少し短いですけど、ヤンデレ回です。
ダメだ、俺にゃヤンデレも恋愛描写も書けない。
一応キャラ崩壊注意です。
窓から漏れた光で目が覚める。目を開けると新しい自室の天井とはまた違う天井が見える。両手の自由が効かないのは縛られているからだろう。
「あ、やっと起きた…」
声のした方に首をグギギギと動かすと、寝てる俺を
「アイズさん…どうしてまた」
ハッと己のヘマに気付くが遅い、またやらかしてしまった。慌てて訂正しようとするがアイズさんはワナワナと震えている。
ギリリリ…
「いっつ!」
手首を縛る縄をきつく締められる。
「何度言ったら分かるの?私の事はアイズって呼んで?」
「でも…」
「でもじゃない、私は君に呼んで欲しいの…アイズって…」
寝ている俺の上に跨り、顔を近づける。こんな美少女に接近してもらうのは嬉しいが今は、というかこれからも恐怖が勝つ。なんとかして逃げねば。
「あ、あ、アイズ…?」
「ふふふ、なぁに?」
心底嬉しそうに笑う。その目は完全にハイライトが消失していた。有給取ってないで働いてくださいお願いします。
「お腹空いたからご、ご飯が欲しいな、君の作りたてのご飯が…」
我ながら虫酸の走るセリフだ。こんなセリフもう二度と言う機会なんてないんだろうな。
「うん、分かった。スタミナ料理をた〜っぷり作るから待っててね。その後は私達2人で…ふふふ」
ま、不味い!!早急に逃げないと17年間守ってきた貞操を消失してしまう!今はポーカーフェイスで取り繕い、やり過ごさなくては。
「美味しいの造るから…我慢しててね?ダ ー リ ン 」
奥に引っ込んでいき、足音が遠のいたのを確認したら幻影剣を出現させ静かに手の縄を斬る。窓を開けてクイックシルバーを発動させ音もなくアイズの隠れ家を去る。離れた路地裏に身を潜めてボディーチェックをする。ルーチェ、ある。オンブラ、ある。ネックレス、ある。手袋、コートのポケットに入っている。
「危なかったー…」
壁にもたれかかりズルズルと座り込む。アイズが豹変したのは1週間前からだ。最初は行くところに現れて奇遇だなぁって思ってたら気が付けば監視されてて…それから段々エスカレートして…拉致されるまで至るようになった。
「帰るか…」
部屋の鍵、また壊されてるだろうからベルに匿って貰おうかな。いや、いっそ葉山に…。
そう思いながら路地を出るがすぐさま引っ込む。ヤバい人第2号がいた。逆の道を行こうとするが、謎の手に肩を掴まれる。あ、もうオワタ。
「何処に行こうとするんですか? あな…ハチマンさん」
「リューさん…」
あな?
「今日はお部屋にいらっしゃなかったので心配しました。今まで何処にいたんですか?」
「いや、アイズに拉致られてしまって「大丈夫でしたか!?」ヒェッ…だ、大丈夫…です」
「剣姫に何かされませんでしたか!?手は!?目は!?皮膚には!?触れられませんでしたか!?スンスン…この匂い…あの女、ハチマンさんに触れた…!!」
「いやホント平気なんで帰って寝れれば大丈夫です、それじゃあごきげんよう!!」
「待ってください」
再び肩を掴まれる。今度はとんでもない力が込められている。痛い痛い痛い、ハイライトさんも仕事して。
「ハチマンさんもハチマンさんです。どうしてあの女が来るのを想定して部屋に鍵を掛けるなり対策をしなかったんですか?どうして彼女を拒絶しなかったんですか?」
「鍵しても壊されるんですよ…」
それに拒絶しようものなら殺されかねん。
「ああ言えばこう言う、そんな五月蝿い口は塞いでしまいましょうか。ハチマンさん、私と一緒に来ましょう。大丈夫です、【豊饒の女主人】の地下にいるだけでいいんです。3食ちゃんと美味しいご飯を出しますし、食後の運動(意味深)もお風呂もありますから…ふふふふふふ」
そう、このリューさん。一時間でも俺を目に入れてないとヒステリックを起こしてしまうらしい(シルさん談)。毎日5枚にも及ぶ手紙を出してくるし、3食全部【豊饒の女主人】で食べないと次の日の手紙が倍になる。つい2日食べなかったら箱一杯の手紙を送ってきた。
「黙って聞いていれば随分な言いようね」
闇から現れたのはやはりハイライトさんが仕事を放棄しているヤバい人第3号、ヘファイストスさんがやって来た。
黙って聞いていればの部分に違和感を覚え、身体中をまさぐると見たことも無いビー玉の様なものが出てきた。きっとGPSか盗聴器の類だろう。てかこんなマジックアイテムあるんだ。
「女神ヘファイストス、
「あら?聞き違えたかしら、ハチマンは私の夫よ?貴方みたいなウェイトレス風情が釣り合うとでも?」
「ヘファイストスさん…」
それは少し言い過ぎなんじゃ…
「大丈夫よ、ハチマン。貴方のことは24時間365日ちゃんと見守ってあげられるのだから、安心して私と添い遂げましょう?」
「そんな羨まッ…けしからない事、神が許しても私が許しませんッ!」
「ふーーん!私達は既に夫婦なのよ!青二才が口出すんじゃないわよ!」※ヘファイストスの妄想です
2人でいがみ合っているのをいい事にクイックシルバーを発動させ、命からがらその場を後にする。え?リューさんの時にやってればよかった?いやね、パッと消えたらより厳重に監視、管理されるでしょ?そうしたら俺の貞操、命諸々が危うくなる訳よ。
「ぜえ…ぜえ…」
やっとの思いでホームにたどり着き、玄関を開ける。
「たでーまー…」
シーーーーーン
おかしい、いつもなら誰かが反応してくれるはずなのに…。嫌な予感がする。リビング、図書館、キッチン、談話室、ベルの部屋、ヴェルフの工房、女性陣の部屋…は見れない。
「お誰も…いない?」
バッ!と振り返るとそこにはアイズがいた。右手に包丁を持って…。まさか、SchoolDays的なアレになるのか?誠になるのか!?
「ダメじゃない…朝ご飯も食べないで出掛けちゃうなんて…折角作ったじゃが丸くんが冷めちゃったじゃない…」
「アッ………」
ぺたんと尻もちをつく。ジリジリとアイズは近付いてくる。よく見れば左手にじゃが丸くんを持っている。
「ねぇ、ダーリン、食べてくれる?私が入ったじゃが丸くん」
口の前に持ってくるじゃが丸くん。抵抗虚しく口にじゃが丸くんを突っ込まれる。口に広がるのは俺のよく知ってるじゃが丸くんの味とは程遠く、鉄分が口に広がり、何やら妙な薬でも入れたんだろうか変な味もする。
「美味しい?ねぇ、ダーリン、美味しい?」
なんとか世辞を言おうとするが意識が朦朧とする。即効性の睡眠薬だったんだろう。
「今度は逃げられない所に行こう…ね?」
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「!!!」
ガバっと起き上がる。そこにはいつも見慣れてる壁、天井があった。寝汗が酷かった為、シャツがぐっしょりだ。周りの皆に迷惑をかけないように静かに部屋を出てシャワーを浴びる。
「ふー、朝の冷た目シャワーは気持ちいいなー」
体と頭を拭き、リビングで一息つく。コーヒーを啜りながら部屋をボーッと眺める。郵便受けにあった手紙を見る。リューさんとヘファイストスさんからの手紙だ。まぁ、内容は同じだろう。
AM:06:30
「そろそろ、かな」
キッチンに立ちエプロンを着け、朝ご飯の支度を始める。慣れた手つきで調理を進めていく。完成が間近になってきた頃、パタパタと慌ただしい足音が聞こえる。
「おはよーございます!」
「おう、おはよう」
「おはよー…」
「おう、2人共顔洗って来い」
「うん…ふわ〜〜ぁ」
「はい!」
テーブルに朝ご飯を並べ追える頃には全員揃い、皆揃って食卓に着く。合図を今か今かと待っている。
「いただきます」
「「「いただきまーす」」」
一斉にご飯を食べ始める。
「うん!美味しいよ!パパ!」
「そうか、良かった」
「相変わらずパパのご飯は美味しい」
「よく噛むんだぞ」
娘2人から賞賛の声を聞き、上機嫌になる。これが毎日の励みだ。
「どうだ?今日はお前の好きな品にしてみたんだが」
「うん、美味しいよ、ダーリン」
愛妻のアイズからも褒められる。
夢にまで見た幸せな家庭だ。
「ダーリン、今晩も…どう?」
「ちょっ、子供達の前だぞ」
「パパもママもなんの話してるのー?」
「いや、あの、そのぉ…プ、プロレスだ!そう、プロレス。格闘技の一種だ、ほら、母さんも父さんも元冒険者だったから」
「ふーーーん」
なんとかその場を凌ぐ。全く、アイズはデリカシーが少し欠けてるからな。夜の誘いなんて子供達の前で平気でしてくるからな。気を付けないと。
「「「「ご馳走様でした」」」」
食器も片付け、子供達は外で遊びに行く。我が子ながら元気ハツラツだなぁ。窓の外で追いかけっこしてるのを眺めているとアイズが後ろから抱きしめてきた。
「どうした?」
「今、幸せなの」
「そうか…俺もだ」
「ねぇダーリン」
「ん?」
「もう、逃 げ ち ゃ ダ メ だ よ ?」
「逃げるわけないだろ」
だって今、物凄く幸せなのだから。
もう、ダメだ。