「誉れは浜で死にました!」ここでウルっとしちゃったよ。
いつの間にかお気に入り600突破してました!皆さんにありがとうございます!
ー【ヘファイストスの店】ー
「どこかなー」
なんて言ってお目当ての作品を探してるベルを背景に俺は壁に背もたれて店内をくまなく見渡してた。ここで俺は冤罪をかけられたのだ。過ぎた事だし犯人は死んだといえど警戒を解く理由にはならない。
「何か…お探しかな?」
すぐ隣に初老で見てくれでは鍛冶師というより学者、研究者と言われた方が納得のいく格好の男がいた。
ていうかどっから出てきた?店内は見渡せる場所にいたぞ?
「別に…何も…」
「ケケケッ…噂通りの無気力な男だ。こう言えば分かるかな?俺はアラストルと知り合いだ」
ビクッ…
「ケケケケケ…データ通り、分かりやすい男だ」
「てことはアンタも悪魔か…」
「御明答…私の名はマキャヴェリ。魔界では一番のガンスミスだったんだぜ?」
「へー」
マキャヴェリ…どこか心にくる名前だ。
「僕は君のファンでね…レベルアップ記念にお祝いの品を持ってきたんだ」
中々デカめの箱を俺に渡してくる。
「開けてみてくれ、バカなオラリオ人には扱いきれない芸術品だ」
言われた通り箱を開ければ白と黒の大型二丁拳銃が入ってた。サスペンダー型のホルスター付きで。?…胸が高鳴るのはどうして?これって…恋?
「反応は良好…と。あ、箱は捨てて構わないよ」
「メモるなよ」
「悪いね…見てくれ通り学者にて研究者なんだ。これも性さ」
学者根性があるお方だこと。
「本当は腰にホルスターって考えてたが手癖の悪いドブネズミ共に盗られたらって考えるだけで発狂もんだから、脇にさせてもらったよ。後、余談だが白い銃は威力、黒い銃は連射性が高いよ。上手く使い分けな」
「ありがとう」
また何かメモるマキャヴェリ。人の話を聞く態度がなってないが悪い奴ではないのか?
「少し聞いてくれるかね?」
「何を?」
「悪魔について…少しね」
気になっていた事だから耳だけに全神経を集中させる。ただし目線はベルに向けて。
「昔の悪魔社会と天界って簡単に表せば弱肉強食のヤクザみたいな感じで天界が無能で悪徳ばっか働く政治家みたいなものだったんだ」
「ほう」
「当時の人間界の実権を握ってたのは天界だが裏で牛耳ってた魔界は行動を起こしてね、人間界を支配するまで至らしめたんだ」
「それって…」
「別に虐殺をした訳じゃない。一体の悪魔が事を荒立てずに人間界を手に入れたんだ。まぁ、その後天界で暫く過ごす羽目になったがね」
「それで?」
「今日はここまでだ、一気に話すとつまらないだろ?続きが気になってベッドでモンモンとしてるんだな。渡すものは渡した、俺は戻る」
去ってくマキャヴェリ…しかし少し歩いたらこちらに振り返って
「鎧騎士には気を付けろ、アレは間違いなく傑作だ」
「はぁ?」
鎧騎士?なんだそりゃ…んなのオラリオに山ほどいるんだが。真意を問おうとしてもマキャベリはいない。
(折角だし、着けてみるか)
コートを脱ぎホルスターを着けてそこに拳銃を仕舞う。うーん、手に馴染むなぁ。名前を付けよう…そうだな
「マイケル&クインシー…いや、エボ二ー&アイボリー…違うな。そうだ、ルーチェ&オンブラにしよう」
ルーチェは白い銃、オンブラを黒い銃として今度からそう呼ぼう。ふふふっ新しい相棒ができた感じだ。
「ハチマーン!」
ベルが駆け寄ってくる。隣に赤髪のあんちゃんを侍らして…この人がヴェルフとかいう人か…見たまんま鍛冶師だな。
「紹介するね、この人がヴェルフ・クロッゾさん。僕の防具を作ってくれた人!」
「紹介されたが俺はヴェルフ・クロッゾ。【ヘファイストス・ファミリア】の、今はまだ下っ端の鍛冶師だ」
「俺はハチマン・ヒキガヤ、特に何者でもない」
感じのいい好青年風を吹かしているが騙されないぞ?…クロッゾさん?お前が最初の的にならない事を切に願ってるぜ?
「じゃあ、お前があの【リトル・ルーキー】か!?って事はそっちのは【亡影】!?記録を塗り替えた世界最速兎と最初から最後までミステリアスの
なんだそりゃ、俺そんな風に呼ばれてんの?アンノウンとか…かっこいいじゃん?
バベル八階に設けられた小さな休憩所。エレベーターの近くにある空間で、俺達とクロッゾさんは会話をしていた。
「本当に俺より年下なんだな。いや、冒険者に年齢なんてそれこそ関係ないか?」
「えっと、クロッゾさんの年は…?」
「今年で17だ。で、そのクロッゾさんってのは止めてくれ。家名、嫌いなんだよ。ヒキギャヤ…ハチマンも止めてくれ」
おぉ…年下の癖にナチュラルに名字呼びを止めて名前呼びを強制してきたぞ、こいつ。コミュ力が高いなぁ…。
「それで、だ。単刀直入に言うとな、俺はお前さんを離したくなかったわけだ。俺の防具の価値を認めてくれた、お前を。お前は二度も俺の作品を買いに来てくれた。俺の顧客、本物だ」
本物…ねぇ…。そんな言葉を使えるんだ、きっとこの人は良い人なのだろう。そっと、組んでた腕を解く。
「じゃあ、僕にこれからも顧客でいてほしいっていうことですか?」
「間違いじゃないが…もうちょっと奥に踏み込ませてもらう」
「俺と直接契約しないか、ベル・クラネル?」
急にクロッ…ヴェルフさんが白い悪魔に見えてきた。ベル…マミったりしないか?
「えっ…い、いいんですか?」
「いいもなにも、お前さんの専属になれるなら願ったりなんだよ、俺は。ぐずぐずしてると他の鍛冶師がきっと声をかけてくるからな、手に入れかけた顧客も失うことになる。俺としては是が非でも契約したいわけだ」
快活そうに笑ったヴェルフさんは続ける。
「…こんな話の後じゃあ信じてもらえないかもしれないが、Lv云々はどうでもよかったんだ。あんな数ある鎧の中から、俺のものを選んでくれたからな。挙句に、俺の作品を使いたいだなんて言われた日には…な?こう、グッとこみ上げてくるものがあるってもんだろう?」
「…わかりました。ヴェルフさんと、契約を結ばせてもらいます」
「よし、決まりだ!断られたらどうしようかと思ったぞ!…ハチマンはどうする?契約しとくか?」
「遠慮しとく、防具とかはつけないし、武器とかも壊れないしな」
「壊れないって…そりゃ、不壊属性なのか?」
「いや、そんなん知らんが…信用してるんだ、コイツらは壊れない。だって俺のだからな…」
フォースエッジを手に取りその刀身を見ながら告げる。
「信用…」
「だから…大丈夫だ」
「分かった」
潔いヴェルフさんは俺とベルを交互に見つめる。
「本題だ。言うぞ?」
「「……」」
「俺をパーティに入れてくれ」
━━━━━━━━━━━━━━━
「やって来たぜ!11階層!」
スパン!
大きく両手を上げ『宇宙〜来たーー!』のポーズをとってるヴェルフさんに突進してきたハードアーマーを閻魔刀で両断にする。ふっ、今となっては奴も敵ですらない…。なんちゃって。
「油断…死ぬぞ?」
「あぁ、済まなかった。気を付ける」
ヴェルフさんは俺と似たような感じで防具をろくに付けてない。そこは少し好感が持てる。
「…新しいお仲間が増えたと聞いてみれば、なーんですか、ただベル様はモノで釣られて買収されただけではありませんか」
不機嫌な声がリリルカから聞こえる。っていうかモノというかちょろまかし…あっ露骨に目線逸らしやがった。
「何だ、そんなに俺が邪魔か、チビスケ」
「チビではありません!リリにはリリルカ・アーデという名前があります!」
急ごしらえとはいえウチのパーティも賑やかになったものだな。と、まるで熟年の冒険者みたいな事を考えてしまう。いかんいかん、まだ俺は新人、伸びなくてはいけない、立ち止まってもいけない。俺と…ベルの目指した境地へと至る為に…。
「グオオオオオ…」
地面からいきなりモンスターが生み出される。オークだ、相変わらず気持ち悪いビジュアルをしてる。創造神の趣味が悪い証拠だな。
「ベル様はお一人で好きなように動いてください。この鍛冶師の方はリリが微力ながら援護しましょう。ハチマン様、後衛でモンスターの撃破と全員の援護をお願いします」
「分かった!」「了解だ!」「承知した」
(試してみるか)
懐に手を入れルーチェとオンブラを取り出す。
「さてと、試し撃ちの時間だ」
銃を手に取り手首が交差するように構えると不意に頭が冴える。狙うべき頭に自然と銃口が向く。後は引き金を引くだけ…。
バン!バン!
飛び出た弾丸は的確にモンスターの頭を撃ち抜いた。勿論生きているはずもなく絶命した。
「ハ、ハチマン!?何それ!?」
「説明は後だ、今は邪魔を消すぞ!」
「「「ブギィィィィ!!!」」」
「選べよ雑魚共…蜂の巣かハリネズミのどっちが良い?」
「「「ブギィィ!?」」」
「答えは聞いてないがな」
幻影剣を周りに展開しオークとかインプにロックオンする。後は簡単だ。ルーチェとオンブラの引き金を引くと同時に幻影剣もありったけ投射する。
「ふぅ、こっち方面は粗方片付いたな。リリルカ、ちょっくら休むか」
「まだモンスターは残ってますよ?大丈夫なんですか?」
「ヴェルフさんの実力は知らんがベルが付いてんだし大丈夫だろ」
見てる限りヴェルフさんも弱くはないのが戦いから伺える。
━━━━━━━━━━━━━━━
「一通りの安全は確保しましたし、ご飯にしましょう。他の人達がいるから、モンスターに警戒することもないでしょうし」
そんな訳でお昼をとる事になった。俺が作ったお弁当を出す、今日のデキは結構良かったから自信がある。ベルとリリルカは目を光らせて食べていた。それを不思議そうに見ていたヴェルフさんに食べてもらうとダムが決壊したかのようにバクバク食べてった。ふっ…また一つ胃袋を掴んでしまったか…。俺も罪な男だな。
「そういえばハチマン、その白と黒のやつ何?」
「えぇ、リリもずっと気になっていました」
「見たことねーな」
やはり銃はこの世界に存在しないのか。説明が難しくなるな。
「知り合いっていうかファンと名乗る科学者に貰った。ボウガンの殺傷力と連射性が段違いに上になった代物だ」
銃を取り出しよく見てみると持ち手の部分に不自然な窪みがあった。何か写真でも貼れそうな窪みだ。まぁ、今の所誰の顔も貼る予定はないな。
新しい力…使い道を誤ってはいけない。
そう覚悟を決めてるとベルの手が光っていた。
「おいベル…なんだそりゃ」
チリチリとした淡い光を右手に収束させてる。もしかして新しいスキルだろうか?なんか…嫌な感じがする。
『───オオオオオオオオッッッ!!』
顔を振り上げその方向に目を向ける。
体高約150c、体長は4mのドラゴン。
あれは…
「インファイト・ドラゴン…」
11、12階層に出現するレアモンスター。
『
フォースエッジを構え迎撃しようとすると近くから声が響き渡った。
「【ファイアボルト】!!」
刹那全ての音が消えた。純白の閃光はインファイト・ドラゴンの体を貫きダンジョンの壁の一部を崩した。
「なんだ…あの威力は…」
あれがベルのスキルと魔法の力…。
欲しい…あの力が…絶対的な切り札が…俺みたいにチマチマしたやつじゃなくて爆発的な奴が…!
その日はベル達を先に帰らせて深夜までダンジョンで狩りを続けてた。追いつく為に…誰の背中を見ないで済むように。
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早朝、いつの間にか帰ってきてたハチマンを連れて【豊饒の女主人】まで行く。シルさんのお弁当を受け取るためだ、その為少し待つ事になったのだが…。
「ふあぁ〜、眠い…」
目を伏せながら欠伸をするハチマン。目の事を気にしてるらしく今日は紙袋を被っている。最低限の視界を確保する為に右目の方に穴を開けている。
「おはようございます、クラネルさん…とヒキガヤさん、どうかしましたか?」
「なんだか『目のコンディションが過去最悪』らしいのであまり触れないでくれると助かります」
「はぁ…分かりました」
手持ち無沙汰になっていると、カランとドアの鐘を鳴らして、リューさんが声をかけてくれた。その間ハチマンはずっと空を眺めてる。あっ、頭に鳥が止まった。
「そうですか、無事にパーティメンバーを」
「臨時、ってことになっちゃうかもしれないですけど…」
先日尋ねられたパーティメンバーの事について話す。
「相手の方は【ヘファイストス・ファミリア】の所属ですから、僕達の【ファミリア】ともう二度と問題を起こすことはないと思います。神様達も仲が良いそうなんで」
「それはどうかな」とでも言いたそうな目線がハチマンから飛んでくる。ハチマンはあの事件があってからお店の類に顔を出てない。強いて言うなら【ミアハ・ファミリア】にしかポーションを買い求めに行かない。昨日ずっと腕を組んでたのはいつでも銃とやらを取り出せるようにしてたと考えると少しヒヤッとする。【ミアハ・ファミリア】といえばこの前ミアハ様とコーヒーを飲んだらしい。僕の知らない所でハチマンの交友が広くなるのは嬉しい反面少し嫉妬してしまうのは秘密だ。
「クロッゾ…」
ヴェルフさんの家名を出した時リューさんは動きを止めた。その反応に少しギクッとする。
「な、何か知ってるんですか?」
リューさんの話を要約すると、ヴェルフさんの家系は血筋によりより強い【魔剣】を打てることは知っていたがそれを隣国の【ラキア王国】に献上することによって地位を獲得した。その魔剣でエルフの里は草も残らず焼き払われたらしい。
「そうなんだ、ハチマンはどう思う?」
肩と頭に鳥が沢山止まってるハチマンに聞く。
「興味ないね」
「えっ…」
「というのは冗談だが、別に?そんな事があったんだ〜位だ。戦争なんていつの時代もこんな感じだしな。俺の故郷も昔そんな感じのやられたし、似て非なる事もやってた。でもヴェルフさんはやってないだろ?俺達はそれだけ知ってりゃいいんだよ。背負わなくていい物は背負いたくないしな」
紙袋越しにポリポリと頬を掻くハチマン。僕はきっと考えすぎてたのかもしれない、ハチマンのこういう所に救われるなぁ。
「ヒキガヤさんらしい考えですね」
リューさんが同意するように声を漏らす。
「ベルさーん!お待たせしましたー」
シルさんが慌ただしくお弁当を持ってきてくれる。それを受け取りリューさん達に別れを告げてハチマンとその場を去る。
「よ、ベル。おはよう」
「あ、おはようございます。えっと……ヴェルフさん、どうしてここに?」
「ああ、リリスケの伝言だ。今日はダンジョン探索に付き合えないらしい」
何でもヴェルフさんが一人で待ってるとリリが凄い勢いで飛んできて事情を説明に来たらしい。下宿先のノームの店長が倒れてしまったらしい。
「どうする、3人でダンジョンに行くか?」
「う、うーーん…」
「ベル、ハチマン。何だったら、今日一日俺に時間を貸してくれないか?」
ー【ヴェルフの工房】ー
「ここは…」
「自分の技術を他の鍛冶師に見せない為に個別の工房を与えてくださったんだ。陰気で偏屈とかは思わないでくれよ?これはヘファイストス様の方針でもあるからな」
見覚えのある工房だ。ハチマンが誘拐されて酷い事をされた場所とそっくりだ。置いてある物が違うだけで基本的な作りは一緒。ハチマンの方を見ると魔力で椅子を作り出して座り込んでる。
「あいつ、今日は…いや、今は特にピリピリしてるがどうかしたのか?」
「いやっ…これは…その…」
ハチマンに目線を送ると「別にやましい事じゃないから良いぞ」と簡素な言葉が返ってくる。
「実は…」
事の顛末をヴェルフさんに話した。ハチマンが冒険者になって間もない頃、あのお店に足を運んだら万引きの冤罪を着せられて工房に連れてこられて酷い事をされたと。
「そんな…悪いハチマン。そんな事を露知らず連れてきちまって…」
「頭を上げてくれ…ヴェルフさんは関係ないんだから謝る必要はないだろ?だったら俺が怒る必要はない。それにアイツらは『死』という罰を受けた。俺もこんな目をしてたから悪いんだ…」
「目…?目が関係あるのかよ」
ヴェルフさんが訪ねるとハチマンは紙袋に手をやってそれを外した。殆ど寝てないという事もあって今日は一段と深淵のような目になっていた。
「この目が気に入らなかったのと売上が悪かったかららしい…ターゲットにされるのはこの目のせい…だから全部俺のせいなんだ」
沈黙が流れる。そんな事ないと叫びたいが今までにないくらいハチマンは悲しそうな目をしていた。
「悪い…気まずくしちまった。まぁ、謝礼とかはたんまり貰ったし!平気なんだけどネ!」
一転として急に明るく振る舞う。無理してるのだろう…演技が下手だよ、ハチマン。でも本当に忘れようとしてるらしい。なら踏み込まない方が良いのだろう。
「ちょっと用事を思い出した。行ってくる」
紙袋を被り直して工房から出て行くハチマン。
「おい、良いのかよ」
ヴェルフさんが聞いてくる。
「大丈夫ですよ、いつまで引きずってたらそれこそハチマンに失礼になりますから」
「信用してるんだな」
「ええ!だってハチマンは僕の相棒ですから!」
━━━━━━━━━━━━━━━
「ふぅ…」
工房から出てすぐ空を見る。こういうテンションが低い日は空を見るに限る。重い荷物を〜枕にーしてー、深呼吸〜青空にーなるー。
「盗み聞きは感心しませんよ」
すぐそこの壁に寄りかかる赤髪で眼帯を付けた女神。もしかしなくても女神ヘファイストスだろう。
「ごめんなさい、私の子から貴方が来てるって報告が入って」
「別に責めてるわけじゃないですよ」
「話は聞かせてもらったわ。貴方、目にコンプレックスを抱いてるの?」
「怯えられるから見えないようにしてるだけですよ。そうすれば余計な敵を作らずにすむから…」
「そう…私と似てるわね」
似てる?その眼帯と関係があるのか?
「見せてくれるかしら?貴方の眼を」
断る理由もないから紙袋を取る。すると彼女は俺の頬に両手を添えこちらを覗き込んでくる。近い近い…当たってるよ。
「悲しい眼…希望と期待、理想と理由に打ちのめされた眼をしてるわ。辛い体験をしてきたのね。奥には優しさと、誠実さを秘めてるわ。それでも貴方は優しさを失わない…いえ、本当の優しさを知ってるのね。貴方の過去に何があったかは分からないけど、貴方が間違ってない事はすぐに分かるわ」
「俺は優しくなんかありません、優しかったら俺は人に危害なんて加えません」
「いいえ、人の過ちを正すのだって立派な優しさよ」
心につっかえてた何かが壊れた音がする。自然と視界が潤んでくる。俺はオラリオに来て初めて涙を流した。
「収まったかしら?」
「ええ…お恥ずかしい所をお見せしました」
「貴方の泣き顔意外と可愛かったわよ」
うぐッ!…恥ずかしくて蒸発しそうだ。…こうなったら。
顔を上げて仕返しと言わんばかりに左手を彼女の右頬に添えて眼帯を取ろうとすると
「だ、ダメよ…」
俺の手を取って抵抗するがお構い無しにその眼帯を取る。
「あっ…」
「なんだ、普通に綺麗じゃないですか。これで怯える奴とかビビりなだけじゃないんですか?」
眼帯を付け直すとすぐに背を向けて歩く。
「あの言葉、嬉しかったです。それじゃあ…」
軽く挨拶してホームに戻る。この後ソファでバタバタする予定ができたんだ。
ハチマンとヘファイストスって目のコンプレックスが共通点だなーと思って絡ませたら思わぬ雰囲気に…ヴェルフの視線が痛いです。