俺は仮面ライダークウガの世界に転生した。
ただ、何でカリスに変身出来るのか……。

この作品には「仮面ライダークウガ」及び「仮面ライダー剣」のネタバレが含まれます。

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クウガの世界で何故カリス?

「撃てっ!!」

 

 本来平和であるはずの東京の街中に似つかわしくない、銃撃音が響き渡る。音の発生源。それは複数人の警官が、怪人相手に拳銃を連射する姿。

 

「ズンジャラザバ※1

 

 未知の言語を使う怪人は悠々と警官達に近づく。そしてその細長い口を向けると、何かが飛び出して警官の一人の眼球を貫いた。伸縮自在な鞭にも見えるそれは、怪人の舌。奴はその舌を高速で伸ばすことで、今のように人間を殺害していた。

 

「はあ……」

 

 ビルの上からその光景を見ていた俺は思わず溜息を吐く。予想はしていたが、まさかこれほど早く奴らと出会うなんて……。もう少し現状を確認してから行動したかったが、発見してしまったものは仕方ない。さすがに見て見ぬふりをして警官達が殺されるのを見るだけというのも目覚めが悪い。ならば、ここで介入させてもらおう。

 

「変身」

 

 短く呟くと俺の姿が揺らぎ、漆黒の体に金色のラインが特徴的な生体装甲が全身を覆う。顔はハートを思わせる形状のバイザーのようなものへと変化した。復活してから初めての変身だったため少し不安だったが、何の問題も無かったことに安堵する。

 ただ、初めてこの姿になった時から思っていることがある。

 

 何で俺は『カリス(マンティスアンデッド)』になってるんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺には前世というものがある。別に特別な何かが有ったわけでも無い普通の人間。平日は会社で働き、休日は趣味に費やす。家族とは離れ、恋人も居ない一人暮らし。別に寂しくはなく、むしろ気楽と感じていた。そんな俺が好きだったのが、いわゆる特撮といわれるもの。その中でも仮面ライダーが好きだった。ウルトラマンやスーパー戦隊と比べると、話の内容が殺伐としていたり、現代に近い設定だったり、そんな独特な雰囲気を持つ仮面ライダーを見て、幼いころから登場人物の苦悩や決断に対して共感や疑問を持ちながら見ていた。

 そんな俺が特に好きなライダーがクウガだ。クウガは平成仮面ライダーシリーズの記念すべき一号であり、その内容は他のライダーと比べて遥かにシリアス。子供向けとは思えないほど、多くの人間の死を扱っており、主人公である五代雄介は幾度となく傷つきながらも誰かのために拳を振るい続ける。姿こそシンプルではあるが、その戦い方にはどこか悲しさも感じさせる姿が有った。もし自分だったら、どんな選択肢を取るだろうか。そんなありもしないことを夢想することも少なくなかった。

 

 そんな仕事と趣味をローテーションする日々は突如として終わりを告げた。ある日、俺が仕事で銀行に訪れていた時の事だった。突如としてフードを目深に被ったサングラスの男達が銀行へ侵入してきたのだ。そう、強盗である。俺は犯人を興奮させないように静かにすることに努めていた。銀行の防犯設備は万全だ。すぐに警官が来る。その時まで待っていればいい。

 実際に警官はすぐに到着したが、それを見た犯人は、母親に連れられて来ていた幼い少女に目を付けると、その子を捕まえると包丁を向け人質としたのだ。これでは迂闊に手を出すことは出来ない。犯人達は思い思いに自分達の要求を騒ぎながらも、子供を決して離すことは無い。犯人達を捕らえるには、一瞬でケリを付けなくては、少女の命に関わる。場は緊迫した空気に包まれる。

 それからしばらくして、膠着状態は続く。既に何時間も経った気がしたが、まだ一時間も経っていない。だがいくら待っても自分達の要求が通らないことに業を煮やしたのか、犯人が子供に包丁を突き立てようとしたのが目に入った。母親は止めてくれと叫ぶが、犯人達は聞く耳を持たない。警官達が突入しようとするが、このままでは間に合わないかもしてない。そう思った瞬間、俺の体は既に動いていた。

 子供を掴んだ犯人に飛び掛かると、少女を引き剥がす。不意打ちを受けた犯人は驚いたせいか、それほど子供に強い力は掛かっておらず、思いのほか簡単に子供を救うことが出来た。だがすぐに逆上した犯人が包丁で俺の脇腹を突き刺してきた。初めて感じる痛み。まるで火箸を押されたような熱さを感じる。だが俺は敢えてその包丁が抜かれないように、犯人の腕ごと掴んで抑えつけた。それは包丁を抜くことで起きるだろう出血よりも、抜かれた包丁が別の誰かを傷つけることの無いようにするため。他の犯人達は慌てて俺を仲間から離そうと、背中を強く蹴ったり、持っていたバットで殴ったりしてくる。だが火事場の馬鹿力によるものか、俺の手が犯人と包丁を離すことは無い。

すぐさま警官達も突入し、犯人達を取り押さえる。その姿を見て安心したからか、不意に全身から力が抜けた。意識が遠のいていく。刺さった場所が悪かったのか、あるいは犯人を掴んでいるときに、その仲間が放った攻撃によるものか、よく分からないが徐々に命が消えようとしていることが感じられた。

 霞む視線を動かすと、涙を流した少女が母親に抱きしめられながら俺を見ているのが分かった。良かった、少女は無事なようだ。もし大きな怪我でも負っていたら、死んでも死にきれなかった。

 警官が俺の耳元で何かを叫ぶが、よく聞こえない。多分、このままでは死ぬだろう。だが一人の少女を救えたのだから、それで満足だ。

 そのまま俺の意識は落ちていく。ただ一つ後悔があるとするなら、これ以上仮面ライダーが見れないことだけだ。そんなことを思いつつ、俺は命を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目が覚めると、俺は知らない土地に居た。まるで土を固めて作られたかのような壁で出来た家。未知の言語を話す自分より遥かに大きな人間。そして上手く動かせない体。当初はどこか未知の国の謎の組織に掴まったのかと思ったが、すぐに答えを知った。手のひらを見ると明らかに小さい。それは赤ん坊そのもの。そう、俺は転生していたのだ。

 それからの生活についてはあまり詳しく話すことは無い。成人男性の精神で赤ん坊の生活をしたと考えれば、その羞恥がどれほど大きいか予測は出来るだろう。

 どうやら俺が転生した世界の文明基準は、転生前と比べると遥かに低い。高校の授業で学んだ縄文・弥生時代とほぼ同じような生活。食事もさほど美味しいものは無く、多くの点で激しいギャップを感じたが、転生してしまった以上嘆いても仕方ない。俺はこの世界に適応すべく努力した。

 

 俺が居た部族は、リーダーを闘いによって決めるというルールが有り、弱い者はその意思を通すことが出来ない。闘いは神聖な物とされ、一対一による決闘が基本。ただしどのような武器、どのような手を用いても構わない。最終的に勝った方が全てを決定する。

 しかしこのルールでは怪我人が多くなるのではないか。そう思うかもしれない。驚いたことに、俺の部族は体が普通の人間と比べて遥かに頑強な上、自己治癒能力が高く、ちょっとした切り傷や火傷などはものの数分で治ってしまう。この能力こそが戦いによる意思の決定というルールが作られた要因だろう。なんせ死ぬこと自体がほとんど無いのだ。

 だが同時にこの部族では弱い者には自己決定権すらほとんど無い。純粋な実力勝負。不満があるなら強くなるしかない。

 前世では喧嘩すらしたことがほとんどなく、それ故に同年代の子供との諍いにも負けることが多かった。このままではこの世界で生き残ることは出来ない。そう考えた俺はひたすらに鍛錬を続けた。この世界では強くなければ何もできないのだから。

 数年経ったころには、俺は同年代からも一歩抜きんでた実力者として名が通るほどの立場を獲得した。それを為すだけの力を手に入れたのだ。だがそれを鼻にかけるつもりは無い。それで暴走し破滅した者の姿を、前世で幾度となく見て来たのだから。

 

 そんな今世での生活にも慣れたある日、何人かの仲間が殺された。それは驚くべきことだった。俺達の部族は人数こそ少ないが高い戦闘能力を持っている。文字通り少数精鋭。この力を活かし、他の部族からの侵略を許さず、同時に攻め込まれない限り他の部族に対して攻撃を行うことも無い。そんな立場を有していたのだ。

 そして攻め込んできた部族が何者なのか判明した時、俺は初めてこの世界を真の意味で理解した。

 

 その部族の名は『グロンギ』。つまりこの世界は『仮面ライダークウガ』の世界だったのだ。

 

 グロンギとは、特殊な魔石の力によって異形の力を有した種族。彼らの体は基本的には人間と大差無いが、精神性は大きく異なる。彼らはゲームと称して一定数の人間の殺害を行うのだ。様々な方法によって敢え無く命を落としていく人々。それを楽しいと称する彼らの残虐性は作品内の特徴の一つだ。

 俺の居た部族はその怪物達のターゲットの一つとなったのだ。だがここで疑問が残る。作品内でグロンギのターゲットとなったのは、現代の日本人の祖先とされる『リント』だ。だが俺達の部族の名はリントではない。これはどういうことかと調べてみると、どうやらリントはまたこの近くに多数住んでいるらしい。つまるところ、俺達の部族もまたグロンギから襲撃を受けたが、その情報が現代まで残されなかったのだろう。歴史を経るごとにリントとの生存競争に敗れたか、交配によって同一化したか、あるいはグロンギの手によって全滅したか……。何にせよ、このままでは危険だ。

 いくら高い自己治癒能力を持っていても限度がある。ある者は首を掻き切られ、ある者は全身が焼かれ、ある者は顔を剥がされ、立ち向かおうとした者は、どれも無残な姿で発見されていく。それだけ力の差があるのだ。

 為すすべなくここで朽ち果てるのか。誰もがそう考えた。だが武器の作成を行っていた長老の一人があるものの作成に成功した。それは彼が偶然手に入れた魔石を元としたバックル。二匹の蛇が絡み合った形状をしていた。これを使えば奴らに対抗する力を手に入れることが出来るかもしれない。だがそれは、人間を捨てることも同義である。誰もが恐怖した。もし自分が奴らと同じ怪物と化してしまったら……。

 だからこそ俺はそのバックルを付けることに志願した。これ以上、仲間を失いたくない。そんな思いからだ。

 バックルを付けたと同時に、全身が侵食される感覚が襲う。頭の中で声がする。「壊せ」、「思いのままに暴れろ」、「力を振るえ」と。だが俺は耐えた。俺の力は仲間を傷つけるためじゃない。誰かが傷つかなくても済むように、俺は闘う。

 

 それと同時に俺の姿は変貌した。全身が黒い装甲で覆われ、まるでカマキリのような触角が生える。見た目は元の姿の面影など無いが、頭は思いのほかクリアだった。

 だが同時に疑問に思う。この世界はクウガの世界のはず。それなのに、何故()()()の姿をしているのか。

 

 『アンデッド』。それは『仮面ライダー剣』に登場する怪人。全ての生物の祖とされ、自分達の種族を繁栄させるべく戦うという特徴がある。その中に登場する仮面ライダーの一人がカリスである。だがカリスとは本来仮面ライダーではない。どういうことかと言うと、カリスとは本来、マンティスアンデッドという怪人の二つ名のようなものである。しかし作品内では主要人物である『相川始』こと『ジョーカーアンデッド』がマンティスアンデッドの姿に擬態をして戦っていた。それを知らなかった他のアンデッドは、相川始をカリスと呼び、人間達もまた彼のことをカリスと呼ぶようになった。

 

 閑話休題。要はこの姿は本来有り得ないのだ。平成二期と称されるライダー達とは異なり、クウガも剣も平成一期の仮面ライダー。設定上の矛盾などが有り、基本的に世界観の繋がりは無いパラレルワールドとされている。

 だからこの姿も、あくまで似ているだけなのだが、それにしても似すぎている。もしかしたら、俺の中にあった仮面ライダーの記憶が影響しているのかもしれないが、何故この姿なのか……。不満が有るわけでは無いが、疑問は消えない。

 

 何にせよ、俺は変身する能力を得て、グロンギたちから仲間を救った。それからしばらくして、リントが生み出したクウガによって全てのグロンギが封印されると、俺も仲間の手によって封印されることを選んだ。いずれ奴らが復活するだろうという予測も有ったし、もし俺が魔石の力で暴走したら仲間を傷つけてしまうかもしれないという恐怖も有った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからどれだけの年月が経ったのか。詳しい時間は分からない。予測通りグロンギは蘇り、俺も少しの時間を経てから蘇った。だがこの世界が俺の知る仮面ライダークウガと同一の世界とは限らない。少し様子を見てから行動したかったが、目の前に助けることが出来る相手がいるのに、見て見ぬふりは出来なかった。

 十階以上の高さの屋上から飛び降りる。並の人間であれば大怪我は必至だが、魔石によって強化されているこの体なら、何の影響もなく着地できる。

 

―ズンッ―

 

 警官とそれに歩み寄るグロンギの間に着地。俺の姿を見た警官達は恐怖を顔に出していた。

 

「な、また新たな未確認だとっ!?」

 

 彼らからすれば俺もグロンギも同じだろう。だが、それでも俺は彼らを守ると決めた。それはかつて憧れた一人の青年のようになりたかったから。

 

「ビガラパ カリス!!※2

「アア オエアモ オズアトメテサソア※3

 

 俺は手にしたカリスアローをグロンギへと向けた。例えどれだけ傷つこうとも、闘い続ける。それが俺が決めた道なのだから。

※1
ふん、邪魔だな

※2
貴様はカリス!!

※3
ああ、お前を倒させてもらうぞ




本作のアンデッド語(主人公の最後の台詞)は、文章をローマ字変換し文節ごとに逆から書いたものとなっています(例:お前→OMAE→EAMO→エアモ)。子音が最後に来た場合は省略しています。



キャラ設定

主人公/カリス/未確認生命体第17号
●仮面ライダークウガの世界へと転生してしまった男。当初はクウガの世界であるとは知らなかったが、その事実を知った後も憧れの青年の姿を追いかけ、誰かのために戦い続けることを誓っている。
●グロンギたちからは「カリス」と呼ばれており、変身後の見た目はマンティスアンデッドそのもの。ただしアンデッドではないため普通に人間の姿に戻れるし、ラウズカードに封印もされない。
●彼が転生した影響でリントの碑文にも彼を指す文章が記されている。
●「風纏いし刃操る者、影より現れ、邪悪を撃ち抜かん」

メ・アグリ・ダ/未確認生命体第16号
●本作品で登場したグロンギ。アリクイ種怪人。長い舌を人間の眼球に突き刺し脳を貫くという殺害方法を持つ。
●この後カリスによって倒された。それ以上の設定は特にない。

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