ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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リアルが忙しくて投稿できませんでした。すみません。


#12 埃かぶりの少女(シンデレラ)

 

 

「…っ」

 

「あ、起きた?」

 

おぶられてるであろう振動で目を覚ます。聞き慣れた声、十中八九クラネルだろう。ったく、また変な夢を見た。

 

「クラネルか?」

 

「うん…」

 

後ろ姿しか見えないがどうやら元気が無さそうだ。

 

「何かあったのか?」

 

「ハチマン…」

 

「どうした?」

 

「気絶してたんだけどその前の事、覚えてる?」

 

「魔法で新技の実験してたら魔力切れで倒れた」

 

「そうだったんだ。僕もね?魔法が発現したんだ」

 

「マジか!良かったな…。俺みたいにぶっ倒れるなよ?」

 

「うん…僕もはしゃいでダンジョンに潜って魔法を撃ってたんだ」

 

「おう」

 

「そしたらね?」

 

少し涙声になるクラネル。

 

「勿体ぶるなよ」

 

「やっぱりいいや…」

 

気になる、俺が気絶してた時何があったのか。しかし今のクラネルの精神状態じゃ無理だろう。

 

「そっか…」

 

慰められずそれしか言えない自分が悔しい。

クラネルの背中におぶられながら夜空を見上げる。こんな時も夜空は綺麗なのが恨めしい。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ホームに帰るとクラネルの魔法が発現した理由が判明した。

 

魔導書(グリモア)?」

 

「な、なんですか、ソレ…?」

 

「簡単に言っちゃうと、()()()()()()()()…」

 

詳しく聞けばスキルに『神秘』と『魔道』という希少なスキルを発現させた人にしか作れないものでバチくそ高価なのが瞬時に理解できた。

 

「いいかクラネル?お前は本の持ち主に()()出会った。そして()()()()()()その持ち主に直接返した。だから本は手元にない、間違っても使用済みの魔導書(グリモア)なんて()()()()なかった…そういうことにするんだ」

 

「ハチマン!?」

 

「よく言った!ハチマン君!」

 

「ダメですよ!神様!」

 

ちっ、クラネルは根っからの善人なのを忘れてた。

 

「だからといってな、正直に言ったらン千万の借金地獄だぞ。返せる?」

 

「うぐっ…と、とにかくっ、この本を貸してくれちゃった人に、僕、事情を話してきます!」

 

「ベル君、止せっ、君は潔癖すぎるっ!世界は神よりも気まぐれなんだぞ!」

 

「隠したってバレるに決まってるじゃないですか!」

 

それもそうだ。いくら嘘をついたって酒場に持ち主が来たらアウト。こうなったら2人で『DO☆GE☆ZA☆』に賭けるしかない。俺の土下座は天下一品だぜ?

 

クラネルと俺は神様の静止を振り切ってホームを出た。その際にクラネルがドアを蹴り破った。アレも直さなきゃな…。

 

ー【豊饒の女主人】ー

 

「…それは、大変なことをしてしまいましたね、ベルさん」

 

「ちょっとシルさーーんッ!?何でさも他人事みたいに言ってるんですか!?」

 

トレーで顔の下半分を隠し上目遣いでクラネルを見つめる。

 

「やっぱり、ダメですか?」

 

「すっごく可愛いですけどダメッ!」

 

けっ!!イライラして来た

 

「鬱陶しいよ、坊主。人様の店で、朝っぱらから」

 

よっ!待ってました!立てば振動座っても振動、歩く姿は金剛夜叉明王!【豊饒の女主人】の店主!ミア・グランドだ〜ッ!

 

そんな巨神ゲフンゲフン、ミアさんはクラネルから魔導書をひょいと取り上げると中身をパラパラと見るとふん、と息をついた。

 

「確かに魔導書だねぇ……でもま、読んじまったもんは仕方ない。坊主、気にするのはよしな」

 

「ええ!?で、でもっ…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()とばかりに店へ置いてったヤツが悪い。坊主が読まなくたって貴重な魔導書を見つけたら、自分のものだと嘘ついてまでそこら辺の冒険者が目を通していたよ。コレはそういうモンさ。手放しちまった時点で持ち主も覚悟はしているさ。坊主だって金の詰まった財布を無くしたら、そっくりそのまま返ってくるなんて思わないだろう?」

 

「それは…」

 

「男だったらグズグズ言ってんじゃないよ!」

 

クラネルの意見はトラップカード《怒声》によって掻き消された。おー怖。

 

ー【広場】ー

 

店を出た俺はダンジョンに行く為に装備品を取りに1人で戻ったクラネルを待つために俺はいつもアーデと待ち合わせに使ってる広場でベンチに座っていた。

 

筋肉隆々とした冒険者ややけに露出の高い女冒険者等、様々な冒険者を観察しているととある光景が目に入った。アーデと冒険者らしき男達がいた。その雰囲気は決していいものとは言えなかった。

 

ーーもしかしたらソーマファミリアの構成員か?

 

確かアーデはソーマファミリアに所属してたな。ソーマファミリアといえば金にがめつい。よく換金所で揉め事を起こしてたから記憶に残ってる。ちょっと前に聞いたアーデの話から推測すると、主神のソーマの作る『神酒』が欲しいが、より高額の金を納めないといけない為必死に金を集めてる。だから立場の弱いアーデから金をふんだくってるのだろう。

 

あぁ、なんて…

 

「醜い…」

 

ジワ…

 

俺は立ち上がりフォースエッジを出しながら冒険者達に近付こうとするが…

 

「おい」

 

肩を掴まれてそれを遮られる。振り返ると体格のいい黒髪のヒューマンがいた。

 

(あ、この人…)

 

「やっぱりあの時のガキか…まぁいい、聞くぜ。お前、あのチビとつるんでるのか?」

 

この声と口調、間違いない。あの時のロリコンだ…。

 

「おい、さっさと答えやがれ。お前、あのサポーターを雇ってんのか?」

 

「だったらどうした、あの時のパルゥムとは関係ないんじゃないのか?」

 

「バァカ…と言ってやりてえが、思うのはてめえの勝手だな。せいぜい間抜けを演じてろ」

 

「それよりお前、俺に協力しろ。……あのチビをはめるんだ」

 

「は?」

 

「タダとは言わねぇよ。報酬は払ってやるしアレから金を巻き上げたら分け前もくれてやる」

 

本気で言ってるようだ。いよいよ救いようがない…。そのまま話を聞いてれば勝手に喋ってくれそうだ。

 

「続けろ」

 

「お?乗り気か?よし、お前らはいつもを装ってあのチビとダンジョンにもぐればいい。後は適当に別れてアイツを孤立させろ。後は俺がやる。どうだ?簡単だろ?」

 

嫌な笑い方。今まで何度も体験してきた感覚だ。こういう手の質問の答えは昔から相場が決まっている。

 

「…だが断るッ!」

 

「何ィッ!?」

 

「この俺の最も好きな事の一つは…強さを鼻にかけて弱き者から奪ってく奴を貶める事だ!

 

「クソガキがぁ……!」

 

「ガキはてめぇらだろ…」

 

互いに睨み合う。怒気に怯えるように木の枝葉がざわめく。

 

暫くすると男は盛大な舌打ちをして踵を返す。その背中から俺は目線を離さなかった。

 

「…ハチマン?」 「…ハチマン様?」

 

振り返るといつものと化した面子、アーデとクラネルがいた。

 

「どうかしたの?怖い顔してたけど」

 

心配そうな2人を見る。あの冒険者の言う事はきっと嘘ではない。手を組もうってのに嘘を教えるなぞトラブルを自分から撒き散らすのと同意義。

 

ならばきっとアーデは裏切っているのだろう。考えてみればそうだ。アーデはクラネルのナイフに興味を持っていた。話を聞けば俺が【ヘファイストス・ファミリア】の連中に拉致された日にナイフを失くしたらしい。普通失くすか?神様から貰った大切な物を。きっと盗まれたのかもしれない。いや、若しくはただダンジョンで落としたのかもしれない。

 

あぁ…疑い出せばキリがない。クラネルならきっとそれでもと言い信じるだろう。

 

だったらやる事は一つだけ…ダンジョンでアーデを孤立させない。

 

「気に食わねぇ冒険者に絡まれただけだ。あの時のパルゥムを追ってた奴だ」

 

ピクリとアーデが反応するのを見逃さなかった。

 

「えぇっ!?それで、どうしたの?」

 

「ん?そのパルゥムを探してたから適当にあしらっただけだ」

 

「そうだったんだ…」

 

「それよか、さっさとダンジョン行くぞ」

 

「うん」「はい!」

 

返事するクラネルとアーデ。アーデよ、お前は相手が悪かったんだ。俺を相手に仮面を被るなんて2万年早いんだぜ。そんな脆いもの、すぐ分かる。

 

「あれ?ハチマン、また銀色増えた?」

 

「マジか…」

 

「…もう、潮時かぁ」

 

本当にそう思ってるのか?ーなぁ、アーデ。

 

ー【ダンジョン】ー

 

「今日10階層まで行ってみませんか?」

 

曰くステイタスがA〜Bがちらほら出てきた為試しに行ってみないか、というらしい。よりにもよって今日なのか…。

 

「……」

 

俺はあくまで悩んでいる雰囲気は出してるがクラネルをチラと見ると彼もまた悩んでる。そう、10階層には出ると聞く、()()()()()()のようなモンスターが。

 

「…実は、リリは近日中に、大金を用意しなければいけないのです」

 

「っ!もしかして、それって…」

 

「事情は言えません。ただ、リリの【ファミリア】に関係することなので…」

 

チッ、悟られたか!リリルカ・アーデ、中々心理戦が得意と見た。向こうには例え嘘だろうとクラネルを納得させる()()がある。対して俺はそれをさせない程強力な言い分がない!詰みか…いや違う、考えろ、考えるんだ。アーデをクズい冒険者達とエンカウントさせず、尚且つ奴らと揉め事にならないですむ方法を。この程度の修羅場、あくる程潜り抜けてるだろ!

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

━━━━━━━━━━

 

「ハチマンは、どうする?」

 

隣で考えてる仲間に話しかける。こういう時に彼の判断は頼りになる。

 

「ん…まぁ、確かに俺達も強くなったから、行くか」

 

「え…」

 

「どうかしたか?」

 

「いや、ハチマン結構悩んでたみたいだから行きたくないのかなーって思って…」

 

「その気持ちもある、だがアーデの事もあるからな、キツくなる分俺が動けばいい話だし」

 

「そうだね、じゃあ行こう!」

 

「あー、その前にアーデ、マジックポーション持ってないか?俺のやつ切らしちまって…」

 

「まったく、ハチマン様は準備というか危機感が足りないんじゃないんですか?」

 

文句を言われつつリリのコートから取り出されたポーションを受け取るハチマン。

 

「ちゃんと考えてるぞ、ちゃんとな」

 

鼻をつまみながらポーションを一気に飲み干すハチマン。やっぱり味は嫌いなんだ。

 

「それじゃあリリ、ナビ宜しくね」

 

「はい!お任せください!」

 

さてと、万が一の保険は掛けた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

━━━━━━━━━━━

 

「霧が深いなぁ」

 

「……」

 

「モンスター、多いなぁ…」

 

「…………」

 

「オーク、キモイなぁ……」

 

「………………」

 

「アーデに見捨てられたなぁ………」

 

「ハチマン、ホントごめん…」

 

案の定俺達はアーデに大量のモンスターを押し付けられた。当の本人は一足先に退散したが、孤立させてしまった。一応去りゆくアーデには警告したが…大丈夫だろうか。

 

(アーデ!あのクソッタレ共が徘徊してる!気を付けろ!)

 

それにしてもホントにキリがない。倒せば次から次へとやって来る。これがモテ期?ねーよ。

 

「クラネル!少し時間を稼いでくれ!」

 

「分かった!」

 

フォースエッジを地面に突き刺し目を瞑る。

 

アーデからポーションを貰った際に自分の魔力を彼女の袖に付着させた。地面に突き刺したフォースエッジの剣先に魔力を集中させるとそれに呼応するかのように俺のアホ毛がピクピクと動きアーデにマークした魔力の方に傾く。原理的にソナー的な奴だと思って欲しい。

 

「クラネル!アーデはあっちだ!ここは俺が引き受ける!お前は行け!」

 

「ハチマン!で、でも!」

 

「お前が雇ったんだ!お前が行け!俺も後で行く!……大丈夫だ、死にやしねぇよ」

 

苦悶の表情を浮かべるクラネルはモンスターを無視して走り去ってく。さてと、ここは俺のステージだ。

 

「…トリガー」

 

身体中に魔力を行き届かせ全体を強化する。こっからは時間と勝負だ。

 

「こいよ、ブサイク共」

 

『ぶぉぉぉぉ!!!』

 

《振り下ろされた《ダンジョン製》》の武器を強化された拳で粉砕する。驚いてる隙にフォースエッジで首をはね飛ばしその亡骸を魔腕でシルバーバックに投げつけ動きを封じよろめいている内に顔を綺麗に4等分に切り裂く、こういう時には振りやすい日本刀がいいが、持ち手のない今はないものねだりなんてできない。

死んだシルバーバックの上に立っているとそこを中心にモンスターに囲まれる。しかし俺ばかり見てるモンスターは気付かない、俺が罠だということを…。

 

「ヴァカメ!」

 

上空に展開した数多の幻影剣、それにより寄ってきたモンスターは全部ハリネズミになり消えてく。知ってるかい?ハリネズミは英語でヘッジホッグっていうんだぜ。

 

「やべぇな、意識が…」

 

フォースエッジを杖代わりにしてなんとか立っていられる状態。もっと魔力効率を上げなきゃな。工夫と強化を両立させなくては…。

 

コートに手を入れてマジックポーションを取り出し飲み干す。え?なんで持ってるのかって?まぁ、リリルカにマークを付ける為の嘘というかなんというか…。まぁ、騙したのはお互い様だしなしって事だな。そろそろ行くか…。

 

パキパキ…

 

ちっ、またモンスターか…。しかもご丁寧に道を塞いでいやがる。俺なんか恨まれる事した?

 

しかしそんなモンスター達は()に蹴散らされた。その風の発生源はこちらに向かってくる。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

何度言われりゃいいんだ、そのセリフ。

 

「平気です、ありがとうございます。この恩はきっとどこかで返させてもらいます。それじゃ、急いでるんで…」

 

風の主アイズ・ヴァレンシュタインに背を向けて走る。アホ毛はまだ機能する。あとはその方向に向かって走るだけ。

 

 

3階層上の7階層の小さなルームでリリがベルに抱きついて泣いていた。周りには大量のキラーアントの死骸。多分モンスターに襲われてる所をクラネルに助けて貰ったのだろう。リリルカが泣いている。その姿には仮面なぞ着いていない、クラネルはそれを受け止め優しく抱きしめている。俺はそれを陰で見守っている。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

ー【街路】ー

 

あれからリリルカと別れた俺達はホームに足を向けていた。クラネルは浮かない顔をしている。

 

「そんなに気がかりなのか?」

 

「うん…」

 

「あんな事があったんだ、接しにくくなるだろうな」

 

「ハチマン、どうすればいいのかな…」

 

「どうって?」

 

「僕はリリとハチマンとダンジョンに行きたい。でも、どう声を掛けたらいいのか…」

 

「なんだ、そんな事か…簡単だ、今から教える言葉復唱すればいい。1回しか言わないからよく聞けよ…………………」

 

「そ、それで、いいの?」

 

「絶対大丈夫」

 

「ありがとう!ハチマン!」

 

そして2日後

 

「サポーターさん、サポーターさん,冒険者を探してませんか?」

 

「えっ?」

 

俯いてたリリルカにクラネルが話しかける。

 

「混乱してるのか?でも今の状況は簡単だ。サポーターさんの力を借りたいアホで三分の一人前の冒険者が、自分を売り込んでるんだ」

 

続いて俺が言う。

 

「僕達と一緒に、ダンジョンへもぐってくれないかな?」

 

リリルカに向けて右手を出すクラネル。

 

「──はいっ、リリを連れていってください!」

 

その手を取るリリルカ。

 

死に憧れていたリリルカ・アーデ、その人生はリセットできなくとも人間関係はリセットできた。しかもより良い方向に。

 

なんだろう、この感情。今まで味わったことの無い感じだ。

 

(あぁ、そういう事か…)

 

俺の最も嫌いな感情を抱いてしまった。そんな自分がリセットしたい。

 




如何でしたか、ハチマンの抱いた感情とは?一体なんでしょう。

あっ、投票してくれた方、ありがとうございます。皆さんアンチ好きなんですね。

アンチの展開に関しては結構後になるので首を長くしてお待ちください。
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