ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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2章 探求編
♯16 女神とハチマン


 

 

ー【ギルド】ー

 

今朝のギルドはいつもよりがやがやしている。そんな人混みをかき分けて目当ての人の元へ行く俺たち。

 

「おはようございます、エイナさん!」

 

「ども」

 

機嫌のいいベル、そんな様子を感じ取ったチュールさんは「何かいいことでもあったの?」と問う。…さてと、準備するか。

 

「僕達、とうとうLv2になったんです!」

 

バサバサッと書類の山が崩れるが関係ない。俺はひたすらそのタイミングを伺う。

 

「Lv2?」

 

「はい!」

 

「ベル君冒険者になったのいつ?」

 

「1ヶ月半前です!」

 

「ハチマン君は?」

 

「1ヶ月前位ですかね…」

 

屈伸もして伸脚も済ませたと…。

 

同僚と思われる人は石と化し、チュールさんはフルフルと震えてる。そして、それが爆発した。

 

「1ヶ月そこらでムグゥ!」

 

「エイナ!?」

 

ハンカチを持たせた魔腕で口を軽く塞ぐ。

 

「チュールさん、シー」

 

人差し指を口に当ててジェスチャーを取る。それを理解したのかチュールさんもウンウンと頷く。聞き分けのいいチュールさんには悪いけどあまりギルドは信用してないんですよね。だってオラリオの中枢だもん。

 

ここはオラリオ、何が起こるか分からない街、それ故にこれっぽっちも信用できない。

 

話は戻るがLvの上昇には『偉業』──格上の相手を打破するなどして、より上位の【経験値(エクセリア)】を得るのが不可欠だ。

 

その後はチュールさんに言われるがままに活動報告をした後、こちらの要件に入った。

 

「発展アビリティのことで…」

 

「あぁ、そっか、Lv2になったんだもんね」

 

『発展アビリティ』は既存の『基本アビリティ』に加えて発現する能力だ。発現するタイミングは【ランクアップ】時。冒険者になってどのような行動をしたかによってアビリティは異なる。候補としてアビリティは複数出てきてそれを選択することで初めて発現する。

 

「選択可能なアビリティはいくつ?」

 

「僕もハチマンも3つです」

 

ベルの発展アビリティは毒などを防ぐ『耐異常』、次に1度倒したら次は能力が強化される『狩人』、そして3つ目が『幸運』。

 

「ハチマン君のは?」

 

「俺は…『狩人』と『耐異常』と『ソードマスター』です」

 

「うーん、『ソードマスター』と『幸運』…神ヘスティアは何も言ってなかった?」

 

「勘って言ってましたけど…『加護』に近いかもしれないって…『ソードマスター』は強化系だろうとも…」

 

「『幸運』はドロップアイテムがよく出るとかなのかな。じゃあ『ソードマスター』はやっぱり剣系の攻撃が強化されるとかかなー」

 

「「なるほど」」

 

そんなこんなで話し合ってるうちにベルは『幸運』俺は『ソードマスター』にすることにした。だってね、ソードマスターとかカッコイイもん。そうじゃない?

 

「ベル、先に戻っといてくれないか?少しチュールさんと話があるんだ」

 

「いや、待ってるよ」

 

チュールさんに案内されて個別ブースに入る。

 

「それで、話って何かな」

 

「俺のレベルアップの記録を誤魔化してくれませんか?」

 

チュールさんの目が一瞬大きく開かれる。

 

「その理由を聞いても?」

 

「俺のやってきた事は危険だから…です。下手に真似されて死なれたらそれこそギルドの損失でしょう?」

 

「優しいね…本音は?」

 

見透かされてたか…

 

「俺だけの道だから、誰にも辿って欲しくないんです。それに、こんな速くレベルアップしたらそれこそ先輩達(笑)に目を付けられちゃうし」

 

「つまり、目立ちたくないってこと?」

 

「それもあるし、相手にしたくないんですよ。あんな立ち止まってる奴らなんて…」

 

「立ち止まってる…?」

 

「嫉妬ばかりする様な阿呆は邪魔でしかないですからね」

 

「ちょちょっ言い方…」

 

「すみません、気をつけます。まぁ、この件はよろしくお願いします。適当に2年とかかかった事にしてください」

 

手をヒラヒラとしてチュールさんに背を向ける。

 

「あ…」

 

「? どうかしましたか?」

 

「手袋、まだ着けていてくれたんだ」

 

その視線は俺の修繕されたばかりの手袋に向けられてた。

 

「別に、使えるから使ってるだけですよ」

 

「ふふっ、素直じゃないなぁ〜」

 

チュールさんの微笑みの意味はホームに戻ってもよく分からなかった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「じゃあ早速やろうか。君達のランクアップを」

 

そう言い、いつものベッドで【ステイタス】の更新を始める。最初はベル君で次はハチマン君だ。

 

「とうとうベル君もLv2かぁ…なぁんて普通なら言うんだろうけど、君の場合、感慨を感じる暇もなかったね…」

 

「そ、そうですか?」

 

「ボクの【ファミリア】に入ってすぐ、君がゴブリンに勝てたって大はしゃぎで帰ってきたことを、昨日のことのように思い出せるよ」

 

そんなボクの話を「え、えぇ」とか「は、はい」とか、おぼつかない返事をするけど今は許そう。彼も感じるものがあるのだろう。

 

さてさて〜、愛しのベル君はどんな風に成長してるんだろうね!

 

ベル・クラネル

 

Lv2

 

力:I 0 耐久:I 0 器用:I 0 敏捷:I 0 魔力:I 0

幸運:I

 

《魔法》【ファイアボルト】・速攻魔法

 

《スキル》

【英雄願望】・能動的行動に対するチャージ実行権

 

むむむ、新しいスキルが発動してるじゃないか!なるほどなるほどー、ベル君は英雄になりたいのか〜。

 

ステイタス発表はハチマン君が終わってからだから発表がもどかしいなあ〜。

 

「それじゃあハチマン君も始めるよ」

 

「うす」

 

彼の背中に血を垂らしステイタスを確認する。ベル君はソファで読書をしてる。貰った本が魔導書だった為気の毒に思ったハチマン君が買ってきたのだ。…君は優しいね。

 

ハチマン・ヒキガヤ

 

Lv2

 

力:I 0 耐久:I 0 器用:I 0 敏捷:I 0 魔力:I 0

ソードマスター:I

 

《魔法》【魔力操作】・不定形魔法・不詠唱魔法

 

《スキル》

悪魔の魂(Devils Soul)

・敵対する者が魔に近しい者の場合、その魂は元ある形へ戻っていく。

・敵対する者が人の誇りを失った者ならば、この身は更なる境地へ向かっていく。

 

━━━━━諦めるな━━━━━

 

【スタイリッシュライズ】

・早熟する。

・敵に攻撃を命中させる程成長する。

・敵の強さにより効果向上。

・戦意を喪失した場合ステータス激減。

 

 

━━━━━本物を…━━━━━

 

あぁ…そうだったのか…。

 

今まで目を向けてなかった事がこんな事(ステイタス更新)で気付いてしまう事に自分が嫌になる。彼だって前に進むために頑張ってたんだ。思い返せばベル君がヴァレンシュタイン君に鍛えてもらう前から早朝にホームを出ていた。それで人知れず努力していたんだね。ゴメンよ…君の成長がベル君を抜かしてしまいボクはちょっぴりヤキモチを妬いて君のステイタス更新を疎かにしてしまったんだ。多分君は気付いてるんだろう。ボクとベル君とのデートの時だって、サポーター君の件でカフェに集合した時だって、君はいつもボクとベル君を一緒にいるよう仕向けたよね。ありがとう、そしてごめんなさい。

 

ボクはダメな主神だ。これからはちゃんと目を向けないと。

 

ステイタスとは子供達の魂を数値化したものだ。ベル君のヴァレンシュタイン君を慕う気持ちはスキル《憧憬一途》に現れた。彼のステイタス欄に刻まれたあの文字は多分彼が魂に刻んだ《思い》なのだろう。諦めず、誇れを胸に抱く為に戦ってるのだろう。スキルになるのも億劫な程の《想い》が。

 

なんで今になって…

 

そう彼の詳細不明だったスキル《悪魔の魂(Devils Soul)》の詳細が顕になった。魔に近しい者?悪魔の事か?でも彼等は魔剣士スパーダの手により封印されたハズ…。まさかダンジョンの地下深くから登ってきたっていうのか?有り得ない。でも実現している。ならなぜ?神の手引き?それも有り得ない。神達は思う事違えどスパーダ関連では絶対に意見が一致する。『絶対に彼を怒らせるな』、そんな教訓が染み付く程彼はボクたち神に恐怖を植え付けた。二度とあんな事が起こらないよう間違ってもこんな事するまい。

 

「終わりましたか?」

 

ハチマン君の声に思考を遮断される。

 

「あ、あぁうん!終わったよ!紙に写すからすこーしだけ待っててね!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「はい!これが君達の物語の新しい1ページだよ」

 

神様から渡されたステイタスを一通り見終えると時間も夜ということもあって寝ることになった。いつも通り、ベルと神様はベッド、俺はソファで。

 

 

「眠れねぇ…」

 

皆が寝たとしても寝れない俺はホームを出て地上に上がる。

 

「冷たいな…」

 

コートを着てても冷風は肌を刺す。

 

「相変わらず入り組んでるなぁ…」

 

街を歩いて30分、出た感想がこれである。迷宮都市なんて呼ばれてるんだよな、そりゃ迷いそうになるな。

 

「〜〜♪〜〜〜〜♪♪」

 

人通りも少ないことからつい鼻歌を歌ってしまう。まぁ、たまにはこんな事しても許されるだろう。さぁみんなも一緒に!ひーめひめ!

 

「素敵な歌声ね」

 

!!

 

ーHQ!HQ!!コチラハチマン、歌声を聞かれた!繰り返す!歌声を聞かれた!相手はローブを着た女神!

 

ーネガティブ、応援は出せない。独りで対処せよ。

 

ーチィっ!!

 

「ど、どうも(超裏声)」

 

「あら、急に声が変わったわね」

 

「急に変声期を迎えまして(超裏声)」

 

「そう」

 

「それじゃああっしは失礼いたしやす(超裏声)」

 

「もう行っちゃうの?」

 

寂しそうな声が後ろから聞こえる。だが一級女鑑定士の俺からすればこれはアレだ。男慣れした女の使うセリフランキング第2位。因みに1位は『なんか暑くなっちゃった』だ。

 

「まぁ…通りすがりの女神と語り合う事なんて1つもないですし」

 

「覚えててくれたのかしら?嬉しいわ」

 

「覚えてたっていうか脳裏にこびりついてたんすよね。台所のカビみたいに」

 

「酷い言いようね」

 

フード越しだがムッとした声色の女神。

 

「立ち話もなんだし、歩きながら話さないかしら?」

 

「分かりました…」

 

「そういえばレベルアップしたのね、おめでとう」

 

「ありがとうございます、どうして知ってるんですか?」

 

「見た目で分かるわよ。レベルアップは所謂私たち()に近付く事なのだから」

 

「へー」

 

神に近付くのがレベルアップなのか、初めて知った。

 

「そうね、何か贈り物がしたいわ。2つ名を考えているのだけれど、どんなのがいいかしら?」

 

「イタイのはやめて欲しいです…」

 

ホント、ブラックハザードとかオーマなんて呼ばれたら最悪自殺するよ?

 

「じゃあ『女神の伴侶』なんてどう?」

 

「身を固めるにはまだ早いと…」

 

それに誰の伴侶だよ。

 

「注文が多いのね、山猫かしら?」

 

「じゃあ体中に塩を揉みこんでくれますか?」

 

「貴方のお皿に乗ったら食べてくれるかしら?」

 

「マズけりゃ捨てますよ」

 

「案外鬼畜なのね…でも安心したわ、私、味には自信あるのよ」

 

ローブの上からでも分かるよう胸を寄せてアピールしてくる。淫乱だなぁ…。

 

「いいですか?この街には残念ながら俺より強い人がいるし、誠に遺憾ながらイケメンだっているんですよ。だから、得体の知れないこんな俺よりもそっちに目を向けた方がいいですよ」

 

隣では話さずちゃんと対面し、少ししゃがんで目と目を合わせ肩を掴み本心を喋る。神相手に嘘はつけないのは身をもって知ったからね。

 

「それに、貴方は凄く綺麗なんだから、自s「見つけた…」あ?」

 

いつの間にか露出多めで褐色肌の女達に囲まれる。その数、およそ15人。

 

「知り合いですか?」

 

「知らないわ、あんなの」

 

そう言い髪を弄ってるが、余裕そうだね。

 

「神フレイヤ、女神イシュタルの為に、死んでもらう!」

 

フレイヤと呼ばれた女神にナイフが迫るが魔腕で防ぐ。

 

「あら、守ってくれるのかしら?」

 

「目の前で死なれたら明日気持ちよく起きれないんでね」

 

「なら私を守って頂戴、騎士さん」

 

「小僧、邪魔する気か…」

 

魔力でドーム状の結界を作りお互いに逃げられないようにする。

 

「引けと行っても引かないんだろ?個人的な恨みは無いけど、19/20位はメンタルズタズタにしてやるよ。ダンジョンに潜れなくてストレスも溜まってたんだ。いい声聞かせろよ!」

 

ベオウルフを出しファイテングポーズをとる。本当に、退屈させないな、この街は。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

♪Vergil battle 2

 

「無名の癖に!しゃしゃるな!」

 

女のナイフが向かってくるハチマンの首元に迫るが最低限の動きで躱される。Lv1の相手に避けられる筈がないと高を括っていたアマゾネスはたじろぐ。その隙にハチマンの魔腕が彼女の頭を掴み強引にハチマン側に持ってく。そこにハチマン渾身のストレートが顔に繰り出される。そのまま結界の反対側まで吹き飛んだアマゾネスはピクリとも動かなくなった。

 

「ちくしょう!よくも!!」

 

他のアマゾネスが曲剣を振り回しハチマンに襲いかかるがいつの間にか閻魔刀に持ち替えたハチマンはその鞘で攻撃を弾く。

 

「Too late(遅い)」

 

がら空きの腹に突き出される閻魔刀(鞘付き)。

 

「っ!ゲホッ!ゲホッ!!」

 

1ccも残らず体内の酸素を吐き出さされた女はハチマンの前で激しく噎せる。そのうなじにハチマンの手刀が炸裂しその女は倒れ込む。

 

「なんだよあの強さ…聞いてないぞ!」

 

「お前!一体何者だ!」

 

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。

たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。そう!我こそは!え〜と、トニー・レッドクレイブ!」

 

「トニー・レッドクレイブ?聞いたことあるか?」

 

「いや?」

 

そりゃそうだ。だって速攻で考えた偽名だもん。

 

「後13人、どうする?まだやるか?」

 

「〜〜ッ!数で押せ!相手は独りだッ!」

 

一斉に掛かってくるアマゾネス。モテ期かな?モテ期じゃねーよ。モテ期は来ない(涙)。

 

「13名様ご案内よ、山猫さん♪」

 

後ろで女神フレイヤ(仮定)が煽ててくるが仕方ない、乗ってやるか。

 

「いらっしゃいませーー!!!」

 

ー3分後ー

 

「終わったわね」

 

結界が解けてく中フレイヤの視線の先にはハチマンが背を向けて立っている。足元には大勢のアマゾネスが転がっている。

 

「なんとはなしに倒しちゃったけど、何したんですか?」

 

ジロリとハチマンの視線がフレイヤに刺さる。

 

「嫉妬されただけよ。私は何もしてないわ」

 

「嫉妬で暗殺されかけるって…」

 

「面倒なのよ、女の世界は」

 

髪の毛を弄りながら自身の心情を一言で片付けるフレイヤ。そんなフレイヤにハチマンは心底不思議に思う。

 

【謎】それがハチマンの彼女に対する感想だった。夜道に鼻歌を歌っている男に普通話しかけるか?それに唐突に口説くのはちょっぴりおかしい気もする、と。

 

「フレイヤ様、お怪我はありませんでしたか?」

 

しかしそんな二人の甘い時間(フレイヤ目線)は一人の男によって遮られた。

 

「あら、オッタル…」

 

オッタルと呼ばれた巨漢の男は現場を見て状況を判断する。

 

(恐らく失神しているイシュタル・ファミリアの団員達にフレイヤ様がお気に召しているハチマン・ヒキガヤ…噂にたぐわぬ目、負け続けた者の眼、絶望を知って尚立ち上がる者の眼をしている。)

 

「じゃあ、お迎えも来たようだし、俺はおいとましますよ、と」

 

「フレイヤ様をお守りした事を感謝する」

 

そんなオッタルの言葉を背中に受け振り返りもせず手をヒラヒラとするだけで去ってくハチマン。

 

「またデートを楽しみましょう、ハチマン♡」

 

刹那、ハチマンの背中に視線が刺さる。某青タイツのゲイボルグのように…。言わずもがなオッタルである。

 

(デート…したのか、フレイヤ様と…)

 

オラリオ最強の冒険者、オッタルはつい今日レベルアップしたハチマンに謎の敗北感を味合わされる羽目になった。

 

(考えてあげるわ、貴方にピッタリの二つ名)

 

「ウフフフフ…」

 

ハチマンは後に後悔する事になるだろう。美を司る女神の乙女心を刺激した事を。




ストーリーが進まない…
書きたいことが多すぎる…
一体どうすれば…?
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