「なんだ、これ…」
ヴェルフはただ呟く事しかできなかった。
「ガアアアアァァァッ!!!」
「ウ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」
「こんなのって…」
リリルカが驚愕の表情で彼等の戦いを見ていた。
「これは…決闘と言えるのでしょうか…」
「いいえ、これは殺し合いに分類されます…」
血が飛び散る。鎧の欠片が宙を舞う。何度目かの鍔迫り合いが起こり、2人の間に火花が激しく散っている。お互い一歩も引かず、その刃が体に、鎧に食い込む。
「葉山ァァァァァ…!!!」
「比企谷ァァァ…!!!」
「「うおおおおおおおおおおおお!!」」
そしてお互いに刃を引き、肩から反対の脇腹にかけて大きな刀傷を作った。
「「「「なっ…!?」」」」
ブシャアアアアアアアァ…
先に崩れたのはネオだ。両膝が着いた所にハチマンが頭を掴む。腕に魔腕を纏うように重ね、思い切り殴ろうと振りかぶるが再起動したネオに掴んでいる腕を掴まれ捻られることで体制を崩してしまう。
「まずいっ!」
それを見ていたヴェルフが叫ぶが時既に遅く、体制を崩したハチマンの腹をネオが思いっきり蹴りあげるとハチマンは血を撒き散らしながら天高く登っていった。
「うおおおおおおおお!!!」
ハチマンの体は小さな点になるまで登っていった。ネオはそれを見届けると一息着いてヴェルフ達に向き直った。
「今度は俺達をやろうって訳か…」
一同がネオ・アンジェロに警戒するが、今度はベルの方に向き直った。
「がああああああああああぁぁぁッッ!!!」
ベルの拳がヒュアキントスに刺さり、丁度戦闘は終わったようだ。ベルは一息付き、一同の元へ向かう。ネオと目が合い、ベルが緊張をするが、ネオはベルがちゃんと一同に混ざるのを待っていた。
「一つ…いいかい?」
「「「「「!!」」」」」
ネオ、いや、葉山が口を開いた。
「君たちにとって比企谷八幡…いや、ハチマン・ヒキガヤとは?」
兜を外し、真剣な眼差しで問いかけた。
「家族です」
ベルが
「相棒だ」
ヴェルフが
「兄のような人です」
リリルカが
「恩人であり、尊敬に値する人です」
命が
「かけがいのない友」
リューが
それぞれが応えた。それを聞いた葉山は一瞬きょとんとした後、少しだけ、ほんの少しだけ微笑んだ。誰にも分からない位だ。
「だってさ、比企谷…聞こえるかい?」
葉山隼人は、涙が出る程蒼い空を見つめた。
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およそ上空15kmハチマン・ヒキガヤは空にいた。その目線の先には雲もなく、誰もが見たら感嘆しそうな程絶景だった。
「綺麗…だな…」
………のか?
「体に力が入らないな…」
…め…のか?
「これが死ぬってやつか…」
…めるのか?
「短い人生だった…」
もう諦めるのか?
「もうどうでもよくなってきた…」
諦めるのか!?
「ッ!…違うッ!!!」
そうだッ!
「まだだ!まだ終わっちゃいない!」
全身に力が戻る。体制を変え、空ではなく地に目を下ろす。ちっぽけだが、皆と葉山が目に見える気がする。
「まだッ!約束も果たしちゃいないッ!
よく言った!!
「おい!聞こえるか!?」
勿論ッ!
「俺に力をくれッ!もう情けなく負けないような力をッ!守りたい奴らが…家族が…俺を待ってるんだ!だからどうか…守る力をくれ…」
だったら手を伸ばせ!!
目の前に見覚えのある扉が現れる。少しだけ開いた扉だ。幻覚なのかもしれない…それでも俺は手を伸ばした。扉の隙間に手を突っ込み、もう片方の手で扉をこじ開けようと力むと、少し開いた扉は体の3分の1はねじ込めるほどの隙間になった。ふと手に何かが当たり、我武者羅にそれを掴む。
勝機を零すなッ!掴み取れッ!!
「ぬううううううあああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァッ!!」
全身全霊で引き抜く…その瞬間、俺は紫炎になった。
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「空の色が…」
「変わった!?」
命とリューが声を上げる。丁度直上の空が紫になったからだ。ベルとヴェルフとリリルカはまるで待っていたかのように空を笑いながら見ていた。
「………」
それを黙って見ている葉山の前10mに紫の隕石とも取れる塊が堕ちた。激しい衝撃と共に爆炎が広がる。
「そんなデタラメ…有り得たのか」
眩しさにより、閉じていた目を開いた頃には辺りは紫の炎が燃え移り、地獄のような光景に風変わりした。より一層燃えている所に影が見える。影は右手を振るい、炎を払った。
「待ちくたびれたよ…比企谷」
そこには比企谷八幡が立っていた。髪は銀色に染まりきり、目は微かに赤くなったが、確かに比企谷八幡だ。その体には紫のオーラが纏われ、そのオーラは人型にしては異形で、モンスターにしては人と似た形、上手く形容するなら悪魔のような形をしていた。オーラは彼に一拍子遅れるようにユラユラと動いている。
「さあ、第2ラウンドと洒落込むか」
「あぁ」
ネオ・アンジェロが剣を構えると手ぶらの八幡は右手をすっと横に出した。
「来い…リベリオン」
右手に炎が集まり、炎が晴れると銀一色の大剣が現れた。鍔に当たる部分の中央に二本の角が生え、口の開いた髑髏の彫刻、その反対側には口の閉じた顔が彫刻されている。それを持ち上げ、切っ先をネオに向ける。すると同じく剣を持ったオーラ状の魔人も同じポーズをとる。
ダッ!!
お互いが一斉に飛び出し、剣を振りかぶる。そしてお互いの剣がぶつかり合うが、その数コンマ後にネオは吹き飛んだ。ハチマンの魔人が遅れて攻撃したからだ。
「チィッ!!」
体制を立て直すが既にハチマンは接近しており、目が合う頃にはハチマンの拳が目の前に迫っていた。
「無駄ァ!!」
とんでもなく強い拳が腹に刺さり、再び吹き飛び、壁に衝突する。揺れる視界の中、ネオの眼前にハチマンが猛スピードで突進し、リベリオンで無数の突きを繰り出した。
「うおあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
ガギャギャギャギャギャギャギャギャ!!
しかし、その剣先は葉山の体に刺さることは無く、鎧のみに当たっていた。無数の突き故、鎧に亀裂が入る。それでもハチマンは手を止めずに絶えず技を繰り出している。
とうとうその亀裂が全身に入った頃、思いっきりハチマンが振りかぶる。後ろの魔人も相まってとんでもないプレッシャーだ。
「これで…終いだァァァ!!!」
その一撃は鎧を砕け散らせ、葉山隼人の体を瓦礫の更に向こう側へ吹き飛ばせた。丁度魔力も切れたのか魔人は消え去りハチマンは地面に膝をつけてぐったりしている。そこに仲間達が駆け寄ってくる。
「「ハチマン(様)(殿)(さん)!!」」
「大丈夫…?」
ベルがしゃがみ、ハチマンの顔を覗き込む。するとみるみるハチマンの容姿は元に戻り、彼の目がうっすらと開かれる。
「少し、いいか?」
「うん!」
ハチマンの手を取り、彼を立たせる。ベルやヴェルフの肩を借り、葉山の元へヨロヨロと歩いていく。
「おい、平気か…?」
「うっ…うぅっ…」
彼に切られた切り口から白い物体がこぼれ落ちる。
「お前っ…これは…」
ハチマンが拾い上げる。それはつい2,3ヶ月前まで嫌という程見ていたものだ。そう、奉仕部の部室(仮)があった事を示すルームプレートだ。シールが貼ってあり、何度も貼り直されたのか角度が少し変わっている。
「君が…持つに値する物だ…君は守ってみせたんだよ…俺のグループも…奉仕部も…千葉でさえも…」
「……」
「グループに関しては…僕が無駄にしたんだけどね」
葉山に腕を捕まれる。苦しそうな表情をしているが笑っている。目じりには小さい小さい涙が見える。
「ありがとう…葉山…今は休め、怪我治ったら顔見せに来いよ。そん時に、沢山話そう…今までできなかった分も…な」
「ははっ…君から誘ってくるなんて…嬉 しい…な」
パタンと力なく倒れた葉山…彼は倒れても笑っていた。ハチマンは立ち上がり、葉山を見ている。
「ハチマン…この人は?」
ベルが静かに尋ねる。周りの面子もそれを知りたそうにハチマンを見ている。少しも悩むことなくハチマンはため息を一つ吐いて答えた。
「俺の、友達だ」
キョトンとしている皆を他所にハチマンはその場を立ち去る。暫く歩いて立ち止まり、振り返る。
「帰ろうぜ?俺達の
「…ッ…うん!!」
そして皆で歩み出す。己の帰るべき場所へと。
「!!」
仲間たちと歩いてる中、ハチマンは嫌な視線を感じた。フレイヤみたいな目線ではなく、もっとこう、おぞましく、ドロドロとして、恨みの籠った視線だ。
「ハチマン?」
「なんでもない、さ、行くぞ」
視線を辿ると少し離れた所に森があった。
余談だが、俺と葉山の戦いは放送されなかったらしい。神様曰く少年少女や他の冒険者に悪影響を及ぼす内容だった為、バベルだけで限定公開されてたらしい。
別に見られたい訳でもなかったが、解せん。
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ー【バベル】ー
葉山と八幡の戦いを見届けたヘスティアは心底嬉しそうに微笑む。最初は目つきの悪い少年だと思っていたけど、彼の心の優しさに触れ、彼が眷属になってくれた事を本当に喜んでいるのだ。
しかし今は喜びを噛み締める時ではない。隣でガタガタと震えているアポロンに向き直る。
「ヘッ…ヘスティア…」
「アーポーローン…!」
「ヒェッ…」
「覚悟はできているだろうなぁ?」
地獄の底から響くような低い声に、アポロンは盛大な尻もちをつく。
ベルやハチマンを虐げられ、ホームを破壊され、町中を追い回されて、ことごとく見下され。果てしない鬱憤が爆発寸前と化している女神を前に、アポロンはガタガタと震え上がり、はらはらと涙をこぼしていく。
「勝った暁には、要求を何でも呑むと約束したよなぁ?」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…」
「ホームを含めた全財産は全て没収、【ファミリア】も解散ーそして主神である君は永久追放、二度とオラリオの地を踏むなァーーーーーッ!!」
「ひぎゃあああああああああああああっっ!!」
都市を震わせる絶叫が響く。ハチマン達の知らない所で、また因縁の争いが幕を下ろした。
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戦争遊戯が終わり、早2日。俺達は巨大な屋敷が建つ、広い庭の中に立っていた。
「じゃーん!どーだ、これが今日からボク達のホームだ!」
『おお〜〜っ』
見上げるほどの、三階建ての大きな邸宅だった。神様が言うには中庭と回廊までも備わっているらしい。敷地には背の高い鉄柵に囲まれており、花や庭木が植えられた広い前庭も備わっている。
「しかし、本当に【アポロン・ファミリア】のホームを乗っ取ってしまいましたねぇ…」
「ふん、ボク達は理不尽にホームを潰されたんだ、文句は言わせないぞ!」
屋敷を見上げるリリルカの言葉に、ヘスティアは堂々と言ってのける。
「賠償金もたっぷりある、趣味の悪い彫像やらの撤去を含めて屋敷全体は改装しよう!何か要望があったら言ってくれ!」
「へ、ヘスティア様!どうかお風呂の導入を!」
「ヘスティア様ー!作業用の炉を造ってくれー!」
「まあまあ、落ち着きたまえ、胸を張って【ファミリア】を名乗れるようになったんだ!先にエンブレムを決めようじゃないか!」
予め用意していたのかごそごそと画材と画板を取り出して絵を書き始める。彼女を中心として羊皮紙を覗き込む俺達は家族のように身を寄せあった。
「へっへーん!ずっと前から考えていたんだ!」
「じゃん!」と完成した羊皮紙を見せつける。
「これは…炎と」
「なるほど。ヘスティア様の象徴は護り火なのですね」
「鐘…ベルか」
「そんなことはどうでもいいんですっ、このエンブレム、要はヘスティア様とベル様ということではないですか!」
「いいだろー。この【ファミリア】はボクとベル君が始めたんだから」
やがて俺とベルに羊皮紙が渡る。
「ハチマン…どう?」
「最高だ…左肩に刺繍を入れたくなってきた」
既にオオアマナが入っている右肩の逆には何もなかった為、寂しいと感じていた所だったからだ。
「さぁ、君達。今日が本当の意味でボク達の【ファミリア】の門出だ。おかえり…」
『ただいま!』
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ーepisode of Spadaー
魔界が管理する地上に神が不祥事を起こした。一時的に世界(地上だけだが)の時が止まり、天体の運行も止まった。相も変わらず杜撰な管理体制に痺れを切らしたのかムンドゥスが俺に天界に赴き事情聴取をするよう命令した。ついでに敵情視察も。
「よう、スパーダちゃん!まーたムンドゥス様から雑用押し付けられたのか?相変わらず下っ端根性が抜けないnあああ!!!」
近くを飛んでた
サイズはあるがなんて事はない。
「五月蝿いぞ、鳥頭…」
ポンと投げると勢いでどこまでも飛んでいく。多少は懲りて暫くは絡んでこないだろう。
「行くのか?スパーダさん」
デカい蜘蛛の形をした魔物、ファントムが近付いてくる。こいつの事は余り好きではない。ムンドゥスにも俺にもヘコヘコしてて媚びてるようで好感が持てない。
「あぁ、ちょっと天界まで」
「お気を付けて…」
低い頭を更に下げるのを横目で流しつつ、翼を広げて上昇する。暫く昇ったと思ったら閻魔刀を出して頭上に向けて大きく一閃を放つ。次元は裂け、空間に大きく穴が空いたらそこに飛び込む。
一瞬で地上まで出る。相変わらず青い空をしている地上。こんな所で生活できている人間に嫉妬に近いものを感じる。しかしだからといって襲撃するのも悪魔げないので再び空に昇る。
2度目の次元斬で天界に到達する。そこは魔界とは全く違く、地面が雲のような物で構成されていた。空には青が広がっており、またもや嫉妬を抱く。
「出迎えは…ないか」
組織として本当にやっていけるのか、と不安に駆られるが他人、しかも神なんて心配する道理がない為、ボスがいそうな場所に向かう。余り騒がれても癪だから人間体になって宛もなく歩く。この姿嫌いなんだよな…。
(誰かに聞くか…)
キョロキョロと周りを見渡すと
コンコン…
「………」
返事がない…聞こえなかったか?
トントン…
「…………………」
返事がない…集中しているのか?
ドンドン…
「すみませーん」
「…………………………」
返事がない…居留守か?
プチッ…
流石に温厚で知られたスパーダさんもキレるぞ?わざわざ来てやったのに居留守こくたぁ戦争の火蓋スパスパ切ってる事と同意義だぞ?
「殺す…」
「だーーー!婚約はしないって!!何度言ったら分かるんだい!?しつこい神はモテないぞ!!」
バン!!と強引にドアが開く。目の前には髪はボサボサで寝巻きも着崩している女神が呆れた表情で立っていた。
「って…あれ?」
その女は俺の姿を見るや否や汗をダラダラと流す。
「誰が貴様に婚約なぞすると思っているんだ?」
「あ、悪魔ッ!?」
「居留守使うなんていい度胸してるじゃねぇか?」
スパーダを取り出し、首元に当てる。
「ヒェッ…」
「まあいい、ここで一番偉い奴の所に案内しろ」
「は、はぃ…」
彼女に先導される形でゆったりと歩いていく。
「どうして、居留守を使った?」
「ここ最近婚約を迫ってくる男達が多くて…今回もその類なのかなぁって思いまして…」
「…………」
婚約か…俺も闇に生まれて………数えてねぇや。このまま独身であり続けるのだろうか…手っ取り早く女悪魔でも捕まえて結婚すれば仕事も無くなるのだろうか…。いやいや、どうせムンドゥスに人質に取られるだけだろう。
「どうか…したのかい?」
「ここは…活気が無いな…」
「みんな、仕事をしないんだ。娯楽を貪って…人間達をこれっぽっちも導こうとしない…堕落しきってるよ」
「お前もな」
「うっ…」
そんなこんなで女神…名をヘスティアに暫く案内されるとデカい神殿にたどり着いた。
「ここのゼウスって神様が最高神だよ」
「案内…ありがとう」
するとヘスティアはキョトンとこっちを見ている。
「なにか?」
「い、いやっ、感謝できるんだなぁって…」
「悪魔とて礼節は弁える」
呆れながら神殿の中に入っていく。奥からワイワイと騒ぎが聞こえるが慌てることもなくその音源に向かっていく。
「まてまて〜〜い!」
「キャー!ゼウス様のエ〇チー!!」
「むほほほ!つーかまーえた!」
そこには色ボケた爺が女神を追っかけ回していた。カオス…とまではいかないが頭が痛くなるような光景だ。
「おい」
すると動きを見ピタリと止めた爺はグギギギと首を回し、こっちを見た。さっきのヘスティア並に汗を流している。
「なんだ、悪魔か…Foooo!焦ったー!ヘラだったら殺されてたわい!ガハハハハ!!」
「ムンドゥスの遣いで来たスパーダだ。世界の時と星々の運行が止まってたのでな…事情聴取に来た」
「あ〜〜…あれね?はいはい、浮気相手の子供が余りにも可愛くてな?衝撃で止まったのじゃ」
衝撃で時と天体止めるなんて…流石全知全能…。
「浮気って…仮にも神だろ…」
「お主は悪魔にしては誠実そうではないか?ん?」
「安心しろ、俺にだって愛人の20や50はいる」
「わほほ、やっぱりそうじゃろう?」
「あぁ、剣も女も人生さえも思い立った時こそ至宝なのだから…」
「あっ!いい台詞!もーらい!」
「………」
随分とマイペースな最高神だな、ペースが乱される。ていうかこんなに喋ったのは始めてだ。
「ま、他にも色々と聞きたいこともあるから
「いいよいいよー」
ゼウスに背を向けて神殿を去る。すると出口の柱にヘスティアが寄りかかっていた。退屈そうに石ころをコロコロと足で弄りながら。
「あっ!やーっと終わったんだね!」
とてとてと駆け寄ってくるヘスティア。そのグイグイくる性格をした奴は魔界にはいない為、少し新鮮だ。
「何の用だ」
「スパーダ君…だっけ?ここに暫くいるんでしょ?すると泊まる所に困る訳だからボクの神殿に来るといいよ!」
胸に手を当てプルんと揺らす。
「要件は?」
「魔界とか、君にとっての人を教えて欲しいなーって」
まあ、機密情報とか洩らす訳でもないし、厚意に甘えるか。
「分かった。世話になる」
「いやったぁ!」
そんなこんなで彼女の神殿に入ると、それは沢山の書物があった。読んでいいか?と聞くと話しながらでいいなら、と快諾してくれた。
「それじゃあスパーダ君?1つ目の質問だ。好きな食べ物は?」
「人肉、動物の肉もいいが、今の所人がいちばん美味い。筋肉が多いのが俺的には好みだ」
「そ、そうかい…2つ目の質問、んー、趣味とかは?」
「特には無いが…鍛練…人間観察…仕事…どれも違うな…強いて言うなら音楽?」
「音楽?悪魔も音楽を嗜むのかい?」
「今の所俺しかやってない…人間の奏でる音はどれも素晴らしいものだからな、俺も勉強してるところだ」
「へ〜、後で聞かせてくれないかい?」
「……いつかな」
そして俺の隣に読破された本が2000冊位積まれた時だ。
「じゃあ最後に、君にとっての人間は?」
ページを捲る手が止まる。
「格好のいいエサ…なんて胸を張って言いたいがきっと嘘になってしまう。今でこそ俺の所の派閥が人間界を支配しているが、もし何かしらのきっかけで人が自由になったらどうなるか…好奇心を擽られる」
「君は悪魔なのに、人が好きなんだね」
ハッとヘスティアを見ると彼女は真っ直ぐ優しい目で俺を見ていた。別に心が動かされたわけではないが、核心を突かれたようでギクッとする。
「んなわけないだろ、愚かな人間を好きになるなんて有り得ない。争ってばかりで、俺達悪魔が導いてやらねーと何もできやしない鈍弱な生き物なんだから」
「でも、そんな生き物を見放さないのが君だ」
「………」
「君には良心があるよ」
「俺に…叛逆しろというのか?」
「そ、そんな事ないよ」
ギロリと睨むと慌てて否定する。
「今日は色々と質問に答えてくれてありがとう。明日はボクの神友に紹介してあげるよ!」
いや、いいと言おうとしたが敵情を知れるのだ。本を読みたい欲は抑えて承諾する。
「今から寝るけど、襲わないでくれよ?これでも処女神なんだからね」
「鉛玉が欲しいなら言えよ」
「ジャストキディーン…」
そこらの床に伏す。はぁ、こんなのがずっと続くと考えると頭が痛くなる。叛逆…か。
━━━━━━━━━━━━━━━
ー時は過ぎ…
ー【ヘスティア・ファミリア】ー
ヘスティア・ファミリアの一室に買い込んだ大量の古本を置いている図書館がある。そこで本を読んでいる一人の青年、ハチマン・ヒキガヤがいる。
「あれ?ハチマン君?」
「神様…どうしたんですか?」
「いや、皆出掛けちゃってね、退屈してたんだよ」
椅子に腰かける彼の対面にヘスティアも座り、頬杖を付いてベルとリリルカが最近イチャコラしてないか…とかクソほどどうでもいい話を聞かされる。
「ねえ、ハチマン君」
「はい?」
「ハチマン君は…人をどう思う?」
ハチマンのページを捲る手が止まる。ヘスティアをチラリと見ると真剣そうに彼を見つめる。
「嫌いですよ…争ってばかりで、全く学習しない」
「………」
「でも、本とか音楽とか…こういうのは飽きさせてくれないから五分五分って所ですかね」
「そうかい…」
「ええ」
ヘスティアは満足そうに微笑むと窓から外を眺めた。
「君は似ているね」
そしてハチマンのページを捲る音が室内に響いた。
如何でしたか?八幡と葉山の決着が着いて良かったです。
感想や高評価をつけて頂くと作者は逆立ちをして喜びます。
そして次回!『病んだオラリオにボッチを添えるのは間違っている』乞うご期待ください!