ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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ちゅかれた


#23 悪魔と讃歌

「ひ、ひいいいい!」

 

先に動いたのはモルドだった、兜を脱ぎ捨て脱兎のごとく情けなく走り去る。

 

「徒党を組まなきゃ強く吠えれないのか…アンタは」

 

脱ぎ捨てられた兜を拾いながら呆れるように愚痴を零すように呟く。思い出す、徒党を組まなきゃ強く吠えれないあの女を…。

 

「ハチマン、それどうするの?」

 

「後で色々とな…」

 

ベルの質問をあやふやにしながらピンチに駆けつけた各々と言葉を交わしながら一同は肩の力を抜いた。

 

そして、「ともかくこれで」と神様がそう言いかけようとしたーまさにその時だった。

 

「えっー?」

 

足場が揺れる。いや、階層全体が揺らめいている。

 

「じ、地震?」

 

「いえ、これは…」

 

「ダンジョンが、震えてるのか?」

 

千草、命、桜花が足元を見下ろしながらうろたえた。揺れは段々大きくなり、周囲の木々を揺らす程に大きくなった。

 

「これは…嫌な揺れだ」

 

リューさんがそう口にすると同時に階層は揺れたまま周囲がふっと暗くなった。天井の水晶に不穏な影が見える。

 

「……」

 

チラリと叩きのめした冒険者達を見るともぬけの殻となっていた。俺達がよそ見してる間に逃げたのだろう。タフな奴らだ、そこだけが評価点だな。

 

そしてーバキリとその時が来たと知らせる音がする。

 

「亀裂…!?モンスター!?」

 

「ありえません、ここは安全階層です!?」

 

「イレギュラーってやつだな…」

 

いつでもこんなイレギュラーに付き纏われるな…俺達は。そう思うと少し笑えてくる。きっと強がりの笑いなのだろう。

 

天井の水晶を突き破って落ちてきたそのモンスターは余りにもデカすぎる産声をあげた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

黒い体皮に覆われたその巨体は色こそ違えど見覚えがあった。

 

「ゴライアス…」

 

着地したゴライアスの近くにあのモルド一派がいた。しかもばっちり目と目が合っている。好きだと気付いた?…なわけないか。

 

「行くか…」

 

「うん!」

 

ベルと並びゴライアスを見据える。あの時を思い出す。二人で誓ったあの時よりは強くなれたのだろうか…。

 

「待ちなさい」

 

リューさんが立ち塞がり睨み付けるように見据えてくる。

 

「本当に、彼等を助けにいくつもりですか?このパーティで?」

 

それはいっそ無情とも言えるほど冷徹で、かつ至極当然な問いかけだった。それもそうか、俺達は頭数だけの弱小パーティ。推定レベル4か5のゴライアスとの力量は言うまでもない。

 

瞠目し固まったベル、しかしそんな迷いも一瞬で振り切られる。

 

「助けましょう」

 

「貴方はパーティのリーダー失格だ」

 

リューさんの非難の言葉と眼差しがベルに向けられる。その痛みに打ちのめされそうなベル。

 

「でも、間違っちゃいない」

「だが、間違っていない」

 

俺とリューさんで似たようなセリフを吐いてしまうが別に構わない。目先の事にすぐ飛びつくのがベル・クラネルだ。

 

「ま、お前にマトモな采配なんてこれっぽっちも期待しちゃいないからな」

 

「ハ、ハチマン!?」

 

「お前はお前のやりたい事をやれ、きっとそれは悪くない事なんだからな。俺は気さえ向けば手伝うからよ」

 

「ハチマン…」

 

「教えろ、何をすればいい?」

 

「あの人達を助けて、ゴライアスを倒す」

 

「分かった、話は聞いてたな、お前んとこの墓石が増えない内にさっさと回収してこい、アラル」

 

俺達のすぐ横に小さい落雷が落ちたかと思えば久しぶりに見たその男は怠そうに笑いながらこちらを見ていた。

 

「相変わらず人使いが荒いな…」

 

「頼んだぞ…アラル」

 

「任されたさ」

 

再び雷と共に姿を消したアラルを見届け後ろを振り向く。そこにはリリルカが、ヴェルフが、命が、桜花が、千草が、ヘスティアが、リューさんが、そしてベルが。

 

誰もが微笑みながら頷いた。

 

ベルは叫んだ。

 

「行こう!」

 

俺達は新たな戦場へと身を投じるのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「スコット、ガイル、どこだ!?助けろっ、助けてくれええええっ!?」

 

情けなく悲鳴を上げるモルドは半狂乱に陥っていた。

 

マッドビートル、バグベアー、ガンリベルラ、ミノタウロス…あらゆる種類の中層のモンスターが周囲からとめどなく押し寄せ、牙を、爪を、角を、モルドに振るう。何とか両手剣で反撃するがこれといったダメージは入ってない。

 

『ガアアアアアア!!!』

 

「ぐおっ!?」

 

バグベアーの薙ぎ払いで防具が切り裂かれ剣も弾かれてしまった。3頭のバグベアーがあっさりと接近しモルドを見下ろしてる。牙をむき出しにしながら彼へ覆いかぶさろうとした。

 

「死ね…!」

 

突如紫の光が見えたかと思ったらバグベアー達の体に無数の蒼い切り傷が付き爆散した先に紅いコートが見える。モルドの前に庇うように立ちモンスターに銀色の弾丸を撃ち込みながら牽制している。

 

「…なんで、てめえ…」

 

波のように押し寄せてくるモンスター達に紫の光を体に纏いながら突進していく。

 

突然がしっ、襟首を何者かに掴まれた。

 

「ハチマン様のお邪魔になるので運んじゃいますよ!」

 

「いっ、ででででででででででえぇっ!?だ、誰だっ、ケツがぁぁぁあああ!?」

 

大型のバックパックを背負ったパルゥムの少女に引き摺られながら運搬されていくなかモルドの目にはハチマンの姿が映っていた。

 

手を変え品を変えながらモンスターに引くことなく戦う姿がとんでもなく遠く見えた。普通ならビビるような攻撃を表情一つ変えずに躱しながら的確にカウンターを刻んでいく。ベテラン(自称)冒険者のモルドには異次元の存在にしか見えなかった。

 

「ここまで差が開くなんて…」

 

「ハチマン様はずっとお一人で努力してきましたからねっ!」

 

両目を瞑り、べっ、と舌を出す彼女はモルドを安全圏まで運ぶと再び戦場へと足を向けて言った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

時間停止能力『クイックシルバー』、能力バフの『トリガー』他にも『魔腕』や『幻影剣』を駆使してゴライアスの呼んだモンスターを狩っていると勿論付き纏うのは魔力切れである。

 

何が言いたいかというと、

 

「ほら、亡影、頼まれたポーションとマジックポーションだ」

 

「うす、あざす…」

 

名前も知らない冒険者にポーションを浴びせてもらいながらマジックポーションをガブ飲みしていた。

 

「ひどい切り傷だな…モンスターじゃないな?」

 

「ええ、木の中とか突っ切ってたら枝とかに引っかかって…」

 

「お陰様でこっちもあのデカブツに集中できてる、感謝だな」

 

「こんな状況だ、お互い様でしょ…」

 

もう大丈夫です、と言い立ち上がる。そこに眼帯をした大男がやって来る。

 

「おう、【リトル・ルーキー】!【亡影】!お前ら、そんな装備で大丈夫か!?」

 

「大剣をっ、一番良いのをお願いします!」

「大丈夫だ、問題ない」

 

ベルは大剣を受け取り、俺はベオウルフを出して8番目に仕掛ける【08小隊】と一緒にゴライアスへと驀進する。なんか、嵐の中でも輝けそうな気がするな。

 

大地を抉りベルと先陣を切り進む。後ろの冒険者達はというと。

 

「いくぜいくぜいくぜーー!」とか

「キバっていくぜ!」とか

「戦場キターーー!!」と意気込んでいてとても頼りがいがある。

 

『ーーアアッ!!』

 

そんなやる気もゴライアスの口から発せられた波動弾のような咆哮がすぐ横3mに着弾する。

 

「逃げろーー!」

「戦略的撤退!!」

「逃げるは恥だが役に立つゥ!」

 

前言撤回、そんなこと無かった。勇敢な戦士達はルーキーじゃ到底かないっこない危険察知能力で戦線を離脱した。畜生、今度危険察知用レーダーにしてやる、地雷探知犬みたいに。

 

ゴライアスの赤い目が俺達を見据えるや否やそのバカでかい拳が迫る。

マズイ、あれはベルで捌ける攻撃じゃない。

 

「全力ゼンカイで打ち破れよ!ベオウルフ!」

 

嬉しそうにいつもより眩しく光るベオウルフの拳をゴライアスの拳へと向ける。拳が触れた瞬間凄まじい衝撃波が辺りに走る。

 

「今だ行け!」

 

「うん!」

 

ゴライアスの顔に攻撃をかます為に腕に飛び移り走るベル。やはりその巨体の為拳の威力も凄まじく右腕が痺れる、もしかしたらヒビが入ったかもしれない。押し負けてる、そんな現状が嫌でどうしても踏ん張ってしまう。負けたくない、そんな感情が理性を抑えて下らない意地となりこんな意味もない張り合いに発展している。

 

ズザザザ…

 

【トリガー】を使っても押される状況に変わりはない。【クイックシルバー】を使って離脱を試みようとする理性の叫びを無視しても足りない。

 

ガキン…

『アアアアアアッ!!』

「ハチマンさん!」

 

ベルの攻撃が弾かれた音と痺れを切らしたのだろうゴライアスの怒号と誰かの警告の声と共に俺の体は木を薙ぎ倒しながら数十メートルは吹き飛んだ。

 

「ッ!!」

 

疲労が祟り閉じたくもない瞼が意識と共に落ちてく。指一本動かす事も叶わない、声一つ出せない。全く、情けないな…。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

いつもの夢の中、でかい扉に俺しかいない筈なのに目の前には俺がいた。髪は全て白銀に染まり肌は血が抜かれたような白で目は金色だった。

 

「こうして会うのは初めてだな」

「アンタは…誰だ?」

「俺は…お前だ、よく見るだろ?こういう展開」

「潜在意識的なアレの事か?」

「まあそんな所だ、面倒な思考は抜きにして少し語り合おうぜ?」

「一つ聞いていいか?」

「いいだろう」

「なんで嘘をつく?」

「ほう、その心は?」

「潜在意識的なモノならばこんな夢を見始めた頃から出てきてもおかしくないはずだ、こんな忙しい時に出てくるのだろうかって思ってな」

「やっぱタイミング間違えたか…そうだ、俺はお前の潜在意識的なモノではない。それはお前の意識であって俺ではない、俺はお前の力の源、魂の具現化といった所だ」

「魂、力…」

「そろそろ俺も質問したい。お前に『生きる意味』を問いたくてな」

「俺の生きる意味…」

「………」

「俺は……………」

「それがお前の意味か?」

「下らないか?」

「いや、意外だ、目立ちたがらないお前がそんな意味を持つなんてな。いいんじゃないか?応援するさ」

「あ、ありがとう…」

「っと…そろそろ時間か。悪いな、時間取らせて」

「本音語ったんだ、悪い気はしない。

俺じゃない俺に背を向けて歩き出す。

「エヴァとアラストル、会えたらマキャヴェリに宜しく言っといてくれよな!」

そう叫んだ紫の悪魔は声を大にした後に扉の中に入ってく。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

リン…リン…

 

鈴の音が聴こえる。少し耳障りだ。

 

ゴォン…ゴォン…ゴォン!

 

鈴の音はやがてグラントベルの音に成り代わる。マジでうるさい。

 

「んあッ!?」

 

重い体を起こし辺りを見渡すとそこにはニヤニヤと暗黒微笑を浮かべるアラストルがいた。

 

「いい夢見れたか?」

 

「まあな、どのくらい寝てた?」

 

「ざっと30分、兎の小僧もさっき起きてなんかチャージしてたぞ」

 

「そうか…」

 

体に刺さった枝とかを抜きながら答える。アドレナリンがドバドバに分泌されてるからなのかあんまり痛みは感じない。

 

「お前がわざわざ出しゃばらなくても勝てるぞ」

 

ヘラヘラと笑いながら辛辣に語るアラストル。

 

「休みたいけどな、行くさ」

 

「その心は?」

 

「俺だけサボってると後が怖いからな」

 

そしてなにより、置いてけぼりはゴメンなんでな。

 

「そうか、じゃあこれに着替えてけ。その格好じゃ致命傷だったってバレるしな」

 

ポンと手渡されたのはいつもアラストルが使ってる剣だ。

 

「いいのか?」

 

「貸すだけだからな、ちゃんと返しに来いよ〜?俺は知り合いを迎えに行くから先に帰らせてもらうぜ。後でお前にも紹介してやるよ」

 

手をヒラヒラさせて俺に背を向けて歩いて行くアラストル。

 

「アラストル!」

 

「ん?」

 

「俺が宜しく言ってたぞ」

 

文から可笑しいが言わなきゃいけないという謎の使命感に駆られその言葉のまま伝える。少し恥ずかしい。

 

「おk、後で病院行ってこいよ〜」

 

雷光の如く消えてくアラストルを視界の隅に追いやりベルの元へ向かう。一応ベルの音で位置は分かるが問題なのはゴライアスが進路の間に

居る事だ。迂回するのもアリだが…。

 

「癪に触るな…」

 

モンスターに道を譲るのが何となく腹立つ。

 

「やってやるか!Take your time!」

 

【クイックシルバー】と【トリガー】を発動させゴライアスの元の首まで接近してアラストルを構える

 

「足止めはさせて貰う!」

 

魔力を込めた一閃を横に薙る。そしてそのまま頭を踏み台にして一点だけ光ってる場所に飛んでく。なんだろう、移動速度とかがめちゃくちゃ上がってる気がする。アラストルのお陰か?

 

着地した瞬間【クイックシルバー】を解除する。

 

「うわぁ!!」

 

近くにいた神様が驚いて尻もちを着く。

 

「ハハハハチマン君!?一体どこから」

 

「そんな事は良いんですよ、ベルは行けそうですか?」

 

「まだ時間はかかりそうだ、念の為ハチマン君もベル君と行ってくれるかい?」

 

「時間稼いだ方が建設的な気がするんですけど」

 

すると微笑みながら神様は首を横に振る。

 

「ううん、君とハチマン君が行って勝つんだよ。それまでの時間は()()稼いでくれる、君も力を蓄え給え」

 

「…分かりました」

 

ゴライアスが落ちた首の代わりを再生してるのを視界の中央に見据えながらベルの左隣で力を溜める。フォースエッジに蓄えられる紫の魔力はやがて黒くなり黒い魔力は体にも広がっていく。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ヘスティアは二人の子ども(眷属)の背中を眺めていた。一人は恋焦がれる程白い光を纏う男の子。そしてもう一人は心臓を握られているような感覚を覚えるような黒を纏う男の子。互いに色こそ違えどどちらも優しさを兼ね備えたかけがえのない家族だ。

 

ヴェルフ君もリリルカ君もエルフ君も…皆が君達を待っている。

 

「君達はよくやってるよ…流石、ボクの子供だよ。胸を張ってくれたまえ」

 

ゆっくりとベルの深紅の瞳と、ハチマンの黒い瞳がゴライアスを捉える。

 

「行ってらっしゃい」

 

「「行ってきます」」

 

ゆっくりと二人の体が前に傾く。

 

「ーみんな、道を開けろぉおおおおお!!」

 

発走した。

 

剣を構え、鐘の音と殺気を放ちながら、仲間達が作り上げた好機ー最初で最後の一撃の瞬間へと、疾駆する。

 

道を開ける全ての者が、ベルとハチマンの横顔を見つめる。乞うように、信じるように。背中を押すようにー行け、と。

 

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』

 

再生したばかりの目で二人を射抜き燃えた剛腕を背後に引いた。それでも二人の速度は緩めない。

 

ベルは右回りに、ハチマンは左回りに回転して今までの速力と回転エネルギー、そして力を剣に回し、その一撃を放った。互いの剣の腹が擦れ合い火花を散らしながらその一閃がゴライアスを飲む。

 

「「あああ.ああああああああああああああああぁぁぁッッ!!!」」

 

最後に残ったのは静けさと上半身を失った巨人の下半身だけだった。しかし魔石だけは傷が付いていても完全に破壊するには至らなかった。

 

「チッ、左腕が折れた」

「僕は右腕が動かないや」

 

最後の一閃の反動が腕に来て二人の片腕を粉々にした。しかしゴライアスの魔石だけは無事だ。

 

「最後、決めるか」

 

ベルに脇のホルスターからルーチェを渡す。ハチマンはもう片方のオンブラを右手に持つ。

 

「決めゼリフ、知ってるか?」

「フフッ、おじいちゃんから聞いた事あるよ」

 

二人で背中を合わせて銃を構える。ハチマンは縦に構えベルがその上に横にして構える。そしてあの言葉を同時に発する。

 

「「JACK POT」」

 

Bang!

 

2つの銀色の弾丸がゴライアスの魔石を的確に撃ち抜き再生されようとしてたゴライアスはドロップアイテムを残し灰となる。

 

『ーうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

その瞬間、18階層全体が冒険者達の歓声で揺れた。

 

涙ぐむヘスティアを筆頭にヴェルフ、リリ、リュー、命と次々にベルとハチマンに駆けつけた。再び戻った蒼い天井が18階層に戻る。

 

銃を仕舞った二人は皆の方に向き直る。

 

「「ただいま」」

 

「「「「「おかえりなさい!!!」」」」」

 

暖かい光が一帯を包んだ。

 

 

 

 




ずっとやりたかった事が書けた。もうそれでいいんだ。
良かったら高評価とお気に入り登録、よろしくお願いしまああああああああぁぁぁあすッ!!
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