なんて、ふざけましたが、お待たせしました。
いつもの精神世界、目の前の扉にもたれかかっていたが力を抜きズルズルと腰を落とす。
隙間から吹く黒い風は俺の全身を撫で、ハチマン・ヒキガヤとしてではなく、比企谷八幡としての記憶を甦らせる。
まるで遠い昔の御伽噺のようにページを捲ることによってその記憶をまるで劇場を見るような感覚に陥る。
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母は比企谷八幡をあまり好いてはいなかった。過労により腐った目が子供にも遺伝したかのように子供が成長する度に腐っていったからだ。
否、比企谷八幡の腐った目が嫌いなのではない。気づいていたのだ。自分達が比企谷八幡に親として何もしていなかったことによって親を見限ったことによってその目が腐ったことを…。
その事実を受け止めていながらも尚母は比企谷八幡を放置していた。親ではない他人が彼の目を癒すと考えたからだ。
………
………………
途中までは上手くいっていた。比企谷八幡は親ではなく他者に居場所を求めて着実に居場所を確立させていった。
だがそこで思いもよらぬアクシデントが起きた。妹の比企谷小町の家出だ。仕事で帰りの遅い親、友人になれそうな者達との交遊で帰りの遅くなった兄、家出するには充分な理由だ。
結論、親から妹の家出の責任を問われた比企谷八幡は妹が寂しくならないよう、親に怒られないように交遊を自ら断たざるを得ない状況に陥った。
結果比企谷八幡は中途半端な交遊を断ち切った事によりクラスメイトからの不信と無邪気な悪意を一身に受ける事になった。
年月は経ち、比企谷八幡はズルズルと引き摺らざるを得ないかつての足枷を未だに着けており、そんな足枷を着けなくてはいけなくなった原因たる比企谷小町は人あたりの良さから瞬く間に自分の居場所を作り上げた。自分が足枷をつけて虐げられている比企谷八幡の妹だと言うことを必死に誤魔化し、学校内での接触をしないよう兄に釘を刺しながら…。比企谷八幡はそれに従っていた。最早自分は人生の敗者だと確信した彼はせめて自分だけの安泰を守るために妹に媚びへつらい、機嫌を取ることによって家にいさせてもらっていたのだ。
それ故に彼の母は己の子供に罪悪感を密かに感じていたのだ。
父は比企谷八幡を嫌っていた。なんでも出来る彼に嫉妬していたのだ、一回二回と回数を重ねる毎にその腕前や出来は完成へと近づいていったからだ。そして彼の目に怒りが募っていった。妻とは違う腐り方をしており、親としてではなくまるで他人を見るかのようなあの目に腹が立って仕方なかったのだ。自分がいつしか見下されてしまうのではないかと未来へ恐怖していたのだ。
だから彼をねじ曲げる事にした。過去の失敗談や人への不信感を教訓という名の呪いとして彼に施していた。教育は公をなし、ただでさえ人付き合いの苦手な息子は周りから孤立していき自ら独りになる事を選んだ。他にも色々と影響はあるだろうが自分の教育の賜物だと鼻が高くなっていった。
そして比企谷八幡の分愛娘へ愛情を注ぎまくればいいのだ。旅行も連れてくしオシャレだって目一杯させていた。家には完璧な
そんな家族との繋がりがマトモにない比企谷八幡は近くの神社に良く向かっていた。幼い頃から何度も祈っている神社だ。何百回と聞いた五円玉が賽銭箱に入る音を聞き、鈴を鳴らす、そして二回手を叩き深々と頭を下げる。
「神様ァ…どうか、どうかぼくに…家族をッ…」
そして無駄に五円玉が消えてくのだ。
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そっと目を閉じる。凄惨な過去は今を縛る。いい事なんてひとつも無くても今がある。今が…ある。
……………………………
……………………
果たしてそうだろうか?過去へと風化していく今を目の前にしてもそれが言えるのだろうか…燃えて崩れていく家、どんなに探しても見つからない宝物。紡ぎ守らなくてはいけない明日も見失いそうになる。
「はぁ…」
ふと扉の向こうにいる彼を隙間から見る。どうやら彼も己の過去を振り返っているようだ。いくらハチマン・ヒキガヤを名乗ろうとその体は既に比企谷八幡として確定しているのだ。ハチマン・ヒキガヤに比企谷八幡は殺せない。
「しっかりと向き合え…」
私みたいな過ちを犯すな。過ぎてからでは遅いのだ、何もかも…。
意識は再び闇に包まれていく。さてと、眠るか…。
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ゆっくりと目を開ける。随分と胸糞悪い夢を見た。重たい体を起こしステンドグラスから漏れる朝日を睨みつける。普通こういう日って雨とか曇りじゃないのか?
空気の読めない天気だな、と悪態をつきながらシャワーを浴びる。サッパリしたら朝御飯を用意して1人もっきゅもっきゅと食べる。昨日殆ど一日四人で過ごしていた為少し微妙な感じがする。
「ごっそさん…」
食べ終わるや否や歯を磨いてコートを着ずに適当に見繕った服を着て外に出る。
宛もなくフラフラと街を歩く。じゃが丸くんを売ってる出店に出向き味付けにケツをつけ…アドバイスしたり、書店に入って何冊か本を買ってみたり、ぶらりオラリオ旅を満喫していた。
(結構楽しんでしまった…)
晩飯のために八百屋系ファミリアの店で買った野菜の入った袋を抱えて歩く。やはり袋ってのはこういうのでいいのだ。ザニスとかは重すぎるのだ。そうそう、ザニスについては聞くこと聞いたら二度と悪事を働けないように手足をズタズタにしてソーマ・ファミリアの地下牢にぶち込んどいた。
(ままま待ってくれ!金なら幾らでもやる!だからここから出してくれ!頼む!)
(ごめんな…あんたの毒牙が二度と俺達や罪の無い人達に及ばないようにするにはこれしかないんだ。…それにアンタはやらかしすぎたんだ)
(や、やめッ……ギャアアアアアアア!!!)
頭を軽く横に振って忘れようとする。しかし瞼にこびり付いた光景は取れることは無い。
(一生付き纏うんだろうな…)
とんでもないメンヘラに好かれたもんだ。
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鍛錬を始めて既に11日…次の日はハチマンに教会に呼ばれたから実質訓練最終日ということだろう。
今は小休憩と言うように剣を下ろしているアイズさんの前で息が盛大に上がっている僕は自分の体を見下ろした。
着実に実力が付いてきてる気がする。
ティオネさんが集めてくれた情報によると戦争遊戯が始まるのは4日後ということらしい。移動のことを考えると居られるのはあと2日…アラル神父の言っていた2週間は訓練できなかったけど十分すぎる成果だ。
「たっだいまー!」
噂…ではないが思考をすればティオネさんやティオナさんが肉や魚を持ってやって来てくれた。このお陰で僕とアイズさんは訓練できている。
無理やり食料を胃に詰め込む。焼いた肉でも魚でも、ハチマンが作ったのとは天地ほどの差がある。アイズさん達も少し食事に違和感を覚えたそうだ。余談だが、あれからロキ・ファミリアでは食事の度にベートさんを筆頭に冒険者達が一口食べると少し首を傾げるという謎の現象が起きてコックが涙目になっているらしい。
「続き、お願いします!!」
3人が食べ終わって食後の休憩も終わった所を見計らって訓練を申し込む。今度は3対1だ。武器を交わし、転がり、指南される内容をひたすら反復しながら、今日も鍛錬に明け暮れた。
次の日
早朝、アイズさん達にお礼を言い、ハチマンの待つ教会えと向かう。敷地内に足を踏み入れ、墓地の奥の端っこにある【EVA】さんのお墓に腰を下ろして水をあげているハチマンの元に歩み寄る。彼の脇には大荷物が置かれている。
「ハチマン…」
「ああ、ベルか…案外早いな」
行くぞ、と荷物を背負ったハチマンに誘導されて教会を抜けて歩く。どこかハチマンの雰囲気が黒い気がする。
「どこに行くの?」
「一応、戦争遊戯の会場に向かうけどその前に寄り道してこうと思ってな」
「ふーん…」
暫く見慣れた道を歩いていると着いたのは僕達の馴染みの店である【豊饒の女主人】だ。店の前には神様とお店の店員達が揃っている。
「ベールーくーん!!」
「!…神様あ!」
神様とベル。お互いの再会を噛み締めていたり、シルさんからお守りを貰っている中、ハチマンは荷物の忘れがないかチェックしていた。
「アンタも輪に入りな!」
ミアさんに肩をバチコーン!と叩かれたハチマンは肩を擦りながら僕たちの方にやって来た。すると神様は僕たちの首に腕を引っ掛けて顔を引き寄せた。どことなくハチマンの顔が赤い、きっと僕もそうなんだろう。
「いいかい、2人共、あまり無茶しないで帰っておいで!特にハチマン君…君には色々と負担をかけてしまったよ、ごめんね」
「や、俺は…」
「グダグダ屁理屈を言わない!ほら!勝利の栄光が君達を待ってるよ!行ってらっしゃい!」
「行ってきます」「行ってきまーす」
背中を押されて一緒に一歩を踏み出す。ハチマンと自然と目が合い、少し微笑む。
「じゃあ、帰る為に勝とう!ハチマン!」
「そうだな…」
足を揃えてオラリオの門に行くと、馬を連れた門番さんが僕達を見つけるなり手を振ってくれた。
「おーーい!」
「バン・モンさん…」
「えっ、ハチマン知り合い?」
「まぁな、毎日外で訓練してる時に顔覚えられてな」
駆け足で門番のバン・モンさんに駆け寄る。
「ほら、預かってたお前の馬、【トゥ・ザ・ハイヤー】だッ!」
黒い馬、落ち着いてハチマンをじっと見ており、ハチマンがどうどう、と鼻や顎を搔いてあげると、嬉しそうに尻尾を振っている。
「今日はお前達の晴れ舞台だ。お前達をよーく見てる出店の皆が餞別に俺に預けていってくれたよ」
大きな袋を預けられる。中を見てみるとパックには言ったじゃが丸くんや焼き鳥、刺身、お菓子、色々詰め込まれている。
「ありがとう」「ありがとうございます!」
「いいんだよ、それ食って勝ってこい!良い宣伝になるからな!リトルルーキーと亡影、2人を支えた出店の味ってな!」
「売上落ちるぞ」
【トゥ・ザ・ハイヤー】に乗ったハチマンの後ろに乗る。ハチマンのコートをきゅっと握る。なんだろう、気分はおとぎ話のお姫様だ……何か大切な物を失っていく気がする。
「ベル、掴まってろよ、こいつ性格は大人しいのに足はめちゃめちゃ早いからな」
「えっ?そうなn「ハイヤー!」うまだっち!?」
ズキュン!と飛び出し、ドギュン!と加速し、バキュン!と駆け抜け、ブギュン!とコーナーを攻める。勢いで最初は目を瞑っていたけど段々慣れてきて目を開けると絶景が広がっていた。
「いい眺めだよなぁ…」
感慨深く話す彼の声をBGMに僕は景色を楽しむ事しかできなかった。
「そうだ、一つ気がかりな事があんだよ」
「? どうしたの?」
「今回の戦争遊戯のフィールド、ギルドの職員がボヤいてるのを盗ty…小耳に挟んだんだが、森があるらしい」
今盗聴って聞こえたけど聞こえてないフリをしよう。
「森?それはあるんじゃないの?」
「いや、本来そのフィールドには森なんてなかった。1ヶ月前までは更地だったのに森林が出来上がってんだ」
「1ヶ月…!?」
木は何年も掛かって大きくなる…なのに1ヶ月で森林レベルまでに成長するなんて普通有り得ない。
「絶対に何かある、近づくなよ…死ぬぞ」
命の宣告…彼は低く思い声でそう言った。
ハチマン曰く距離は結構あるようで明日の朝には着くとのことらしい。焚き火で餞別に貰ったものを焼き直したり調理して食べる。食べ終わったら近くの川で腰に布を巻き2人で水浴びをする。
「ハチマン…それって…」
ハチマンの胸を見ると心臓辺りを中心に怪我の跡が色濃く残っていた。心臓周りの血管が黒く浮かび上がってまるで花が咲いているように錯覚する。
「跡まで消す時間が無くてな…これが終わったら消しに行く」
へらっと笑うがきっと無理をしているんだろう。ハチマンに無茶をさせた自分に途方もなく無力感を感じた。
寝袋にくるまり、他愛のない話をする。終わったら何をしようか〜とか、祝勝会は【豊饒の女主人】で開こう〜とか、今度一緒に訓練しよう、と約束した。
次の日
あさイチで出発しする。2、3時間すると会場へと到着する。
「っと…着いたな。【トゥ・ザ・ハイヤー】預けてくからエントリー済ませてくれ」
僕を魔腕で降ろし有無を言わさず去っていく。やれやれ、ハチマンは世話が掛かるなぁ…。
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馬を預けて【ヘスティア・ファミリア】の陣地に向かうと馴染みのあるメンバーが出迎えてくれた。
「ハチマン!!」
ヴェルフが駆け寄り、命さんとリューさんが遅れてやってくる。
「怪我は大丈夫なのか?」
「ああ、この通りだ」
ガシッと腕を構えてくるからそれに応じて前腕をクロスさせるとヴェルフはニヤッと笑った。
「ヒキガヤ殿、この度はヤマト・命、受けた恩を返しにヘスティア・ファミリアに加入することにしました、以後、よろしくお願いします」
「おう、頼りにしてる」
相変わらず固い性格してるが、いい人なんだろう。
「ハチマンさん…」
「リューさん、すみません、巻き込んで」
「友が困っているんです、ここで手を貸さなくてはエルフの名が廃ります」
「それに作戦だって…」
「いいんです、そんな物にこだわっていたら、リュー・リオンの名が廃ります」
そうですか…と言うとベルが駆け寄ってくる。
「エントリー終わったよ!戦争遊戯は明日の10時からだって!」
「マジか…リリスケ…ちゃんとバレてねぇか?」
「信じよう、リリはやれるよ」
そう、リリルカはここにいない。【アホロン・ファミリア】に潜入している。この前俺が誘拐したアポロン・ファミリアの構成員のルアンに魔法で成り代わっている。因みに本人はミアハさんの所で監禁している。内部の情報とかは少し揺らしただけでベラベラと決壊したダムみたいに喋ってくれたからものすごく助かったりする。
「明日の10時ですか…」
「それまでに英気を養っておきましょう」
各々ゾロゾロと動き出すのを俺は見ていたが…
「それも大切だが、作戦の確認は?」
「「「「そうだった!(でした!)」」」」
「ったく…」
少し幸先が不安になって来たぞ…。
「ザッと確認な、最初はリューさんが西側の壁側、俺と命さんが東側の壁から襲撃を仕掛ける。変身したリリルカが俺達に戦力を割かせてる間にリリルカが南側にある唯一の城門を開けてベルとヴェルフがそこから侵入、リリルカから城の構造を粗方聞いた後にヒュアなんたらとベルが一騎打ち、ヴェルフは邪魔してくる奴らの妨害。何か疑問に思ったことは?」
「ハチマンと命さんが一緒に行動する理由は?」
と、ベルが質問を投げかけてきた。
「18階層でも見たと思うが、命さんの魔法は重力系の魔法だ。それで雑兵達を足止めしてるうちに俺がパパっと片付ける算段だ」
「ハチマンさんはその魔法に耐えることができるのですか?」
「まぁ、大丈夫だと思いますよ」
ベル(おっさん)との訓練で悪魔体のおっさんを担がされたんだ。これ以上重くなるなら無理だが…大丈夫だろう、うん。
「他には?」
すっ、とヴェルフが手を上げる。
「ドンパチには関係ないが…今晩の飯はどうするんだ?」
「「「あっ……」」」
すると俺とヴェルフ以外のメンツが気付いたような声を上げる。用意してなかったんだ…まぁ、予想出来てたことだ。
「俺が作ろうか?」
「「や、やったーーー!!」」
ヴェルフとベルが万歳して喜ぶ…バカヤロー、んな事されたって嬉しかねーぞ!
「まぁ、有り合わせで適当に作るから、余り期待すんなよ」
その日は5人で焚き火を囲み明日に備えて英気を養った。本番は明日、失敗は許されない…勝てる気はするが如何せん嫌な予感がする。いつも以上に気を付けないとな。
そ し て よ が あ け た
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戦争遊戯はハチマン達だけではなく、オラリオにも大きく影響がある。世界一熱い町が催す大イベントの一つに数えられている。各地にある酒場などの冒険者が交流する場においてとてつもない盛り上がりを見せていた。
「お前はどこに賭けたんだぁ!?」
「勿論!アポロン・ファミリアよ!」
「俺もアポロン・ファミリアだけどなぁ…」
「おっ、どしたよ」
「神共が大穴狙いやがってヘスティア・ファミリアに賭けてやがって倍率さげてやらー」
「そりゃ、迷惑だな…モルド!お前はどこに賭けたよ?」
「あ?ヘスティア・ファミリアだ」
「はぁ!?お前どうしちまったんだよ!」
「今に見てろ…度肝抜かれるぜ…」
そんな会話があったり…
「さぁ!今回の戦争遊戯の実況はこの私ィ!イブリ・アチャー!そして解説を務めてくれるのは〜?」
「俺が!ガネーシャだッ!!」
「ガネーシャ様ぁ!今日の戦争遊戯、ヘスティア・ファミリアが劣勢だと思われていますがどう思いますか!?」
「俺がッ!ガネーシャだッ!」
「成り立たない解説あざーっす!!(泣)」
またもや場所は変わり、バベルにて。
「それじゃあ、ウラノス、『力』の行使の許可を」
【許可する】
ヘルメスの問に答えるようにギルド本部の方向から重々しく響き渡る宣言を聞き届けたようにオラリオ中にいる神々が一斉に指を弾き鳴らした。瞬間、酒場や街道の虚空に鏡が現れた。
「戦争遊戯は後10分…ベル君…ハチマン君…へ?」
緊張故に重かった頭を上げ、鏡に写った光景にヘスティアだけでなく、その場に居合わせた神々も驚愕する。
その映し出された光景には薄い虹色の玉が空を待っていた。目で追うその出処は…今回の戦争遊戯で注目されている2人だった。
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「今の時間は?」ジャブジャブ
思い出の詰まった総武高校の制服を身にまとったハチマン・ヒキガヤが隣のライトアーマーの少年に問う。その右手には小さな入れ物が持たれ、左手の小さな筒を出し入れしていた。
「えーっと、9時50分だね。後10分!」ジャブリ
同じくその少年も彼と同じ動作をしていた。その顔はどこか落ち着いている様だ。
「「フ〜〜〜〜」」
一斉に筒の反対側、何も付けてない方に口をつけ息を吐く。すると綺麗な球体が空に登っていく。
「あの〜、ハチマン殿?何をしてらっしゃるのですか?」
恐る恐るヤマト・命が問う。
「シャボン玉、差し入れの袋の一番下に入ってたんですよ。この前遊んでやったガキンチョ達が入れてくれたんでしょう…一番最初に、コイツと一緒にね」
胸ポケットから一通の手紙を出し、ヒラヒラと見せびらかす。
「へえ〜それはよかったな〜…じゃなくって!どうして今なんだよ!」
赤髪の青年、ヴェルフがノリツッコミをかます。
「ベルがどうも緊張しちまってな、リラックスさせる為だ。じゃなきゃ俺もやんねーよ」
「うん…落ち着いてきたよ…ありがとうハチマン!」
何度かシャボン玉を飛ばしていたベルから容器を預かり、それを荷物にしまうと一同はアポロン・ファミリアの拠点がある方角に目を向けた。
朝日が彼らを照らす。
「さてと、行こう!皆!」
「太陽を墜す時間だ」
「負ける気がしねぇ…!」
「いざ尋常にッ!」
「行きましょう」
ダッ!と駆けるが彼は知る由もなかった。この戦争が彼の人生のターニングポイントとなる事を。
いかがでしたか?
まぁ、人生に苦悩するのは誰だってあるはずです。人一倍苦難や苦悩に敏感な比企谷八幡という少年はきっとずっと悩み続けるんでしょうね。