いや〜、良かった良かった。
暗闇の中、騒々しい声がする。
「逃げてからそんなに時間は掛かってないわ!どこか近くに隠れてる筈よ!見つけ出してモノにするわよ!」
「「「おーーーー!」」」
僅かに空いてる穴から辺りの様子を見ると女神の防衛網が築かれつつある。何とかしないと…。
しかし
「ここら辺は探索し尽くしたわ、離れた所にいるのかも」
「相手は冒険者、その可能性も高いわね…」
「仕方ない、今日の所は諦めましょうか」
「ちぇー、もっと触れ合いたかったのになー!」
ゾロゾロと足音が遠ざかっていく。ふぅ、危機は去った。10分程時間を置き俺は隠れてた木箱からノソノソと出る。
「チョロいな、やっぱ隠密には木箱に限る」
某ステルスゲームとかの知識がこういう所で活かされたのは嬉しい誤算だ。因みに3が神作だと俺は思う。異論は認める。
「え?」「む…」「あ…」「お?」「ん?」
へ?
間の抜けた声5つ、戸惑いつつ振り向くと【ロキ・ファミリア】の幹部クラスと思われる面子がこちらを見てポカンとした顔をしてた。
エルフ2人に恐らく双子であろうアマゾネス2人、そしてヒューマン。
OK冷静にクールに分析しよう、ここは相手の目線になって考えるんだ。歩いてたら木箱から出てきた紫コートの男、うん、怪しい。どうする?、どうする!?相手は上級冒険者、こっちは不審者の肩書きが付きそうな下級冒険者。やる事は決まってる!
スタスタ…
MU☆SHI! いっそ清々しいほどの無視だった。おいおい、これもう無視の領域じゃねぇぞ、黙殺だ黙殺。ポツダム宣言並みに黙殺されたよ、今。歴史の教科書に載るレベル。あっでもここオラリオだった。何だろう、こういう時にネタが通じる人がいないから少し寂しいかったりするなぁ。あっ!ネタ喋るような奴んて元からいなかった!HAHAHA!はぁ…。
「あの…」
何度か聞いたか細い声がする。ダンジョンで目覚めてミノタウロスに追い回されて殺されそうになった時、酒場でバカにされた時とか怪物祭で
も。「何?俺の事好きなの?」とでも勘ぐりそうになるくらいは声を掛けられてる。あれ?もしかして…ねーよ。
「ど、どうかしたか?」
「どうして、木箱から出てきたの?」
やっぱりそれを聞いてくるか…。
「厄介なのに追いかけられてな、隠れてたんだ」
「大変、だね」
「そうだな…」
「……」
沈黙!それはまるで潜ったプールの中の様な静けさ。ホント、何でこう俺にコミュ力が無いのだろうか…。
「それじゃあ…」
話す事ももう無いだろうし振り返り行こうとすると動きを止められる。袖を掴まれたからだ。
「おお!」
「意外と大胆ね」
「誰なんですか!?あのヒューマン!」
「あの時酒場にいた…」
おいそこ、隠れてないでどうにかしてくれ。
「何ぃ、何か用なの?」
「……あの、償いがしたくて」
「?」
「ベートさんのせいで気を悪くしちゃって、あの時ちゃんとやめてって言えたら…」
「なんだ、そんな事かよ…」
「?」
「お陰様で少なくともクラネルは高みを目指すようになった。俺も少しは前に進めてるのかもしれない…」
「でも、私は…」
「女の子が償い償い言うもんじゃない」
「それは、どうして?」
そこ聞いちゃうか〜、いや俺も俺で軽率だったな…。反省反省。
「色々あるんだよ、色々…。あぁ、そうだどうしても償いたいならクラネルに特訓でもつけてやってくれないか?あいつ、アンタに憧れてんだ。1週間でいい。強くしてやってくれ」
「うん、わかった…」
「今度こそそれじゃあな」
少し小走りで目的の場所に向かう。ずっと気になってた、神様もクラネルもいない今なら確認できるだろう。増えてきた人混みを掻き分けながら進む。路地を曲がり進んではまた曲がって行く。
「ここがあの男のハウスね…」
独り言である。気にするな。目の前に鎮座するのはみすぼらしい教会とその周りに点々と存在する墓、俗に言う共同墓地というやつだろう。命尽きた冒険者達が弔われてる場所。
緊張もあり暫く墓を見て回る。色々な名前が掘られている墓石も様々な形をしている。
「ん?」
奥の方にある墓を見てみると
EVA
と掘られた墓がある。しかも逆さの五芒星に掘ってある。
悪魔崇拝
忘れもしない中学2年の闇ともいえる時期によくネットで調べまくったから印象に残っている。神が目視できるこのオラリオになぜ悪魔崇拝する人間がいるんだ?
神を嫌っていた?
神の支配するオラリオが嫌だから?
人間が嫌いだから?
悪側の人間だから?
そして何より、なんでこの名前に
「よぉ、こんな所で何してんだ?」
夕焼けをバックに現れたのは目当ての人物、アラル神父だ。
「少し、神父に用があって…」
「お?なんだなんだ、懺悔か?恥ずかしいあの事とか喋っちゃう?」
「いや、別にそういう訳じゃないんだが…」
「じゃあどうしたんだ?」
「この墓の人は?なんで悪魔崇拝なんだ?」
「なんだ、その事ね。その墓に中身は無くてな、本人の意思で遺品が中にあるだけなんだよ。それに、紋章に関しても本人の意思で掘ったんだ」
「神父としてはどうなんだよ。教会側の人間が悪魔崇拝する奴なんか弔って。嫌じゃないのか?」
「まさか、神なんて街を歩くだけで会えるっつうの!こちとら商売あがったりだね!それに、それ位の我儘聞けなかったら神父やってらんねぇよ」
「この神父大丈夫なのかよ…」
「まぁ、まだ話は終わりじゃないだろ?来いよ、案内したる」
「知らない人にホイホイ着いてっちゃいけないってかみさまがぁ〜…」
「パフェ食うか?」
「いただこう!」
そこ、チョロいとか思わない事、いいね?
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ガキン!ハンマーを振り下ろす。魂を込めて。
アイツは何でも使える…
ガキン!
触れた物は大抵熟年のプロのように…
ガキン!
何ならぶっ壊す勢いで…
ガキン!
何度俺の傑作を壊したことか…
ガキン!!
でも銃だけは壊さなかった…
ガキン!
毎日一緒にメンテナンスしてたなぁ…
ガキン…
また作ってやろう…
ガキン!
今度はお前と一緒にいられるように…
ガキン!!
あとナイトメアも改良しよう…
なぁ…聞こえてるか?
俺はお前と歩きたかった…一緒に…。
もう無理そうだから…この子達に全てを捧げる。ゴメンよ、ゴメンよ、スパーダ…。
アンタを戻す為に鎧を作らされた、どうかどうか、無事でいてくれ。
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「ぶぁっくしょい!!」
「おっさんかよ…」
「うるせー、まだ花も潤う17だ」
軽口を叩きながら教会の中をキョロキョロと見回す客人。フフフ…立派だろ?
バキッ…
「天井少し脆くなったかな…」
ローンまだ残ってんのにな…。
「まぁ、適当に座ってくれや」
そう言われた客人、ハチマン・ヒキガヤはそこらに転がってる椅子を足で上にやると空中でクルクルと回った椅子は綺麗に地面に着地しまるでそうなる事を知ってたかのようにノールックで座る。一々スタイリッシュだな。
「それで?要件は?」
「アンタ、3日前の夜あの冒険者を殺した奴か?」
「ほう、その根拠は?」
「強いて言うなら、臭いだ」
「マジ?俺そんな臭う?加齢臭?」
「そんなんじゃない、何か、初めて会った時から独特な匂いがしたから覚えてただけだ」
ふむ、覚醒してなくても嗅覚は顕在か…。
「それで?俺が仮にそうだと言ったら、どうする?」
顎を触り考える仕草をするヒューマン。さぁ、どんな答えを出す?
「別に、どうこうしようと思ってる訳じゃないが、俺に戦い方を教えてくれ、もっと…もっと力がいる。誰にも負けない力が」
そう来たか…。
「お前のバトルスタイルは大体把握してる。戦い方は自分の発想でどうにかしろ。問題は体の方だ。軟弱な体じゃどんな強い技でも威力なんてクソザコナメクジだ。だから俺にできるのは完璧に近い体と、五感を成長させてやる事だ。最も効果的にな…」
「おぉ…どうやって?」
「ステータスを授かってる冒険者はひたすら努力をすればそれがそのまま数字に表れる。憎い程な…。という訳だから死ぬ程特訓してもらう!」
「OK、了解した」
「お?嫌がらないのか?」
「それが強さに直結するならなんだってやる…」
「ならば明日の朝2時にオラリオ東関所前に来い!」
「分かった、ありがとうアラル神父」
「おおっと、そいつは違うな」
「ん?」
明かそう、コイツなら大丈夫だろう。
「アラルはオラリオで通してる偽名、俺の本当の名は…」
「アラストル…、我が名はアラストル!2人きりの時はそう呼ぶがいい!」
本来の姿を現し翼を大きく広げ告げる。
懐かしいなぁ…。
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episode of Alastor
そこは魔界、闇が支配した世界。俺達悪魔はそこで自由に暮らしたり魔帝に尽くす事で豊かな暮らしを勝ち取ったりしていた。まぁ、俺もその内の1人だ。誰だって豊かな暮らしは欲しい。美味い人肉は食いたいし血も啜りたい。そんな俺の悩みの種は今日も洞穴の中でなんかやってる。そいつは馬鹿みたいに強い癖に更に上を目指そうとしない奴で、兎に角いけ好かない奴だった。人間の文化に興味を持ち、偶に人間界からガラクタを持ってきては洞穴に持ち込みあちこちを弄り回したりしてる。俺は偶然にその場面を見てからちょくちょくちょっかいをかけに行ってる。
「これはこれは、魔帝の右腕のスパーダさん、何をしてらっしゃって?」
しゃがみこみ持ってきたそれを観察してる悪魔に声を掛ける。
「アラストルか…。人間界から面白い物を見つけた」
「ほう?この前の【火薬】とかいう奴じゃだろうな?」
「安心しろ、人間が娯楽の為に使ってる物だ。ピアノというらしい」
「ピアノ…ねぇ。フィニアスには見せたのか?」
「あぁ、声は掛けた」
「お前そんなに喋れるのなら会議とかでも喋ったらどうなんだ?」
「黙ってたら終わるような会議に興味はない」
どうやら寡黙なスパーダさんは極度のめんどくさがり屋だったようだ。
「皆の衆、待たせたな」
「噂をすれば…」
やって来たのは顔の約4分の1が魔具の男、魔界で一二をを争う程頭の良い悪魔、名をフィニアスと言う。因みに張り合ってるのはスパーダだ。
「フィニアス、何か分かったか?」
「勿論だ友よ。それは人間の作り出した【楽譜】とやらに記されてる【音符】を間違えず且つ決められたスピードで丁寧にそこの音の鳴る【鍵盤】を叩く事によって美しい【音楽】を作り出せるらしい」
「その【楽譜】のサンプルは?」
「ここに」
服の中に隠してあった紙っぺらをフィニアスが取り出すとスパーダはそれを受け取り適当そこらに転がってる椅子を足で上にやると空中でクルクルと回った椅子は綺麗に地面に着地しまるでそうなる事を知ってたかのようにノールックで座る。一々スタイリッシュだな。
暫く楽譜を見たり鍵盤を叩き音を鳴らしたりしながら試行錯誤するスパーダ。
「分からん、後でプルソンに聞く」
忘れてた、あいつ飽き性なんだった。
「そういえばスパーダ、最近アルゴサクスが何かしようとしてると小耳に挟んだ」
「チッ、余計な事をしやがって、また面倒な仕事が増えるな」
うわぁ、マジで嫌そう。
「どうすんだ?」
「泣きべそかかせてやる」
「悪魔が泣くのかね?」
「さぁ?」
泣いた悪魔なんて聞いたこたァねぇな。
「じゃあ行ってくる」
いつもの禍々しい剣を出現させ翼を大きくはためかせながら飛び去る。その姿はあっという間に見えなくなった。
「で?なんて【音楽】なんだよ」
「カエルの歌というらしい」
「カエルだぁ?それじゃあバエル共の歌ってことか?」
「それはないないだろう…」
ため息を吐くフィニアス。
「なぁ、アラストル」
「なんだよ」
「スパーダの事についてなんだが…」
「あぁ」
「あいつはムンドゥスを倒せると思うか?」
「何?あいつ叛逆でもすんの?」
「そうではないが、あいつは
「多分、誰にも負けないだろうな。それこそ天界のカス共をも楽ーに殺れるだろう」
「そうなったらもう魔界の時代だな」
「そうはならんだろ」
「何故だ?」
「あいつの性格を考えたからだ」
「それもそうだな」
そう、めんどくさがり屋のスパーダは圧政者の敵ではなく弱者の友であり続けた。きっとこれからもそうなんだ。
如何でしたか?
一応ここでは何も言いません。
質問がある方はドンと来てくだちい。