朝、窓から零れた朝日でベルは目を覚ます。それに釣られてヴェルフ、葉山、ベートも目を覚ます。
「起きたか」
ベルの隣で寝ていた筈のハチマンが扉にいる。何処かから戻った様だ。少ししか寝てないのか目の下に隈がある。
「俺は済ませたがシャワー順番に浴びろよ、その後にロビーに集合」
それを言い終えると隣の部屋に向かって起き始めた女性陣にも同様の内容を話す。
〜40分後〜
ロビーに全員が集まるとそこに机と椅子がそれっぽく並べられており、机の上には朝ご飯が置いてある。
「おかわりはある、ジャンジャン食え」
『いただきます!』
ハチマンを抜く全員が料理に手を伸ばし、それぞれのペースで箸を進める。その間ハチマンは膝の上にパソコンを置いてカタカタッターンと操作する。
「ハチマン…それは何?」
「パソコンって言ってな、環境さえ整ってればどこでも見れる掲示板みたいなものだ…それより食いながらでいいから聞いてくれ」
「何か分かったのかい?」
「いや、何も…
全員がハチマンの方を見る。
「こんだけの騒動になってれば何かしらの書き込みが絶対にあるはずなのに…今の千葉の現状について何一つ書き込まれていない」
「隈無く探したかい?」
「無論だ、Yahhoo(ヤッホー)、Noogle(ノーグル)、MyTube(マイチューブ)、Kasutter(カスッター)、8ちゃんねるetc…ありとあらゆる所を探したが不自然過ぎるほどヒットしない」
「それってよォ、マズイことなのか?」
料理に夢中だったベートが口に含みながら問いかけてくる。
「かなり異常だ…例えるなら分ごとに状況報告される戦闘にて自分の部隊だけ何も連絡がない位だ」
「そりゃマズイな…」
「他の地域は?」
「健在だ、悪魔の事なんてこれっぽっちも…いや」
少しごもるハチマン。
『?』
「海外にも大量に悪魔が沸いたらしい」
『!!』
「1ヶ月前だが大勢の人が死んだらしい」
「そこって今はどうなってるの?」
「一応元凶は叩けたらしい。元通り…とまではいかないが復興するのも時間の問題だろうな」
「他にもなにかあったの?」
それでも神妙な顔をしているはにベルが問いかける。
「これといって成果は…」
神経を張り巡らせたせいかハチマンは疲れている様だ。ポケットに入れていたアルミ缶のタブを開け口をつける。
「まぁ、結果としてここに関しては驚く程何も出てこなかった。取り敢えず持ち物を確認したい。各自持ち物を教えてくれるか?」
「えっと、僕はいつもの装備とポーションが1つ」
「俺は大刀に砥石だな」
「リリはボウガンにポーションとマジックポーションを各自10本づつ」
「自分は太刀にポーションを2本です」
「私はデスぺレートとポーションが1つ」
「俺はフロスヴィルトと双剣」
各自武器はちゃんとある。ポーションが14本、マジックポーションが10本か。
「ん、サンキュ。それじゃあリリルカと俺と葉山以外はポーションを2本ずつ持つ事、残りは全部リリルカが管理。マジックポーションはそうだな、ベルとアイズさんとが3本、俺は2本。残りはリリルカが管理。いざって時に使う。異論は?」
「比企谷はともかくなんで僕にはないんだい?」
葉山が不服そうに聞く。
「そりゃギルガメスの防御力はめちゃんこ高いからな。そんじょそこらの攻撃じゃ傷すらつかないだろ」
「まあ、そうなんだけどさ…信頼されてるのかされてないのか、判断に困るなぁ」
ポーションも配り終え、食器やベッドの片付けも終わり、全員ビルから出る。朝日は暗雲に覆われており、青空も見えやしない。
「取り敢えず、人の避難しそうな場所に行こう」
「ハチマン、心当たりは無い?」
「学校…とかが災害時の避難場所になってるな」
「だったらそこ行くぞ」
格好をつけて先に歩こうとするベートだが行き先が分からずハチマンををチラチラと見てくる。
「はぁ、葉山先導頼む」
「僕だってここら辺はあまり詳しくないんだけど…」
しかしそこは葉山、何とか現在地を把握し学校へと向かう。道中世界にチェーン店を展開しているファストフード店のアハドナルドに立ち寄り、紙袋を1つ拝借するハチマン。目に当たる部分に穴を開けおもむろに紙袋を被る。
「ハチマン…またなの?」
「またって…こんな事してたのか?」
「仕方ない…今回は顔を見られる訳にもいかないからな」
いそいそと紙袋を被り、ショーケースの硝子に写る自分自身を見て細かい位置の調整に入る。
「よし、行こうか」
ビッグバーガーをもっきゅもっきゅと食べてるアイズに声をかけ再び捜索を再開する。因みに作者はえびフィレオ派です。
「あっ、そうだ」
葉山が何かを提案しようとする。
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「はっはっはっはっ……!」
「「ギギギギ!!」」
走る、ただ走る。後ろを向かずとも奴ら悪魔が追いかけてくるのは背中に突き刺さる殺気で分かる。奴らと私の距離は5mもなく、追いつかれるのも時間の問題だ。
(こんなっ…はずじゃ…)
どてっ!!
「キャッ!!」
荷物を持って走ってた為、足がもつれて転んでしまう。こんな事になるなら荷物なんて捨てておけば良かった。
悪魔達は立ち止まり、歯をガチガチと鳴らしながらジリジリと滲み寄ってくる。絶望に染まった私の顔を見て喜んでいるようだ。
「たいし、けーちゃん…」
こんな自体になってから行方が分からない妹の名を呟く。その声が弟と妹に届かなくても…
「ギギィィーー!!」
餌を前に待ちきれなくなったのか悪魔が飛びかかってくる。あぁ、もう…終わりか…。
目をそっと綴じる。
グシャァ!!
肉の砕けた音がする。不思議と痛みはない。アドレナリンが大量に分泌されたせいか痛覚を麻痺させたのだろうか。
グチャ!グシャ!!グチィ!!
どんなに残酷な肉の弾ける音がしても意識が遠のく気配はせず、恐る恐る目を開けるとそこには男が立っていた。身長は180に差し掛かる程で、紫のロングコートを羽織っている。右肩には花の刺繍、左肩には鐘と炎の刺繍。手と足に鎧?の様なものを付け、悪魔を何度も何度も踏みつけている。その顔は…紙袋に遮られ見る事はできなかった。
「………」
その男はゆっくりと私の方に振り返ると暫くこちらを見ていた。
「あっ…助けてくれて…ありがとう…」
こくりと頷く。一言も喋るつもりは無いらしい。
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「ハ、ヤハタ〜!!」
ヤハタ…すなわちハチマンの元にベル達が駆け寄って来る。
「急に走ってくからどうしたのかと思ったよ…」
すまん、とハンドサインを出すハチマン。
「川崎さん…だよね」
葉山がついさっきまで襲われてた少女、川崎沙希の元に近付く。川崎は信じられないといった顔になる。
「あ、あんた…!行方不明だったはずじゃ!!」
「色々訳あってね…今は彼等と行動してるんだ」
「そう、だったんだ…そうだ!葉山!大志とけーちゃんを、私の弟と妹を見なかった!?幼稚園生なんだけど…」
ピクリとハチマンが反応する。
「まさか、はぐれたのかい!?」
「うん、真夜中に奴らが出てきて…それで人混みの中で避難したら、はぐれちゃって、大志は探しに行って…もう1週間も経つ…」
俯き、顔を手で抑え泣きそうな声を出す川崎。
「普通に考えてりゃ死んでるな」
「ッ!!それでも生きてる可能性に賭けたいから…」
それを聞いたハチマンは立ち膝でしゃがみこみ、地面に手をつける。魔力をドーム状に広げ、引っかかった人や物を探知する魔力結界の応用技だ。魔力消費は大きい。
「ヒット…そこにいろ」
声が分からないくらいの音で呟くと猛スピードで駆け出してった。
〜10分後〜
「………」
まだかまだかと待っていた川崎の元に寝ている幼女と少年を抱えたハチマンがやって来た。
「けーちゃん!!大志!!」
ハチマンから妹の京華を受け取る。ハチマンは葉山にそっと耳打ちをする。
「疲れきって寝ているそうだ。スーパーの控え室の片隅で震えていたらしい。ご飯はお惣菜とかだったらしい」
「よかった…よかったぁ…」
2人を抱きしめポロポロと涙を流す川崎。
「ヤハタ…さんだっけ。ありがとう…私だったら見つけられやしなかった…本当にありがとうございました」
2人を抱きしめたまま頭を下げる川崎姉。ハチマンは何も答えず何処かを眺めていた。
「全く…大層な能力だな」
ベートがハチマンの腰を小突く。ポリポリと紙袋越しに頭を搔くハチマン。
「川崎さん、今千葉を取り巻く状況を教えてくれるかい?」
「分かった。避難所に行きながら話すよ」
話を聞けば悪魔が沸いたのは1週間前の夜中7時辺り。大勢の人が殺される中、命からがら生き延びた人達は総武高校や海浜高校に避難し、そこで怯えながら暮らしているらしい。何故川崎が街に居たかと言うと、食料調達部隊として街に出て食料を探すと同時に位妹や弟を探していたらしい。食料調達部隊は聞こえは立派だが、実の所生還率が低く、くじで決められた人間が調達に向かうが、その半数は悪魔の餌食になるらしい。川崎は調達6回目らしい。
「すごい勇気ですね…」
「そんなんじゃないよ」
ベルの感嘆の声に照れくさそうにする川崎。
「っと…着いたね」
校門前に立つ。校舎は2,3ヶ月前と見てくれはぜんぜん変わらず鎮座していた。唯一変わっていたのは悪魔の侵入を抑える為の柵に設置された有刺鉄線だけだ。
靴は履き替えず、校舎の中をズンズンと進んでいく。俺と葉山以外は物珍しい顔であちらこちらを見渡している。
(このルートは…)
ハチマンの予感は的中した。川崎に案内されたのは職員室だった。
「ここは学校全体を管理する本部。教職員をはじめ、生徒会とクラス委員長が主体で管理、統制をしてるから、一応挨拶と報告にね」
コンコン、ノックして職員室に入る。職員達は出払っているのかガランとしている。
「戻りました、先生」
「あー、川崎か。また君に会えて嬉しいよ、弟さんと妹さん、見つかったのか、良かったぁ」
煙草をスパスパ吸っている教師がやってきた。葉山と八幡がよーく知っている教師が。
「そこの人達は?見た所一般人じゃないっぽいが」
「悪魔に襲われていた所を助けてもらいました。葉山、紹介してくれない?」
「葉山?葉山じゃないか!生きてたのか!私はてっきり死んだのかと…!」
葉山の肩をバシバシ叩き嬉しそうにする。
「先生、話は紹介が済んでからで…えっと、順番に紹介します。ベル・クラネルさん、ヴェルフ・クロッゾさん、リリルカ・アーデさん、ヤマト・命さん、アイズ・ヴァレンシュタインさん、ベート・ローガさん、そして、ヤハタ・サーティーン(ハチマンの偽名)さんです。因みに名前、苗字です」
「そっかそっか…悪魔に対抗できる人達か…改めて歓迎しよう。私はここの長…的なのを任されている平塚静だ。よろしく」
ニカッと笑う彼女。しかし違和感を覚えているのはハチマンだけだった。
「葉山…君に何があったのか教えてくれないか?」
「簡単ですよ、遭難して意識不明の所をこの人達に助けてもらっただけです」
「なるほど…改めて私の生徒を助けてくれてありがとう。ん?君が被っているそれは…」
平塚がハチマンの紙袋に注目する。
(ま、マズイ!!)
喋ればバレるため、身振り手振りでコミュニケーションを測るが何も伝わらない。
「先生、彼はシャイなので…」
葉山がその場しのぎの言い訳をする。ほぅ、と納得した平塚は川崎に向き直る。
「川崎、彼等に校舎の概要と案内をしてくれたまえ。君の弟妹は私が救護室に運んでおこう」
「はい…着いてきて」
川崎に案内されるハチマン一同。
「校舎の教室と体育館は避難民の仮の家になってる。とは言え、教室に住めるのは管理委員の関係者が指名した人達だけなんだけどね。体育館にいる人は学校にコネのない人達は薄い板で仕切られた狭い居住スペースで暮らすしかないんだよ」
体育館に入ると一斉に視線がこちらを刺す。一同が関係者という嫉妬、食料の配給だと勘違いしている期待、行き場のない怨念、様々な感情がヒシヒシと伝わってくる。
「除くだけにしな…今の私達に出来ることなんて限られてるんだから…さ、次行くよ」
臭い物に蓋をするように思い扉を閉める。
「次は…コンピュータ室かな。ていってもあそこの連中は一日中引きこもって外に救助を求めたり、海浜高校と連絡して情報を交換してるだけなんだけどね」
ノックをして開けるとパソコンの排気熱故の熱発がムワッと頬を撫でた。
「何の用だ…川崎氏」
部屋の奥から声だけが聞こえた。
「今日の成果は?」
「無論、無理だ。我の英智をもってしてもこの壁は高すぎる」
「あっそ、失礼するね」
川崎がドアを閉めようとした瞬間、ハチマンが手で遮る。
「どうかしたんですか?ヤハタさん」
(先…行ってろ)
そう葉山に耳打ちする。
「彼は後で追いつくらしいから先行こう」
「わ、分かった」
ハチマンを端目にコンピュータ室を後にする一同。
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一同が去ってから暫くすると俺は足を進め声の主の元に向かった。
「何の用かな?新顔よ」
パソコンに夢中になってるその男は室温が高いのにも関わらず茶のコートを身につけており、百均の指ぬきグローブを嵌めていた眼鏡のデブだった。
「何してるんだ?」
「……外への救難要請と、海浜高校との、連絡だ」
「にしては違う画面だな」
「海浜高校は潰れた…つい昨日。695人もの人が死んだ。救難要請しようにも外とのネットワークは見れても発信はできないようになっている」
「そうか……」
「そういうお主は…何をしていたのだっ…!八幡ッ…!」
紙袋を取るとその男、材木座義輝は振り返る。目には涙を浮かべ、鼻水をダラダラと流している。
「泣くなよ…みっともない」
「瞬き…グスッ…してないし…ズビッ、花粉症だから…デュポォ…仕方ないのだ」
最後の気持ち悪い擬音はスルーしてコロのついた椅子に座る。10分、材木座は鼻をかみ、目をシパシパさせ、気持ちを整理させていた。
「落ち着いたか?」
「うむ、大丈夫だ。それより八幡よ、お主、死んだ筈ではないのか?」
「話すと長いぞ」
「うむ」
前屈みになって聞く姿勢をする材木座。
「〜って訳だ」
「なるほどなるほど…つまり八幡は我がこ〜んなにも苦労してる時に女子とイチャコライチャコラしてたのか…そうかそうかつまり君はそういう奴だったんだな」
「おいエーミール、今の話のどこにそんな要素があった」
「HAHAHAHAHAHA!!ジョーダンだっ!それより八幡よ…お主」
「ん?どうした」
材木座が上から下へと俺の全容を確認する。
「雰囲気が変わったな…もっとジメジメしていた筈なのに…」
「変わらなきゃいけない環境に身を置いてるからな」
「厨二病?」
「ちげーよ」
そんな話をした後、やっと本題に入る。
「てかお前マジで何やってるんだ?」
「それを聞く前に我の話を聞いて欲しい」
真面目な顔をする材木座。
「どうした…」
「八幡…この事件は…人が起こしている」
「な、何!?」
材木座から告げられた衝撃の事実に驚きを隠せなくなる。
「てか八幡…我と服装被ってない?」
「お前よりかはセンスあると思うが」
「ぐぬぬぬぬ…交換してみないか?」
「嫌に決まってんだろ…臭い」
「辛辣ゥ!!」
材木座はたおれた