキリトに電話がかかってくる相手はリズだ。

「リズ・・何の用だ?」

昨日止めたはずのイベントバトルにリュウヤを誘って参加した挙句フィリアを戦闘不能にさせてしまった事を聞き少しだけ不機嫌になる。

『昨日はホントごめん・・それより大変なの!!昨日のフィリアなんだけどね病院で検査してもらったら何の異常もなかったしSAOの事も覚えているの!!』

「!?本当か!?でもなんで・・」

『もしかしたらだけど・・あの時ボスより先にほかのプレイヤーがフィリアを倒したんじゃ・・』

リズからその時のことを繊細に聞くキリト。

「・・話は分かったが確証がないし実行には移しにくいな・・リズ今日兄貴を頼めるか?」

『いいけどあんたはどうするの?』

「もう少し調べてみる」

 

 

 

都内の公園

キリトは一人で歩いていた。数時間前アスナの家でアスナの思いをしったキリトは再びエイジとジェネシスを探すためオーディナルスケールのイベントバトルに向かっていた。しかし気が付くと公園ではなく何処かの庭園にいた。しばらく歩くと大きな神殿のような建物が目に入る。その前にかかる橋の上に一人の少女が立っていた。あの日代々木公園で初めてであったあの少女だ。

「やっぱり君は重村教授の娘さんなんだな」

かつて重村教授には一人の娘がいた。しかし彼女はSAO事件に巻き込まれ死亡した。

「オーグマーとはいったいなんなんだ!!何でこんなことを!!」

キリトの問いに対してその少女は少し歌った後逆に問いかける。

「夢かもしれないよ。目が覚めたらまだあの城に囚われたままかもよ」

「そう思ったことはあるがそう望んだことはない・・・教えてくれ!!アスナや兄貴の記憶はどうやったら戻るんだ」

「今のあなたのランクじゃ無理。さぁそろそろ目を覚ます時間だよ」

そういって少女が指をならす。

気が付くとキリトは公園の茂みの中にいた。しばらくオーグマーを見つめたキリトは公園の広場へと歩いていった。

 

都内のカラオケ店

「・・というわけなのよ直葉」

部屋の中ではシリカとアスナ、リュウヤが歌い通路ではリズとシノンが今回の件についてリーファと話し合う。

『・・そんなことが・・そのバトルに私が参加していれば・・リュウヤの・・』

「そんなに気にしなくてもいいわよ」

「リズさん!!ユナのライブは明日ですよ!!だからいっぱい練習しますよ!!」

電話をしていたリズをシリカが無理やり引っ張って部屋の中に連れていく。

「まぁリーファが気にすることはないわよ」

 

 

 

「・・とりあえず私もお兄ちゃんに剣道の技や立ち回りを少しでも教えます」

『それがいいわよあまり無茶しないことね』

そういってシノンとの連絡を切るリーファ。そのリーファの輪郭が、周りの風景が歪み始める。歪みが終わるとそこは電子空間でいたのはユウキだった。

「リーファ!!結構大変だったんだよ!!」

『ごめんねユウキ』

先ほどシノンと話していたリーファはユウキが変装していたものだった。今リーファは菊岡の車でイベントバトルの場所に向かっていた。

「話は分かった・・僕ができるのは送迎くらいだ・・あまり無茶はしないでくれよ」

 

 

 

オーディナルスケールのイベントバトルに参加したキリトは公園での戦いを終え次の場所に向かっていた。その日も都内十ヶ所でイベントバトルが行われていた。今のランクは1506位。更に上げるにはこのイベントバトルでボーナスを獲得するしかなかった。各地のバトルに参加してはボスを倒すを繰り返すキリト。一ヶ所だけ倒せなかったが全九ヶ所のボスバトルを終えランクは9位に上がっていた。竹芝埠頭でワーヒラ・ザ・ブラックウルフを倒したキリトに誰かが声をかける。

「やっとオーディナルスケールの戦いに慣れてきましたね黒の剣士」

後ろを振り返るとエイジとジェネシスがいた。

「黒の剣士明日ユナのライブに来い!!そこで閃光とリュウヤの記憶を返してやる」

そういって何処かに去っていく二人。エイジの首もとに何か光るものが見えたような気がしたが結局何かは分からなかった。

 

キリト達の会話を近くの物陰からリーファが聞いていた。

「ユウキ・・今のって・・」

『多分そういうことだよ・・・僕たちもチケットを手に入れよう!!』

 

 

「じゃ、また明日」

カラオケを終えたシノンはリズたちと別れてひとり家へと帰っていた。家の近くの公園に差し掛かった時目の前に一人の人物が現れる。

『GGOのスナイパーシノンさんですね?』

「・・あなた誰よ?」

顔には悪趣味な仮面がつけられており声も変成器で男か女かわからない。まぁ服の上からでもわかる主張の大きな胸で女性ということは分かるが・・・

『単刀直入に言います明日のユナのライブのペアチケット、その片方を私に渡してください』

「嫌よ・なんで得体のしれないあんたなんかに・・そもそもこれは・・」

『明日リーファさんは来れません・・ならそのチケット無駄にするよりは私に渡したほうが有効的ではありませんか?』

確かに今リーファは合宿で東京にはいない。つまり明日のライブに来ることはできない。問題はそのことをなぜこいつが知っているかだ。

「・・あなた一体・・」

『悩んでいるのならこれで決着を着けませんか?』

そう言ってオーグマーを取り出すその女性。

「分かったわ・・その代わり私が勝ったらその仮面の下見せてもらうわよ」

『「オーディナルスケール起動!!」』

掛け声を合図に二人の姿が変化する。

『短剣ですか?』

「悪いけど銃の弱点を補うために短剣も持っているのよ・・まぁシステム外スキルってやつね」

シノンがカバンから取り出したのは短剣だ。オーディナルスケールには近距離で戦う物、遠距離で戦う物の二種類の武器が存在し二種類を同時に装備できない。実はこの武器には公式には知られていないある抜け道が存在していた。別のオーグマーを使って別の種類の武器を設定しそれを持ち歩くと言うものだ。最もオーグマーを二台も手に入れられたらの話だが。シノンは元々オーグマーを購入していたが後にかつての死銃事件の際にお詫びと謝罪として新川医院からオーグマーを渡されていた。そのため銃と短剣を利用した戦い方ができる。最も銃で倒さないとポイントは入らないがーー

『さて始めましょう・・』

そういってその女性は近くにあった空き缶を投げる。空き缶が地面に落ちると同時にシノンは女性に向けて銃を撃つ。女性はその弾を剣で切るとシノンに向かって走り出す。

 

 

 

その女性――リーファはキリトとエイジたちの会話を聞いてライブ会場に乗り込もうとしていた。そのためにもまずはチケットを手に入れることが大切だった。そこで目を付けたのがシノンだ。クラインなら確実に病院を抜け出してライブに行くと考えたリーファはエギルではなく自分が合宿で参加できないと思っているシノンから手に入れようとした。シノンとの勝負に持ち込んだのも確実に手に入れるためだ。今のリーファのオーグマーはユウキの力を借りてシノンの動きを予測する機能を着けていた。その為リーファがシノンに負けることはまずなかった。

 

『しぶといですね』

「あんたも銃弾切るとか何考えてるのよ・・」

シノンとリーファの戦いは既に三十分を超えていた。銃弾を切って近づくリーファと近づかれたら短剣で迎撃し距離をとるシノン。戦いは単調。つまり先にミスをしたほうが負ける。再び銃を撃つシノン、リーファはそれを切ってもう一度接近する。

(同じことを繰り返すなら!!)

接近するリーファに向かってシノンも走り出す。リーファの虚を突いて攻撃する作戦だ。シノンの狙い道理リーファの歩みが乱れる。その瞬間足元に転がっていた空き缶を踏んでしまい転びそうになるシノン。しかも運悪く後ろには鉄の柵。もしこのまま転べばーー

『危ない!!』

転ぶシノンをリーファが受け止める。とっさの行為に何とか受け止めるも左手を強く打ってしまう。

『いった~』

痛そうに左手をさするリーファをみたシノンは知り合いのある女性を思い浮かべる。最もその女性は今は合宿に行っているので目の前にはいないがーー

「チケットがほしいんでしょ?いいわよあなたに譲ってあげる・・そのかわり今度その仮面の下を見せてよね」

 

 

ユナのライブ当日

キリト達はライブ会場に来ていた。

「あー喉が・・」

昨日のカラオケでハッスルしまくったシリカは喉をからせていた。

「大丈夫ですか?シリカさん」

「全く歌いすぎよ・・あれそういえばキリトは?」

リズの一言で皆辺りを見渡すがキリトの姿はなかった。

「トイレに行くって言ってたわよ」

遅れてシノンも合流しリュウヤは先に席取りに向かった。

 

キリトは一人エレベーターにのって地下駐車場に来ていた。

「やはり来ましたか・・黒の剣士」

「お前ノーチラスだな」

「今の僕はエイジだ!!」

キリトの言葉に声を荒げるエイジ。

「エイジ悪いが力付くでも兄貴とアスナの記憶を取り返す」

そういってキリトは手首に着けていた重りを外す。

「良いでしょう・・本当の力を見せてあげますよ」

「「オーディナルスケール起動!!」」

 

 

 

会場ではユナのライブが始まっていた。ド派手な演出で飛び出してきたユナはステージを走り回り歌を歌う。その様子を特等席で一人の人物が見ていた。

ーーオーグマーの開発者重村教授だ。

その教授に一人の少女が近付いてくる。何度もキリトとであったあの少女だ。

「お父さん!!もうやめて!!私生き返りたくなんてない!!」

「悠那・・それは自己保存モジュールが言わせてるだけだ」

その少女ーー悠那の言葉を切り捨てる重村。悠那はこれ以上何を言っても無駄だと思い、その場を後にした。

 

ライブ会場大道具倉庫

大きな機材が収納されている倉庫の中にジェネシスはいた。

ーーかつてジェネシスはただのネットゲーマーだった。色んなMMOをプレイしたがどのゲームも弱い部類に入るプレイヤーだった。強い武器を手に入れても強いプレイヤーにPKされ奪われた。そんなとき出会ったのがSAOだった。世界初のVRMMOに期待していたジェネシスだったがSAOがデスゲームとなった事により事態は一変した。約二ヶ月ただひたすらに絶望し外の世界から助けを待ち続けたが助けは来ることはなかった。やがてジェネシスは戦うしかないと気付き前線へと出るようになった。そこでリュウヤと出会った。崇拝者と言えばいいだろう。ジェネシスは幾度なくリュウヤに助けられた。それだけではない。リュウヤの強さに何時しか憧れを抱いていた。しかし五十五層でのフィールドボスとの戦いでジェネシスは外周から落ちた。それを助けたのがユナだった。

その事を思い出していたジェネシスの後ろに一人の人物が近付いてくる。

「遅かったじゃねぇか・・待ちくたびれたぜ」

ジェネシスが話しかけるがその人物は返事をしない。

「おい無視はねぇだろ・・お前誰だ?」

振り返るとそこにエイジでもリュウヤでもなくリーファがいた。

「あなたがジェネシスですか?」

「あ、ああそうだが・・」

「やっと見つけた・・リュウヤの記憶を返してもらいます!!」

 

 

 

地下駐車場ではキリトとエイジの戦いが続いていた。駐車場を疾走し互いに剣をぶつけ合う二人。

「SAOをクリアした英雄もARだとこの程度ですか!!」

「お前こそあの世界と違いよく動くじゃないか!!」

ーーエイジはかつて血盟騎士団の一人だったが死の恐怖を克服できず一度もボス攻略に参加することはなかった。しかし今はキリトと互角以上に渡り合っている。キリトが走りそれを追従するエイジ。エイジはVRで規格外の動きで戦うリュウヤと同じように壁を走りキリトを攻撃する。

「その動きまるで兄貴だな!!」

「そういえばそうだったね!!リュウヤさんはお前の兄だった・・だがあの人はお前や僕とは違う!!真の高みへと上ることのできる人だ!!」

かつてSAOで最前線で戦ったリュウヤ。表だって英雄扱いされることは無いものの生還者の中には崇拝者としてリュウヤに憧れを抱く人たちがいた。ジェネシスとエイジもその一人だ。

エイジの攻撃を受けるキリトだがエイジが剣ではなく拳で攻撃してきたことにより剣を落としてしまう。すぐに体勢を立て直すがエイジの攻撃の激しさに少しずつ後退する。

「お前の強さの秘密はこれかぁぁぁぁ!!!」

キリトが叫びエイジに向かって走り出す。それをエイジは剣で攻撃しようとするがキリトの目的はエイジの首もとにある機械だ。昨日エイジの首もとに一瞬だけ見えた謎の機械。どうやら身体能力をブーストする機械のようだ。その機械をエイジから取り外し落ちていた剣を拾うキリト。

「きさまぁぁぁぁ!!」

エイジとキリトが剣をぶつけ合う。一瞬の間の後倒れたのエイジだった。

「どんなに悲しい過去があったからといって過去の自分を否定するやつに俺は負けるわけにはいかない・・さぁアスナと兄貴の記憶を返してもらうぞ!!」

 

 

「リュウヤの記憶を返せだぁ?嬢ちゃん誰?」

「私はリュウヤの彼女です!!」

リーファのその言葉に驚くジェネシス。

「・・アイツに彼女なんていたのか・・あんたには悪いが返すわけには・・うぉ?!」

ジェネシスの言葉を遮る形で攻撃するリーファ。それをかわしたジェネシスもオーディナルスケールを起動してリーファに攻撃する。リーファの攻撃を防ぐジェネシスだか一切攻撃することができなかった。それもそうだリーファの気迫に圧倒され攻撃できないでいた。

「調子にのるなぁぁぁ!!」

ジェネシスが叫びリーファの腕をつかみ攻撃を無理矢理中断させる。それに驚き一瞬リーファの動きが止まる。そこにジェネシスは剣を叩き込むがそれをリーファは僅かに横に動いてかわす。すぐさまリーファはジェネシスの腹を殴りジェネシスの拘束を解く。一瞬左手に痛みを感じるがすぐに意識から弾き出す。

「私はリュウヤの彼女でお兄ちゃんの妹!!だから・・こんなところで負けるわけにはいかない!!」

刹那、リーファの剣がジェネシスを切り裂いた。

 

 

 

 

ライブ会場では一曲目が終わっていた。ファン達がそれぞれ歓声を上げる。しかしその歓声はどんどんと小さくなっていった。それもそうだなぜかユナの動きが止まったままなのだ。

「あー幸せ~」

その一言を最後に突然ユナが消えた。それにより会場全体がざわつき始める。その瞬間だった。突然一部のプレイヤーのオーディナルスケールが起動し始めた。それはアスナ達も同じだった。それと同時に会場にボスが出現した。

 

『キリトくん!!独自の捜査で分かったんだが会場を飛んでいるドローンには出力をブーストする機械が取り付けられている!!』

エイジを倒したキリトは会場に向かっていた。エイジから聞かされたのは記憶の取り戻し方ではなく、ライブの真の目的だった。

ーー会場に集めたSAO全員に大出力のスキャンを行い記憶を一斉に奪うというものだ。

ただそれも普通にスキャンすればアスナ達と同じように記憶を失うだけで済むが菊岡の調査によるとライブ会場を飛び回っているドローンに出力をブーストする機械がつけられている。つまりもしスキャンが行われればナーヴギア同様脳に再生不可能のダメージを負うこととなる。それを知ったキリトは皆のオーグマーを取り外すために会場に向かうが会場のなかは既に戦いが始まりもはや止めることは出来そうになかった。

 

地下駐車場でエイジが、大道具倉庫ではジェネシスがそれぞれ教授に自分が敗北したことを連絡していた。

『君達にはまだ最後の仕事が残っているだろう?君達の記憶も提供してもらおう』

二人の前にボスが出現し止めと言わんばかりに二人を攻撃した。

 

 

 

「・・ユウキどう?」

『・・ごめん。メインセキリュティのハッキングには成功したけどドアのロックは別のサーバーに繋がってて・・』

メインホールの入り口についたリーファ。ロックされたドアを開けようとするも旨くいかないでいた。

『とりあえずホールの監視カメラの映像を出すね』

持っていた端末に中で戦う皆の様子が表示される。ほとんどのプレイヤーが戦闘しているが何人かは恐怖に負け逃げ出そうとしていた。何とかしないと・・。そう考えたリーファの中にある疑問が浮かぶ。

「ユウキ!!アインクラッドのボスモンスターと今出現しているボスモンスター簿リストを表示して!!」

『う、うん。すぐにオーグマーに出すよ』

表示された二つのボスモンスターのリストを照合させていくリーファ。ゾデーラ・ザ・マーシレス・レイザー、ブーラ・ザ・ヴァイル・フレッシュ、ジイ・ザ・ブルータル・デモリショナー、アーマディロン・ザ・バーリー・ブラスター、バルロン・ザ・バーバーラス・ハーバー、アイガー・ザ・ワンアームド・スケルチャー、ゴシルサ・ザ・ブルヘッデド・トーメーンター、アスバシルサ・ザ・ホーステッド・トーメンター、ザ・フレームアイズ。

「やっぱり・・」

『リーファ・・これって』

照合させると何故か一体だけリストに上がらないでいた。アン・インカーネイト・ザ・ラディウス。嫌な予感がしたリーファはメインホールに入るのをあきらめ会場を後にした。

 

 

会場の中にいたアスナ達はこの状況を一切理解できなかった。それもそうだ。一度に色んなことが起きすぎている。そのアスナ達の元にボスが接近する。死神の姿をしたボスをリズとエギルが迎撃しようとするがそこに新たにボスモンスターが接近する。

「リュウヤ!!」

「シリカちゃん!!」

悪魔の姿をしたボスからシリカを守ろうとリュウヤが立ちはだかる。そこに一つの影が飛んできて悪魔型のボスを倒す。

「和人さん!!」

「遅れてすまない!!」

キリトだ。キリトの到着に安堵したせいで気が緩みリズとエギルに死神の攻撃が突き刺さる。それを防いだのはキリトが何度も出会った少女ーーユナだ。

「ユナ!!」

「皆・・ごめんね私のせいでこんなことになって・・あの数字・・あの数字が一万を越えたら一斉にスキャニングが行われるわ!!」

そういってユナが示した電工掲示板に数字が表示される。3000と表示された数字だかそれも少しずつ確実なスピードで増え始める。

「ユナ・・どうすれば止められるんだ?」

「アインクラッド百層のボスを倒して・・黒の剣士!!」

「百層のボス?」

「オーグマーはナーヴギアの機能限定版でしかないわ・・今からオーグマーのフルダイブ機能をアンロックする後は御願い・・・」

ユナの言葉に頷き椅子に座るキリト。その肩にリズ達が手をのせる。

ーーそういえばそうだったな・・・いつも俺は・・・

「キリトくん・・・」

「アスナ待っていてくれ必ず帰ってきてそしたら・・あの約束の続きをしよう!!」

そういってアスナに指輪を渡すキリト。かつてアインクラッドで現実で星を見に行き、そこでまた指輪をプレゼントすると約束した二人。例え記憶が消えようとその思いは消えない。

「兄貴・・アスナを恃む!!」

「必ず帰ってきてくださいよ・・キリト」

「リンクスタート!!」

 

 

 

フルダイブしたキリト達はアインクラッド百層紅玉宮の上空にいた。

「まさか、こんな形でここを見ることになんてな・・」

エギルの言葉道理SAOでは七十五層でクリアしALOではまだ三十層位までしか攻略されていない。その為ここを見るのはイレギュラーが強い。ゆっくりと降下するキリト達の目の前に巨大な魔神が現れる。

ーーAn Incarnate of the Radius

百層のボスだろう。キリト達の姿を見るとボスの目が光りエギルに攻撃それと同時に十八本のHPゲージが表示される。

「こいつがアインクラッド本来のラスボスか!!」

かろうじて受け止めていたエギル。

「いくぞ!!戦闘開始だ!!」

キリトの合図で一斉にボスに攻撃を始める。それに気づいたボスはエギルを地面にたたきつけると背中から七色の光を出して攻撃、シリカとリズはかわしきれずに吹き飛ばされる。外周に上っていたシノンが狙撃するもバリアが出現し攻撃は届かない。攻撃を受けたボスは目から光線を放ちシノンを攻撃する。そのすきに一気に接近したキリトだが攻撃がバリアに防がれる。

「スイッチ!!」

キリトの掛け声でシリカが攻撃するもやはりバリアに防がれる。

「スイッチ!!」

今度はリズが攻撃するもバリアを貫けない。

「スイッチ!!」

エギルの攻撃もバリアを貫けない。

「スイッチ!!」

エギルの掛け声でキリトが攻撃する。するとバリアが轟音をたてて砕け散る。それと同時にHPが僅かに減少する。

「よし・・このままたたみかけるぞ!!」

再び攻撃しようとしたときだった。ボスが突然雄叫びを上げる。それに呼応するように巨大な木が生えてくる。その木の葉から一粒の雫がボスの体に当たりーー僅かに減少していたHPが全て回復した。

「う、うそだろ?!」

「こんなのに勝てるのかよ?!」

回復したボスが杖を地面に着くとそこから木の根が生えキリト達に襲いかかった。

 

 

ライブ会場に菊岡と数人の男が到着していた。ライブが行われていたメインホールに入ろうとするもドアはロックされていて入ることが出来ない。

(・・中は君たちに任せる・・頑張ってくれキリト君・・皆!!)

菊岡は男達と会場の何処かにいる重村を探し始めた。

 

メインホールでは多くのプレイヤーが戦闘を行っていた。数値も8000を越えている。その様子を重村は特等席で眺めていた。

ーー重村教授には一人娘がいた。名前は重村悠那。当時世間で話題になっていたナーヴギアを開発した茅場の恩師という立場を利用して教授はナーヴギア、そしてSAOを娘にブレゼントした。そしてサービス開始時彼女は五分ほど遅れてSAOにログインした。教授もその日午後から抗議があり悠那のログインを見届けた後大学に出掛けた。帰ってきたのは午後五時頃。その時には既にニュースでSAO事件の報道が始まっていた。突然の事態に頭が真っ白になる教授。娘を助けるため半年にもおよび茅場を探し続けたが見つからなかった。

ーーそしてSAOクリアの一ヶ月前、娘はナーヴギアに脳を焼かれ死亡した。

 

 

「中々に面白い光景だろ?かつてあの城を生き残ったプレイヤーのほぼ全員がここに集められている」

『まさか先生が私がSAO開発初期に捨てたプログラムを見つけ出し使用するなんてね』

「オーディナルスケールのランキングシステムは絶対だ。ランキング一位になったものは不死となれる・・エイジもジェネシスもよくやってくれたよ・・後少しで私の夢が・・」

『確かに先生の夢は私の夢と少し近いところがある・・・私は信じているのですよ・システムを凌駕する奇跡の力を・・』

奇跡?そんなものは存在しない。存在するなら娘は死ななかった。あの日何かのトラブルでログインが夕方まで遅れるはずだ。

 

 

 

「・・リーファ君!!情報提供ご苦労だった・・ああ、ユウキ君の事は恃むよ・・もしリュウヤ君にバレたら何を言われるか分からないからね・・」

菊岡達は会場の管理室に来ていた。メインホールを除けば後はここだけだ。やはりドアはロックされており入ることは出来ない。一人の男が電子盤を操作するが開かない。

「貸せ!!僕がやる!!」

電話を終えた菊岡がスーツの胸ポケットから拳銃を取りだし電子盤を破壊しドアのロックを解除する。しかし中に誰もいなかった。

「やられたか・・あの監視カメラがどこに繋がっているか調べるんだ!!」

その様子を教授はタブレットで見ていた。教授がいるのは旧アーガス本社の地下、SAOサーバーの目の前だった。パソコンの画面を見ると既に数値は9000を越えていた。

 

 

 

メインホールではプレイヤー達の戦いが続いていた。

「リュウヤ君!!」

未だにフルダイブを行っているキリト達をユナとリュウヤがそれぞれ守っていた。ユナは巨大な盾を使い、リュウヤは剣で迫り来る敵を迎撃していた。

「・・ごめんなさい二人とも・・私のせいで・・」

ーー重村悠那。かつてSAOで死亡した少女。父親である重村教授はある日SAOサーバーのあるアーガス本社の地下に来ていた。そこで茅場が捨てたプログラムを偶然見つけた。やがて須郷や茅場のかつての研究室を探るうち教授の頭にある計画が浮かんだ。それがSAO生還者の脳から娘の記憶を奪いそれをもとにAIとして生き返らせるというものだ。

「・・もう時間がない!!オーグマーを外せばスキャンの影響は受けないから死ぬことはない!!皆を助けられないけど・・オーグマーを外して!!」

「ふざけるなぁぁぁ!!」

「リュウヤ・・・君?」

何かがおかしい。キリト達がフルダイブするときキリトと呼んだ。今の状態では和人さんと呼んでいる。もしかしたらーー

「・・・もしかして・・自力で記憶を・・」

「多分和人さんは知っているはずです・・・でもオーグマーを外さなかった・・それは皆を助けるためです!!和人さんは・・自分達だけが助かろうなんて思ってない!!」

「リュウヤ・・・君」

必死に叫ぶリュウヤ。その目には涙が浮かんでいた。もしかしたらリュウヤは記憶の狭間で戦っているのかもしれない。

「・・記憶が無くてもやっぱりリーダーっすね」

攻撃を防ぐリュウヤの間に人影が入ってくる。

「レンさん・・皆・・」

ブラッドナイトの皆だ。

「ここは私達で食い止めるから・・キリト達を助けに!!」

サチ達月夜の黒猫団もいる。

「アスナさん」

「うん」

 

 

 

キリトが走る。それをシノンが狙撃で援護する。先程の木の根をかろうじてかわしたのはキリトとシリカ、外周にいたシノンだけ、エギルとリズは絡めとられ動きを封じられていた。シリカがキリトと反対方向から攻撃しようとするも突然の足場が浮き上がり空から突然落ちてきたガレキに挟まれる。

「シリカ!!」

キリトがシリカに気を取られた瞬間をボスは杖で攻撃する。間一髪受け止めるも吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。ボスはキリトを掴むと目を赤く光らせる。

「やめなさい!!」

シノンが狙撃で攻撃を止めるがボスは目から光線を放ち外周を攻撃、何とかかわすもガレキに足を挟まれ身動きが取れなくなっていた。ボスは再び攻撃しようと目を光らせる。その瞬間キリトの目に二つの流星が見えた。一つはリズ達を拘束している木を切り裂き、もう一つはボスの頭に突き刺さる。

「皆さん!!」

「大丈夫?」

アスナとリュウヤだ。アスナは跳躍するとシリカを挟んでいたガレキを破壊しシリカを助け出す。

「アスナ・・兄貴・・」

「キリト君助けに来たよ!!」

ボスが再び叫び攻撃しようとする。しかしそれは突然飛んできた緑の光で止められる。光の飛んできた方を見ると一筋の緑の光がステンドグラスから飛んでくる。

「お兄ちゃん!!皆!!お待たせ!!助けに来たよ!!」

リーファだ。そのリーファの胸からユイが出てくる。

「お待たせしました!!皆を呼んできました!!」

リーファが飛んできたステンドグラスからいくつもの光が飛んでくる。ユージーンにサクヤ、アリシャにクライン、スリーピングナイツの皆やアンナもいる。さらに外周にはダインやベヒモス、闇風がいる。ボスを倒そうと皆攻撃するが・・

「時間が・・」

そうアスナとリュウヤが来た時点ですでに9000を超えていた。恐らく今のままだと間に合わない。

「大丈夫です!!これを受け取ってください!!」

ユイが手を広げるとそこから光がキリト達に向かって飛んでいく。光に包まれたキリト達の装備が変わっていく。黒いロングコートに青と黒の剣、赤と白を基準とした騎士服にレイピア、白を基準としたロングコートに長い剣、赤い服に小さな短剣と青い小さな竜、ウェイトレスのような服にメイス、鎧に大きな斧、動きやすい服に巨大な銃。キリト達がSAOクリア時に装備していたものだ。

「SAOサーバーに残っていた皆さんのプレイヤーデータをロードしました。シノンさんの分はおまけです!!」

「よし・・・みんなやろう!!」

キリトの合図で皆が同時にボスに攻撃を始める。キリトとアスナが足元でボスを攻撃。それに合わせサクヤとアリシャが同時に魔法で攻撃する。辺りの瓦礫足場に飛び上がるリュウヤの手を掴んでレコンが投げ飛ばす。それをクラインが足で受け止め蹴り飛ばし勢いのままボスを貫く。ボスが叫ぶと足元から根が生えみんなを攻撃する。その根を足場にシノンたちは外周から移動しボスを銃撃、リーファたちも壁際で回避し魔法で反撃、キリト達はスリーピングナイツの皆の魔法で防御する。ユージーンとクライン達が息の合った連携でボスを攻撃する。ボスが叫ぶとべヒモス達の足元が浮かび上がる。瓦礫に必死にしがみ付くべヒモス達を光線で攻撃、さらにそのまま周りを光線で攻撃し皆を付し飛ばす。その煙の中からリズとシリカが飛び出して周りを飛んでいる瓦礫を足場にしてボスに接近し攻撃それに合わせエギルが斧を叩きつける。体勢を立て直したボスが再び地面に杖を着くと木が生えそこから雫が垂れる。

「あれを防いで!!」

アスナの合図で皆が一斉に攻撃し回復を止める。

「アスナ!!兄貴!!一気に決めるぞ!!」

ボスに向かって走り出すキリト達。それを止めようも杖で攻撃するボス。さらに根が生え三人を攻撃する。それをリーファとシノンが迎撃するも攻撃が足りず一つが三人に襲い掛かる。

「スイッチ!!」

根をリュウヤ、杖をキリトが防ぎアスナが跳躍する。

(ユウキ・・・力を・・貸して!!)

アスナの手に誰かの手が重なりレイピアが紫の光を放つ。

《十一連撃OSSマザーズ・ロザリオ》

かつてユウキから受けついだOSSだ。

「スイッチ!!」

アスナが叫ぶとリュウヤが走り込んでくる。

「くらえぇぇ!!」

リュウヤの剣が淡いピンクの光を放つ。

《片手剣十連撃ノヴァ・アセンション》

記憶の無いリュウヤの体が感覚だけでスキルを放つ。

「スイッチ!!」

リュウヤが叫ぶと今度はキリトが走り込んでくる。

「いっけぇぇぇぇ!!!」

キリトが、リュウヤが、アスナが、皆が叫ぶ。ボスはキリトに向かって光線を放つがそれをリュウヤとアスナが身を呈して防ぐ。

「「いけ・・キリト(君)!!」」

「ハァァァァァァ!!」

キリトの剣が青く光出す。

《二刀流十六連撃スターバースト・ストリーム》

キリトが一番好きだったスキル。十六連撃がボスに突き刺さる。キリトの全ての攻撃が終わると同時にボスの体が四散した。ボスが消えた後一振りの剣がゆっくりとキリトの元へと降りていく。

『おめでとう・・だが君たちにはまだやるべきことがあるだろう』

 

 

「・・・まだなの?」

既に電光掲示板の数字は9900を越えていた。しかしまだキリト達は戻ってこない。必死に耐えるがついに耐えきれず弾き飛ばされる。サチ達も尻餅をつきすぐに立ち直れない。

ーーその瞬間突然ボスが消えた。

見るとキリトが剣をかまえ立っていた。キリトはユナに向かって頷く。それを見たユナはステージに移動し歌い出す。それを合図に戦闘する全てのプレイヤーにバフがかかり皆ボスに攻撃を始める。その間もキリトの一振りで次々とボスが四散していく。

 

 

「何故だ!!」

教授はタブレットに表示される数字を見て教授は驚く。先程まで数字は9900を越えていた。しかし今は増えるよりも早く減少していた。

『お父さん・・ありがとう・・』

教授が振り替えるとそこには悠那がいた。

「悠那・・」

『お父さんはいつも忙しいのに私の無理を聞いてくれてありがとう・・あの日私は幸せだった・・ありがとうお父さん・・私はお父さんの思いでの中にずっといるよ』

その言葉を残し悠那は消える。それと同時に教授のミサンガが切れ地面に落ちた。

 

 

「今まで迷惑をかけてごめんね」

全てのボスを倒し終えたキリトはステージの側でユナと話していた。

「・・君の事を思い出したよ。ユナ・・君は」

「ありがとう私の事を思い出してくれて・・アスナさんリュウヤさんあなた達から預かったものを返すね」

そういうと二人の頬に光る物を当てる。それと当時にユナの体が光出す。

「私は百層ボスのソリースで動いていたの・・だからボスが倒されたら私は消えることとなる・・」

やがてユナの輪郭もなくなり完全に光の粒子となり天へと舞っていく。それと同時に皆の記憶の中にユナの思い出が浮かび上がる。かつて三十六層でキリトとアスナはその歌を、シリカ、リズ、エギルは五十三層で、月夜の黒猫団は二十六層、ブラッドナイトは六十八層でそれぞれ聞いていた。リュウヤは元々歌にも少し興味あり何度かユナと話したり共に狩りに出掛けたこともあった。まるでその記憶は昨日の事のように皆の中に繊細に浮かび上がった。

 

ジェネシスはエイジに支えられながらメインホールに来ていた。少し前消えたはずのユナの記憶が戻り計画の失敗とユナの消滅を知った。

『二人とも覚えててくれたんだ・・・あの約束を・・ありがとう』

二人の頭にユナの声が響く。それと同時に二人は地面に膝をついた。

 

ライブから数日が経った五月六日

「クライン怪我は大丈夫なのか?」

「ったりめーよ・・お前も大丈夫か?」

この日は怪我で入院したクラインと記憶が戻り検査入院していたリュウヤの退院祝いとしてエギルのダイシーカフェに集まっていた。最もキリトとアスナは別件でいないが。

「それにしてもユナのやつ死んでたなんてな・・」

リュウヤとユナは親しかった。しかしとある時期を境に会うことはなかった。丁度ユナが死亡した日はボス攻略戦が行われ戻ってきたと思えばエイジの脱退宣言等で急に忙しくなり気付けば頭からユナのことが抜け落ちていた。

「そんなにユナって人の歌声って綺麗だったんですか?」

「ARアイドルのユナと全く同じ声だ」

直葉の言葉にリュウヤが答える。

「そういえばライブの前の日変な人に絡まれたのよ」

シノンが唐突にそんなことを告げる。

「変な人?」

「ええ・・何でもユナのライブに行きたいからペアチケットの片方を譲ってくれって・・最初は断ったんたんけどリーファは合宿で来れないからどうせ使わないなら譲れって・・」

「それで譲ったの?」

「最初は譲る気は無かったんだけど、勝負を挑まれて・・本当そいつ無茶苦茶よ・・私の銃弾斬ったんだから」

「銃弾を斬ったぁぁ?!」

シノンの銃弾を斬ったことがあるのはキリトのみ。皆がキリトのことを思い浮かべるがその日キリトはオーディナルスケールのイベントバトルに参加しておりシノンと接触することはできない。

「ま、まぁい、いいんじゃないんですか?どうせ私は参加できませんでしたし・・痛っ!」

何故か狼狽え左手を押さえる直葉。

「手、どうした?」

「合宿で怪我しちゃって・・」

そういって左手を見せる直葉。

「左手の怪我ねぇ・・」

「シノンどうしたの?」

「なんでもないわ」

そういって微笑むシノン。

(やっぱり・・あの変な人はリーファだったのね)

「そういえばリュウヤあんた何で記憶を失ったのよ?」

「ふぁい?!」

突然のリズの質問に驚くリュウヤ。

「オーグマーで無くなる記憶ってSAOの記憶だけよね?ならなんであんたは全ての記憶を無くしたのよ?」

「・・菊岡からオーディナルスケールで妙なことが起きてるって言われてなそれで教授やエイジと深く関わっていたから多分全ての記憶にスキャンをかけて口封じにしたんだろ」

そう言うリュウヤだが実際はあの時ジェネシスは記憶の中から一番見せられたくない映像を作り出しリュウヤに見せた。その為リュウヤはショックから全ての記憶を無くした。その映像はーー

(言えるかよ・・・まさかカエルに集られて記憶喪失になったなんて・・)

リュウヤの苦手なカエルがリュウヤに集るというものだった。

「・・それにしてもキリトとアスナは何処に行ったんだ?」

やがて皆の話題が直葉のお土産に変わった頃クラインがリュウヤに問いかける。

「多分今頃・・星でも見てるんじゃないか?」

 

 

埼玉のとある山の中

アスナとキリトが星を眺めていた。かつてアインクラッド二十二層で現実世界に帰ったら一緒に星を見に行こうと約束した。

「キリト君これ・・」

アスナがキリトに小包を渡す。

「キリト君にばかりもらうのもダメだから・・今度はちゃんと渡してほしいな」

ライブの時にアスナがもらった指輪をキリトが受けとる。頷くとキリトはアスナの指に指輪をはめる。それと同時に空に流れ星が流れる。幾つも星が降る中、二人の影は重なりあった。

 

SAO事件全集には第二版より

‘’かつて戦いに向かう剣士を歌で勇気付ける少女がいた

我々は忘れてはならない名もなきプレイヤー一人一人を''

の一文が追加された。

 

アインクラッド四十七層フローリア

何処までも広がる花畑の中に三人の人がいた。大柄な男と少し痩せた男、そして小柄な少女だ。花畑でゆっくりと横になる大柄な男とそのとなりで座る痩せた男。小柄な少女は花畑ではしゃいでいる。やがて歌い出す少女。その様子を眺める二人。そんな三人の回りを三匹の蝶が舞っていた。

 

 

 

とある場所

「菊岡君罪に問われなかったのは感謝するが私をここに連れてきて何をしようというのかね」

「やり方が違うとはいえまさか俺と同じことを考える人がいるなんて」

「桐ヶ谷君?!同じこととはいったい・・」

「こちらですよ教授」

「?!き、菊岡君!?これはいったい・・」

「「ようこそラースへ」」

 

episode of ordinal scale the end 

 

 




最初に述べたとうりこの話はパラレルワールドの設定で書いていますが、実はこの話に今後の展開に関係する重要なことが書かれています。その部分はあえて述べませんので探してみてください。ちなみにヒントは加筆部分に一か所、加筆前に二か所です
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