ダンジョンに出会いとボッチを添えて   作:テクロス

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長らくお待たせしました。タイトルは間違ってません。


#25 このすぼ

「主神よ、アポロン・ファミリアから宴の招待状が来たぞ」

 

書斎で()の事を考えているといつの間にかやって来ていたのか私のファミリアの団長の【椿・コルブランド】が招待状を手渡してくる。へぇ、1人だけ眷属を連れてけるのね。

 

「椿…アポロンの所は行かないって言ってるでしょ?丁重に断っといてちょうだい」

 

アポロンについては天界にいた頃から知っているがいい噂はめっきり聞かない。数多の女神に求婚しては振られる。私には声が掛からなかったのは不幸中の幸いって奴かしら。

 

「そうか?ちょっと小耳に挟んでな、神ヘスティアの方にも声を掛けてたらしいぞ?」

 

「え!?」

 

つまり彼が来るかもしれないってことかしら!?いや、よく考えるのよヘファイストス、ヘスティアはベル・クラネルに惚れている。ならば宴に連れてくるのは当然その子よね…。

 

「!!」

 

いや、だめよヘファイストス!ネガティブな事を考えちゃいけないわ!ヘスティアが彼を連れてくる可能性に全てを賭けましょう!

 

「行かないのか?」

 

「行くわ!椿!貴方も用意しなさい!今日はとびきりの勝負服で行くわよ!」

 

「あ、あぁ…」

 

待ってなさい!ハチマン!

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ヘファイストスじゃないか!見てくれたまえ!ベル君は何を着ても似合うだろう?」

 

「え、えぇ…そうね」

 

知ってた、この世には神も仏もいないんだって…って、いたわね、掃いて捨てるほどね。

 

はぁ、彼は今頃何してるかしら?またパフェとピザとコーヒーをバカ食いしてるのかしら…。一緒に食卓を囲むなんて…

 

『ヘファイストス、はい、アーン』

 

『あーんっ!美味しいわ!ハチマン!』

 

『HAHAHA!君が沢山食べれるなら俺はいくらでも作るよ!ハニー♡』

 

『ハチマン…///もうっ!好きっ!(理性崩壊)』

 

『照れるぜ、ベイベ(語彙力逃走)』

 

なーんて事もあるのかしら!!えっへへへ//

 

「ヘファイストス…一体どうしたんだい?…」

 

「あっははは…あれ!?ハチマン!」

 

えっ!嘘!?どこどこ!?

 

その場に居合わせた顔見知り達と駆け寄る。焦ってるのがバレないように若干早歩きで。

 

「あっ…」

 

いた、黒と銀の混ざった髪をオールバックにして相変わらずの目付きでワイングラスに口をつける彼がこちらを見ていた。コート以外の服を着てるのも珍しくしっかりとその姿を脳裏に焼き付ける。

 

「久しぶり…でもないわね。元気してたかしら…//」

 

「え、えぇ…」

 

嗚呼…私はこの時間が堪らなく好きだ。私でさえ嫌いな目を綺麗だと言ってくれた彼と交わす言葉全てが…あわよくば彼と一生を共にしたいと刹那に願う私はきっと、世界一バカな神なのだろう。人間と結ばれる筈ないのに。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

フレイヤとかいう神が入場し、宴の雰囲気はガラリと変わった。どこかピリピリしている、きっとアレの目にかかりたい神達がお互いを牽制し合っているのだろう。これが恋の抑止力というやつか…。

 

そんな視線も意に返さず女神はこちらに歩み寄ってきた。回れ右してほしいなぁ…なんて。

 

「来ていたのね、ヘスティア。それにヘファイストスも。神会以来かしら?」

 

「っ…やぁフレイヤ、何しに来たんだい?」

 

ひくついた笑顔を浮かべながら下手くそな営業スマイルをするとベルから離れて身構えた。あれで威嚇してるつもりなのだろうか。ヘファイストスさんも少しムッとしてる。

 

「久しぶりね、ハチマン」

 

「ども」

 

心の隙に入り込むような声を出しながら近づいてくる。ちょっと近くない?パーソナルスペースって知ってる?

 

「ー今夜、私に夢を見させてくれないかしら?」

 

「夜11時には床につき必ず8時間は睡眠をとるようにする。寝る前にあたたかいミルクを飲み20分ほどストレッチで体をほぐしてから床につくとほとんど朝まで熟睡ですよ」

 

「!」

 

手フェチの殺人鬼が言ってたんだけど実践してみるとまあまあ眠れるんだよ。皆も試してみよう!

 

「あら、残念。一流のシェフに作らせたジャンボパフェがあるのに…」

 

「!!」

 

ちょっとハチマンの心がマグニチュード80000くらいなんだけど。右肩の悪魔が「行けよ…」って叫んでるんだけど。ちなみに右肩の天使は「美味しそう…ジュルリ」とか言ってる、ダメじゃん。

 

「ダメよ?」

 

ニッコリとしながら、けれどもドスを効かせた声でヘファイストス様が俺の肩を掴む。

 

「うっす…」

 

どうしてこんなに怒ってるんだろうか…。

 

「マキャヴェリって男、知ってるかしら」

 

そっと、耳元でフレイヤが俺に抱きつく形で囁く。艶めかしい声だが色を含んでいない。至って真剣な話なのだろう。ここでするのか?

 

「顔を合わせた程度ですけど…」

 

「ウチで監禁して研究させてたんだけど熱が入ったらしくて逃げられたの」

 

「んなことしてるからじゃないんですか?」

 

「それもそうね、方法はなんでもいいわ、排除してくれればご褒美を出すわ」

 

「へぇ、例えば?」

 

「私とかは「別のならいいですよ」…相変わらず釣れないわね」

 

いつの間にか首に絡めていた両手を解き、その距離を開かせる。まあ、悪くない匂いだったな。

「それじゃあ」と言い女神フレイヤは去っていく。別にクールでもなんでもない。

 

「随分と熱〜い話、してたんとちゃうかー?」

 

また違う所から陽気なエセ関西弁が聞こえた為そっちを見ると朱色の髪色をした女神がいた。そのすぐ隣には綺麗なドレスを見に纏ったアイズ・ヴァレンシュタインがいた。

 

「ロキ!?」

 

「おー、ドチビー。ドレス着れるようになったんやなー。めっちゃ背伸びしとるようで笑えるわー」

 

俺がコーディネートしたんだが似合わなかったんだろうか…。ていうか男装してるアンタに言われたくないと思うんだが…どうして男装なんて…あっ...(察し)。

 

なにやらギャーギャーと喧嘩してる二人を流し目にテラスに移動して一息つく。今日は疲れた、特にあの女神のせいだ。精神力をゴリゴリに削ってくる。

 

「お疲れのようだね」

 

まただ、またこうやって…今度は誰だ?

振り返ると会いたくない神ランキングNo.2のヘルメスがそこにいた。

 

「なんの用で?ここには美人はいませんよ?」

 

「あはは…僕、君に嫌われるような事したっけ?」

 

もう存在というかなんというか…生理的に無理なんですよ。すみません。

 

「さあ、どうなんでしょうね?」

 

と言いつつ18階層でモルドが襲撃の際に使っていた兜を落とす。

 

「なんだい?これは」

 

「18階層の件でモルドという冒険者が被ってたんですよ。少しオハナシしたらアンタに聞いてくれーって言っててね。心当たり…ありませんか?」

 

「全く…君にお惚けは効かないな…要件はなんだい?」

 

驚いた、こうも簡単に折れるなんて予想外だった。

 

「別に、アンタがちょっかいかけて来たならそれなりの報復でもさせて貰うってだけだ。アンタがやって、俺がやっちゃいけないって道理はないんだからな…覚悟しろよ」

 

「わ、分かった…」

 

少しは怖気付いたのか後ずさりするヘルメス、ふふふ、俺の威嚇中々効いたな。

 

「あれ?ハチマンとヘルメス様?二人で何話してたの?」

 

「なーに、仲良く世間話をしていただけさ、ねっ!」

 

「まぁ、な」

 

適当に話を合わせる。ベルにいらん心配をかけてられないしな。

 

「ベル君は、どうして冒険者になったんだい?」

 

手すりに背を向けながら、ヘルメスはベルに問いかける。

 

「祖父が…育ての親が、亡くなる前に言ってて…『オラリオには何でもある。行きたきゃ行け』って」

 

「へぇ?」

 

「オラリオにはお金も、その、可愛い女の子との出会いも、何でも埋まってる…何だったら女神の【ファミリア】に入って、手っ取り早く家族になるのもありだって」

 

「ーはははははっ!」

 

「…ベル君の育て親は、愉快な人物だったみたいだね」

 

「そう、ですね。面白い人でした」

 

そんな2人の会話をBGMに俺は過去について考えていた。雪ノ下とも由比ヶ浜とも、小町や母ちゃんに親父…その他全員の今と何故かオラリオにいて気味悪い鎧を装着していた葉山…そんな事を考えるだけで頭が痛む。忘れなきゃ…

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「さあ踊ろう!ベル君!」

 

そうヘスティア様に半場強引に連れてかれたベルの背中を見届けながら俺はワイングラスに口を付けていた。

 

「君は踊らないのかい?」

 

相変わらず隣にいて一緒に酒を飲んでいるヘルメスが問いかける。ホールは賑やかでヘファイストスさんが知り合いの神に挨拶しているのが見られる。こころなしか少しソワソワしている…トイレか?

 

「別に…踊るほど親しい相手なんていませんし」

 

オールバックにしていた髪を手でくしゃくしゃにして元の髪型に戻す。

やっぱり普通の髪型が1番だな。

 

「えらく張り詰めてる気がしてるけどどうかしたのかい?」

 

「いつもの流れだとこういうイベントのラストに絶対何か嫌な事が起こるんですよ」

 

いやほんとマジで…初めて飲みに行った時だってクソ狼に煽られるし、レベルアップ祝いの時だってモルドとか言う奴に絡まれるし、ヴェルフのランクアップ祝いにもアポロン・ファミリアが…あれ?ここの宴の主催って…アポロン・ファミリアだよな…。あっ...(察し)

 

「そうならない事を祈ろうか…」

 

断言しよう絶対起こる。

 

「いや、起こさせない」

 

例えシュタインズゲートの決めた運命であろうと俺は抗う。やっと安定?してきた日常を壊されてたまるか。そうと決まれば即行動に移さなくては…。

 

グラスの中を飲み干しツカツカとホールに入ってく。丁度ダンスも終わったらしく踊っていた面々は微笑みを浮かべている。女神ロキと踊っていたヴァレンシュタインにも目をくれずベルと神様の元へ向かう。

 

「引き上げるぞ」

 

ベルと神様の間に入り少し声を潜めて帰宅の意を示す。

 

「ハチマン!急にどうしたの!?」

 

「ハチマン君、まだ宴は始まったばかりだよ。踊る相手がいないからってね?拗ねちゃあダメだよ!ほら、ヘファイストスでも誘って踊ってごらん?」

 

「そんな悠長な事言ってる場合じゃありませんよ」

 

「急にどうしたの?」

 

ベルが心配そうに問いかけてくる。

 

「打ち上げとかの時に必ず起こるのは?」

 

「あっ…!」

 

気付いてくれたか、流石ベルだ。

 

「神様…!逃げましょう…!」

 

「ベル君まで…分かったよ。でも事情は後でちゃんと聞くからね!」

 

よし!そうと決まれば!

 

ここまでは完璧だ。後は踵を返して逃げるだけ……そう思っていた時期が私にもありました。そんなのは世界一気まぐれなオラリオが、そして愛すべき読者が許す筈ないのだ。

 

「諸君!!宴は楽しんでいるかな?」

 

月桂冠を被るこりゃまたヘルメス以上に気持ちの悪い男神がホールのど真ん中にある階段の上で高らかに叫んだ。その構図は丁度俺達を見下す形になっていた。

 

「盛り上がっているようならば何より。こちらとしても、開いた甲斐があるというものだ」

 

そしてアポロンは神様に目を向けた。

 

「遅くなったが…ヘスティア。先日は私の眷属が世話になった」

 

「…ああ、ボクの方こそ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。代償をもらい受けたい」

 

「言いがかりだ!?ボクのベル君だって怪我をしたんだ、一方的に見返りを要求される筋合いははないぞ!」

 

「だが私の愛しいルアンは、あの日、目を背けたくなるような姿で帰ってきた…私の心は悲しみで砕け散ってしまいそうだった!」

 

まるで芝居をしているかのように、アポロンは胸を押さえ、かと思うと両手を広げて大袈裟に嘆いた。

 

ルアンという単語が出てきた辺りから奥からミイラのようにグルグル巻にされたパルゥムの男は姿を見せた。

 

「痛てぇ!居てえよぉ〜〜!」

 

「まさかハチマン君…本当にここまでボコボコに……?」

 

「してませんよ…でも、それより酷い始末にしてやろうか?」

 

「ダメだよ!?」

 

ベルの叫びが聞こえるが内心本気だったりする。一生医務室のベッドに寝る羽目にサセテヤロウカ?

 

「更に、先に仕掛けたのはそちらだと聞いている。証人も多くいる、言い逃れはできない」

 

パチン!という指パッチンと共に俺達を取り囲む複数の神とその団員。きっとあの現場にいた奴らかアポロンに抱き込まれた奴らだろう。その面しっかり覚えたからな?

 

「団員を傷付けられた以上、大人しく引き下がるわけにはいかない。ファミリアの面子にも関わる…ヘスティア、どうあっても罪を認めないつもりか?」

 

「くどい!そんなものは認めるか!」

 

待ってましたといわんばかりの醜悪な顔をするアポロン。

 

「ならば仕方ない。ヘスティアー君に『戦争遊戯』を申し込む!」

 

チュールさんとの勉強で憶えてる。対立する神と神が己の神意を通すためにぶつかり合う総力戦。言わば神の『代理戦争』。

 

『アポロンがやらかしたァーー!』『すっっげーイジメ』『逆に見てみたい』

 

退屈持て余したモンスター、おっと間違えた。娯楽好きの神達はざわついていた。

 

「我々が勝ったら…君の眷属、ベル・クラネルとハチマン・ヒキガヤを貰う!」

 

畜生…それが最初から狙いだったか…!

 

周りを見渡すと真剣な面立ちのロキと瞳を見張るヴァレンシュタイン。目を細めるヘファイストスさん、悔しそうな顔をするタケミカヅチ様とミアハ様、苦笑するヘルメスと目をそらすアスフィさん。完全孤立無援、誰も助けてくれない。そんなのいつも通りのはずなのに何故かとてつもなく悔しい。違う、これは悲しい…だ。

 

嗚呼…仁義もクソもないこのみすぼらしい世界には祝福も無いのか…。

 

「ハチマン…髪が…」

 

どうせまた銀に染まってきたのだろう。

 

「帰るぞ」

 

ボソッと言い民衆に背を向ける。

 

「アポロン様とその愉快な証人達」

 

ゆっくりと振り返り真っ直ぐ見つめる。

 

「顔は覚えたからな」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

極彩色の空が広がる八幡の心、その中央にそびえ立つ巨大な門を中心に半径20mが円状に黒く澱んでいた。

 

『そろそろ…か』

 

門の中から愉快そうな声が聴こえる。

まるで釈放間近の囚人の様に。

 




えーと、遅れた訳を言い訳させてもらいますと。以前の後書きでこのssを書くきっかけになった作品の作者を名乗る人から「続き、良かったら書きませんか?」という誘いを受けて暫く悩んでいたからです。

言い訳にもなりませんね、次は出来るだけ早く仕上げます。

高評価と感想を書いてもらうと作者が喜びます。
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